都市計画税の課税標準額を計算する方法

都市計画税の課税標準額の計算方法は建物と土地で異なり、建物は簡単ですが、土地は思いのほか複雑で、いくつもの手順を踏まなければなりません。
建物と土地の都市計画税の課税標準額を計算する方法を解説しましょう。
目次
建物の都市計画税の課税標準額を計算する方法
建物の都市計画税の課税標準額は計算する必要はなく、その建物の固定資産税評価額が課税標準額となります。
建物の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その建物の「適正な時価」です。
所有する建物の固定資産税評価額は、毎年4月ごろに届く固定資産税の課税明細書の家屋の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
たとえば、固定資産税評価額が1,500万円の建物であれば課税標準額も1,500万円となり、以下のように計算して都市計画税は4万5,000円です。
建物の都市計画税の計算例
課税標準額(その建物の固定資産税評価額である1,500万円)×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=4万5,000円
なお、先述のとおり、建物の都市計画税の課税標準額はその建物の固定資産税評価額ですが、これは戸建てである建物も、マンションの一戸部分も変わりません。
また、「建物の都市計画税の計算例」に記したように、都市計画税の税率は市町村によって異なるため留意してください。
所有する建物が所在する市町村の税率は、市町村役場のホームページなどにてご確認いただけます。
2. 土地の都市計画税の課税標準額を計算する方法
土地の都市計画税の課税標準額を計算する方法は、複雑な手順を要します。
まずは、その土地の都市計画税の本則課税標準額を計算します。
本則課税標準額とは「本来の課税標準額」という意味ですが、土地の都市計画税の課税標準額は、本来の課税標準額ではありません。
本則課税標準額(本来の課税標準額)などから計算した課税標準額であり、いうなれば「最終的な課税標準額」です。

つぎに、その土地の負担水準を計算します。
負担水準とは、「負担調整措置」を適用するための割合であり、本則課税標準額と、その土地の去年の都市計画税の課税標準額から計算します。
負担調整措置とは、土地所有者の税負担を調整する措置であり、地価が急激に上昇しても、課税標準額はゆっくりと高くなるように調整する措置です。
最後に、負担水準を基に最終的な課税標準額を計算します。
土地の都市計画税の課税標準額を計算する手順
- その土地の都市計画税の本則課税標準額(本来の課税標準額)を計算する
- その土地の負担水準を計算する
- 負担水準を基に課税標準額(最終的な課税標準額)を計算する
つづいて、土地の都市計画税の課税標準額を計算する手順をわかりやすく簡単に解説しましょう。
その土地の都市計画税の本則課税標準額を計算する
はじめに、その土地の都市計画税の本則課税標準額(本来の課税標準額)を計算します。
本則課税標準額の計算方法は、住宅が建つ土地(住宅が建つ土地には「マンションの土地の持ち分」も含まれます)と更地によって異なります。

戸建てが建つ200㎡(約60坪)以下の土地や、マンションの土地の持ち分の本則課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1です。
たとえば、戸建てが建つ敷地面積が200㎡、固定資産税評価額が1,200万円の土地であれば以下のように計算し、本則課税標準額は400万円となります。
本則課税標準額の計算例
1,200万円(その土地の固定資産税評価額)÷3=400万円(本則課税標準額)
戸建てが建つ200㎡を超える土地の本則課税標準額は、200㎡までの部分は固定資産税評価額の3分の1、200㎡を超える部分は3分の2です。
計算例を挙げると、戸建てが建つ敷地面積が500㎡(約151坪)、固定資産税評価額が1,200万円の土地であれば以下のように計算し、本則課税標準額は640万円となります。
土地1㎡あたりの固定資産税評価額の計算例
1,200万円÷500㎡=2万4,000円
200㎡までの部分の本則課税標準額の計算例
2万4,000円×200㎡÷3=160万円
200㎡超の部分の本則課税標準額の計算例
2万4,000円×300㎡÷3×2=480万円
本則課税標準額の計算例
160万円(200㎡までの部分の本則課税標準額)+480万円(200㎡超の部分の本則課税標準額)=640万円
住宅が建つ土地の本則課税標準額が固定資産税評価額の3分の1や3分の2となるのは、「住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例(通称:住宅用地の特例)」が適用されるためです。
住宅が建つ土地には同特例が適用され、適用されれば、その課税標準額は固定資産税評価額の3分の1や3分の2となります。
これに対して、住宅が建てられていない更地には住宅用地の特例は適用されません。
よって、更地の本則課税標準額は、固定資産税評価額そのものとなります。
たとえば、固定資産税評価額が1,200万円の更地であれば、本則課税標準額も1,200万円になるといった具合です。
都市計画税の本則課税標準額の計算方法をまとめると、以下のとおりです。
都市計画税の本則課税標準額の計算方法
土地の状況 | 本則課税標準額 |
---|---|
戸建てが建つ200㎡以下の土地、マンションの土地の持ち分 | 固定資産税評価額の3分の1 |
戸建てが建つ200㎡超の土地 | 200㎡までの部分は固定資産税評価額の3分の1、200㎡超の部分は3分の2 |
更地 | 固定資産税評価額 |
ちなみに、所有する土地の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、一部の市町村を除き、課税明細書に記されている額を基に計算する必要があり、詳細は本記事の「マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、別途計算する必要がある」にてご確認いただけます。
その土地の負担水準を計算する
本則課税標準額の計算が完了すれば、その土地の負担水準を計算します。
負担水準とは、負担調整措置を適用するための割合であり、以下の式で計算してパーセントで表します。
負担水準の計算方法
その土地の前年度の都市計画税の課税標準額÷本則課税標準額×100=負担水準(%)
たとえば、その土地の前年度の都市計画税の課税標準額が350万円、本則課税標準額が370万円であれば以下のように計算し、負担水準は94.5%です。
負担水準の計算例
350万円(その土地の前年度の都市計画税の課税標準額)÷370万円(本則課税標準額)=94.5%
なお、所有する土地の前年度の都市計画税の課税標準額は、去年届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に記されています。
また、一部の市町村では、今年届いた課税明細書に「前年度の都市計画税の課税標準額」や「都計前年度課標等」などの名目で、所有する土地の都市計画税の前年度の課税標準額が記されています。
ちなみに「総務省:都市計画税」では、都市計画税のあらましを確認することが可能です。
その土地の最終的な都市計画税の課税標準額を計算する
負担水準の計算が完了すれば、負担水準を基にその土地の都市計画税の課税標準額を計算します。
ここで計算するのは最終的な課税標準額であり、都市計画税の税率を掛け算する基となる額です。
課税標準額の計算方法は、住宅が建つ土地(住宅が建つ土地には「マンションの土地の持ち分 」も含みます)と更地によって異なります。
住宅が建つ土地の課税標準額は、負担水準に応じて以下のようになります。
住宅が建つ土地の都市計画税の課税標準額
負担水準 | 課税標準額 |
---|---|
100%以上 | 本則課税標準額が課税標準額になる |
100%未満 | 「その土地の前年度の都市計画税の課税標準額+本則課税標準額の5%(A)」が課税標準額になる |
負担水準が100%未満の状況における注意点1 | 課税標準額の上限は本則課税標準額 |
負担水準が100%未満の状況における注意点2 | Aが本則課税標準額の20%を下回る場合は、20%が課税標準額になる |
たとえば、負担水準が94.5%、「その土地の前年度の都市計画税の課税標準額」が350万円、本則課税標準額が370万円であれば以下のように計算し、課税標準額は368万5,000円です。
住宅が建つ土地の課税標準額の計算例
350万円(その土地の前年度の都市計画税の課税標準額)+18万5,000円(本則課税標準額の5%)=368万5,000円
課税標準額が368万5,000円であれば以下のように計算し、その土地の都市計画税は1万1,055円となります。
住宅が建つ土地の都市計画税の計算例
課税標準額(368万5,000円)×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)×0.3%(都市計画税の税率)=1万1,055円
一方、更地の課税標準額は、負担水準に応じて以下のようになります。
更地の都市計画税の課税標準額
負担水準 | 課税標準額 |
---|---|
70%超 | その土地の固定資産税評価額の70%が課税標準額になる |
70%以下60%以上 | 「その土地の前年度の都市計画税の課税標準額」が課税標準額になる |
60%未満 | 「その土地の前年度の都市計画税の課税標準額+その土地の固定資産税評価額の5%(A)」が課税標準額になる |
負担水準が60%未満の状況における注意点1 | Aがその土地の固定資産税評価額の60%を上回る場合は、60%が課税標準額になる |
負担水準が60%未満の状況における注意点2 | Aがその土地の固定資産税評価額の20%を下回る場合は、20%が課税標準額になる |
課税標準額の計算例を挙げると、負担水準が58.7%、前年度の課税標準額が910万円、固定資産税評価額が1,550万円の更地であれば以下のように計算して930万円です。
更地の課税標準額の計算例
910万円(その土地の前年度の都市計画税の課税標準額)+77万5,000円(その土地の固定資産税評価額の5%)=987万5,000円(固定資産税評価額の60%である930万円を上回るため、930万円が課税標準額になる)
以上で土地の都市計画税の課税標準額を計算する方法の解説を完了します。
土地の都市計画税の課税標準額を計算する方法は複雑ですが、それは、負担調整措置が適用されることが理由です。
土地の都市計画税の課税標準額は、本来であれば本則課税標準額(本来の課税標準額)です。
しかし、負担調整措置が適用され、本則課税標準額や負担水準、固定資産税評価額などから計算した額が最終的な課税標準額となります。
負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく解説中です。
負担調整措置のより深い理解を希望する方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)
まとめ - マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、別途計算する必要がある
都市計画税の課税標準額を計算する方法を解説しました。
都市計画税の課税標準額の計算方法は建物と土地によって異なり、建物は計算する必要はなく固定資産税評価額が課税標準額です。
一方、土地の課税標準額は計算方法が複雑であり、本則課税標準額、固定資産税評価額、前年度の課税標準額、負担水準などから計算しなければなりません。
都市計画税の課税標準額の計算方法を調べる方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、本記事でご紹介したとおり、所有する建物や土地の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
ただし、多くの市町村が発行する課税明細書には、「マンションの土地の持ち分」の固定資産税評価額は記されていません。
多くの市町村が発行する課税明細書には、土地の持ち分ではなく、マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額が記されています。
マンションの一戸を所有し、課税明細書の土地の欄に億単位の額が記されていれば、それは間違いなく土地全体の固定資産税評価額です。
土地全体の固定資産税評価額のみが記されている場合は、その額と「敷地権の割合」を用いて土地の持ち分の固定資産税評価額を計算しなければなりません。
敷地権の割合とは、自らが所有する土地の持ち分の比率であり、法務局で発行を請求できる登記簿を写した書面「登記事項証明書」などに記されています。
以下は法務省が公開する集合住宅の登記事項証明書の見本であり、赤い線で囲まれた箇所に敷地権の割合が記されています。

※ 出典:法務省
見本に記されている敷地権の割合は4分の1ですが、実際の登記事項証明書には「123456分の2469」などと複雑な割合が記されています。
マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額に占める敷地権の割合が、土地の持ち分の固定資産税評価額です。
たとえば、土地全体の固定資産税評価額が1億円、敷地権の割合が123456分の2469(1.99990279938%)であれば以下のように計算し、土地の持ち分の固定資産税評価額は199万9,902円です。
土地の持ち分の固定資産税評価額の計算例
1億円(土地全体の固定資産税評価額)×1.99990279938%(敷地権の割合)=199万9,902円
本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年4月
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