固定資産税と都市計画税の課税標準額の違い

固定資産税と都市計画税の課税標準額の違い

固定資産税と都市計画税の課税標準額は、どちらも家屋、または土地の固定資産税評価額であり、違いはありません。

しかし、固定資産税の課税明細書を見ると、課税標準額が違うことがあります。

固定資産税と都市計画税の課税標準額が違う理由をパパっと簡単に解説しましょう。

目次

1. 固定資産税と都市計画税の課税標準額の違いは、特例によるもの

固定資産税と都市計画税の課税標準額は、どちらも家屋、または土地の固定資産税評価額であり、違いはありません。

家屋や土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その家屋や土地の「適正な時価」であり、固定資産税の課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。

固定資産税と都市計画税の計算方法は、以下のとおりです。

家屋や土地の固定資産税の計算方法
課税標準額(対象となる家屋、または土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

家屋や土地の都市計画税の計算方法
課税標準額(対象となる家屋、または土地の固定資産税評価額)×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=都市計画税

しかし、課税明細書を見ると、多くの場合は「戸建てが建つ土地」や「マンションの土地の持ち分」にかかる固定資産税と都市計画税の課税標準額が違います。

その違いは、適用される特例による違いです。

固定資産税や都市計画税において、戸建て、マンションを問わず、住宅が建つ土地を「住宅用地」と呼びます。

そして、住宅用地には、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」という固定資産税の特例が適用されます。

また、住宅用地には、「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」という都市計画税の特例も適用されます。

住宅が建つ土地には、固定資産税と都市計画税の特例が適用されることにより、課税標準額に違いが生じる

「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」が適用されれば、住宅用地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1などに減額されます。

また、「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」が適用されれば、住宅用地の都市計画税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1などに減額されます。

特例適用時の住宅用地の固定資産税と都市計画税の計算方法をご紹介すると、以下のとおりです。

特例適用時の住宅用地の固定資産税の計算方法
課税標準額(対象となる土地の固定資産税評価額の6分の1など)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

特例適用時の住宅用地の都市計画税の計算方法
課税標準額(対象となる土地の固定資産税評価額の3分の1など)×都市計画税の税率(最高で0.3%)=都市計画税

たとえば、戸建てが建つ土地、もしくはマンションの土地の持ち分を所有し、その固定資産税評価額が1,000万円であるとしましょう。

それらの住宅用地に固定資産税と都市計画税の特例が適用されたとします。

であれば、以下のように計算し、固定資産税の課税標準額は166万6,600円などに、都市計画税の課税標準額は333万3,300円などになり、課税標準額に違いが生じます。

特例適用時の固定資産税の課税標準額の計算例
1,000万円(対象となる土地の固定資産税評価額)÷6(特例の適用による減額)=166万6,600円

特例適用時の都市計画税の課税標準額の計算例
1,000万円(対象となる土地の固定資産税評価額)÷3(特例の適用による減額)=333万3,300円

このように固定資産税と都市計画税の課税標準額は、どちらも固定資産税評価額であるものの、特例が適用されることにより額が違うという状況が発生します。

つづいて、戸建てが建つ土地、マンションの土地の持ち分、更地にかかる固定資産税と都市計画税の課税標準額の留意点をご紹介しましょう。

これまでにご説明した内容が「しっくり来ない」「よくわからない」という方がいらっしゃいましたら、ぜひお読みください。

▲ 目次に戻る

1-1. 戸建てが建つ200㎡超の土地は、課税標準額の違いが大きい

戸建てが建つ土地は、200㎡(約60坪)を超えると、固定資産税と都市計画税の課税標準額の計算方法が複雑になり、違いが大きくなることがあります。

固定資産税において、住宅が建つ土地を住宅用地と呼び、住宅用地には「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」と「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」が適用されます。

適用されれば、その課税標準額は固定資産税評価額の6分1や3分の1などに減額されますが、実は200㎡超の住宅用地は、減額される額の計算方法が複雑になります。

住宅用地は、正確には「その土地に建つ住宅一戸あたりにつき200㎡までの部分」が小規模住宅用地に、「200㎡を超えるその土地に建つ住宅の床面積の10倍までの部分」が一般住宅用地に区分けされます。

そのイメージを図解でご紹介すると、以下のとおりです。

固定資産税において、住宅が建つ土地を住宅用地と呼び、住宅用地は小規模住宅用地と一般住宅用地に区分けされる

そして、住宅用地に「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」が適用されれば、小規模住宅用地の固定資産税を計算する際の課税標準額は固定資産税評価額の6分の1に、一般住宅用地の課税標準額は3分の1に減額されます。

特例適用時の住宅用地の固定資産税の課税標準額

部分 課税標準額
小規模住宅用地(その土地に建つ住宅一戸あたりに付き200㎡までの部分) 固定資産税評価額の6分の1
一般住宅用地(200㎡を超える、その土地に建つ住宅の床面積の10倍までの部分) 固定資産税評価額の3分の1

また、住宅用地に「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」が適用されれば、小規模住宅用地の都市計画税を計算する際の課税標準額は固定資産税評価額の3分の1に、一般住宅用地の課税標準額は3分の2に減額されます。

特例適用時の住宅用地の都市計画税の課税標準額

部分 課税標準額
小規模住宅用地(その土地に建つ住宅一戸あたりに付き200㎡までの部分) 固定資産税評価額の3分の1
一般住宅用地(200㎡を超える、その土地に建つ住宅の床面積の10倍までの部分) 固定資産税評価額の3分の2

たとえば、床面積が100㎡の戸建てが建つ、固定資産税評価額が2,000万円、敷地面積が350㎡(約106坪)の住宅用地を所有するとしましょう。

であれば、200㎡までの部分が小規模住宅用地に、200㎡を超える全ての部分が一般住宅用地に区分けされ、以下のように計算して固定資産税の課税標準額は357万1,400円に、都市計画税の課税標準額は714万2,800円になります。

1㎡あたりの固定資産税評価額の計算例
1,500万円(住宅用地全体の固定資産税評価額)÷350㎡(敷地面積)=4万2,857円

固定資産税の課税標準額の計算例
4万2,857円×200㎡÷6=142万8,566円(小規模住宅用地の課税標準額)
4万2,857円×150㎡÷3=214万2,850円(一般住宅用地の課税標準額)
142万8,566円(小規模住宅用地の課税標準額)+214万2,850円(一般住宅用地の課税標準額)=357万1,400円

都市計画税の課税標準額の計算例
4万2,857円×200㎡÷3=285万7,133円(小規模住宅用地の課税標準額)
4万2,857円×150㎡÷3×2=428万5,700円(一般住宅用地の課税標準額)
285万7,133円(小規模住宅用地の課税標準額)+428万5,700円(一般住宅用地の課税標準額)=714万2,800円

このように、戸建てが建つ200㎡を超える土地の固定資産税と都市計画税の課税標準額は計算方法が複雑になり、課税標準額の違いが大きくなることがあるため留意してください。

▲ 目次に戻る

1-2. マンションの土地の固定資産税評価額は、どこに書いてある?

マンションを所有する方は、一部例外を除き家屋である一戸部分と、土地の持ち分である敷地権を所有し、それぞれに固定資産税や都市計画税が課されます。

マンションの敷地権とは、そのマンションが建つ土地を利用する権利であり、各戸の所有者が少しずつ分け合って所有しています。

家屋である一戸部分の課税標準額は、固定資産税も都市計画税も一戸部分の固定資産税評価額であり、違いはありません。

一方、土地の持ち分である敷地権の課税標準額は、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」と「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」が適用されることにより、固定資産税と都市計画税に違いが生じます。

それらの特例が適用されれば、土地の持ち分の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、以下のように固定資産税評価額の6分の1や3分の1となります。

特例適用後の土地の持ち分の課税標準額

税金の種類 課税標準額
固定資産税 土地の持ち分の固定資産税評価額の6分の1
都市計画税 土地の持ち分の固定資産税評価額の3分の1

マンションが建つ土地は、大抵はその全ての部分が小規模住宅用地

さて、ここで気になるのが、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、どこを見ればわかるかという点です。

固定資産税の課税明細書を見ても、一部の市町村を除き、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は記されていません。

固定資産税の課税明細書には、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は記されていない

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、「マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額」と「敷地権の割合」を用いて計算することが可能です。

マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書の土地の欄に価格や評価額などの名目で記されています。

億単位の額が記されていれば、それがマンションが建つ土地全体の固定資産税評価額です。

敷地権の割合とは、所有する敷地権の比率であり、登記事項証明書などに記されてます。

登記事項証明書とは、登記簿に記されている内容を写した書面であり、法務局などで発行を請求することが可能です。

また、市町村によっては、固定資産税の課税明細書に敷地権の割合が記されていることもあります。

「901234567分の6789101」などと複雑な分数が記されていれば、それが敷地権の割合です。

マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額に占める敷地権の割合が、土地の持ち分の固定資産税評価額です。

たとえば、マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額が1億5,000万円、敷地権の割合が「901234567分の6789101(0.75%)」であれば以下のように計算し、土地の持ち分の固定資産税評価額は112万5,000円となります。

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額の計算例
1億5,000万円(マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額)×0.75%(敷地権の割合)=112万5,000円

ちなみに、「総務省:固定資産税」と「総務省:都市計画税」では、固定資産税や都市計画税のあらましをご確認いただけます。

▲ 目次に戻る

1-3. 更地の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、違いがない

住宅が建つ土地には「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」と「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」が適用され、固定資産税と都市計画税の課税標準額に違いが生じます。

では、住宅が建てられていない更地はどうでしょう。

住宅が建てられていない更地には、それらの特例は適用されず、固定資産税と都市計画税の課税標準額は同じです。

ただし、更地の固定資産税と都市計画税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の70%などになるため留意してください。

たとえば、固定資産税評価額が1,500万円の更地を所有するのであれば、その70%である1,050万円が課税標準額になるといった具合です。

更地の固定資産税と都市計画税の課税標準額には違いがないが、どちらも固定資産税評価額の70%などになる

更地の課税標準額が固定資産税評価額の70%などになるのは、負担調整措置が適用されることが理由です。

負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減する措置であり、全ての土地に申告不要で適用されます。

更地に負担調整措置が適用されれば、固定資産税や都市計画税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の70%が上限となります。

負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく簡単に解説中です。

負担調整措置にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)

▲ 目次に戻る

2. そもそも課税標準額とは?

ここからは、そもそも課税標準額とはなにを指すのか、わかりやすく簡単に解説しましょう。

課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。

課税標準額とは、税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともある

たとえば、不動産に関する税金に不動産取得税や固定資産税、都市計画税があります。

それらの税金を計算する際の課税標準額は、対象となる家屋や土地の固定資産税評価額(市町村によって評価された、その家屋や土地の「適正な時価」)です。

ただし、適用される特例や軽減措置があれば、固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準額となります。

固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準額となれば課税標準額が減り、課税標準額に税率を掛け算して計算する税額が安くなります。

また、不動産を登記する際は登録免許税が課されますが、その税額も課税標準額に税率を掛け算して計算します。

不動産の登記に課される登録免許税の課税標準額も、対象となる家屋や土地の固定資産税評価額です。

ただし、固定資産税評価額の算定が済んでいない家屋や土地を登記する際の課税標準額は、登記官が認定した額が課税標準額となります。

固定資産税の計算方法
課税標準額(対象となる家屋、または土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

都市計画税の計算方法
課税標準額(対象となる家屋、または土地の固定資産税評価額)×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=都市計画税

不動産取得税の計算方法
課税標準額(対象となる家屋、または土地の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(原則として4%)=不動産取得税

不動産登記に関する登録免許税の計算方法
課税標準額(対象となる家屋、または土地の固定資産税評価額、もしくは登記官が認定した額)×登録免許税の税率(登記内容によって異なるものの最高で2%)=登録免許税

同様に、消費税や住民税なども課税標準額に税率を掛け算して計算します。

消費税を計算する際の課税標準額は、「商品を購入するためや、サービスを受けるために支払った対価」です。

住民税を計算する際の課税標準額は、所得金額から所得控除や医療費控除、社会保険料控除などの控除額を差し引いた額となります。

消費税の計算方法
課税標準額(商品を購入するためや、サービスを受けるために支払った対価)×消費税の税率=消費税

住民税の計算方法(簡略版)
課税標準額(所得金額から所得控除や医療費控除、社会保険料控除などを差し引いた額)×住民税の税率=住民税

このように課税標準額は、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。

なお、全ての税金が課税標準額に税率を掛け算して計算するわけではないため留意してください。

例を挙げると、所得税は所得金額(収入金額)に、相続税は課税価格(相続した資産の時価の合計額)に税率を掛け算して税額を計算します。

▲ 目次に戻る

まとめ

固定資産税と都市計画税の課税標準額の違いを解説しました。

固定資産税と都市計画税の課税標準額は、どちらも対象となる家屋や土地の固定資産税評価額であり、違いはありません。

ただし、住宅が建つ土地には特例が適用されることにより、課税標準額に違いが生じます。

具体的には、住宅が建つ土地には「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」が適用され、固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1や3分の1などになります。

また、住宅が建つ土地には「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例」が適用され、都市計画税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1や3分の2などになります。

これにより、住宅が建つ土地の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、額が違うという状況が発生します。

固定資産税と都市計画税の課税標準額の違いをお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2025年2月

▲ 目次に戻る

こちらの記事もオススメです