固定本則課税標準額とは?

固定本則課税標準額とは?図解・イラスト付きでスッキリ解決

固定本則課税標準額とは、土地の固定資産税を計算する要素の一つであり、面積が200㎡(約60坪)以下の住宅が建つ土地であれば、固定資産税評価額の6分の1です。

固定資産税の課税明細書に記されている固定本則課税標準額や固定課税標準額、都計本則課税標準額、都計課税標準額をわかりやすく解説しましょう。

目次

1. 固定本則課税標準額とは、負担調整措置適用前の課税標準額

東京23区などの固定資産税の課税明細書を見ると、固定本則課税標準額や固定課税標準額という名目の額が記されています。

固定本則課税標準額とは、土地の固定課税標準額を算出する要素の一つであり、負担調整措置という措置を適用する前の課税標準額です。

難解ですが、順を追って固定本則課税標準額を解説しましょう。

まずは、土地の固定資産税の計算式をご紹介します。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

式には「課税標準額」という言葉が含まれますが、この課税標準額が課税明細書に記されている「固定課税標準額」です。

固定課税標準額は複数の要素を用いて算出し、その要素の一つが固定本則課税標準額となります。

固定本則課税標準額とは、固定課税標準額を計算する際に用いる額であり、負担調整措置の適用前の課税標準額

固定本則課税標準額は、住宅が建つ土地の固定課税標準額を算出する場合と、更地の固定課税標準額を算出する場合によって異なります。

住宅が建つ土地の固定課税標準額を算出する場合の固定本則課税標準額は、面積が200㎡(約60坪)以下であれば、その土地の固定資産税評価額の6分の1です。

更地の固定課税標準額を算出する場合の固定本則課税標準額は、面積を問わず、その土地の固定資産税評価額となります。

土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その土地の「適正な時価」であり、市場価格より低くなるのが通例です。

所有する土地の固定資産税評価額は、東京23区などであれば、固定資産税の課税明細書に「価格」という名目で記されています。

住宅が建つ土地の固定本則課税標準額は、面積が200㎡以下であれば、固定資産税評価額の6分の1になる

固定課税標準額は、以下のように固定本則課税標準額を計算しつつ算出します。

固定課税標準額の算出手順

  1. その土地の固定本則課税標準額を計算する
  2. その土地の負担水準を計算する
  3. 負担調整措置を適用させ、固定課税標準額を算出する

つづいて、上記の固定課税標準額の算出手順の詳細をわかりやすく簡単に解説します。

算出手順の詳細を知れば、固定本則課税標準額を理解できると共に、固定本則課税標準額と固定課税標準額の違いも理解できます。

ぜひお読みください。

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1-1. その土地の固定本則課税標準額を計算する

まずは、その土地の固定本則課税標準額を計算します。

固定本則課税標準額は、その土地の固定資産税評価額ですが、適用される特例などがあれば、その分を差し引いた額となります。

具体的には、住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」という特例が適用され、面積が200㎡(約60坪)以下であれば、固定本則課税標準額は固定資産税評価額の6分の1となります。

たとえば、固定資産税評価額が4,500万円であれば以下のように計算し、固定本則課税標準額は750万円です。

住宅が建つ200㎡以下の土地の固定本則課税標準額の計算例
4,500万円(その土地の固定資産税評価額)÷6=750万円

一方、更地は一部例外除き、適用される特例はありません。

したがって、更地の固定本則課税標準額は、面積を問わずその土地の固定資産税評価額となります。

固定本則課税標準額のポイント

  • 固定本則課税標準額はその土地の固定資産税評価額だが、適用される特例などがあれば、固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となる
  • 住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」が適用され、面積が200㎡(約60坪)以下であれば、固定資産税評価額の6分の1が固定本則課税標準額となる
  • 更地は、一部例外を除き適用される特例がないため、固定資産税評価額が固定本則課税標準額となる

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1-2. その土地の負担水準を計算する

固定本則課税標準額が計算できれば、その土地の負担水準を計算します。

負担水準とは、「負担調整措置」という措置を適用するための割合であり、パーセントで表します。

負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減するための措置を指し、地価が急激に上昇しても固定資産税はゆっくりと上昇するように調整する措置です。

固定資産税は、対象となる資産の時価を基に税額を計算し、時価が高い資産ほど税額が高くなります。

土地の時価とは地価であり、地価が急激に上昇すれば固定資産税も急激に高くなります。

それでは、土地所有者の税負担が重くなり納税できません。

よって、全ての土地には、申告不要で負担調整措置が適用されます。

適用されれば、地価が急激に上昇しても、固定資産税はゆっくりと高くなるように調整されます。

負担調整措置が適用されない状況と、される状況のイメージを図解でご紹介すると以下のとおりです。

土地の固定資産税は、負担調整措置により急激に高くなることがないように調整される

負担調整措置は、その土地の負担水準を基に適用され、負担水準は以下のように計算します。

負担水準の計算方法
前年度の固定課税標準額÷固定本則課税標準額×100=負担水準(%)

たとえば、所有する土地の前年度の固定課税標準額が675万円、固定本則課税標準額が750万円であったとしましょう。

であれば、以下のように計算して負担水準は90%です。

負担水準の計算例
675万円(前年度の固定課税標準額)÷750万円(固定本則課税標準額)×100=90%(負担水準)

なお、「前年度の固定課税標準額」は、東京23区などであれば、固定資産税の課税明細書に「固定前年度課標等」という名目で記されています。

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1-3. 負担調整措置を適用させ、固定課税標準額を算出する

負担水準の計算が完了すれば、その水準に応じた負担調整措置を適用させ、固定課税標準額を算出します。

負担調整措置の適用具合、および固定課税標準額の算出方法は、住宅が建つ土地と更地によって異なります。

住宅が建つ土地の負担調整措置の適用具合、および固定課税標準額の算出方法は、以下のとおりです。

住宅が建つ土地の負担調整措置の適用具合、および固定課税標準額の算出方法

負担水準 固定課税標準額
100%以上 固定本則課税標準額が固定課税標準額になる
100%未満 「前年度の固定課税標準額+固定本則課税標準額の5%」が固定課税標準額になる
注意1 負担水準が100%未満の状況において、「前年度の固定課税標準額+固定本則課税標準額の5%」の答えが固定本則課税標準額を超える場合は、固定本則課税標準額が固定課税標準額となる
注意2 負担水準が100%未満の状況において、「前年度の固定課税標準額+固定本則課税標準額の5%」の答えが固定本則課税標準額の20%を下回る場合は、固定本則課税標準額の20%が固定課税標準額となる

たとえば、前年度の固定課税標準額が675万円、固定本則課税標準額が750万円、負担水準が90%であれば以下のように計算し、固定課税標準額は712万5,000円です。

住宅が建つ土地の固定課税標準額の算出例
675万円(前年度の固定課税標準額)+37万5,000円(固定本則課税標準額の5%)=712万5,000円

固定課税標準額が712万5,000円であれば以下のように計算し、その住宅が建つ土地の固定資産税は9万9,750円となります。

住宅が建つ土地の固定資産税の計算例
課税標準額(固定課税標準額である712万5,000円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=9万9,750円

一方、更地の負担調整措置の適用具合、および固定課税標準額の算出方法は、以下のとおりです。

更地の負担調整措置の適用具合、および固定課税標準額の算出方法

負担水準 固定課税標準額
70%超 固定本則課税標準額の70%が固定課税標準額になる
70%以下60%以上 前年度の固定課税標準額が固定課税標準額になる
60%未満 「前年度の固定課税標準額+その土地の固定資産税評価額の5%」が固定課税標準額になる
注意1 負担水準が60%未満の状況において、「前年度の固定課税標準額+その土地の固定資産税評価額の5%」の答えが固定資産税評価額の60%を上回る場合は、その土地の固定資産税評価額の60%が固定課税標準額となる
注意2 負担水準が60%未満の状況において、「前年度の固定課税標準額+その土地の固定資産税評価額の5%」の答えが固定資産税評価額の20%を下回る場合は、その土地の固定資産税評価額の20%が固定課税標準額となる

たとえば、固定本則課税標準額が4,500万円、負担水準が80%であれば以下のように計算し、固定課税標準額は3,150万円です。

更地の固定課税標準額の算出例
4,500万円(固定本則課税標準額)×70%=3,150万円

固定課税標準額が3,150万円であれば以下のように計算し、その更地の固定資産税は44万1,000円です。

更地の固定資産税の計算例
課税標準額(固定課税標準額である3,150万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=44万1,000円

このように土地の固定資産税は、固定本則課税標準額、および負担水準に応じた負担調整措置を適用させつつ算出した、固定課税標準額に税率を掛け算して計算します。

以上で固定課税標準額の算出方法の解説の完了です。

固定本則課税標準額とは、土地の固定資産税を計算する基となる課税標準額(すなわち固定課税標準額)を算出する要素の一つです。

固定本則課税標準額と固定課税標準額の違いは、固定本則課税標準額は固定課税標準額を算出する要素の一つであり、その土地の固定資産税評価額ですが、適用される特例などがあれば、その分を差し引いた額となります。

一方、固定課税標準額は、負担調整措置適用後の最終的な課税標準額であり、固定資産税の税率を掛け算する基となる額です。

ちなみに、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、負担調整措置をわかりやすく解説する記事を公開しています。

負担調整措置にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)

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2. 固定本則課税標準額の都市計画税版「都計本則課税標準額」もある

東京23区などの固定資産税の課税明細書を見ると、固定本則課税標準額と共に「都計本則課税標準額」や「都計課税標準額」という名目の額も記されています。

都計本則課税標準額とは、土地の都計課税標準額を算出する要素の一つであり、固定本則課税標準額と同じく負担調整措置を適用する前の課税標準額です。

さて、固定本則課税標準額と同じく難解ですが、都計本則課税標準額を簡単に解説しましょう。

まずは、都市計画税について知ってください。

都市計画税とは、東京23区内など、主に市街化区域に位置する土地や建物の所有者に課される税金です。

市街化区域とは、既に市街地である区域、もしくは、今後10年以内に市街化が計られる区域を指します。

都市計画税は単体で課されることはなく、課される場合は、固定資産税と併せて課されます。

つまり、主に市街化区域に位置する土地や建物の所有者には、固定資産税と都市計画税の両方が課されるというわけです。

市街化区域に位置する土地や建物の所有者には、固定資産税と都市計画税の両方が課される

つぎに、土地の都市計画税を計算する方法を知ってください。

土地の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=都市計画税

式に含まれる「課税標準額」が、課税明細書に記されている「都計課税標準額」です。

都計課税標準額は複数の要素を用いて算出し、その要素の一つが都計本則課税標準額です。

都計本則課税標準額とは、都計課税標準額を算出する要素の一つであり、負担調整措置の適用前の課税標準額

都計本則課税標準額は、住宅が建つ土地の都計課税標準額を算出する場合と、更地の都計課税標準額を算出する場合によって異なります。

住宅が建つ土地の都計課税標準額を算出する場合の都計本則課税標準額は、面積が200㎡(約60坪)以下であれば、その土地の固定資産税評価額の3分の1です。

更地の都計課税標準額を算出する場合の都計本則課税標準額は、面積を問わず、その土地の固定資産税評価額となります。

都計課税標準額の算出方法は、固定本則課税標準額の算出方法と同様であり、手順は以下のとおりです。

都計課税標準額を算出する手順

  1. その土地の都計本則課税標準額を計算する
  2. その土地の負担水準を計算する
  3. 負担調整措置を適用させ、都計課税標準額を算出する

手順1の都計本則課税標準額は、先述のとおり、住宅が建つ200㎡以下の土地であれば、その土地の固定資産税評価額の3分の1となります。

更地であれば、その土地の固定資産税評価額が都計本則課税標準額です。

手順2の負担水準の計算方法は、この記事の「1-2.その土地の負担水準を計算する」でご紹介した固定課税標準額の負担水準の計算方法と同じです。

手順3の負担調整措置の適用方法、および都計課税標準額の算出方法は、この記事の「1-3.負担調整措置を適用させ、固定課税標準額を算出する」でご紹介した固定課税標準額の算出方法と同じとなります。

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まとめ - 課税明細書に記されている小規模地積と固定小規模課標とは?

東京23区などの固定資産税の課税明細書に記されている、固定本則課税標準額を解説しました。

土地の固定資産税は、課税標準額に税率を掛け算して計算します。

東京23区などでは、課税標準額は課税明細書に「固定課税標準額」という名目で記されています。

その固定課税標準額を算出する要素の一つが、固定本則課税標準額であり、負担調整措置適用前の課税標準額となります。

固定本則課税標準額は、住宅が建つ土地と更地によって異なり、以下の額です。

固定本則課税標準額はいくら?

土地の種類 固定本則課税標準額
住宅が建つ土地(200㎡以下) その土地の固定資産税評価額の6分の1
更地 その土地の固定資産税評価額

固定本則課税標準額をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、東京23区の固定資産税の課税明細書には、「小規模地積」とういう名目の面積や、「固定小規模課標」という名目の額が記されています。

小規模地積とは、住宅が建つ土地に占める「小規模住宅用地」という部分の面積を指し、住宅が建つ土地の200㎡までの部分の面積を指します。

たとえば、敷地面積が200㎡を超える住宅が建つ土地を所有するのであれば、200㎡までの部分が小規模住宅用地であり、小規模地積は200㎡です。

また、敷地面積が150㎡の住宅が建つ土地を所有するのであれば、150㎡の全てが小規模住宅用地であり、小規模地積は150㎡となります。

固定小規模課標とは、小規模地積の固定資産税を計算する際の課税標準額です。

敷地面積が200㎡を超える住宅が建つ土地を所有するのであれば、200㎡までの部分の固定資産税を計算する際の課税標準額が固定小規模課標となります。

敷地面積が150㎡の住宅が建つ土地を所有するのであれば、150㎡の全ての部分の固定資産税を計算する際の課税標準額が固定小規模課標です。

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2025年1月

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