固定資産税評価額とは?調べ方や目安などわかりやすく解説

固定資産税評価額とは?調べ方や目安などわかりやすく解説

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価です。

そして、固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税、相続税、贈与税などを計算する基となります。

固定資産税評価額をわかりやすく解説し、自分や他人の土地や家屋の固定資産税評価額の調べ方などご紹介しましょう。

なお、固定資産税において、建物を「家屋(かおく)」と呼びます。

よって、本記事では、建物を家屋と記すため留意してください。

目次

1. 固定資産税評価額とは、土地や家屋の適正な時価

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価です。

固定資産税評価額は、土地や家屋を所有することにより市町村から毎年課される税金「固定資産税」を計算する際に活用されます。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地を所有する場合は、1,000万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えの14万円などが税額になるといった具合です。

土地の固定資産税の計算例
1,000万円(固定資産税評価額)×1.4%(固定資産税の税率)=14万円(固定資産税)

同様に、固定資産税評価額が2,000万円の家屋を所有する場合は、2,000万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えの28万円などが税額となります。

家屋の固定資産税の計算例
2,000万円(固定資産税評価額)×1.4%(固定資産税の税率)=28万円(固定資産税)

土地や家屋には売買価格がありますが、売買価格は売り主と買い主の事情によって決定するため、売買価格を基に税額を計算しては公平に課税されません。

よって、土地や家屋の固定資産税は、市町村によって評価された適正な時価、すなわち固定資産税評価額を基に税額が計算されます。

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価

なお、一部例外を除き、市町村は「固定資産税評価額」という言葉を使わないため留意してください。

市町村は地方税法という法律に則り、土地や家屋の所有者に固定資産税を課します。

地方税法には、「固定資産税は価格を基に税額を決定し、地方税法における価格とは適正な時価である」と記されています。

従って、市町村は「固定資産税評価額」ではなく、「価格」や「適正な時価」という言葉を用います。

固定資産税評価額という言葉は通称であり、正確には「価格」または「適正な時価」です。

場合によっては、市町村は「評価額」という言葉を用いることがありますが、それは納税者が理解しやすいように「価格」や「適正な時価」という言葉を言い換えています。

市町村は固定資産税評価額という言葉は使わない

また、固定資産税評価額は、土地や家屋の都市計画税、不動産取得税、登録免許税、相続税、贈与税を計算する際にも活用され、詳細は以下のとおりです。

1-1. 都市計画税における固定資産税評価額

「市街化区域」という区域に位置する土地や家屋の所有者には、固定資産税に加え都市計画税という税金も課されます。

都市計画税の税率は最高で0.3%であり、都市計画税を計算する際も固定資産税評価額が活用されます。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地であれば、1000万円に都市計画税の税率である0.3%を掛け算し、その答えの3万円が税額になるといった具合です。

土地の都市計画税の計算例
1,000万円(固定資産税評価額)×0.3%(都市計画税の税率)=3万円(都市計画税)

なお、都市計画税が課される市街化区域とは、既に市街化である区域、または今後10年以内に市街化が図られる区域です。

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1-2. 不動産取得税における固定資産税評価額

土地や家屋を購入するなどして取得すると、不動産取得税という税金が課されます。

不動産取得税の税率は原則として4%であり、不動産取得税を計算する際も固定資産税評価額が活用されます。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地を購入するなどして取得した場合は「1,000万円×4%=40万円」と計算し、税額は40万円になるといった具合です。

土地の不動産取得税の計算例
1,000万円(固定資産税評価額)×4%(不動産取得税の税率)=40万円(不動産取得税)

ただし、不動産取得税には数多くの軽減措置が設けられ、実際に課される税額はもう少し低くなります。

特に、住宅が建つ土地や、住宅を建てるために必要となる土地を取得した場合は、大幅に税額が低くなるため留意してください。

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1-3. 登録免許税における固定資産税評価額

土地や家屋を購入するなどして取得すると、法務省の地方支部局である法務局にて、所有権保存登記(しょゆうけんほぞんとうき)、または所有権移転登記(しょゆうけんいてんとうき)を行うのが通例です。

所有権保存登記とは、新たに完成した建物を取得した場合などに、法務局に設置されている登記簿と呼ばれる公の帳簿に、その建物の所有権を有することを記す行為です。

所有権移転登記とは、他人が所有権を有する建物や土地を取得した場合に、その所有権が自らに移ったことを登記簿に記す行為を指します。

そして、所有権保存登記や所有権移転登記の際は、登録免許税という税金が課されます。

その登録免許税を計算する際も、固定資産税評価額は活用されます。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地を購入するなどして取得し、その所有権移転登記を行う際は以下のように計算し、税額は20万円です。

土地の登録免許税の計算例
1,000万円(固定資産税評価額)×2%(土地の所有権移転登記に課される登録免許税の税率)=20万円(登録免許税)

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1-4. 相続税における固定資産税評価額

一定の時価を超える財産を相続すると、相続税という税金が課されます。

そして、固定資産税評価額は、建物を相続した際に課される相続税を計算する際も活用されます。

たとえば、固定資産税評価額が5,000万円の家屋を1人で相続し、相続した財産がその家屋のみであれば以下のように計算し、相続税は160万円になるといった具合です。

家屋の相続税の計算例
・5,000万円(固定資産税評価額)-3,600万円(基礎控除額)=1,400万円(課税遺産総額)
・1,400万円(課税遺産総額)×15%(課税遺産総額が1,400万円の場合における相続税の税率)-50万円(課税遺産総額が1,400万円の場合における控除額)=160万円(相続税)

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1-5. 贈与税における固定資産税評価額

財産を譲り受けると、贈与税という税金が課されます。

そして、固定資産税評価額は、家屋を譲り受けた際に課される贈与税を計算する際も活用されます。

たとえば、固定資産税評価額が5,000万円の家屋を他人から無償で譲り受けた場合は以下のように計算し、贈与税は2,289万円5,000円になるといった具合です。

家屋の贈与税の計算例
・5,000万円(固定資産税評価額)-110万円(贈与税の基礎控除額)=4,890万円(基礎控除後の課税価格)
・4,890万円×55%(基礎控除後の課税価格が4,890万円の場合における贈与税の税額)-400万円(課税価格が4,890万円の場合における贈与税の控除額)=2,289万円5,000円(贈与税)

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2. 所有する土地や家屋の固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価であり、固定資産税や都市計画税などを計算する基となります。

そこで気になるのが、所有する土地や家屋の固定資産税評価額の調べ方です。

所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、以下のいずれかの方法を用いれば調べることができます。

  • 固定資産税の課税明細書を確認する
  • 市町村役場で固定資産評価証明書の発行を請求する
  • 市町村役場で公課証明書の発行を請求する

それぞれの固定資産税評価額の調べ方の詳細は、以下のとおりです。

2-1. 固定資産税の課税明細書を確認する

固定資産税が課される対象となる土地や家屋を所有すると、毎年4月ごろに市町村から納税通知書が届きます。

納税通知書は「納税通知書」「課税明細書」「納付書」にて構成され、課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目の金額が記されています。

課税明細書に価格や評価額などの名目で記されている金額が、所有する土地や家屋の固定資産税評価額です。

所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書を見れば調べることができる

なお、マンションの一戸を所有する場合は、一戸部分と「敷地権」と呼ばれる土地の持ち分を所有します。

そして、マンションの固定資産税の課税明細書には、一戸部分の固定資産税評価額は記されていますが、土地の持ち分の固定資産税評価額は記されていないため注意してください。

マンションの一戸を所有する場合は、課税明細書の「土地」の欄には8桁や9桁の額が記されていますが、それはマンションが建つ敷地全体の固定資産税評価額であり、土地の持ち分の固定資産税評価額ではありません。

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、次にご紹介する「固定資産評価証明書」に記されている内容を確認することにより調べることができます。

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2-2. 市町村役場で固定資産評価証明書の発行を請求する

所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、固定資産評価証明書を見ることで調べることができます。

固定資産評価証明書とは、市町村役場の窓口で発行を請求できる、所有する土地や家屋の固定資産税評価額などが記された書面です。

固定資産評価証明書は、土地や家屋の登記を行う際などに必要となる書面であり、発行を請求する際は、200円程度の手数料と身分証明書の提示を求められます。

なお、マンションの一戸を所有する場合は、一戸部分と敷地権と呼ばれる土地の持ち分を所有します。

そして、固定資産税の課税明細書には、土地の持ち分の固定資産税評価額は記されていません。

同じくマンションの固定資産評価証明書にも、土地の持ち分の固定資産税評価額は記されていませんが、マンションが建つ敷地全体の固定資産税評価額と、分母と分子からなる「敷地権の持分比率」が記されています。

敷地全体の固定資産税評価額と、「敷地権の持分比率」を用いれば、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額を計算することが可能です。

たとえば、敷地全体の固定資産税評価額が3,000万円、「敷地権の持分比率」が「1000分の10(1%)」であれば以下のように計算し、土地の持ち分の固定資産税評価額は300万円です。

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額の計算例
3,000万円(マンションが建つ敷地全体の固定資産税評価額)×1%(敷地権の持分比率)=300万円(土地の持ち分の固定資産税評価額)

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、そのマンションが建つ敷地全体の固定資産税評価額と、「敷地権の持分比率」を調べ、それらを用いて計算しつつ調べる必要があります。

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2-3. 市町村役場で公課証明書の発行を請求する

所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、公課証明書を見ることで調べることができます。

公課証明書とは、所有する土地や家屋の固定資産税評価額に加え、固定資産税額が記された書面であり、固定資産評価証明書と同じく市町村役場の窓口にて発行を請求することが可能です。

公課証明書の発行を請求する際は、市町村役場によって異なるものの、200円から300円程度の手数料と身分証明書の提示を求められます。

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3. 他人が所有する土地や家屋の固定資産税評価額の調べ方

所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書を見たり、市町村役場で固定資産評価証明書などの発行を請求することで調べることができます。

一方、他人の土地や家屋の固定資産税評価額は、土地価格等縦覧帳簿や家屋価格等縦覧帳簿を縦覧することで調べることが可能です。

土地価格等縦覧帳簿とは、地方税法の規定によって市町村長が毎年作成する、その市町村内に所在する固定資産税が課される対象となる土地の固定資産税評価額などが記された帳簿です。

家屋価格等縦覧帳簿とは、同じく地方税法の規定によって市町村長が毎年作成する、その市町村内に所在する固定資産税が課される対象となる家屋の固定資産税評価額などが記された帳簿を指します。

土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿は、毎年4月1日から4月20日ごろまでなどの期間に限り、市町村役場などで縦覧できます。

縦覧は「じゅうらん」と読み、「自由に見る」などの意味です。

他人の土地や家屋の固定資産税評価額は、土地価格等縦覧帳簿や家屋価格等縦覧帳簿を縦覧することで調べることができる

ただし、土地価格等縦覧帳簿や家屋価格等縦覧帳簿を縦覧できるのは、その市町村内に、固定資産税が課される対象となる土地や家屋を所有する方のみに限られます。

隣の市町村など、縁もゆかりもない市町村の土地価格等縦覧帳簿や家屋価格等縦覧帳簿は縦覧できません。

また、「山田さんの土地」や「鈴木さんの家屋」など名指しで土地や家屋を指定しつつ固定資産税評価額を調べることはできず、「東京都東京区1丁目1番の土地」など、登記簿に記されている住所を指定しつつ調べることとなります。

以下は、土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度に関する留意点です。

土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿は、期間限定で縦覧できる
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を縦覧できるのは、市町村によって異なり、毎年4月1日から4月20日まで、または、毎年4月1日から、その年の固定資産税の第1期目の納期限までです。

正確な期間は、市町村役場のホームページにて確認することが可能です。
縦覧制度は、その市町村内に土地や家屋を所有する者のみが利用できる
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を縦覧できるのは、その市町村内に固定資産税が課される対象となる土地や家屋を所有する方に限られます。
調べることができるのは、その市町村内に所在する土地や家屋の固定資産税評価額のみ
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿に記されているのは、その市町村内に所在する、固定資産税が課される対象となる土地や家屋の固定資産税評価額のみです。

よって、縦覧制度を利用しつつ調べることができるのは、その市町村内に所在する、他人の土地や家屋の固定資産税評価額に限られます。
調べる際は、登記簿に記されている住所を指定する必要がある
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を縦覧しつつ他人の土地や家屋の固定資産税評価額を調べる際は、その土地や家屋の住所を指定する必要があります。

また、その住所は「住居表示」と呼ばれる一般的な住所ではなく、登記簿に「所在」と「地番」、または「家屋番号」という名目で記されている住所を指定しなくてはなりません。
縦覧制度を利用する際は、身分証明書の提示を求められる
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度を利用する際は、運転免許証やマイナンバーカードなど、身分証明書の提示を求められます。

ただし、市町村によっては、その市町村内で自らが所有する、土地や家屋の固定資産税の課税明細書でも代替できる場合があります。
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿は、コピーできない
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿は縦覧できるのみであり、コピーを取るなどはできません。
縦覧制度は、無料で利用できる
土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度は、無料で利用できます。

以上が、土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度の留意点です。

土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度は、自らが所有する土地や家屋の固定資産税評価額が適正であるか、他の土地や家屋の固定資産税評価額と比べつつ判断するために設けられています。

よって、土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を利用すれば、他人の土地や家屋の固定資産税評価額を調べることはできますが、「山田さんの土地」や「鈴木さんの家屋」など、名前を名指ししつつ調べることはできません。

また、その市町村内で、固定資産税が課される対象となる土地や家屋を所有する方のみが、土地価格等縦覧帳簿と家屋価格等縦覧帳簿を縦覧することが可能です。

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4. 固定資産税評価額の評価方法

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価です。

そして、土地や家屋の固定資産税は、固定資産税評価額を基に計算され、固定資産税評価額が高ければ税額も高くなります。

よって、土地や家屋の固定資産税評価額は、適正に評価されなければなりませんが、評価方法は以下のとおりです。

4-1. 土地の固定資産税評価額

土地の固定資産税評価額は、標準地の公示地価を指標として、その70%程度と評価されます。

公示地価とは、国土交通省が毎年公示する、全国各地の土地の1平方メートルあたりの正常な価格であり、公示地価が設定される地点を標準地と呼びます。

毎年3月ごろになると新聞やニュースで「今年の公示地価が公示され、全国1位は東京都中央区銀座4丁目2番4の山野楽器銀座本店であり、5,000万円でした」などと報道されますが、あの価格が公示地価です。

公示地価全国1位でお馴染みの山野楽器銀座本店

山野楽器銀座本店が位置する東京都中央区銀座4丁目2番4は「中央5-22」という標準地であり、全国には約2万6,000の標準地が存在します。

そして、土地の固定資産税評価額は、その土地と条件が類似する標準地の公示地価を指標として、その70%程度と評価されます。

たとえば、その土地と条件が類似する標準地の公示地価が10万円であり、その土地が100平方メートルであれば「10万円×100平方メートル×70%=700万円」と計算し、700万円程度が固定資産税評価額になるといった具合です。

なお、土地の固定資産税評価額は、物件によって異なりますが、おおむね売買価格の70%程度になるのが通例です。

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4-2. 新築の家屋の固定資産税評価額

新築の家屋の固定資産税評価額は、新築後間もなく市町村役場の担当者によって実施される、家屋調査と呼ばれる調査によって評価されます。

家屋調査が実施されれば、新築の家屋に担当者が訪れ、使用されている建材や設備、工法などが調査されます。

そして、調査結果に基づいて、家屋に「再建築費評点数」という点数を付けます。

付けられる再建築費評点数は、高額な建材や設備が導入され、複雑な工法が用いられているほど高くなります。

その再建築費評点数を1点あたり1円前後に換算した額などが、新築の家屋の固定資産税評価額です。

たとえば、再建築費評点数が2,000万点であれば、固定資産税評価額は2,000万円程度になるといった具合です。

新築の家屋の固定資産税評価額は、再建築費評点数を円に換算した額

なお、新築の家屋の固定資産税評価額は、正確な根拠はないものの、建築費の60%程度になるといわれます。

たとえば、建築費が2,000万円であれば「2,000万円×60%=1,200万円」と計算し、1,200万円程度が固定資産税評価額になるといった具合です。

ただし、建築費は、販売価格と同じとは限らないため注意してください。

ここでいう建築費とは、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要となる材料費と労務費、建築する業者が得る利益などの合計です。

しかし、新築の家屋には、建築費と、建築に携わっていない販売業者が得る利益の合計が、販売価格に設定されている物件があります。

それに該当する新築の家屋の販売価格は、建築費と乖離しています。

また、新築のマンションには、家屋調査は実施されません。

新築のマンションには家屋調査が実施されず、市町村役場が建築業者から設計図などを取り寄せ、設計図を基に再建築費評点数を付けつつ固定資産税評価額を評価します。

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4-3. 築年数が経過した家屋の固定資産税評価額

築年数が経過した家屋の固定資産税評価額は、新築時に評価された固定資産税評価額に、経年減点補正率と呼ばれる率を掛け算するなどして評価されます。

経年減点補正率とは、総務省の告示「固定資産評価基準」に記されている、築年数が経過した家屋の固定資産税評価額を評価する際に用いる率です。

経年減点補正率は、木造や鉄筋コンクリート造などの構造や、その家屋の1平方メートルあたりの再建築費評点数などによって異なります。

以下は、固定資産評価基準に記されている、木造家屋の経年減点補正率です。

木造家屋の経年減点補正率

築年数が経過した家屋の固定資産税評価額は、経年減点補正率を用いて評価される

上記の表の赤い線で囲まれた箇所にご注目ください。

その箇所には、新築時の再建築費評点数が1平方メートルあたり55,120点未満である、築年数が経過した木造家屋の固定資産税評価額を評価する際に用いる経年減点補正率が記されています。

たとえば、新築時の再建築費評点数が1平方メートルあたり55,120点未満である、築5年の木造家屋の固定資産税評価額を評価する際は、経過年数が5の箇所の経年減点補正率を用います。

その箇所の経年減点補正率は、以下のように0.62です。

経過年数が5の箇所の経年減点補正率

経年減点補正率が0.62であれば、新築時の固定資産税評価額に0.62を掛け算した答えなどが、その木造家屋の現時点の固定資産税評価額となります。

例を挙げると、新築時の固定資産税評価額が1,500万円の築5年の木造家屋であれば以下のように計算し、現時点における固定資産税評価額は930万円程度です。

計算例
1,500万円(新築時の固定資産税評価額)×0.62(経過年数5の経年減点補正率)=930万円(現時点における固定資産税評価額)
正確には、もう少し複雑な方法で固定資産税評価額が評価されます

難解ですが、築年数が経過した家屋の固定資産税評価額は、新築時の固定資産税評価額を基に評価され、築年数が古いほど低くなるとお考えください。

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価です。

時価とは「現時点における価格」であり、築年数が経過すると共に老朽化する家屋の時価は、築年数が古いほど低くなります。

よって、家屋の適正な時価である固定資産税評価額は、築年数が古くなるほど低くなります。

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5. 固定資産税評価額には「評価替え」がある

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価です。

時価とは「その時点における価格」であり、その時点における価格は、景気や物価水準などによって変動します。

よって、家屋や土地の適正な時価である固定資産税評価額は、3年に1度、その時点の景気や物価水準などを考慮しつつ見直されます。

固定資産税評価額が3年に1度見直されることを「評価替え」と呼びます。

評価替えが行われるのは、昭和31年度から起算して3年度を経過したごとの年度であり、最近では令和3年度、令和6年度です。

固定資産税評価額が見直される評価替えが行われる年を、基準年度と呼びます。

そして、基準年度に固定資産税評価額が見直されれば、その翌年度と翌々年度は、原則として基準年度の固定資産税評価額が据え置かれます。

基準年度の翌年度を「第二年度」、第二年度の翌年度を「第三年度」と呼びます。

固定資産税評価額は、3年に1度の評価替えで見直される

つづいて、土地と家屋の固定資産税評価額の評価替えの詳細をご紹介しましょう。

5-1. 土地の固定資産税評価額の評価替え

土地の固定資産税評価額は、周辺の地価などを考慮しつつ評価替えが行われ、地価が上がれば固定資産税評価額は上がり、地価が下がれば固定資産税評価額は下がります。

そして、評価替えで固定資産税評価額が上がれば、土地の固定資産税も上がります。

ただし、土地の固定資産税には、負担調整措置と呼ばれる措置が設けられているため、評価替えにより固定資産税評価額が大きく上がったとしても、税額が急激に高くなることはありません。

固定資産税の負担調整措置とは、土地の所有者の税負担を軽減する措置です。

評価替えにより土地の固定資産税評価額が急激に上昇しても、負担調整措置により固定資産税が急激に高くなることはない

負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパっと解説」で公開するコンテンツにてわかりやすくご紹介中です。

負担調整措置にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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5-2. 家屋の固定資産税評価額の評価替え

家屋の固定資産税評価額は、その時点における景気の動向、物価水準などを考慮しつつ評価替えが行われます。

具体的には、景気が良い状況や物価高であれば、固定資産税評価額は上がります。

一方、景気が悪い状況や物価安であれば、固定資産税評価額は下がります。

ただし、評価替え後の固定資産税評価額が評価替え前より上がる場合は、評価替え前の固定資産税評価額が据え置かれることとなります。

なお、家屋の固定資産税評価額は、評価替えによって上がることがありますが、基本的には築年数が経過すると共に下がります。

築年数が経過すると共に下がる固定資産税評価額の額は、評価替えで上がる額に増さるのが通例です。

従って、既存する家屋の固定資産税評価額は、評価替えにより固定資産税評価額が上がるとしても、実際に固定資産税評価額が上がることはありません。

しかし、ごく稀ですが、評価替えにより上がる固定資産税評価額の額が、築年数が経過することにより下がる固定資産税評価額の額に増さることがあります。

評価替えにより上がる固定資産税評価額の額が、築年数が経過することにより下がる固定資産税評価額の額に増されば、築年数が経過しているにもかかわらず、家屋の固定資産税が下がらないという現象が発生します。

評価替えによって固定資産税評価額が上がることにより、築年数が経過した家屋の固定資産税が下がらないことがある

市町村のホームページで固定資産税に関するよくある質問を見ると、「築年数が経過しているのに固定資産税が下がらないのはなぜですか?」という質問を見かけます。

それは、評価替えが行われつつ固定資産税評価額が上がり、上がった額が、築年数が経過することにより下がった固定資産税評価額の額に増さったことが理由です。

しかし、先述のとおり、評価替えによって固定資産税評価額が上がった場合は、評価替え前の固定資産税評価額が据え置かれることとなるため、固定資産税が上がることはありません。

これにより、築年数が経過しているのに固定資産税が下がらない(かといって上がるわけではない)という現象に至ります。

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6. 課税標準額は、固定資産税評価額ではない

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された土地や家屋の適正な時価であり、固定資産税を計算する際に活用されます。

そして、所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、毎年4月ごろにご自宅に届く固定資産税の課税明細書を見れば把握できます。

課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されている金額が、所有する土地や家屋の固定資産税評価額です。

また、課税明細書には、「課税標準額」もしくは「課税標準」などの名目の金額も記されています。

それらの金額は、固定資産税評価額と同額のことがありますが、固定資産税評価額ではないため注意してください。

課税標準額は固定資産税評価額ではない

この記事の冒頭にて、固定資産税評価額をわかりやすくご説明するために、土地や家屋の固定資産税は、固定資産税評価額を基に以下のように計算するとご紹介しました。

土地の固定資産税の計算式
土地の固定資産税評価額×1.4%(固定資産税の税率)=土地の固定資産税
家屋の固定資産税の計算式
家屋の固定資産税評価額×1.4%(固定資産税の税率)=家屋の固定資産税

しかし、実は土地や家屋の固定資産税評価額は、正確には以下のように計算します。

正確な土地の固定資産税の計算式
課税標準額×1.4%(固定資産税の税率)=土地の固定資産税額
正確な家屋の固定資産税の計算式
課税標準額×1.4%(固定資産税の税率)=家屋の固定資産税額

課税明細書に「課税標準額」や「課税標準」などの名目で記されている金額は、上記の式に含まれる課税標準額です。

ここで気になるのが、課税標準額の意味です。

課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において、税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が異なります。

土地の固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額は、原則として、その土地の固定資産税評価額です。

また、家屋の固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額は、原則として、その家屋の固定資産税評価額となります。

土地の固定資産税の課税標準額とは?
原則として、その土地の固定資産税評価額
家屋の固定資産税の課税標準額とは?
原則として、その家屋の固定資産税評価額

であれば、課税明細書に記されている課税標準額は、固定資産税評価額と考えて差し支えないと考えがちです。

しかし、課税標準額と固定資産税評価額は厳密には異なり、課税標準額と固定資産税評価額は同額の場合と異なる場合があります。

課税標準額が固定資産税評価額と異なる主な状況は、以下のとおりです。

6-1. 住宅用地の特例が適用される場合

住宅が建つ土地には、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」が適用されます。

「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」とは、「住宅用地の特例」などと呼ばれる特例であり、住宅が建つ土地にかかる固定資産税が、更地の固定資産税より減額される特例です。

住宅用地の特例は、一戸建てやマンションなどが建つ土地に適用され、適用されれば、その土地の固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1などになります。

たとえば、その土地の固定資産税評価額が1,000万円であれば「1,000万円÷6=166万円6,000円」と計算し、課税標準額は166万円6,000円になるといった具合です。

住宅用地の特例が適用されれば、課税標準額と固定資産税評価額は異なる

なお、市街化区域に位置する土地や家屋を所有する場合は、固定資産税に加え都市計画税も課されます。

都市計画税が課される場合は、毎年4月ごろにご自宅に届く固定資産税の課税明細書に、都市計画税の課税標準額も記されています。

そして、住宅用地の特例が適用された場合は、土地に課される都市計画税の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1などになります。

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6-2. 負担調整措置が適用される場合

土地にかかる固定資産税には、負担調整措置が設けられ、負担調整措置が適用される場合は、課税標準額と固定資産税評価額が異なります。

負担調整措置とは、土地の所有者の税負担を軽減するための措置であり、負担水準を基に課税標準額が調整される措置です。

負担水準は、以下のように計算します。

負担水準の計算式
その土地の前年度の課税標準額×その土地の今年度の固定資産税評価額×100=負担水準(%)

たとえば、前年度の課税標準額が1,000万円であり、今年度の固定資産税評価額が1,100万円の土地であれば「1,000万円÷1,100万円×100=91%」と計算し、負担水準は91%です。

また、前年度の課税標準額が1,100万円、今年度の固定資産税評価額が1,000万円の土地であれば「1,100万円÷1,000万円×100=110%」と計算し、負担水準は110%となります。

負担水準の計算例
・1,000万円(前年度の課税標準額)÷1,100万円(今年度の固定資産税評価額)×100=91%(負担水準)
・1,100万円(前年度の課税標準額)÷1,000万円(今年度の固定資産税評価額)×100=110%(負担水準)

そして、住宅が建つ土地にかかる、今年度の固定資産税の計算式に含まれる課税標準額は、負担水準に応じて以下のように調整されます。

負担水準 今年度の課税標準額
100%以上 今年度の固定資産税評価額の6分の1など
100%未満 前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額の6分の1の5%など

また、更地にかかる今年度の固定資産税の計算式に含まれる課税標準額は、負担水準に応じて以下のように調整されます。

負担水準 今年度の課税標準額
70%超 今年度の固定資産税評価額の70%
60%以上70%以下 前年度の課税標準額に据え置き
60%未満 前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額の5%

土地にかかる固定資産税には負担調整措置が設けられ、負担調整措置が適用されることにより、課税標準額と固定資産税評価額が異なる状況が発生します。

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7. 固定資産税評価額が高いと感じるときの対処法

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された土地や家屋の適正な時価です。

そして、固定資産税評価額は、土地や家屋の固定資産税を計算する基となり、固定資産税評価額が高ければ税額が高くなり、固定資産税評価額が低ければ税額も低くなります。

よって、固定資産税が高いと感じる場合は、固定資産税評価額が高いということですが、固定資産税評価額が高いと感じる場合は、市町村役場の窓口に問い合わせる、固定資産評価審査委員会に審査を請求するなどすれば、是正される可能性があります。

固定資産税評価額が高いと感じるときの対処法の詳細は、以下のとおりです。

7-1. 市町村役場の資産税課などに問い合わせる

固定資産税評価額が高く、それに伴い固定資産税も高いと感じる場合は、まずは市町村役場の窓口にお問い合わせください。

本来であれば適用される軽減措置が適用されていない、取り壊した家屋に対して課税され続けているなど、担当者の誤りによって固定資産税評価額や固定資産税が高くなっているのかもしれません。

総務省が平成24年に公開した資料「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」によれば、平成21年度から平成23年度において、全国1,544の地方公共団体のうち、97%の団体で課税誤りがあったとのことです。

97%の市町村で固定資産税の課税誤りがある

なお、土地や家屋を所有しつつ固定資産税評価額や固定資産税が高いと感じ、市町村役場の窓口に問い合わせる際は、固定資産税の課税明細書など、税額がわかるものをご用意ください。

そうすれば、話が早く進みます。

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7-2. 固定資産評価審査委員会に審査を申し出る

固定資産税評価額が高いと感じる場合は、固定資産評価審査委員会に審査を申し出れば、固定資産税評価額が是正される可能性があります。

固定資産評価審査委員会とは、地方税に関することを定めた法律「地方税法」の第四百二十三条の規定によって設置された、固定資産税評価額に誤りがないか審査する委員会です。

審査の申し出先は市町村によって異なるものの、主に市町村役場や税事務所であり、正確な申し出先は、固定資産税の課税明細書の1ページ目の裏側に記されている、または市町村役場のホームページで公開されています。

ただし、固定資産評価審査委員会への審査の申し出は、基準年度のみできるなどいくつかの注意点があります。

注意点の詳細は、以下のとおりです。

基準年度に所有する土地や家屋の固定資産税評価額の審査の申し出は、基準年度のみできる
固定資産税には、令和3年度、令和6年度、令和9年度など、3年に1度の基準年度と呼ばれる年度があります。

そして、基準年度の1月1日の時点において所有する土地や家屋の固定資産税評価額の審査の申し出は、基準年度のみ可能です。

ただし、減築をした、宅地から荒れ地になったなど特殊な事情がある状況において固定資産税評価額が下がっていない場合は、基準年度以外でも申し出ることができます。
基準年度以外に新たに固定資産税が課されることとなった土地や家屋の固定資産税評価額の審査への申し出は、基準年度以外でもできる
基準年度以外の年度で新たに固定資産税が課されることとなった土地や家屋の固定資産税評価額の審査の申し出は、基準年度以外でも可能です。
審査を申し出できるのは、固定資産税の課税明細書が届いた日の翌日から3ヶ月以内
固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができるのは、原則として、固定資産税の課税明細書が届いた日の翌日から3ヶ月以内です。

固定資産税の課税明細書が届く時期は、市町村によって異なりますが、4月から6月ごろとなっています。

以上が、固定資産評価審査委員会への審査の申し出に関する注意点です。

固定資産評価審査委員会は、審査の申し出あれば、30日以内に審査し、その決定内容を10日以内に通知します。

決定内容に不服がある場合は、裁判所に取り消しを訴えることが可能です。

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8. 家屋の固定資産税評価額の目安

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価であり、固定資産税を計算する際に活用されます。

土地や家屋の固定資産税は、固定資産税評価額を基に計算され、固定資産税評価額が高ければ税額が高くなり、固定資産税評価額が低ければ税額は低くなります。

そこで気になるのが、固定資産税評価額がいくらになるかという点です。

ここから、新築の一戸建ての家屋、築年数が経過した一戸建ての家屋、新築のマンションの一戸部分、築年数が経過したマンションの一戸部分の固定資産税評価額の目安をご紹介しましょう。

8-1. 新築一戸建て家屋の固定資産税評価額

新築一戸建て家屋の固定資産税評価額の目安は、正確な根拠はないものの建築費の60%程度といわれます。

たとえば、建築費が3,000万円であれば「3,000万円×60%=1,800万円」と計算し、固定資産税評価額は1,800万円程度になるといった具合です。

新築一戸建ての固定資産税評価額の目安

なお、建築費は販売価格と一致するとは限らないため注意してください。

固定資産税における建築費とは「再建築費」と呼ばれる額であり、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要となる建材費、労務費、建築業者が得る利益などの合計を指します。

しかし、多くの新築の家屋の販売価格は、建築費そのものではなく、建築費に「建築に携わっていない販売業者が得る利益」が上乗せされた額です。

また、「建築に携わっていない販売業者が得る利益」は、物件によって異なり、いくらになると断言できません。

よって、新築の家屋の固定資産税評価額は、販売価格から察するのは難しいのが現状です。

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8-2. 築年数が経過した一戸建て家屋の固定資産税評価額

築年数が過した一戸建て家屋の固定資産税評価額は、新築時の固定資産税評価額から、築年数が経過することにより目減りした価値を差し引いた額です。

「築年数が経過することにより目減りした価値」は、築年数が古くなるほど大きくなります。

たとえば、1平方メートルあたりの建築費が10万円程度で新築された、新築時の固定資産税評価額が2,000万円であった築15年の木造家屋であれば、その固定資産税評価額は860万円程度が目安です。

また、1平方メートルあたりの建築費が10万円程度で新築された、新築時の固定資産税評価額が2,000万円であった築20年の木造家屋であれば、その固定資産税評価額は620万円程度が目安となります。

新築時の建築費が1平方メートルあたり10万円程度、新築時の固定資産税評価額が2,000万円であった木造家屋の固定資産税評価額の推移は、以下のとおりです。

木造家屋の固定資産税評価額の推移
築年数 固定資産税評価額
新築時 2,000万円
築5年 1,300万円程度(新築時の約65%)
築10年 1,080万円程度(新築時の約54%)
築15年 860万円程度(新築時の約43%)
築20年 620万円程度(新築時の約31%)
築25年 400万円程度(新築時の約20%)

なお、築年数が経過することにより木造家屋の固定資産税評価額が下がる程度は、新築時の1平方メートルあたりの建築費によって異なるため注意してください。

具体的には、新築時の1平方メートルあたりの建築費が安価な家屋ほど、固定資産税評価額が早く下がります。

反対に、新築時の1平方メートルあたりの建築費が高額な家屋は、固定資産税評価額がゆっくり下がります。

先にご紹介した「木造家屋の固定資産税評価額の推移」は、新築時の建築費が1平方メートルあたり10万円程度であった木造家屋の例であり、それ以外の木造家屋には該当しません。

また、家屋は家屋として機能する限り、築年数が経過しても固定資産税評価額が0円になることはないため留意してください。

新築時の20%程度まで下がるに留まり、それよりは下がりません。

つまり、固定資産税評価額を基に計算される家屋の固定資産税は、その家屋が家屋として機能する限り、0円になることはないというわけです。

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8-3. 新築マンションの一戸部分の固定資産税評価額

新築のマンションを購入すると、一戸部分と「敷地権」と呼ばれる土地の持ち分を取得し、それぞれに固定資産税評価額が設定されます。

そして、新築のマンションの一戸部分の固定資産税評価額は、「そのマンション全体の建築費の60%程度」を、「所有する一戸部分の床面積の広さ」に応じて按分した額です。

マンションの固定資産税評価額は、マンション全体の固定資産税評価額が評価され、その額が各戸の所有者に割り振られます。

割り振られる額は均等ではなく、床面積が広い戸の所有者ほど多くなります。

具体的な新築マンションの一戸部分の固定資産税評価額は、物件によって大きく異なり、いくらになると断言できませんが、販売価格が3,000万円であれば、1,380万円程度と考えることができます。

また、販売価格が5,000万円の新築マンションであれば、一戸部分の固定資産税評価額は2.400万円程度と考えることが可能です。

新築マンションの一戸部分の固定資産税評価額の目安

ちなみに、当サイト「固定資産税をパパっと解説」では、3,000万円、5,000万円、1億円のマンションの固定資産税の目安をご紹介するコンテンツを公開しています。

そのコンテンツでは、先述した「3,000万円の新築マンションの一戸部分の固定資産税評価額は1,380万円程度」「5,000万円の新築マンションの一戸部分の固定資産税評価額は2.400万円程度」の根拠をご紹介中です。

新築のマンションの固定資産税評価額が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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8-4. 築年数が経過したマンションの一戸部分の固定資産税評価額

築年数が経過したマンションの一戸部分の固定資産税評価額は、新築時の固定資産税評価額から、「築年数が経過することにより目減りした価値」を差し引いた額です。

「築年数が経過することにより目減りした価値」は、築年数が経過するほど大きくなります。

ただし、木造より耐久性に優れた鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるマンションは、「築年数が経過することにより目減りした価値」は、ゆっくり大きくなります。

そして、「築年数が経過することにより目減りした価値」がゆっくり大きくなることにより、固定資産税評価額もゆっくりと下がります。

たとえば、新築時の一戸部分の固定資産税評価額が1,500万円のマンションであれば、固定資産税評価額が下がる程度は以下のとおりです。

マンションの固定資産税評価額の推移
築年数 固定資産税評価額
新築時 1,500万円
築10年 957万9,000円程度(新築時の約64%)
築20年 826万3,500円程度(新築時の約55%)
築30年 694万8,000円程度(新築時の約46%)
築40年 563万1,000円程度(新築時の約38%)
築50年 431万5,500円程度(新築時の約29%)
築60年 300万円程度(新築時の約20%)

上記のように鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるマンションの固定資産税評価額は、半世紀以上をかけてゆっくり下がります。

ちなみに、全ての鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションの一戸部分の固定資産税評価額は、築60年で新築時の20%程度まで下がりますが、家屋として機能する限り、それよりは下がりません。

つまり、マンションを所有すると、そのマンションが家屋として機能する限り、永遠に固定資産税がかかるというわけです。

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9. 土地の固定資産税評価額の目安

一戸建てを所有すると、多くの場合は土地も所有することとなり、その土地には固定資産税評価額が設定されます。

更地を所有する場合は、その更地に固定資産税評価額が設定されます。

また、マンションを所有すると、多くの場合は「敷地権」と呼ばれる土地の持ち分を所有し、土地の持ち分に固定資産税評価額が設定されます。

そして、一戸建てが立つ土地や更地、マンションの土地の持ち分の固定資産税は、それぞれの固定資産税評価額を基に計算されます。

よって、一戸建てが立つ土地や更地、マンションの土地の持ち分を所有する方は、それらの固定資産税評価額の目安が気になりますが、以下のとおりです。

9-1. 一戸建てが建つ土地や更地の固定資産税評価額

一戸建てが建つ土地や、更地の固定資産税評価額は、公示地価を指標として、70%程度に設定されます。

公示地価とは、毎年3月ごろに国土交通省が公示する、日本全国各地に点在する約2万6,000の標準地と呼ばれる地点の1平方メートルあたりの正常な価格です。

「正常な価格」という表現が聞き慣れませんが、売買をする状況において、通常成立すると考えられる価格を意味します。

土地の売買価格は、買い主の買い進みや売り主の売り急ぎによって高くなったり安くなったりすることがありますが、正常な価格とは、それらの事情を含まない価格です。

そして、一戸建てが建つ土地や、更地の固定資産税評価額は、その土地と条件が類似する標準地の公示地価を指標として、その70%と設定されます。

たとえば、1日の乗降客が1万人である「駅A」から徒歩15分の場所に位置する、面積が100平方メートルである「土地A」があったとしましょう。

土地Aは、1日の乗降客が同じく1万人である「駅B」から徒歩13分の場所に位置する、公示地価が10万円の標準地と条件が類似しています。

その場合は以下のように計算し、土地Aの固定資産税評価額は700万円程度に設定されます。

土地の固定資産税評価額の例
100平方メートル(土地Aの面積)×10万円(土地Aと条件が類似する標準地の公示地価)×70%(公示地価に対する固定資産税評価額の割合の目安)=700万円(土地Aの固定資産税評価額)

ちなみに、家屋の固定資産税評価額は、築年数が経過することにより下がります。

一方、一戸建てが建つ土地の固定資産税評価額は、その土地に建つ家屋の築年数が経過したとしても下がりません。

土地の固定資産税評価額は、その周辺の地価に応じて変動します。

地価が上がれば固定資産税評価額も上がり、地価が下がれば固定資産税評価額も下がるといった具合です。

更地の固定資産税評価額も同じあり、周辺の地価に応じて変動します。

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9-2. マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、立地条件、敷地面積、戸数によって大きく異なります。

立地条件が良好で敷地面積が広く戸数が少ないほど、土地の持ち分の固定資産税評価額は高くなります。

反対に、立地条件が芳しくなく敷地面積が狭く戸数が多いほど、土地の持ち分の固定資産税評価額は低くなります。

よって、土地の持ち分の固定資産税評価額の目安はありませんが、新築時の販売価格に占める、土地の持ち分の価格の70%程度と考えることが可能です。

たとえば、新築時の販売価格が消費税抜き3,000万円、うち一戸部分の販売価格が2,500万円、土地の持ち分の価格が500万円のマンションがあったとしましょう。

その場合は、500万円の70%である350万円程度が、土地の持ち分の固定資産税評価額になるといった具合です。

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、土地の持ち分の販売価格の70%程度と考えることができる

そもそも土地の固定資産税評価額は、その土地と条件が類似する標準地の公示地価を指標として、70%程度に設定されます。

公示地価とは、国土交通省が毎年公示する、日本全国各地に点在する約2万6,000の標準地の1平方メートルあたりの正常な価格です。

国土交通省は、闇雲に各標準地の公示地価を設定しているわけではなく、その周辺の土地が売買された事例などを参考に設定します。

つまり、公示地価は土地の実勢価格と考えることが可能であり、土地の固定資産税評価額は、公示地価、すなわち実勢価格の70%程度と考えることができるというわけです。

これを理由に、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、土地の持ち分の販売価格の70%程度と考えることができます。

土地の固定資産税評価額は。公示地価の70%程度

なお、正確にはマンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、そのマンションが建つ敷地全体の固定資産税評価額が、各戸の所有者に割り振られた額となるため留意してください。

割り振られる額は一定ではなく、所有する一戸部分の床面積の広さなどに応じて額が決定します。

具体的には、所有する一戸部分の床面積が、他の一戸部分より広ければ、より多くの額が割り振られます。

反対に、所有する一戸部分の床面積が、他の一戸部分より狭ければ、割り振られる額は少なくなります。

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まとめ

固定資産税評価額をわかりやすくご紹介しました。

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、土地や家屋の適正な時価です。

固定資産税評価額は、固定資産税を計算する基となり、都市計画税や不動産取得税、登録免許税、相続税、贈与税などを計算する際も活用されます。

また、所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書を見るなどすれば確認することが可能です。

一方、他人が所有する土地や家屋の固定資産税評価額は、土地価格等縦覧帳簿や家屋価格等縦覧帳簿の縦覧制度を利用することにより調べることができます。

固定資産税評価額の意味をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年11月
記事公開日:2021年5月

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