固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)

固定資産税の負担調整措置とは?

固定資産税の負担調整措置とは、地価が上がるなどして土地の所有者の税負担が急激に増えることを防ぐ措置です。

固定資産税の負担調整措置をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。

目次

1. 負担調整措置とは、土地の所有者の税負担を軽減する措置

それでは、固定資産税の負担調整措置をわかりやすく解説します。

皆さんもご存知のとおり、土地を所有すると毎年固定資産税が課せられます。

固定資産税とは、1月1日の時点で土地や家屋などの不動産、または償却資産を所有する方に課せられる税金であり、その1月1日が属する年の4月ごろから納税することとなります。

土地の固定資産税は、毎年「課税標準額×固定資産税の税率」と計算しつつ税額が決定し、具体的な計算式は以下のとおりです。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

式に含まれる課税標準額とは、何かしらの税金が課せられる状況において、税率を掛け算する基となる額であり、課せられる税金によって意味が異なります。

土地の固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額は、主にその土地の固定資産税評価額です。

その土地の固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するために市町村が評価した、その土地の適正な時価であり、立地条件や周辺の経済状況などを参考に評価されます。

つまり、土地の固定資産税は、厳密には毎年以下の式で計算しつつ税額が決定するというわけです。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

式に含まれる「その土地の固定資産税評価額」ですが、先にご紹介したとおり、立地条件や周辺の経済状況などを参考に評価されますが、3年に1度見直されます。

固定資産税評価額が見直されることを「評価替え」などと呼び、周辺に公共施設が完成するなどすれば、以前より固定資産税評価額が高くなります。

そして、固定資産税評価額が高くなれば、固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額も上がることとなります。

固定資産税評価額が上がることにより課税標準額が上がれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ税額が計算される土地の固定資産税も高くなります。

固定資産税評価額が僅かに上昇し、課税標準額も僅かに上昇するのであれば、さほど固定資産税は高くならず、土地の所有者の負担は軽微です。

しかし、近くに駅ができるなどして固定資産税評価額が大きく上昇し、課税標準額も大きく上昇すれば、土地の固定資産税が急激に高くなります。

土地の固定資産税が急激に高くなれば、土地の所有者の税負担が短期間に重くなることとなり、納税できません。

固定資産税評価額が上がれば課税標準額も上がり、土地の固定資産税は高くなる

そのため、土地の固定資産税には、固定資産税評価額が急激に上昇しても、課税標準額が急激に上昇しなように調整される措置が設けられています。

その措置が、固定資産税の負担調整措置です。

固定資産税の負担調整措置とは、固定資産税評価額が短期間に上昇する状況において、課税標準額が穏やかに上昇するように調整する措置です。

負担調整措置があることにより土地の固定資産税は、固定資産税評価額が急激に上昇する場面であっても、課税標準額は穏やかに上昇するように調整され、固定資産税もなだらかに上昇することとなります。

これにより、土地の所有者の税負担が軽減されます。

固定資産税の負担調整措置とは、地価が上がるなどして土地の所有者の税負担が急激に増えることを防ぐ措置

土地の所有者は負担調整措置があることにより、土地の固定資産税評価額が急激に上昇しても、税負担が軽くなります。

つづいて、どのように負担調整措置により課税標準額が調整されるか、わかりやすく簡単に解説します。

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2. 負担調整措置は、負担水準により課税標準額の調整具合が決まる

固定資産税の負担調整措置とは、地価が上がるなどして土地の所有者の税負担が急激に増えることを防ぐ措置です。

負担調整措置があることにより、固定資産税評価額が急激に上昇する場面であっても、課税標準額は穏やかに上昇するように調整され、土地の所有者の税負担が軽減されます。

ここからは、負担調整措置による課税標準額の調整具合をご紹介しましょう。

固定資産税の負担調整措置は、負担水準により課税標準額の調整具合が決定されます。

また、負担調整措置は、住宅用地と商業地等によって調整具合が異なります。

負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額を、今年度の固定資産税評価額で割り算した数値であり、以下の式で計算します。

負担水準の計算式
その土地の前年度の課税標準額÷その土地の今年度の固定資産税評価額×100=負担水準(%)

計算例を挙げると、その土地の前年度の課税標準額が1,000万円であり、今年度の固定資産税評価額が1,100万円であれば「1,000万円÷1,100万円×100=91」と計算し、負担水準は91%です。

また、その土地の前年度の課税標準額が1,100万円であり、今年度の固定資産税評価額が1,000万円であれば「1,100万円÷1,000万円×100=110」と計算し、負担水準は110%です。

負担水準をわかりやすく図解で解説すると以下のようになります。

固定資産税の負担調整措置は負担水準により課税標準額の調整具合が決まる

住宅用地とは住宅が建つ土地であり、商業地等とは住宅以外の家屋が建つ土地や更地を指します。

固定資産税の負担調整措置による課税標準額の調整具合を、図解でわかりやすく簡単にご説明すると以下のとおりです。

固定資産税の負担調整措置の仕組み

そして、住宅用地に適用される負担調整措置による課税標準額の調整具合は、以下のとおりです。

住宅用地に適用される負担調整措置

負担水準が100%以上の場合
負担水準が100%以上であれば、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額に住宅用地特例率を掛け算した額となります。

住宅用地特例率は、その土地が200平方メートル(約60坪)以内であれば16.6%です。

その土地が200平方メートルを超える場合は、200平方メートルまでの部分と、200平方メートルを超える部分の課税標準額を個別に計算し、それぞれに負担調整措置を適用する必要があり、200平方メートルまでの部分の住宅用地特例率は16.6%、200平方メートルを超える部分は33.3%となります。
負担水準が100%未満の場合
負担水準が100%未満であれば、今年度の課税標準額は、「前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額×住宅用地特例率」の5%です。

ただし、上記の答えが「今年度の固定資産税評価額×住宅用地特例率」を超える場合は、今年度の課税標準額は「今年度の固定資産税評価額×住宅用地特例率」となります。

また、「前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額×住宅用地特例率」の5%が、「今年度の固定資産税評価額×住宅用地特例率」の20%未満の場合は、今年度の課税標準額は、「今年度の課税標準額×住宅用地特例率」の20%です。

商業地等に適用される負担調整措置による課税標準額の調整具合は、以下のようになります。

商業地等に適用される負担調整措置

負担水準が70%超の場合
負担水準が70%を超える場合は、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の70%となります。
負担水準が70%以下60%以上の場合
負担水準が70%以下60%以上であれば、今年度の課税標準額は、前年度の固定資産税評価額と同額です。
負担水準が60%未満の場合
負担水準が60%未満の場合は、今年度の課税標準額は「前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額の5%」となります。

ただし、上記の答えが、今年度の固定資産税評価額の60%を超える場合は、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の60%です。

また、「前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額の5%」の答えが、今年度の固定資産税評価額の20%未満の場合は、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の20%となります。

以上のように固定資産税の負担調整措置は、住宅用地、商業地等、負担水準という3つの要素によって課税標準額の調整具合が異なります。

なお、ご紹介した負担調整措置による課税標準額の調整具合は、令和4年と5年に限り適用される調整措置であり、調整具合は定期的に見直されるため留意してください。

さらに、負担調整措置による課税標準額の調整具合は、市町村によって異なる場合があります。

正確な負担調整措置による課税標準額の調整具合は、その土地が所在する市町村役場のホームページに設置されている検索窓に、「固定資産税 負担調整措置」などと入力しつつ検索することによりご確認いただけます。

加えて、所有する土地の前年度の課税標準額は、前年の春ごろにご自宅のポストに投函された、固定資産税の納税通知書に同封されている課税標準額を見れば確認することが可能です。

所有する土地の今年度の固定資産税評価額は、今年の春ごろにご自宅に届く、もしくは届いた、固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書を見れば確認できます。

課税明細書に、価格、評価額などの名目で記されている額が固定資産税評価額です。

ちなみに、固定資産税をパパッと解説では、固定資産税の負担水準をよりわかりやすく簡単にご紹介するコンテンツを公開しています。

負担水準にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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まとめ - 負担調整措置は、平成9年ごろから実施

固定資産税の負担調整措置をわかりやすく簡単に解説しました。

固定資産税の負担調整措置とは、地価が上がるなどして土地の所有者の税負担が急激に増えることを防ぐ措置です。

土地の固定資産税は負担調整措置が適用されることにより、その土地の固定資産税評価額が急激に上昇する場面であっても、課税標準額が緩やかに上昇するように調整されます。

固定資産税評価額が急激に上昇する状況において、課税標準額が緩やかに上昇すれば、固定資産税も緩やかに上昇することとなり、土地の所有者の税負担が軽減されます。

固定資産税の負担調整措置をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、固定資産税の負担調整措置は、平成9年ごろから実施されています。

この記事の「1. 負担調整措置とは、土地の所有者の税負担を軽減する措置」にてご紹介しましたが、土地の固定資産税評価額は、立地条件や周辺の経済状況などを参考に評価されますが、具体的には、公示地価を指標として評価されます。

公示地価とは、毎年3月ごろに国土交通省が公示する日本全国各地に点在する約2万6千ヵ所の標準地と呼ばれる地点の1平方メートルあたりの正常な価格です。

毎年3月ごろになると新聞やニュースで「今年の日本全国各地の公示地価が発表され、1位は東京銀座の山野楽器銀座本店で1平方メートルあたり5,000万円でした」などと報道されますが、あの価格が公示地価です。

そして、現在の日本全国各地の土地の固定資産税評価額は、最寄りの標準地の公示地価を指標として評価されます。

つまり、現在の日本全国各地の土地の固定資産税評価額は、公示地価という統一された土地の価格を指標として評価されているというわけです。

しかし、平成6年ごろまでは、市町村によって固定資産税評価額の評価基準がまちまちでした。

固定資産税を計算する基となる固定資産税評価額の評価基準が市町村によって異なれば、課税の公平性が保たれません。

よって、平成6年ごろから日本全国各地の土地の固定資産税評価額は、最寄りの標準地の公示地価を指標として評価されることとなりましたが、評価基準が変われば、所有する土地の固定資産税評価額が急激に上昇し、短期間に税負担が重くなる納税者が現れます。

これを防ぐために平成9年ごろから実施されているのが、今回ご紹介した固定資産税の負担調整措置です。

ご紹介した内容が、固定資産税の負担調整措置をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年3月17日
記事公開日:2021年7月

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