エアコンの固定資産税は思いのほか高い!税額の計算方法を解説
エアコンには、固定資産税がかかるエアコンとかからないエアコンがあり、かかるエアコンを設置した場合は、思いのほか税額が高くなることがあります。
固定資産税がかかるエアコンとかからないエアコンの違いを解説し、エアコンの固定資産税を計算する方法をご紹介しましょう。
目次
- 1. 固定資産税がかかるエアコンとかからないエアコンの違い
- 1-1. 天井埋め込みタイプのエアコン(日常生活用)の固定資産税
- 1-2. 事業のために使用するエアコンの固定資産税はいくら?
- まとめ - 扇風機にも固定資産税がかかる
固定資産税がかかるエアコンとかからないエアコンの違い
エアコンに固定資産税がかかるか否かは、エアコンのタイプと使用状況によって異なります。
固定資産税がかかるのは、日常生活のために使用する天井や壁に埋め込まれたビルトインタイプのエアコンと、事業のために使用するエアコンです。
事業のために使用するエアコンは、ビルトインタイプ、壁掛けタイプ、窓用タイプ、据え置きタイプなどの種類を問いません。
一方、固定資産税がかからないのは、日常生活のために使用する壁掛けタイプ、窓用タイプ、据え置きタイプのエアコンです。
業務用エアコンを日常生活のために使用しても、それがビルトインタイプでなければ固定資産税はかかりません。
固定資産税がかかるエアコンとかからないエアコンの違い
| エアコンの状況 | 固定資産税 |
|---|---|
| 日常生活のために使用する天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプのエアコン | かかる |
| 事業のために使用するエアコン | 〃 |
| 日常生活のために使用する壁掛けタイプや窓用タイプ、据え置きタイプのエアコン | かからない |
| 日常生活のために使用する業務用エアコン | 〃 |
つづいて、固定資産税がかかる「日常生活のために使用する天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプのエアコン」と、「事業のために使用するエアコン」の税額の目安をご紹介しましょう。
なお、本記事の内容は、総務省の告示「固定資産評価基準」を基にしています。
固定資産評価基準とは、市町村が家屋や土地の時価を評価する方法が記された手引き書であり、総務大臣が内容を定めています。
固定資産税は、市町村が市町村内の家屋や土地の所有者に課しますが、その税額は、対象となる資産の時価を基に計算します。
よって、市町村は市町村内の家屋や土地の時価を適正に評価しなければなりませんが、評価する際に手本とするのが固定資産評価基準です。
固定資産評価基準は「総務省:固定資産税の概要」の下部よりご覧いただけます。
天井埋め込みタイプのエアコン(日常生活用)の固定資産税
日常生活のために使用する天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプのエアコンには、固定資産税がかかります。
そのタイプのエアコンの固定資産税は、戸建てに設置したのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき99円程度です。
また、市街地に位置する建物に、日常生活のために使用するビルトインタイプのエアコンを設置したのであれば、多くの場合は都市計画税もかかります。
都市計画税とは、公共施設を維持新設する「都市計画事業」や、公共施設を移設や新設するために必要となる土地を調達する「土地区画整理事業」の費用を賄うために市町村が徴収する税金です。
日常生活のために使用するビルトインタイプのエアコンの都市計画税は、戸建てに設置したのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき21円程度となります。
対象床面積とは、そのビルトインタイプのエアコンにより冷暖房の効果を受ける床面積を指します。
たとえば、固定資産税と都市計画税の両方が課される建物に設置された、日常生活のために使用する天井埋め込みタイプのエアコンがあったとしましょう。
そのエアコンが設置された部屋は、36㎡(約20畳)です。
であれば「99円×36㎡=3,564円」と計算して固定資産税は3,564円程度、「21円×36㎡=756円」と計算して都市計画税は756円程度、税額の合計は4,320円程度となります。
なお、ここでご紹介した日常生活のために使用するビルトインタイプのエアコンの固定資産税と都市計画税の目安は、1台あたりの税額のため留意してください。
2台設置されているのであれば2台分、3台設置されているのであれば3台分の固定資産税や都市計画税がかかります。
ちなみに当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、全館空調の固定資産税の目安をご紹介する記事を公開中です。
ビルトインタイプのエアコンによる全館空調の設置を希望し、その固定資産税がいくらになるか気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
全館空調の固定資産税は高い。税額のシミュレーション方法を解説
事業のために使用するエアコンの固定資産税はいくら?
事業のために使用するエアコン(これ以降「事業用エアコン」と呼びます)は、天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプ、壁掛けタイプ、窓用タイプ、据え置きタイプなどの種類を問わず固定資産税がかかります。
また、そのエアコンが業務用であっても家庭用であっても、やはり固定資産税がかかります。
さらに、事業用エアコンの固定資産税は、課税方法が極めて複雑です。
したがって、まずは、どのように事業用エアコンに固定資産税が課されるか解説しましょう。
事業用エアコンは、「家屋と一体化した事業用エアコン」と「家屋と一体化していない事業用エアコン」に大きく分類されます。
「家屋と一体化した事業用エアコン」とは、天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプのエアコンです。
家屋と一体化した事業用エアコンには、家屋の一部として固定資産税が課されます。
「家屋と一体化していない事業用エアコン」とは、壁掛けタイプや窓用タイプ、据え置きタイプなどのエアコンです。
家屋と一体化していない事業用エアコンには、償却資産(償却資産とは、家屋と土地を除く事業のために使用する資産を指します)として固定資産税が課されます。
そして、「家屋と一体化した事業用エアコン」と「家屋と一体化していない事業用エアコン」は、固定資産税の計算方法が異なります。
事業用エアコンの固定資産税の課税方法
| エアコンの状況 | 課税方法 |
|---|---|
| 家屋と一体化した事業用エアコン(天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプのエアコン) | 家屋の一部として固定資産税が課され、家屋として税額が計算される |
| 家屋と一体化していない事業用エアコン(壁掛けタイプや窓用タイプ、据え置きタイプなどのエアコン) | 償却資産(家屋と土地を除く事業のために使用する資産)として固定資産税が課され、償却資産として税額が計算される |
つづいて、家屋の一部として固定資産税が課される、「家屋と一体化した事業用エアコン」の固定資産税の目安をご紹介しましょう。
家屋と一体化した事業用エアコンの固定資産税
家屋と一体化した、天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプの事業用エアコンには、家屋の一部として固定資産税が課されます。
その税額の目安は、木造または軽量鉄骨造に設置されているのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき99円程度です。
鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造に設置されているのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき164円程度となります。
対象床面積とは、設置されたビルトインタイプの事業用エアコンにより冷暖房の影響を受ける床面積を指します。
また、市街地に位置する家屋に設置されたビルトインタイプの事業用エアコンには、多くの場合は都市計画税も課されます。
その税額の目安は、木造または軽量鉄骨造に設置されているのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき21円程度です。
鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造に設置されているのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき35円程度となります。
家屋と一体化した事業用エアコンの固定資産税の目安
| 家屋の構造 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 木造、軽量鉄骨造 | 99円程度 | 21円程度 |
| RC、SRC | 164円程度 | 35円程度 |
※ 各税額は対象床面積1㎡あたりの目安
※ RC、SRCの税額の目安は個別空調方式に限り該当する
たとえば、都市計画税が課される市街地に位置する、軽量鉄骨造の店舗内に設置された天井埋め込みタイプの事業用エアコンがあったとしましょう。
その事業用エアコンが設置された部屋の面積は、45㎡です。
であれば「99円×45㎡=4,455円」と計算して固定資産税は4,455円程度、「21円×45㎡=945円」と計算して都市計画税は945円程度、税額の合計は5,400円程度となります。
なお、ここでご紹介した天井埋め込みや壁埋め込みなどのビルトインタイプの事業用エアコンの固定資産税と都市計画税は、1台あたりの税額の目安のため注意してください。
2台設置しているのであれば2台分、3台設置しているのであれば3台分の固定資産税や都市計画税が課されます。
つづいて、償却資産として固定資産税が課される、「家屋と一体化していない事業用エアコン」の固定資産税の目安をご紹介しましょう。
家屋と一体化していない事業用エアコンの固定資産税
家屋と一体化していない、壁掛けタイプや窓用タイプ、据え置きタイプの事業用エアコンには、償却資産として固定資産税が課されます。
償却資産とは、家屋と土地を除く事業用の資産を指し、年度を問わず1月1日の時点で償却資産を所有するのであれば、固定資産税が課されます。
償却資産である事業用エアコンの固定資産税は、以下のように「課税標準額×固定資産税の税率」と計算します。
償却資産である事業用エアコンの固定資産税の計算式
課税標準額(その事業用エアコンの評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税
上記の式に含まれる課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。
償却資産である事業用エアコンの固定資産税を計算する際の課税標準額は、式に記したように「その事業用エアコンの評価額」です。
この状況における評価額とは、その事業用エアコンの時価を意味し、独自の方法を用いて計算します。
評価額の計算方法は、前年に購入した事業用エアコンと、前年より前に購入した事業用エアコンによって異なり、以下のとおりです。
前年に購入した事業用エアコンの評価額の計算方法
エアコンの取得価額(エアコンの本体代金、送料、取り付け費用、代金の振込手数料、消費税などの合計)×前年に購入した耐用年数が6年の償却資産の減価残存率である0.840=評価額
前年より前に購入した事業用エアコンの評価額の計算方法
その事業用エアコンの前年度の評価額×前年より前に購入した耐用年数が6年の償却資産の減価残存率である0.681=評価額
※償却資産である事業用エアコンの耐用年数は6年であり、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の「別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」「器具及び備品」「冷房用又は暖房用機器」にて確認できる
たとえば、前年に壁掛けタイプのエアコンを、事業用として購入したとしましょう。
その壁掛けタイプのエアコンを購入するために、本体価格と送料、取り付け費用、代金の振込手数料、消費税など合計25万円の費用がかかりました。
であれば、その壁掛けタイプのエアコンの取得価額は25万円となり、以下のように計算して評価額は21万円、課税標準額も21万円となり、固定資産税は2,940円となります。
- 25万円(エアコンの取得価額)×0.840(前年に購入した耐用年数が6年の償却資産の減価残存率)=21万円(評価額)
- 課税標準額(評価額である21万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=2,940円
なお、ここでご紹介した償却資産としての事業用エアコンの固定資産税の計算方法は、市町村によっては多少異なるため注意してください。
固定資産税は市町村が徴収する地方税であり、市町村によって税額の計算方法が多少異なる場合があります。
また、償却資産である事業用エアコンは、以下のいずれかの状況に該当する場合は固定資産税がかかりません。
- 購入した事業用エアコンの取得価額が10万円未満の場合
- 購入した事業用エアコンの取得価額が10万円未満であり、なおかつその額を一時に損金に算入したのであれば、固定資産税はかかりません
- 購入した事業用エアコンの取得価額が20万円未満の場合
- 購入した事業用エアコンの取得価額が20万円未満であり、なおかつその額を3年にわたり一括で償却するのであれば、固定資産税はかかりません
- 免税点未満の場合
- 複数の償却資産を所有し、それらの評価額の合計が150万円未満であれば、免税点未満となり固定資産税はかかりません
まとめ - 扇風機にも固定資産税がかかる
固定資産税がかかるエアコンとかからないエアコンの違いを解説し、エアコンの固定資産税を計算する方法をご紹介しました。
固定資産税がかかるのは、日常生活のために使用するビルトインタイプのエアコンと、事業のために使用するエアコンです。
日常生活のために使用するビルトインタイプのエアコンの固定資産税は、対象床面積1㎡あたりにつき99円程度です。
事業のために使用するエアコンには、ビルトインタイプと、ビルトインではないタイプがありますが、それぞれ課税方法が異なります。
事業のために使用するビルトインタイプのエアコンは家屋の一部として固定資産税が課され、その税額の目安は、木造や軽量鉄骨造に設置されているのであれば、対象床面積1㎡あたりにつき99円程度です。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造に設置されている個別空調方式のビルトインタイプのエアコンであれば、対象床面積1㎡あたりにつき164円程度となります。
一方、事業のために使用するビルトインではないタイプのエアコンは償却資産として固定資産税が課され、その税額は評価額(時価)を基に計算します。
エアコンの購入を予定し、固定資産税がかかるか否か、税額はいくらか案ずる方がいらっしゃいましたら、ぜひ参考になさってください。
ちなみに、エアコンと同じく冷暖房機に扇風機がありますが、なんと驚くことに固定資産税がかかります。
とはいうものの、以下などの条件を全て満たす場合に限り固定資産税が課され、よほど大きな工業用扇風機を複数台購入するなどしない限り課税されることはないためご安心ください。
- 事業のために使用する扇風機である
- 10万円や20万円以上の費用をかけて購入した
- 複数の償却資産を所有し、それらの評価額(時価)の合計が150万円以上である
扇風機に固定資産税が課される状況において、その税額を計算する方法は、この記事の「家屋と一体化していない事業用エアコンの固定資産税」でご紹介した事業用エアコンの固定資産税を計算する方法と同じです。
本記事の内容が、エアコンの設置や購入を予定する皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年8月
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