都計課税標準額とは?

東京23区などの固定資産税の課税明細書を見ると「都計課税標準額」という額が記されています。
都計課税標準額とは、建物や土地の都市計画税を計算する基となる額であり、高いほど税額が高くなり嬉しくありません。
都計課税標準額をわかりやすく簡単に解説し、建物や土地の都計課税標準額の計算方法もご紹介しましょう。
目次
都計課税標準額とは「都市計画税の課税標準額」の略
都計課税標準額とは「都市計画税の課税標準額」の略であり、建物や土地の都市計画税を計算する基となる額です。
建物や土地を所有すると固定資産税が課されますが、市街地に位置する建物や土地の多くには都市計画税も課されます。

都市計画税とは、公共施設を維持新設する「都市計画事業」、および公共施設を移設や新設するために必要となる土地を調達する「土地区画整理事業」の費用を賄うために市町村が徴収する税金です。
建物や土地の都市計画税は、以下のように計算します。
建物の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=建物の都市計画税
土地の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=土地の都市計画税
上記のそれぞれの式に含まれる「課税標準額」が、都計課税標準額です。
課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。
都市計画税を計算する際の課税標準額は、原則として、その建物や土地の固定資産税評価額です。
建物や土地の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその建物や土地の適正な時価であり、市場価格より低くなるのが通例となっています。
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の建物を所有する場合は、建物の課税標準額(すなわち建物の都計課税標準額)も1,000万円となり、以下のように計算して都市計画税は3万円です。
建物の都市計画税の計算例
課税標準額(その建物の固定資産税評価額である1,000万円)×都市計画税の税率(最高で0.3%)=3万円
このように都市計画税は、課税標準額に税率を掛け算して計算するため、課税標準額が高いほど税額は高くなります。
つまり、都計課税標準額が高いほど、建物や土地の都市計画税は高くなるというわけです。

なお、先述のとおり、建物の都市計画税を計算する際の課税標準額は、その建物の固定資産税評価額です。
一方、土地の都市計画税を計算する際の課税標準額は、その土地の固定資産税評価額ですが、「負担調整措置」適用後の額となり、やや複雑な方法を用いて算出されます。
負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減する措置であり、申告不要で全ての土地に適用されます。
つづいて、土地の都市計画税の課税標準額、すなわち「土地の都計課税標準額」を計算する方法を解説しましょう。
ちなみに、所有する建物や土地の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
ただし、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額は、一部の市町村を除き課税明細書には記されていません。
記されていない場合は計算する必要があり、詳細は本記事の「マンションの土地の固定資産税評価額の計算方法」にてご紹介中です。
土地の都計課税標準額を計算する方法
土地の都計課税標準額は、以下の手順で計算します。
土地の都計課税標準額を計算する手順
- その土地の都市計画税の本則課税標準額を計算する
- その土地の負担水準を計算する
- 負担水準を基に土地の都計課税標準額を計算する
上記の手順の詳細は、以下のとおりです。
手順1. その土地の都市計画税の本則課税標準額を計算する
まずは、都計課税標準額を算出する土地の「都市計画税の本則課税標準額」を計算します。
都市計画税の本則課税標準額とは、その土地の都計課税標準額を計算する要素の一つです。

都市計画税の本則課税標準額は、住宅が建つ土地や更地など、その土地の状況によって計算方法が異なります。
敷地面積が200㎡(約60坪)以下の戸建てが建つ土地や、マンションの土地の持ち分であれば、都市計画税の本則課税標準額はその土地の固定資産税評価額の3分の1です。
たとえば、敷地面積が200㎡の戸建てが建つ土地、またはマンションの土地の持ち分を所有し、その固定資産税評価額が1,000万円であれば以下のように計算し、都市計画税の本則課税標準額は333万3,333円となります。
計算例
1,000万円(その土地の固定資産税評価額)÷3=333万3,333円
また、敷地面積が200㎡を超える戸建てが建つ土地の都市計画税の本則課税標準額は、200㎡までの部分は固定資産税評価額の3分の1、200㎡を超える部分は固定資産税評価額の3分の2となります。
計算例を挙げると、敷地面積が300㎡(約90坪)の戸建てが建つ土地を所有し、その固定資産税評価額が1,000万円であれば以下のように計算し、都市計画税の本則課税標準額は444万4,400円です。
計算例
・1,000万円÷300㎡=3万3,333円(1㎡あたりの固定資産税評価額)
・3万3,333円×200㎡÷3=222万2,200円(200㎡までの部分の都市計画税の本則課税標準額)
・3万3,333円×100÷3×2=222万2,200円(200㎡超の部分の都市計画税の本則課税標準額)
・222万2,200円(200㎡までの部分の都市計画税の本則課税標準額)+222万2,200円(200㎡超の部分の都市計画税の本則課税標準額)=444万4,400円
更地の都市計画税の本則課税標準額は、特に計算する必要はなく、その土地の固定資産税評価額となります。
例を挙げると、固定資産税評価額が1,000万円の更地であれば、都市計画税の本則課税標準額も1,000万円になるといった具合です。
都市計画税の本則課税標準額をまとめると、以下のとおりです。
都市計画税の本則課税標準額
土地の状況 | 本則課税標準額 |
---|---|
敷地面積が200㎡以下の戸建てが建つ土地、マンションの土地の持ち分 | その土地の固定資産税評価額の3分の1 |
敷地面積が200㎡超の戸建てが建つ土地 | 200㎡までの部分はその土地の固定資産税評価額の3分の1、200㎡超の部分は固定資産税評価額の3分の2 |
更地 | その土地の固定資産税評価額 |
なお、東京23区などの固定資産税の課税明細書には、「都計本則課税標準額」という名目で都市計画税の本則課税標準額が記されています。
加えて、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、固定資産税評価額をわかりやすく簡単に解説する記事を公開中です。
固定資産税評価額がよくわからないという方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
固定資産税評価額とは?わかりやすく解説(パパっとすぐわかる)
手順2. その土地の負担水準を計算する
都市計画税の本則課税標準額の計算が完了すれば、その土地の負担水準を計算します。
負担水準とは、土地所有者の税負担を軽減する「負担調整措置」を適用するための数値であり、以下の式で計算してパーセントで表します。
負担水準の計算方法
前年度の土地の都市計画税の課税標準額÷都市計画税の本則課税標準額×100=負担水準(%)
式に含まれる「前年度の土地の都市計画税の課税標準額」とは、その土地の前年の都市計画税を計算する際に用いた課税標準額、すなわち前年度の土地の都計課税標準額です。
復唱になりますが、土地の都市計画税は以下の式で計算します。
土地の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=土地の都市計画税
土地の都市計画税は、上記のように「課税標準額」に税率を掛け算して毎年計算されます。
負担水準の計算式に含まれる「前年度の土地の都市計画税の課税標準額」は、その土地の前年の都市計画税を計算する基となった課税標準額です。
負担水準の計算例を挙げると、「前年度の土地の都市計画税の課税標準額」が300万円、都市計画税の本則課税標準額が320万円であれば以下のように計算して93.75%です。
負担水準の計算例
300万円(前年度の土地の都市計画税の課税標準額)÷320万円(都市計画税の本則課税標準額)×100=93.75%
負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく解説中です。
負担調整措置をより深く理解したい方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)
なお、所有する土地の「前年度の土地の都市計画税の課税標準額」は、前年に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「都計課税標準額」や「当該年度都市計画税課税標準額(円)」などの名目で記されています。
また、市町村によっては、今年に届いた課税明細書の土地の欄に「都計前年課標等」や「前年度分の都市計画税課税標準額(円)」などの名目で所有する土地の「前年度の土地の都市計画税の課税標準額」が記されていることもあります。
手順3. 負担水準を基に土地の都計課税標準額を計算する
最後に、負担水準を基に土地の都計課税標準額を計算します。
土地の都計課税標準額の計算方法は、戸建てやマンションなどの住宅が建つ土地と更地によって異なります。
住宅が建つ土地の都計課税標準額は、負担水準に応じて以下のようになります。
住宅が建つ土地の都計課税標準額
負担水準 | 都計課税標準額 |
---|---|
100%以上 | 本則課税標準額が都計課税標準額となる |
100%未満 | 「前年度の土地の都市計画税の課税標準額+都市計画税の本則課税標準額の5%(A)」が都計課税標準額となる |
負担水準が100%未満の状況における注意点1 | 都市計画税の本則課税標準額が都計課税標準額となる |
負担水準が100%未満の状況における注意点2 | Aが都市計画税の本則課税標準額の20%を下回る場合は、20%が都計本則課税標準額となる |
更地の都計課税標準額は、負担水準に応じて以下のようになります。
更地の都計課税標準額
負担水準 | 都計課税標準額 |
---|---|
70%超 | その土地の固定資産税評価額の70%が都計課税標準額となる |
70%以下60%以上 | 「前年度の土地の都市計画税の課税標準額」が都計課税標準額となる |
60%未満 | 「前年度の土地の都市計画税の課税標準額+その土地の固定資産税評価額の5%(A)」が都計課税標準額となる |
負担水準が60%未満の状況における注意点1 | Aがその土地の固定資産税評価額の60%を上回る場合は、60%が都計課税標準額となる |
負担水準が60%未満の状況における注意点2 | Aがその土地の固定資産税評価額の20%を下回る場合は、20%が都計課税標準額となる |
以上で土地の都計課税標準額を計算する方法の解説の完了です。
たとえば、土地の都計課税標準額が316万円であれば以下のように計算し、その土地の都市計画税は9,480円となります。
土地の都市計画税の計算例
課税標準額(土地の都計課税標準額である316万円)×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=9,480円
最後に、都計課税標準額のポイントをまとめましょう。
都計課税標準額のポイント
- 都計課税標準額とは、建物や土地の都市計画税を計算する際に税率を掛け算する基となる「課税標準額」を指す
- 建物の都計課税標準額は、その建物の固定資産税評価額(建物の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその建物の適正な時価)
- 土地の都計課税標準額は、都市計画税の本則課税標準額や負担水準などを用いて算出した額
- 建物や土地の都市計画税は、都計課税標準額に税率を掛け算して計算するため、都計課税標準額が高いほど税額は高くなる
マンションの土地の固定資産税評価額の計算方法
マンションの一戸を所有する方は、地上権や借地権である場合は除き、「建物」である一戸部分と、「土地」である土地の持ち分を所有します。
マンションの土地の持ち分を、正確には敷地権と呼びます。
マンションの敷地権とは、そのマンションが建つ土地を利用する権利であり、各戸の所有者が少しずつ分け合って所有しています。
そして、そのマンションが市街地に位置するのであれば、多くの場合は建物である一戸部分と、土地である敷地権にそれぞれ都市計画税が課されます。

土地である敷地権に課される都市計画税は、その敷地権の固定資産税評価額などを用いて算出した「土地の都計課税標準額」を基に計算します。
よって、マンションの一戸を所有する方は、自らが所有する敷地権の固定資産税評価額を把握したいものですが、多くの市町村が発行する固定資産税の課税明細書には、その額が記されていません。
課税明細書の多くには、土地の欄にそのマンションが建つ土地全体の固定資産税評価額のみが「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
課税明細書の土地の欄に億単位の額が記されていれば、それは間違いなくマンションが建つ土地全体の固定資産税評価額です。
課税明細書に敷地権の固定資産税評価額が記されていない場合は、以下のように計算します。
敷地権の固定資産税評価額の計算方法
マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額×敷地権の割合=敷地権の固定資産税評価額
式に含まれる「敷地権の割合」とは、自らが所有する敷地権の比率を指し、法務局で発行を請求できる登記事項証明書(登記簿を写した書面)に「678912分の2345」などと複雑な分数で記されています。
たとえば、マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額が1億5,000万円、敷地権の割合が678912分の2345(0.3454%)であれば以下のように計算し、敷地権の固定資産税評価額は51万8,100円です。
計算例
1億5,000万円(マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額)×0.3454%(敷地権の割合)=51万8,100円
なお、先述のとおり登記事項証明書は法務局で発行を請求できますが、マンションを購入後に登記が完了した後に、司法書士から手渡されている場合があるため留意してください。
以下は、法務省が公開するマンションなど集合住宅の登記事項証明書の見本であり、見覚えがあれば受け取っているかもしれません。

※ 出典:法務省
まとめ - 都計課税標準額の固定資産税版「固定課税標準額」もある
都計課税標準額を解説し、その計算方法もご紹介しました。
都計課税標準額とは、建物や土地の都市計画税を計算する際の課税標準額を指し、「都市計画税の課税標準額」の略です。
建物や土地の都市計画税は、都計課税標準額に都市計画税の税率を掛け算して計算します。
建物の都計課税標準額は、その建物の固定資産税評価額です。
一方、土地の都計課税標準額は、都市計画税の本則課税標準額、負担水準などを用いて計算した額となります。
ぜひご参考になさってください。
ちなみに、東京23区などが発行する固定資産税の課税明細書には、固定課税標準額という名目の額も記されています。
固定課税標準額とは、建物や土地の固定資産税を計算する際の課税標準額を指し、「固定資産税の課税標準額」の略です。
建物や土地の固定資産税は、都市計画税と同じく以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算します。
建物の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=建物の固定資産税
土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=土地の固定資産税
上記のそれぞれの式に含まれる課税標準額が、課税明細書に記されている「固定課税標準額」です。
建物の固定課税標準額は、都計課税標準額と同じくその建物の固定資産税評価額となります。
一方、土地の固定課税標準額は、土地の都計課税標準額と同じ要領で算出した額となりますが、固定資産税には「固定資産税の本則課税標準額」があり、以下のとおりです。
固定資産税の本則課税標準額
土地の状況 | 本則課税標準額 |
---|---|
敷地面積が200㎡以下の戸建てが建つ土地、マンションの土地の持ち分 | その土地の固定資産税評価額の6分の1 |
敷地面積が200㎡超の戸建てが建つ土地 | 200㎡までの部分はその土地の固定資産税評価額の6分の1、200㎡超の部分は3分の1 |
更地 | その土地の固定資産税評価額 |
本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年4月
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