小規模住宅用地の固定資産税を計算する方法

ネットで小規模住宅用地の固定資産税の計算方法を調べると「固定資産税評価額の6分の1×1.4%」などと記されていますが、実はそう単純ではありません。
小規模住宅用地の固定資産税は、前年度の課税標準額や本則課税標準額、負担水準などを用いて計算する必要があります。
小規模住宅用地の固定資産税を計算する方法を解説しましょう。
目次
- 1. 小規模住宅用地の固定資産税を計算する手順
- 1-1. 必要なデータを揃える
- 1-2. 小規模住宅用地の本来の課税標準額(本則課税標準額)を計算する
- 1-3. 小規模住宅用地の負担水準を計算する
- 1-4. 小規模住宅用地の最終的な課税標準額を算出する
- 1-5. 小規模住宅用地の固定資産税を計算する
- まとめ - 小規模住宅用地の都市計画税は「本来の課税標準額」の計算方法だけが違う
小規模住宅用地の固定資産税を計算する手順
はじめに、小規模住宅用地の固定資産税を計算する手順をご説明します。
小規模住宅用地の固定資産税を計算する手順
- 必要なデータを揃える
- 本来の課税標準額(本則課税標準額)を計算する
- 負担水準を計算する
- 最終的な課税標準額を算出する
- 小規模住宅用地の固定資産税を計算する
小規模住宅用地の固定資産税を計算するためには、上記の5つの手順を踏まなければなりません。
つづいて、各手順の詳細を解説しましょう。
必要なデータを揃える
小規模住宅用地の固定資産税を計算するためには、以下の2つのデータが必要です。
- 前年度の固定資産税の課税標準額
- 今年度の固定資産税評価額
1つめの「前年度の固定資産税の課税標準額」は、その小規模住宅用地の前年の固定資産税を計算する際に用いた課税標準額です。
小規模住宅用地を含め、土地を所有すると固定資産税が課されますが、その税額は毎年以下のように計算します。
土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税
「前年度の固定資産税の課税標準額」とは、その小規模住宅用地の前年の固定資産税を計算する際に用いた課税標準額を指します。
たとえば、令和7年度の小規模住宅用地の固定資産税を計算するためには、令和6年度の固定資産税を計算した際に用いた課税標準額が必要になるといった具合です。
所有する小規模住宅用地の「前年度の固定資産税の課税標準額」は、前年に届いた固定資産税の課税明細書の「固定資産税の土地」の欄に「課税標準額」や「固定小規模課標」などの名目で記されています。
また、一部の市町村が発行する今年度の課税明細書には、「固定前年度課標等」「前年度分の固定資産税課税標準額(円)」などの名目で「前年度の固定資産税の課税標準額」が記されています。
一方、揃えるべき2つめのデータの「今年度の固定資産税評価額」とは、その小規模住宅用地の今年度の固定資産税評価額を指します。
小規模住宅用地の固定資産税評価額とは、市町村が評価した、その小規模住宅用地の適正な時価です。
所有する小規模住宅用地の「今年度の固定資産税評価額」は、今年度に届いた固定資産税の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
小規模住宅用地の固定資産税を計算するために必要なデータと入手先
必要なデータ | 入手先 |
---|---|
前年度の固定資産税の課税標準額 | 前年に届いた課税明細書の「固定資産税の土地」の欄に「課税標準額」や「固定小規模課標」などの名目で記されている。また、一部の市町村では、今年の課税明細書の「固定資産税の土地」の欄に「固定前年度課標等」「前年度分の固定資産税課税標準額(円)」などの名目で記されている。 |
今年度の固定資産税評価額 | 今年の課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されている。 |
なお、課税明細書を紛失するなどしてデータを揃えることができない場合は、市町村役場で公課証明書の交付を受けてください。
公課証明書とは、所有する土地や家屋の課税標準額、固定資産税評価額などが記された書面であり、遡ること5年分などの交付を請求できます。
余談ですが、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、固定資産税評価額をわかりやすく解説する記事を公開中です。
固定資産税評価額がよくわからないという方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
固定資産税評価額とは?わかりやすく解説(パパっとすぐわかる)
小規模住宅用地の本来の課税標準額(本則課税標準額)を計算する
データが揃えば、以下の式でその小規模住宅用地の固定資産税を計算する際の本来の課税標準額を計算します。
本来の課税標準額の計算式
今年度の固定資産税評価額÷6=本来の課税標準額
たとえば、今年度の固定資産税評価額が1,500万円であれば以下のように計算し、本来の課税標準額は250万円です。
本来の課税標準額の計算例
1,500万円(今年度の固定資産税評価額)÷6=250万円
小規模住宅用地を含め、土地の固定資産税は以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算します。
土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税
式に含まれる課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。
小規模住宅用地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、「住宅用地の特例(住宅が建つ土地の固定資産税が軽減される特例)」が適用されることにより、本来であれば「今年度の固定資産税評価額の6分の1」です。
つまり、ここで計算した「本来の課税標準額」が課税標準額になるというわけです。
しかし、小規模住宅用地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、「本来の課税標準額」ではありません。
「本来の課税標準額」などを用いて算出した、「最終的な課税標準額」が課税標準額となります。
難解ですが、小規模住宅用地の固定資産税の計算式を図解でわかりやすく解説すると以下のとおりです。

なお、ここで計算した「本来の課税標準額」を本則課税標準額と呼びます。
市町村によっては、課税明細書の「固定資産税の土地」の欄に「本則課税標準額」という名目の額が記されていますが、それはここで計算した「本来の課税標準額」です。
小規模住宅用地の負担水準を計算する
「本来の課税標準額」が計算できれば、その小規模住宅用地の負担水準を計算します。
負担水準とは、負担調整措置を適用するための割合であり、以下の式で計算してパーセントで表します。
負担水準の計算式
前年度の課税標準額÷本来の課税標準額×100=負担水準(%)
たとえば、その小規模住宅用地の「前年度の課税標準額」が260万円、「本来の課税標準額」が250万円であれば以下のように計算し、負担水準は104%です。
負担水準の計算例
260万円(前年度の課税標準額)÷250万円(本来の課税標準額)×100=104%
負担調整措置とは、地価が急激に上昇しても、固定資産税はゆっくりと高くなるように調整する措置です。
小規模住宅用地を含め、土地の固定資産税は地価に応じた額が課され、地価が急激に上昇すると税額が跳ね上がり、土地所有者の負担が重くなります。
これを防ぐための措置が負担調整措置です。
全ての土地には申告不要で負担調整措置が適用され、地価が急激に上昇しても、固定資産税はゆっくりと高くなるように調整されます。
負担調整措置が適用されない状況と、される状況のイメージをグラフでご紹介すると以下のとおりです。

負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく解説中です。
負担調整措置に興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)
小規模住宅用地の最終的な課税標準額を算出する
負担水準の計算が完了すれば、その小規模住宅用地の固定資産税を計算する際の「最終的な課税標準額」を算出します。
最終的な課税標準額は負担水準に応じて決定し、以下のとおりです。
小規模住宅用地の最終的な課税標準額
負担水準 | 最終的な課税標準額 |
---|---|
100%以上 | 「本来の課税標準額(本則課税標準額)」が最終的な課税標準額となる |
100%未満 | 「前年度の課税標準額+本来の課税標準額の5%(A)」が最終的な課税標準額となる |
負担水準が100%未満の状況における注意点1 | Aの上限は「本来の課税標準額」 |
負担水準が100%未満の状況における注意点2 | Aが「本来の課税標準額」の20%を下回る場合は、20%が最終的な課税標準額となる |
たとえば、先に「前年度の課税標準額」が260万円、「本来の課税標準額(本則課税標準額)」が250万円の小規模住宅用地の負担水準を104%と計算しました。
であれば、その小規模住宅用地の最終的な課税標準額は「本来の課税標準額」である250万円になるといった具合です。
なお、「総務省:固定資産税の概要」では、固定資産税のあらましなどをご確認いただけます。
小規模住宅用地の固定資産税を計算する
「最終的な課税標準額」の算出が完了すれば、その額を課税標準額として小規模住宅用地の固定資産税を計算します。
計算方法は、以下のとおりです。
小規模住宅用地の固定資産税の計算式
課税標準額(最終的な課税標準額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税
たとえば、「最終的な課税標準額」が250万円であれば以下のように計算し、その小規模住宅用地の固定資産税は3万5,000円となります。
小規模住宅用地の固定資産税の計算例
課税標準額(「最終的な課税標準額」である250万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=3万5,000円
以上で小規模住宅用地の固定資産税を計算する手順の解説の完了です。
なお、固定資産税の税率は市町村によって異なるため注意してください。
多くの市町村では1.4%ですが、財政難などを理由に1.5%や1.6%、1.7%の場合があります。
固定資産税を計算する小規模住宅用地が所在する市町村の税率は、その市町村のホームページにて確認することが可能です。
まとめ - 小規模住宅用地の都市計画税は「本来の課税標準額」の計算方法だけが違う
小規模住宅用地の固定資産税を計算する方法を解説しました。
ネットで小規模住宅用地の固定資産税を計算する方法を調べると、「固定資産税評価額の6分の1×1.4%」などと記されていますが、実はそう単純ではありません。
小規模住宅用地を含め、全ての土地には負担調整措置が適用され、負担調整措置適用後の税額を計算する必要があります。
負担調整措置適用後の税額の計算方法が、本記事でご紹介した内容です。
ちなみに、市街地に位置する小規模住宅用地には、多くの場合は固定資産税に加えて都市計画税も課されます。
小規模住宅用地の都市計画税を計算する手順は、本記事で解説した固定資産税を計算する手順とほぼ同じであり、以下のとおりです。
小規模住宅用地の都市計画税を計算する手順
- 必要なデータ(その小規模住宅用地の「前年度の都市計画税の課税標準額」と「今年度の固定資産税評価額」)を揃える
- その小規模住宅用地の「都市計画税の本来の課税標準額」を計算する(「都市計画税の本来の課税標準額」は「今年度の固定資産税評価額」の3分の1)
- その小規模住宅用地の負担水準を計算する(計算方法は「前年度の都市計画税の課税標準額」÷「都市計画税の本来の課税標準額」×100)
- 負担水準に応じて「最終的な課税標準額」を算出する(算出方法は固定資産税と同じ)
- 「最終的な課税標準額」に都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)を掛け算した額が小規模住宅用地の都市計画税となる
ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年4月
こちらの記事もオススメです