固定資産税の課税標準額の計算方法

固定資産税の課税標準額の計算方法

固定資産税は課税標準額に税率を掛け算して計算しますが、課税標準額はどのように計算するのでしょうか。

固定資産税の課税標準額の計算方法を市町村のホームページより詳しくわかりやすく解説しましょう。

目次

1. 建物の固定資産税の課税標準額の計算方法

建物の固定資産税の課税標準額は、特に計算する必要はなく、その建物の今年度の固定資産税評価額が課税標準額となります。

建物の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その建物の「適正な時価」であり、市場価格より低くなるのが通例です。

たとえば、建築費が3,000万円の新築であれば、その60%程度である1,800万円などが固定資産税評価額になります。

また、売買価格が3,000万円、築10年の中古住宅の建物であれば、1,500万円から1,200万円などが固定資産税評価額になります。

所有する建物の今年度の固定資産税評価額は、今年度に届いた固定資産税の課税明細書に記されています。

課税明細書の家屋の欄に価格や評価額などの名目で記されている額が、所有する建物の固定資産税評価額です。

なお、マンションを所有する方は、建物である一戸部分と、土地である敷地権を所有し、それぞれに固定資産税が課されます。

マンションの敷地権とは、そのマンションが建つ敷地を利用する権利です。

マンションの一戸を所有すると、建物である一戸部分と、土地である敷地権を所有し、それぞれに固定資産税が課される

そして、マンションの建物である一戸部分の固定資産税を計算する際の課税標準額も、その建物の今年度の固定資産税評価額となります。

所有するマンションの建物の今年度の固定資産税評価額は、今年度に届いた固定資産税の課税明細書の家屋の欄に価格や評価額などの名目で記されています。

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参考:建物の固定資産税評価額の計算方法

建物の固定資産税を計算する際の課税標準額は、その固定資産税評価額です。

では、建物の固定資産税評価額は、どのように計算されるのでしょうか。

建物の固定資産税評価額の計算方法は複雑ですが、極めて簡単にご紹介すると、以下のようになります。

建物の固定資産税評価額の計算方法(超簡略版)
再建築費-築年数が経過することにより目減りした価値=固定資産税評価額

式に含まれる「再建築費」とは、その建物と同一の建物を同一の場所に、直近3年以内などに新築する際に必要となる資材費と労務費、設計費、建築会社が得る利益の合計です。

難解ですが、純粋な建築費が再建築費であるとお考えください。

建築に携わらず販売だけを行う不動産業者などが得る利益は、再建築費には含まれません。

また、式に含まれる「築年数が経過することにより目減りした価値」は、築年数が経過した建物の固定資産税評価額を計算する際ほど大きくなります。

例を挙げると、築10年の建物の固定資産税評価額を計算する際は再建築費の50%などに、築15年であれば60%などに、築20年であれば70%などになるといった具合です。

たとえば、再建築費が3,000万円、「築年数が経過することにより目減りした価値」が1,500万円であれば以下のように計算し、その建物の固定資産税評価額は1,500万円程度になります。

建物の固定資産税評価額の計算例(超簡略版)
3,000万円(再建築費)-1,500万円(築年数が経過することにより目減りした価値)=1,500万円

最近は物価高により再建築費が以前より高くなり、建物の固定資産税評価額が下がりにくいという状況が続いています。

これを理由に、固定資産税評価額を課税標準額として税額を計算する建物の固定資産税は、最近は下がりにくくなっています。

最近は物価高により、建物の固定資産税が下がりにくくなっている

建物の固定資産税が最近下がりにくいことの詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開する記事にてわかりやすく解説中です。

建物の固定資産税が下がらないと戸惑う方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税が下がるタイミングはいつ? - 物価高で下がりません
固定資産税で家屋の評価額が下がらないのは物価高などが理由

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2. 土地の固定資産税の課税標準額の計算方法

土地の固定資産税の課税標準額は、その土地の今年度の固定資産税評価額、前年度の課税標準額、本則課税標準額、負担水準という4つの情報をもとに計算します。

土地の固定資産税の課税標準額を計算する流れは、以下のとおりです。

土地の固定資産税の課税標準額を計算する流れ

  1. 今年度の固定資産税評価額と、前年度の課税標準額を把握する
  2. 本則課税標準額を求める
  3. 負担水準を計算する
  4. 課税標準額を求める

つづいて、上記の流れに沿って土地の固定資産税の課税標準額を計算する方法を解説しましょう。

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2-1. 固定資産税評価額と前年度課税標準額を把握する

土地の固定資産税の課税標準額を計算する際は、まずは、その土地の今年度の固定資産税評価額と、前年度の課税標準額を把握します。

土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その土地の「適正な時価」です。

土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された適正な時価を表す

所有する土地の今年度の固定資産税評価額は、今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。

前年度の課税標準額とは、その土地の前年度の固定資産税を計算する際の基となった課税標準額です。

所有する土地の前年度の課税標準額は、今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「前年度課税標準額」や「固定前年度課標等」などの名目で記されています。

土地の固定資産税の課税標準額を計算するために必要な情報

情報 入手先
その土地の今年度の固定資産税評価額 今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されている
その土地の前年度の課税標準額 今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「前年度課税標準額」や「固定前年度課標等」などの名目で記されている

なお、マンションの土地(敷地権)の今年度の固定資産税評価額は、一部の市町村を除き、課税明細書には記されていないため留意してください。

所有するマンションの土地の今年度の固定資産税評価額は、「マンションが建つ土地全体の今年度の固定資産税評価額」に「敷地権の割合」を掛け算しつつ計算する必要があります。

マンションが建つ土地全体の今年度の固定資産税評価額は、今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。

億単位の額が記されていれば、それがマンションが建つ土地全体の今年度の固定資産税評価額とお考えになれば良いでしょう。

敷地権の割合は、登記事項証明書に記されていますが、固定資産税の課税明細書に記されている場合もあります。

「3456789101分の34567891」などと複雑な分数が記されていれば、それが敷地権の割合です。

マンションの土地(敷地権)の今年度の固定資産税評価額を計算するために必要な情報

情報 入手先
マンションが建つ土地全体の今年度の固定資産税評価額 今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されている
敷地権の割合 法務局で入手できる登記事項証明書に記されているが、一部の市町村では、固定資産税の課税明細書の土地の欄に記されている

たとえば、マンションが建つ土地全体の今年度の固定資産税評価額が2億円、敷地権の割合が「3456789101分の34567891(0.999%)」であれば以下のように計算し、土地(敷地権)の固定資産税評価額は199万8,000円です。

マンションの土地の固定資産税評価額の計算例
2億円(マンションが建つ土地全体の今年度の固定資産税評価額)×0.999%(敷地権の割合)=199万8,000円

ちなみに、登記事項証明書とは、登記簿を写した書面であり、最寄りの法務局で発行を請求することが可能です。

また、マンションを購入しつつ登記が完了した後に、司法書士から登記事項証明書を手渡されることもあります。

以下が、マンションの登記事項証明書の見本です。

マンションの登記事項証明書の見本

出典:法務省

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2-2. 本則課税標準額を求める

今年度の固定資産税評価額と、前年度の課税標準額が把握できれば、その土地の本則課税標準額を求めます。

戸建てが建つ敷地面積が200㎡(約60坪)以下の土地と、マンションの土地(敷地権)、更地の本則課税標準額の求め方は簡単であり、以下のとおりです。

本則課税標準額

土地の状況 本則課税標準額
戸建てが建つ敷地面積が200㎡以下の土地 その土地の今年度の固定資産税評価額の6分の1
マンションの土地(敷地権) その土地(敷地権)の固定資産税評価額の6分の1
更地 その土地の今年度の固定資産税評価額

一方、戸建てが建つ200㎡を超える土地の本則課税標準額の求め方は複雑です。

「200㎡までの部分」と「200㎡を超える部分」の本則課税標準額を計算しつつ合計しなければなりません。

それぞれの部分の本則課税標準額は、以下のとおりです。

戸建てが建つ200㎡超の土地の本則課税標準額

部分 本則課税標準額
200㎡までの部分 今年度の固定資産税評価額の6分の1
200㎡を超える部分 今年度の固定資産税評価額の3分の1

たとえば、敷地面積が500㎡(約151坪)、今年度の固定資産税評価額が5,000万円であれば以下のように計算し、本則課税標準額は1,333万3,333円です。

1㎡あたりの固定資産税評価額
5,000万円÷500㎡=10万円

200㎡までの部分の本則課税標準額の計算例
10万円×200㎡÷6=333万3,333円

200㎡を超える部分の本則課税標準額の計算例
10万円×300㎡÷3=1,000万円

土地全体の本則課税標準額の計算例
333万3,333円(200㎡までの部分の本則課税標準額)+1,000万円(200㎡を超える部分の本則課税標準額)=1,333万3,333円

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2-3. 前年度課税標準額と本則課税標準額から負担水準を計算する

その土地の本則課税標準額を求めることができれば、負担水準を計算します。

負担水準とは、負担調整措置という措置を適用するための比率であり、以下のように「その土地の前年度の課税標準額÷本則課税標準額×100」と計算しつつパーセントで表します。

負担水準の計算方法
その土地の前年度の課税標準額÷本則課税標準額×100=負担水準(%)

たとえば、前年度の課税標準額が450万円、本則課税標準額が500万円であれば以下のように計算し、負担水準は90%です。

負担水準の計算例
450万円(前年度の課税標準額)÷500万円(本則課税標準額)×100=90%

なお、負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減するための措置であり、全ての土地に申告不要で適用されます。

適用されれば、地価が急激に上昇しても固定資産税はゆっくりと高くなるように調整されます。

負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」で公開する記事にてわかりやすく簡単に解説中です。

土地の課税標準額の計算方法をより深く理解したいという方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)

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2-4. 負担調整措置を適用させつつ課税標準額を求める

負担水準が計算できれば、負担調整措置を適用させつつ土地の固定資産税の課税標準額を求めます。

具体的には、負担水準に応じて課税標準額が決定し、住宅が建つ土地の課税標準額は以下のようになります。

住宅が建つ土地の課税標準額

負担水準 課税標準額
100%以上 本則課税標準額が課税標準額になる
100%未満 「前年度課税標準額+本則課税標準額の5%(A)」が課税標準額になる
負担水準が100%未満の状況における注意点1 Aが本則課税標準額を超える場合は、本則課税標準額が課税標準額になる
負担水準が100%未満の状況における注意点2 Aが本則課税標準額の20%未満の場合は、Aの20%が課税標準額になる

更地の課税標準額は、以下のようになります。

更地の課税標準額

負担水準 課税標準額
70%超 今年度の固定資産税評価額の70%が課税標準額になる
70%以下60%以上 前年度課税標準額が課税標準額になる
60%未満 「前年度課税標準額+今年度の固定資産税評価額の5%(A)」が課税標準額になる
負担水準が60%未満の状況における注意点1 Aが今年度の固定資産税評価額の60%を上回る場合は、今年度の固定資産税評価額の60%が課税標準額になる
負担水準が60%未満の状況における注意点2 Aが今年度の固定資産税評価額の20%を下回る場合は、今年度の固定資産税評価額の20%が課税標準額になる

ちなみに、更地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、負担調整措置により固定資産税評価額の70%が上限となります。

更地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額が課税標準額になると考えがちですが、実は最高で70%なのです。

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まとめ - 都市計画税の課税標準額の計算方法は多少異なる

固定資産税の課税標準額の計算方法を解説しました。

建物の課税標準額は計算する必要はなく、その建物の今年度の固定資産税評価額が課税標準額です。

一方、土地の課税標準額の計算方法は複雑であり、その土地の今年度の固定資産税評価額、前年度の課税標準額、本則課税標準額、負担水準を基に計算しなければなりません。

固定資産税の課税標準額の計算方法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、本記事でご紹介したのは、固定資産税の課税標準額の計算方法であり、都市計画税の課税標準額の計算方法ではないため留意してください。

主に市街地に位置する建物や土地を所有すると、固定資産税に加えて都市計画税も課されますが、都市計画税も固定資産税と同じく課税標準額に税率を掛け算して計算します。

都市計画税の課税標準額の計算方法は、固定資産税の課税標準額の計算方法とほぼ同じですが、戸建てが建つ土地の本則課税標準額の求め方が異なります。

具体的には、以下のとおりです。

戸建てが建つ土地の都市計画税の本則課税標準額

土地の面積 本則課税標準額
200㎡以下 今年度の固定資産税評価額の3分の1
200㎡超 200㎡までの部分は今年度の固定資産税評価額の3分の1、200㎡を超える部分は今年度の固定資産税評価額の3分の2

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2025年2月

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