固定資産税の課税標準額とは?家屋と土地の課税標準額を解説

固定資産税の課税標準額とは?家屋と土地の課税標準額を解説

固定資産税の課税標準額とは、家屋や土地の固定資産税を計算する際に、税率を掛け算する基となる額です。

図解を用いて、固定資産税の課税標準額をわかりやすく簡単に解説しましょう。

目次

1. 固定資産税の課税標準額とは、税率を掛け算する基となる額

毎年4月ごろに届く固定資産税の課税明細書を見ると、課税標準額という名目の金額が記されています。

固定資産税の課税標準額とは、家屋や土地の固定資産税を計算する際に、税率を掛け算する基となる額であり、原則として、その家屋や土地の固定資産税評価額です。

家屋や土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その家屋や土地の「適正な時価」を意味します。

難解ですが、順を追って固定資産税の課税標準額をわかりやすく簡単に解説しましょう。

まずは、家屋や土地の固定資産税の計算方法を知ってください。

家屋の固定資産税の計算方法
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=家屋の固定資産税

土地の固定資産税の計算方法
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=土地の固定資産税

式に含まれる課税標準額が、固定資産税の課税明細書に記されている課税標準額です。

このように固定資産税は、課税標準額に税率を掛け算して計算します。

つぎに、課税標準額の意味を解説しましょう。

課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。

家屋の固定資産税を計算する際の課税標準額は、原則として、その家屋の固定資産税評価額です。

土地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、原則として、その土地の固定資産税評価額となります。

家屋や土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その家屋や土地の「適正な時価」を意味し、市場価格より低くなるのが通例です。

総じて、家屋や土地の固定資産税は、以下のように計算します。

家屋の固定資産税の計算方法(詳細版)
課税標準額(原則として、その家屋の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=家屋の固定資産税

土地の固定資産税の計算方法(詳細版)
課税標準額(原則として、その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=土地の固定資産税

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された家屋や土地の適正な時価であり、市場価格より低くなるのが通例

たとえば、固定資産税評価額が1,500万円の家屋と、1,000万円の土地を所有するとしましょう。

であれば以下のように計算し、家屋の固定資産税は21万円、土地の固定資産税は14万円です。

家屋の固定資産税の計算例
課税標準額(その家屋の固定資産税評価額である1,500万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=21万円

土地の固定資産税の計算例
課税標準額(その土地の固定資産税評価額である1,000万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=14万円

最後に、固定資産税の課税標準額は、先述のとおり「原則として、その家屋や土地の固定資産税評価額」であることを理解してください。

固定資産税には、いくつかの特例や軽減措置が設けられ、それらが適用されれば、課税標準額は固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となります。

例を挙げると、固定資産税評価額が1,000万円の土地の固定資産税を計算する際は、適用される特例や軽減措置がなければ、課税標準額も1,000万円となります。

しかし、適用される特例や軽減措置があれば、課税標準額は1,000万円から500万円に減るといった具合です。

課税標準額が減れば、課税標準額に税率を掛け算して計算する固定資産税は安くなります。

固定資産税の課税標準額とは、家屋や土地の固定資産税を計算する際に税率を掛け算する基となる額

課税標準額が固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となる特例や軽減措置とは、主に「住宅用地の特例」と「負担調整措置」です。

いずれも土地の固定資産税を計算する際の課税標準額が減る特例、および軽減措置となっています。

つづいて、それらの特例や軽減措置の詳細を解説しましょう。

なお、所有する家屋や土地の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。

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1-1. 住宅用地の固定資産税の課税標準額が減る「住宅用地の特例」

住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」などと呼ばれる特例が適用されます。

適用されれば、その土地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となります。

固定資産税において、その年の1月1日の時点で住宅が建つ土地を「住宅用地」と呼びます。

そして、その住宅用地に建つ住宅一戸あたりにつき200㎡までの部分が「小規模住宅用地」に、その住宅用地に建つ住宅の床面積の10倍までの部分が「一般住宅用地」に区分けされます。

住宅用地は、小規模住宅用地と一般住宅用地に区分けされる

住宅用地には住宅用地の特例が適用され、適用されれば、小規模住宅用地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1となります。

また、一般住宅用地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の3分の1となります。

住宅用地の特例適用時の固定資産税の課税標準額

土地の部分 課税標準額
小規模住宅用地(その住宅用地に建つ住宅一戸あたりにつき200㎡までの部分) 固定資産税評価額の6分の1
一般住宅用地(小規模住宅用地の部分を超える、その住宅用地に建つ住宅の床面積の10倍までの部分) 固定資産税評価額の3分の1

たとえば、面積が200㎡以下である、固定資産税評価額が1,000万円の土地を所有するとしましょう。

であれば、その土地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、本来であれば固定資産税評価額である1,000万円となり、固定資産税はその1.4%である14万円です。

一方、住宅用地の特例が適用されれば、その土地の全部分は小規模住宅用地となり、固定資産税を計算する際の課税標準額は、固定資産税評価額の6分の1、すなわち166万6,600円となります。

課税標準額が166万6,000円となれば、固定資産税はその1.4%である2万3,300円まで安くなります。

特例未適用時と適用時の固定資産税の計算式を比較すると、以下のとおりです。

住宅用地の特例未適用時の固定資産税の計算例
課税標準額(その土地の固定資産税評価額である1,000万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=14万円

住宅用地の特例適用時の固定資産税の計算例
課税標準額(その土地の固定資産税評価額である1,000万円の6分の1の166万6,000円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=2万3,300円

このように住宅が建つ土地は、住宅用地の特例が適用されることにより、課税標準額が固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となります。

課税標準額が固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額となれば、土地の固定資産税は安くなります。

200㎡以下の住宅が建つ土地を所有し、その課税標準額が固定資産税評価額の6分の1などであれば、それは住宅用地の特例によるものです。

ちなみに、固定資産税の課税標準額が対象となる資産の固定資産税評価額(適正な時価)であることは、「総務省:固定資産税の概要」にてご確認いただけます。

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1-2. 更地の固定資産税の課税標準額が減る「負担調整措置」

全ての土地には、負担調整措置という軽減措置が適用されます。

負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減する措置です。

そして、更地に負担調整措置が適用されれば、その固定資産税の課税標準額は、固定資産税評価額の70%が上限となります。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の更地を所有するとしましょう。

であれば、本来であれば課税標準額は1,000万円となり、固定資産税はその1.4%である14万円です。

しかし、負担調整措置が適用されれば、1,000万円の70%である700万円などが課税標準額となり、固定資産税はその1.4%である9万8,000円まで安くなります。

負担調整措置未適用時と適用時の固定資産税の計算式を比較すると、以下のとおりです。

負担調整措置未適用時の固定資産税の計算例
課税標準額(その土地の固定資産税評価額である1,000万円)×固定資産税の税率(主に1.4%)=14万円

負担調整措置適用時の固定資産税の計算例
課税標準額(その土地の固定資産税評価額である1,000万円の70%の700万円など)×固定資産税の税率(主に1.4%)=9万8,000円

更地を所有し、その課税標準額が固定資産税評価額の70%程度であれば、それは負担調整措置によるものです。

負担調整措置の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく簡単に解説しています。

土地を所有し、負担調整措置にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)

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2. 前年度課税標準額とは?

固定資産税の課税明細書を見ると、課税標準額と共に、前年度課税標準額や固定前年度課標等という名目の金額が記されていることがあります。

前年度課税標準額や固定前年度課標等とは、土地の昨年の固定資産税を計算した際に用いた課税標準額です。

土地を所有すると固定資産税が課されますが、その税額は、毎年以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算されます。

土地の固定資産税は毎年以下の式で計算する
課税標準額(原則として、その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

土地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、式に記したように「原則として、その土地の固定資産税評価額」です。

そして、前年度課税標準額や固定前年度課標等は、その土地の昨年の固定資産税を計算した際に用いた課税標準額となります。

昨年の課税標準額が課税明細書に記されているのは、負担調整措置を適用する際に用いたためです。

負担調整措置とは、土地所有者の税負担を軽減する措置であり、全ての土地に申告不要で適用されます。

適用されれば、固定資産税評価額が急激に高くなっても、課税標準額はゆっくりと高くなるように調整されます。

先述のとおり、土地の固定資産税を計算する際の課税標準額は固定資産税評価額ですが、土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その土地の適正な時価を意味します。

土地の時価とは地価であり、地価が急激に上昇すると、土地の固定資産税評価額は急激に高くなります。

固定資産税評価額が急激に高くなれば課税標準額も急激に高くなり、課税標準額に税率を掛け算して計算する土地の固定資産税も大幅に高くなります。

それでは、土地所有者の税負担が重くなり、納税できません。

よって、全ての土地には負担調整措置が適用され、固定資産税評価額が急激に高くなっても、課税標準額はゆっくりと高くなるように調整されます。

負担調整措置が適用されない状況と、適用される状況のイメージを図解でご紹介すると、以下のとおりです。

全ての土地には負担調整措置が適用され、固定資産税評価額が急激に上昇しても課税標準額はゆっくりと上昇するように調整される

上記のように負担調整措置が適用されれば、課税標準額はゆっくりと高くなるように調整されますが、調整具合は「前年度の課税標準額」と「今年度の固定資産税評価額」などを基に決定されます。

したがって、土地を所有する方の固定資産税の課税明細書には、負担調整措置を適用する際に用いた前年度の課税標準額、すなわち「前年度課税標準額」または「固定前年度課標等」が記されています。

ちなみに、固定資産税の課税明細書には「固定本則課税標準額」という名目の金額も記されていることがあります。

固定本則課税標準額の詳細は、当サイト「固定資産税をパパッと解説」にて公開中の記事にてわかりやすく簡単に解説中です。

土地を所有し、固定本則課税標準額が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

お役立ち記事
固定本則課税標準額とは?図解・イラスト付きでスッキリ解決

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まとめ - 消費税も課税標準額に税率を掛け算して計算する

固定資産税の課税標準額を解説しました。

課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が同じことがあれば、違うこともあります。

固定資産税を計算する際の課税標準額は、その家屋や土地の固定資産税評価額です。

しかし、適用される特例や軽減措置があれば、固定資産税評価額から一定の額が差し引かれた額が課税標準額となります。

そして、固定資産税は、課税標準額に税率を掛け算して計算します。

固定資産税の課税標準額をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、家屋や土地を取得すると不動産取得税が課されますが、不動産取得税も以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算します。

不動産取得税の計算方法
課税標準額(原則として、取得した家屋や土地の固定資産税評価額)×不動産取得税の税率(4%、または3%)=不動産取得税

不動産取得税を計算する際の課税標準額は、式に記したように「原則として、取得した家屋や土地の固定資産税評価額」であり、固定資産税と変わりません。

また、お馴染みの消費税も、実は以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算します。

消費税の計算方法
課税標準額(品物を購入するためや、サービスを受けるためなどに支払った金額)×消費税の税率(10%)=消費税

消費税を計算する際の課税標準額は、式に記したように「品物を購入するためや、サービスを受けるためなどに支払った金額」です。

その詳細は「国税庁タックスアンサーNo.6301 課税標準」にてご確認いただけます。

このように課税標準額は、様々な税金を計算する際の基となる額であり、課される税金によって意味が同じことがあれば、違うこともあります。

ご紹介した内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2025年2月

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