固定資産税の課税標準額と評価額の違い

固定資産税の課税標準額と評価額の違い

固定資産税の課税明細書には課税標準額と評価額が記され、それらの額は違うことがあれば、同じこともあります。

実は、課税標準額と評価額は、似て非なる全く異なる額なのです。

固定資産税の課税標準額と評価額の違いをわかりやすく解説しましょう。

目次

課税標準額は税率を乗算する額、評価額は土地や建物の適正な時価

固定資産税の課税標準額と評価額の違いは、課税標準額は税率を掛け算する基となる額であり、評価額は課税標準額を算出する要素という点にあります。

難解ですが、わかりやすく簡単に解説しましょう。

まずは、固定資産税の計算方法を知ってください。

土地や建物を所有すると固定資産税が課されますが、その税額は以下のように計算します。

土地の固定資産税の計算方法
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=土地の固定資産税

建物の固定資産税の計算方法
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=建物の固定資産税

上記のように固定資産税は、課税標準額に固定資産税の税率を掛け算して計算します。

この税率を掛け算する基となる額が、課税明細書に記されている固定資産税の課税標準額です。

これに対して、課税明細書に記されている評価額とは、市町村が評価した、その土地や建物の適正な時価であり、課税標準額を算出する要素となります。

土地や建物の固定資産税の計算方法を図解でご説明すると、以下のとおりです。

固定資産税の課税標準額と評価額の違いは、課税標準額は税額を乗算する額であり、評価額は課税標準額を算出する要素という点にある

つづいて、戸建てが建つ土地、マンションの土地の持ち分、更地、建物にかかる固定資産税の課税標準額と評価額がどう違うか、どれくらい額が違うか解説しましょう。

ちなみに、固定資産税の課税明細書に記されている評価額を、一般には「固定資産税評価額」と呼びます。

そして、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、固定資産税評価額をわかりやすく解説する記事を公開中です。

土地や建物を所有し、その評価額に興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税評価額とは?わかりやすく解説(パパっとすぐわかる)

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戸建てが建つ土地の固定資産税の課税標準額と評価額の違い

戸建てが建つ土地の課税標準額は、面積が200㎡(約60坪)以下であれば、その土地の評価額の6分の1です。

例を挙げると、戸建てが建つ評価額が1,000万円の土地であれば以下のように計算し、課税標準額は166万6,666円となります。

戸建てが建つ200㎡以下の土地の課税標準額の計算例
1,000万円(土地の評価額)÷6=166万6,666円

また、戸建てが建つ200㎡を超える土地は、課税標準額と評価額の違いが複雑です。

その条件の土地の課税標準額は、「200㎡までの部分の課税標準額」と、「200㎡を超える、その土地に建つ戸建ての床面積の10倍までの部分の課税標準額」の合計となります。

「200㎡までの部分の課税標準額」は評価額の6分の1、「200㎡を超える、その土地に建つ戸建ての床面積の10倍までの部分の課税標準額」は評価額の3分の1です。

戸建てが建つ200㎡を超える土地の固定資産税の課税標準額と評価額の違い

たとえば、評価額が1,000万円である500㎡(約151坪)の土地に、床面積が85㎡(約25.7坪)の戸建てが建つとしましょう。

であれば以下のように計算し、その土地の固定資産税の課税標準額は266万6,666円です。

土地の1㎡あたりの評価額の計算例
1,000万円(土地全体の評価額)÷500㎡(土地の面積)=2万円

200㎡までの部分の課税標準額の計算例
200㎡×2万円(土地の1㎡あたりの評価額)÷6=66万6,666円

200㎡を超える部分の課税標準額の計算例
300㎡×2万円(土地の1㎡あたりの評価額)÷3=200万円

土地全体の課税標準額の計算例
66万6,666円(200㎡までの部分の課税標準額)+200万円(200㎡を超える部分の課税標準額)=266万6,666円

戸建てが建つ土地の課税標準額が評価額の6分の1や3分の1となるのは、「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例」が適用されるためです。

同特例は、住宅が建つ土地の固定資産税が軽減される特例であり、「住宅用地の特例」などと呼ばれます。

同特例が適用されれば、固定資産税を計算する際の課税標準額は評価額の6分の1や3分の1に減額されます。

課税標準額が減額されれば、課税標準額に税率を掛け算して計算する土地の固定資産税が軽減されます。

なお、所有する戸建てが建つ土地の課税標準額と評価額の違いが6分の1や3分の1と差がある場合は、おそらくは負担調整措置が原因と考えられます。

負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減する措置であり、全ての土地に申告不要で適用されます。

負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にてわかりやすく解説中です。

興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)

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マンションの土地の持ち分の固定資産税の課税標準額と評価額の違い

マンションの土地の持ち分には「住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例(通称:住宅用地の特例)」が適用され、その固定資産税の課税標準額は評価額の6分の1となります。

住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地にかかる固定資産税が軽減される措置であり、マンションの土地の持ち分にも適用されます。

たとえば、土地の持ち分の評価額が200万円であれば以下のように計算し、その課税標準額は33万3,333円です。

マンションの土地の持ち分の課税標準額の計算例
200万円(土地の持ち分の評価額)÷6(住宅用地の特例による減額)=33万3,333円

なお、固定資産税の課税明細書に記されているマンションの土地の評価額は、土地の持ち分の評価額ではないことがあるため注意してください。

多くの市町村が発行する課税明細書に記されているマンションの土地の評価額は、そのマンションが建つ土地全体の評価額であり、土地の持ち分の評価額ではありません。

土地の評価額が億単位などであれば、間違いなくそのマンションが建つ土地全体の評価額が記されています。

マンションの一戸を所有すると、地上権や借地権などである場合は除き、「建物」である一戸部分と、「土地」である土地の持ち分を所有し、それぞれに固定資産税が課されます。

「土地」である土地の持ち分の固定資産税は、以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算しますが、先述のとおり、課税標準額は「土地の持ち分の評価額の6分の1」です。

マンションの土地の持ち分の固定資産税の計算方法
課税標準額(土地の持ち分の評価額の6分の1)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

しかし、多くの市町村が発行する課税明細書には、そのマンションが建つ土地全体の評価額のみが記され、土地の持ち分の評価額は記されていません。

記されていない場合は、以下の方法で計算した答えが土地の持ち分の評価額です。

マンションの土地の持ち分の評価額の計算方法
そのマンションが建つ土地全体の評価額×敷地権の割合=土地の持ち分の評価額

式に含まれる敷地権とは、そのマンションが建つ土地を利用する権利であり、各戸の所有者が少しずつ分け合って所有しています。

敷地権の割合とは、自らが所有する敷地権の比率であり、登記事項証明書に「1234567分の34567」などと複雑な分数で記されています。

登記事項証明書とは、登記簿を写した書面であり、最寄りの法務局などで発行を請求することが可能です。

以下は、法務省が公開する登記事項証明書の見本であり、赤い線で囲まれた箇所に敷地権の割合が記されています。

マンションの土地の持ち分の評価額は、敷地権の割合を用いて計算する

出典:法務省

マンションが建つ土地全体の評価額が1億円、敷地権の割合が「1234567分の34567(2.8%)」であれば以下のように計算し、土地の持ち分の評価額は280万円です。

マンションの土地の持ち分の評価額の計算例
1億円(マンションが建つ土地全体の評価額)×2.8%(敷地権の割合)=280万円

土地の持ち分の評価額が280万円であれば以下のように計算し、土地の持ち分の課税標準額は46万6,666円、固定資産税は6,533円となります。

土地の持ち分の課税標準額の計算例
280万円(土地の持ち分の評価額)÷6(住宅用地の特例による減額)=46万6,666円

土地の持ち分の固定資産税の計算例
課税標準額(46万6,666円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=6,533円

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更地の固定資産税の課税標準額と評価額の違い

更地の固定資産税の課税標準額は、評価額の70%などです。

たとえば、評価額が1,500万円の更地であれば以下のように計算し、課税標準額は1,050万円、固定資産税は14万7,000円などになります。

更地の課税標準額の計算例
1,500万円(土地の評価額)×70%=1,050万円

更地の固定資産税の計算例
課税標準額(土地の評価額である1,050万円)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=14万7,000円

更地の固定資産税の課税標準額が評価額の70%となるのは、負担調整措置が適用されるためです。

負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減する措置であり、全ての土地に申告不要で適用されます。

固定資産税において更地を「商業地等」と呼びます。

商業地等に負担調整措置が適用されれば、その固定資産税を計算する際の課税標準額は評価額の70%が上限です。

したがって、更地の固定資産税の課税標準額は、評価額の70%などとなります。

ちなみに、「総務省:固定資産税の概要」では、固定資産税のあらましなどを確認することが可能です。

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建物の固定資産税の課税標準額と評価額の違い

建物の固定資産税の課税標準額と評価額は、意味は違いますが額に違いはありません。

たとえば、評価額が1,500万円の建物であれば課税標準額も1,500万円となり、以下のように計算して固定資産税は21万円です。

建物の固定資産税の計算例
課税標準額(建物の評価額である1,500万円)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=21万円

固定資産税における評価額は課税標準額を算出する要素ですが、適用される特例や軽減措置があれば、評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準額となります。

適用される特例や軽減措置がなければ、課税標準額は評価額と同額です。

一般の建物に適用される、評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準額となる特例や軽減措置はありません。

よって、建物の固定資産税の課税標準額と評価額は、意味は違えど額は同じです。

なお、一定の条件を満たす新築の住宅である建物を取得すると、「新築された住宅に対する固定資産税の減額」という軽減措置が適用されます。

適用されれば、はじめて固定資産税が課されることとなった年から3年や5年などにわたり、建物にかかる固定資産税が2分の1に減額されます。

この軽減措置が適用された状況においても、課税標準額は評価額と同額であり、税額のみが2分の1に減額されます。

また、建物の固定資産税は築年数が経過すると共に徐々に下がるといわれますが、実は何年で下がるという概念はありません。

その詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく解説中です。

建物を所有し、その固定資産税がいつまでも下がらないと戸惑う方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税に何年で下がるという概念はなく、下がる時に下がる

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まとめ - 都市計画税の課税標準額と評価額にも違いがある

固定資産税の課税標準額と評価額の違いを解説しました。

課税標準額は、土地や建物の固定資産税を計算する際に税率を掛け算する基となる額です。

これに対して評価額は、市町村が評価した、その土地や建物の適正な時価を指します。

評価額は課税標準額を算出する要素であり、適用される特例や軽減措置があれば、評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準額となります。

具体的には、戸建てが建つ土地や、マンションの土地の持ち分は「住宅用地の特例」が適用され、課税標準額は評価額の6分の1や3分の1となります。

更地は負担調整措置が適用されることにより、課税標準額は評価額の70%が上限です。

建物は適用される特例や軽減措置がなく、評価額が課税標準額となります。

固定資産税の課税標準額をまとめると、以下のとおりです。

固定資産税の課税標準額

資産の種類 課税標準額
戸建てが建つ土地 200㎡(約60坪)までの部分は土地の評価額の6分の1、200㎡を超える、その土地に建つ戸建ての床面積の10倍までの部分は土地の評価額の3分の1
マンションの土地の持ち分 土地の持ち分の評価額の6分の1
更地 土地の評価額の70%が上限
建物 建物の評価額と同額

ちなみに、市街地に位置する土地や建物には、多くの場合は固定資産税に加えて都市計画税も課されます。

都市計画税も課される場合は、固定資産税の課税明細書に都市計画税の課税標準額も記されています。

土地や建物の都市計画税の計算方法は、以下のとおりです。

土地の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=土地の都市計画税

建物の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=建物の都市計画税

それぞれの式に含まれる課税標準額が、固定資産税の課税明細書に記されている都市計画税の課税標準額です。

都市計画税の課税標準額も、固定資産税の課税標準額と同じく評価額を用いて算出します。

そして、固定資産税の課税標準額と同じく、適用される特例や軽減措置があれば、評価額から一定の額が差し引かれた額が都市計画税の課税標準額となります。

具体的には、戸建てが建つ土地や、マンションの土地の持ち分には「住宅用地の特例」が適用され、評価額から一定の額が差し引かれた額が都市計画税の課税標準額となります。

また、更地には負担調整措置が適用され、評価額の70%が都市計画税の課税標準額の上限となります。

都市計画税の課税標準額をまとめると、以下のとおりです。

都市計画税の課税標準額

資産の種類 課税標準額
戸建てが建つ土地 200㎡(約60坪)までの部分は土地の評価額の3分の1、200㎡を超える、その土地に建つ戸建ての床面積の10倍までの部分は土地の評価額の3分の2
マンションの土地の持ち分 土地の持ち分の評価額の3分の1
更地 土地の評価額の70%が上限
建物 建物の評価額と同額

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2025年3月

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