マンションの固定資産税が下がらない?その理由とメリットを解説

マンションの固定資産税が下がらないのは、鉄筋コンクリート造であるが故に時価が下がりにくいこと、建築費が高騰していることなどが理由です。
しかし、時価が下がりにくいということは、いつまでも高く売却できる可能性があることの裏返しでもあります。
マンションの固定資産税が下がらない理由と、下がらないことによるメリットを解説しましょう。
目次
- 1. マンションの固定資産税が下がらない三つの理由
- 1-1. マンションは耐久性に優れているため固定資産税が下がらない
- 1-2. マンションの固定資産税は建築費の高騰により下がらない
- 1-3. マンションの固定資産税は三年に一度しか下がらない
- 2. マンションの固定資産税が下がらないメリット
- まとめ - 鉄骨造のマンションの固定資産税は何年で下がる?
1. マンションの固定資産税が下がらない三つの理由
マンションの固定資産税が下がらない理由は、大きく三つです。
一つめの理由は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるため、木造より耐久性に優れ時価が下がりにくいことです。
固定資産税は、対象となる資産の時価を基に税額を計算するという概念があり、時価が高い資産ほど税額が高くなります。
マンションは主に鉄筋コンクリート造であり、木造より耐久性に優れているため時価が下がりにくく、固定資産税も下がりにくくなっています。
マンションの固定資産税が下がらない二つめの理由は、建築費の高騰により建物の固定資産税評価額が下がらなくなっていることです。
マンションを所有すると、「建物」である一戸部分と、「土地」である敷地権を所有し、それぞれに固定資産税が課されます。
マンションの敷地権とは、そのマンションが建つ土地を利用する権利であり、各戸の所有者が少しずつ分け合って所有しています。

そして、建物の固定資産税は、その建物の固定資産税評価額を基に税額を計算します。
建物の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その建物の「適正な時価」です。
建物の固定資産税評価額は、物価水準が安定していれば築年数が経過すると共に徐々に下がりますが、最近は建築費の高騰により下がらなくなっています。
固定資産税評価額が下がらなければ、固定資産税評価額を基に計算する建物の固定資産税評価額も下がりません。
マンションの固定資産税が下がらない三つめの理由は、固定資産税は三年に一度しか税額が変更されないことです。
固定資産税は徐々に下がるといわれますが、実際に下がるのは令和三年度、令和六年度、令和九年度など、三で割り切れる「基準年度」と呼ばれる年のみです。
それ以外の年の固定資産税は、一部例外を除き前の基準年度の税額に据え置かれます。

つづいて、ご紹介したマンションの固定資産税が下がらない三つの理由の詳細をわかりやすく簡単に解説しましょう。
固定資産税の便利な納付方法などもご紹介するため、ぜひお読みください。
1-1. マンションは耐久性に優れているため固定資産税が下がらない
固定資産税は、対象となる資産の時価を基に計算するという概念があり、時価が高い資産ほど税額が高くなります。
多くのマンションは鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であり、木造より耐久性に優れ、長く住むことができます。
木造より耐久性に優れ、長く住むことができるということは、木造より時価が下がりにくいということです。
よって、主に鉄筋コンクリート造であるマンションは、時価を基に計算する建物の固定資産税が木造より下がりにくい、なかなか下がらないという状況が続きます。

ちなみに、木造の固定資産税は、最短15年で新築時の25%程度まで下がります。
一方、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の固定資産税は、最短60年で新築時の25%程度まで下がります。
建物の固定資産税が下がる年数は、その建物の耐久性、および時価の下がりにくさを表します。
固定資産税が対象となる資産の時価を基に税額を計算することの詳細は、「総務省:固定資産税の概要」にて確認することが可能です。
1-2. マンションの固定資産税は建築費の高騰により下がらない
マンションを所有すると、「建物」である一戸部分と「土地」である敷地権を所有し、それぞれに固定資産税が課されます。
そして、マンションの「建物」である一戸部分の固定資産税は、最近は建築費の高騰により下がらない、または下がりにくくなっています。

建物の固定資産税が建築費の高騰により下がらない理由は、建物の固定資産税を計算する仕組みにあります。
建物の固定資産税は、その建物の固定資産税評価額に、固定資産税の税率を掛け算して計算します。
建物の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その建物の「適正な時価」です。
建物の固定資産税を計算する方法をわかりやすく簡単にご紹介すると、以下のようになります。
建物の固定資産税の計算方法(超簡単バージョン)
その建物の固定資産税評価額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=建物の固定資産税
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の建物があったとしましょう。
であれば以下のように計算し、その建物の固定資産税は14万円です。
固定資産税の計算例
1,000万円(その建物の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(主に1.4%)=14万円
一方、固定資産税評価額が1,500万円の建物があったとしましょう。
であれば以下のように計算し、その建物の固定資産税は21万円になります。
固定資産税の計算例
1,500万円(その建物の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(主に1.4%)=21万円
つまり、建物の固定資産税は、固定資産税評価額次第で税額が決まるというわけです。
建物の固定資産税評価額は、その建物の「適正な時価」を表すだけに、築年数が経過すると共に徐々に下がるはずです。
築年数が経過すると共に固定資産税評価額が徐々に下がれば、固定資産税評価額に税率を掛け算して計算する建物の固定資産税も下がります。
ところが、最近は建築費の高騰により建物の固定資産税評価額が下がりにくくなっています。
建物の固定資産税評価額は、以下のように「再建築費」から「築年数が経過することにより目減りした価値」を差し引いた額となります。
建物の固定資産税評価額の計算方法(超簡単バージョン)
再建築費-築年数が経過することにより目減りした価値=建物の固定資産税評価額
式に含まれる「再建築費」とは、その建物と同一の建物を同一の場所に、直近三年以内などに新築する際に必要となる建築費です。
式に含まれる「築年数が経過することにより目減りした価値」は、築年数が経過した建物の固定資産税評価額を計算する際ほど大きくなります。
例を挙げると、築10年の建物の固定資産税評価額を計算する際は再建築費の36%などに、築15年であれば41%などに、築20年であれば45%などになるといった具合です。
したがって、再建築費が同じであれば、固定資産税評価額は徐々に下がり続けます。
固定資産税評価額が徐々に下がり続ければ、固定資産税評価額に税率を掛け算して計算する固定資産税も徐々に下がり続けます。
しかし、最近は建築費の高騰により、「再建築費」が以前より大幅に高くなっています。
高くなる程度は、「築年数が経過することにより目減りした価値」が大きくなる程度を上回ります。
これにより、最近は建物の固定資産税評価額が下がらず、固定資産税評価額に税率を掛け算して計算する建物の固定資産税も下がらないという状況が続いています。

ちなみに、「地方税お支払サイト」を利用すれば、一定の手数料がかかるもののクレジットカードやPayで固定資産税を納付することが可能です。
クレジットカードで固定資産税を納付すれば、カード会社によっては任意の回数で固定資産税を支払うことができます。
また、Payで固定資産税を納付すれば、Payによってはポイントが貯まるなどしてお得です。
マンションの固定資産税が下がらない、いつまでも高いと感じる場合は、クレジットカードやPayを利用しつつ納税し、建築費の高騰が収まるのを待つのも手です。
1-3. マンションの固定資産税は三年に一度しか下がらない
固定資産税は毎年徐々に下がるという印象がありますが、実は三年に一度の基準年度と呼ばれる年のみに税額が変更されます。
基準年度とは、令和三年度や令和六年度、令和九年度、令和十二年度など、昭和三十三年から起算して三年度毎の年です。
基準年度の翌年を第二年度、第二年度の翌年を第三年度と呼び、第二年度と第三年度の固定資産税は、一部例外を除き前の基準年度の税額に据え置かれます。
これを理由に、マンションの固定資産税はいつまでも下がらないと感じがちです。

固定資産税は、対象となる資産の時価を基に税額を計算し、時価が高い資産ほど税額が高くなります。
時価とは、その時点における価格です。
であれば、築年数が経過すると共に徐々に時価が下がるマンションは、毎年税額が見直されるべきですが、基準年度以外は見直されません。
見直されない理由は、毎年見直しては課税コストが大きくなるためとのことです。
なお、令和8年3月31日までに一定の条件を満たすバリアフリーリフォームや省エネリフォームなどを実施すれば、極わずかですがマンションの固定資産税が減額されます。
詳細は、市町村役場のホームページ、または「一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会 リフォーム減税制度」などにて確認することが可能です。
2. マンションの固定資産税が下がらないメリット
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるマンションは、時価が下がりにくく固定資産税も下がりにくいという特徴があります。
固定資産税が下がりにくいのはデメリットですが、実はメリットも隠れています。
それは、マンションは鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるが故に木造より耐久性に優れ、築年数が経過しても高く売却できる可能性があるという点です。
たとえば、築30年の戸建ての木造を売却する際は、建物部分の売却額はほぼ0円であり、実質土地のみを売却することとなります。
一方、築30年のマンションは建物部分にも値が付き、築30年の木造より高く売却できる可能性があります。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるマンションは固定資産税が下がりにくいというデメリットがあるものの、それは売却時に相殺されます。

また、マンションを売却をする予定がない方にもメリットがあります。
それは、マンションは鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造だけに耐久性に優れ、木造より長く住むことができるという点です。
木造は築30年ともなると建て替えを検討しなければなりませんが、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造はメンテナンスを怠らなければ築50年を超えても住むことができます。
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるマンションは固定資産税が下がらない、下がりにくいというデメリットがありますが、それを補うメリットがあるのです。
まとめ - 鉄骨造のマンションの固定資産税は何年で下がる?
マンションの固定資産税が下がらない理由を解説しました。
マンションの固定資産税が下がらない理由は大きく三つであり、まとめると以下のとおりです。
マンションの固定資産税が下がらない三つの理由
- 耐久性に優れ時価が下がりにくいため
- 固定資産税は、対象となる資産の時価を基に税額を計算し、時価が高い資産ほど税額が高くなります。
主に鉄筋コンクリート造であるマンションは木造より耐久性に優れ、時価が下がりにくく、固定資産税も下がりにくくなっています。 - 建築費が高騰しているため
- 固定資産税は、対象となる資産の時価を基に税額を計算しますが、その時価を「固定資産税評価額」と呼びます。
建物の固定資産税評価額は「再建築費」から「築年数が経過することにより目減りした価値」を差し引きつつ計算しますが、最近は建築費の高騰により再建築費が以前より大幅に高くなっています。
よって、最近はマンションの建物である「一戸部分」の固定資産税評価額が下がらないという状況が続き、それに伴い建物の固定資産税も下がらないという状況が続いています。 - 固定資産税は三年に一度しか税額が変更されない
- 固定資産税額が変更されるのは、令和六年度、令和九年度、令和十二年度など、三年に一度の基準年度と呼ばれる年のみです。
基準年度以外の固定資産税は、一部例外を除き前の基準年度の税額に据え置かれます。
これを理由に、マンションの固定資産税は基準年度以外は下がらず、いつまでも税額が下がらないと感じます。
マンションを所有しつつ固定資産税が下がらないと戸惑う方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、この記事の本文中で鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造であるマンションの固定資産税は最短60年で新築時の25%程度まで下がるとご紹介しましたが、鉄骨造のマンションの固定資産税が何年で下がるかご紹介していませんでした。
あらためて、鉄骨造であるマンションの固定資産税が何年で下がるかご紹介しましょう。
鉄骨造であるマンションの固定資産税は、骨格材の肉厚によって税額が下がる年数が異なります。
肉厚が4mm超であれば最短40年、3mm超4mm以下であれば最短30年、3mm以下であれば最短20年で新築時の25%程度まで固定資産税が下がります。
軽量鉄骨造の多くは骨格材の肉厚が3mm以下とのことですから、軽量鉄骨のマンションを所有する方は、最短20年で固定資産税が下がるとお考えになれば良いでしょう。
鉄骨造のマンションの固定資産税は何年で下がる?
骨格材の肉厚 | 固定資産税が下がる年数 |
---|---|
4mm超 | 最短40年 |
3mm超4mm以下 | 最短30年 |
3mm以下 | 最短20年 |
ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年1月
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