相続税は、いつの固定資産税評価額で計算する?

相続税は、いつの固定資産税評価額で計算する?

相続した建物の価額は、被相続人が亡くなった時点の固定資産税評価額で評価します。

また、相続時精算課税により贈与を受けた建物の相続税を計算する際は、受贈した時点の固定資産税評価額で価額を評価します。

相続した建物や、相続時精算課税により受贈した建物の相続税を計算する際に、いつの固定資産税評価額で価額を評価するかご紹介しましょう。

目次

1. 相続税の計算時は、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額を用いる

まずは、建物を相続し、相続税を計算するためにその建物の価額を評価する状況において、いつの固定資産税評価額を用いるかご紹介しましょう。

相続した建物の価額は、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額を用いて評価します。

たとえば、令和元年に被相続人が逝去された場合は、令和元年の固定資産税評価額により、相続した建物の価額を評価します。

また、令和元年に被相続人が逝去され、令和2年に相続税を計算するために建物の価額を評価する際は、令和元年の固定資産税評価額を用います。

相続税の建物の価額は、いつの固定資産税評価額で評価する?

ここで気になるのが、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額の調べ方です。

被相続人が逝去された年の固定資産税の課税明細書が手元にある場合は、課税明細書を見ることにより固定資産税評価額を把握できます。

課税明細書の家屋の欄に、価格や評価額などの名目で記された金額が、建物の固定資産税評価額です。

紛失などにより課税明細書の内容を確認できない場合は、相続した建物が所在する市町村の役場に出向き、固定資産評価証明書の交付を請求することにより、その固定資産税評価額を確認できます。

固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳の写しであり、建物を相続しつつ相続税の申告を行う際は、固定資産評価証明書の提出を求められます。

固定資産課税台帳とは、その市町村内に所在する固定資産税の対象となる不動産の固定資産税評価額などが記された台帳であり、市町村長が作成し、市町村役場に備え付けられています。

固定資産評価証明書は、市町村役場のホームページにてダウンロードできる「固定資産評価証明書交付申請書」などと呼ばれる申請書に、必要事項を記載しつつ市町村役場の窓口に提出することにより交付を請求することが可能です。

申請書には「必要年度」などの名目で、いつの年の固定資産税評価額が記された固定資産評価証明書の交付を希望するか記載する項目があるため、被相続人の方が逝去された年を記入しつつご提出ください。

そうすれば、被相続人の方が逝去された年の固定資産税評価額を確認できます。

被相続人が逝去した年の固定資産税評価額は固定資産評価証明書にて確認できる

なお、固定資産税における年度は1月1日から12月31日のため留意してください。

たとえば、被相続人の方が令和元年2月1日にご逝去されたのであれば、令和元年度の固定資産評価証明書の交付を希望します。

また、固定資産評価証明書の交付を請求できるのは、原則として、その不動産を所有する方、またはそのご家族の方のみであり、それ以外の方が交付を請求する際は、不動産の所有者から預かった委任状が必要です。

つづいて、建物を相続し、相続税を計算するためにその建物の価額を評価する状況において、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額を用いることの根拠をご紹介しましょう。

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1-1. いつの固定資産税評価額を用いるかは、相続税法で規定されている

建物を相続しつつ相続税を計算する状況において、その建物の価額は、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額を用いて評価します。

その根拠は、相続税法民法にて確認することが可能です。

相続税法とは、相続税に関することを定めた法律であり、同法律の第二十二条には、いつの時点の価額で相続した財産を評価するか記されています。

相続税法の第二十二条を簡単にご紹介すると、以下のとおりです。

相続税法 第二十二条 (評価の原則)
相続により取得した財産の価額は、相続人がその財産を取得した時点の時価により評価する

つまり、建物を相続し、その相続税を計算するために建物の価額を評価する状況において、その建物の価額は、相続人が建物を相続した時点の固定資産税評価額を用いるというわけです。

相続人が建物を相続した時点とは、相続を開始した時点ですが、相続が開始される時点の定義は、民法の第八百八十二条により定められています。

民法とは、市民生活に関する規律を定めた法律であり、同法律の第八百八十二条を簡単にご紹介すると以下のとおりです。

民法 第八百八十二条(相続開始の原因)
相続は、被相続人の死亡によって開始する

よって、建物を相続しつつ相続税を計算する状況において、相続した建物の価額を評価する際は、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額を用いることとなります。

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2. 相続時精算課税の相続税の計算時は、受贈した年の固定資産税評価額を用いる

ここからは、相続時精算課税により建物の贈与を受けた方が、贈与者が亡くなることにより相続税を計算する際に、いつの建物の固定資産税評価額を用いて価額を評価するかご紹介しましょう。

相続時精算課税により贈与を受けた建物の相続税を計算する際は、贈与を受けた年の固定資産税評価額を用いて価額を評価します。

相続時精算課税の相続税を計算する際は、受贈した時点の建物の固定資産税評価額で価額を評価する

建物の贈与を受けた年の固定資産税評価額は、その年の4月ごろに市町村役場から届いた固定資産税の課税明細書にて確認することが可能です。

建物を受贈した年の課税明細書を紛失している場合は、市町村役場にて固定資産評価証明書の交付を請求することにより、贈与を受けた年の固定資産税評価額を確認できます。

固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳の写しです。

固定資産課税台帳とは、市町村内に所在する建物や土地などの固定資産税評価額に関する情報が記された台帳です。

固定資産評価証明書は、市町村役場の窓口に必要事項を記載した申請書を提出することにより交付を請求できます。

申請書を提出する際は、建物の贈与を受けた年を記入し、その年の固定資産税評価額が記された固定資産評価証明書の交付を請求することを担当者にお伝えください。

なお、相続時精算課税により贈与を受けた建物の相続税を計算する際に、贈与を受けた年の固定資産税評価額を用いて価額を評価することの根拠は、「国税庁タックスアンサーNo.4103 相続時精算課税の選択」にて確認することが可能であり、その箇所をわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

相続時精算課税の適用を受け、相続税を計算する際に相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額となります

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まとめ - 土地の価額は、相続した年の路線価を用いて評価する

相続した建物や、相続時精算課税により受贈した建物の相続税を計算する際に、いつの固定資産税評価額で建物の価額を評価するかご紹介しました。

相続した建物の価額は、被相続人が亡くなった年の固定資産税評価額を用いて評価します。

たとえば、被相続人が今年逝去され、今年相続した建物の価額は、今年の固定資産税評価額を用いて評価します。

また、被相続人が昨年逝去され、昨年建物を相続しつつ今年相続税を計算するために建物の価額を評価する際は、昨年の固定資産税評価額を用います。

これは、民法により相続は被相続人が亡くなった時点で開始されると定められ、相続税法により相続した財産の価額は、相続人が財産を相続した時点の時価を基に評価すると定められていることが理由です。

一方、相続時精算課税により建物を受贈し、その相続税を計算するために建物の価額を評価する際は、贈与を受けた年の固定資産税評価額を用います。

その根拠は、国税庁のタックスアンサーにてご確認いただけます。

建物の相続税を計算するために、いつの固定資産税評価額で価額を評価するかお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、土地を相続しつつ相続税を計算する際は、その土地の価額を評価しなければなりませんが、その価額は、被相続人が亡くなった年の相続税路線価を基に評価します。

相続税路線価とは、土地を相続した方が相続税を計算しやすいように国税庁が毎年公開する、主に市街地に位置する道路に接する宅地の1平方メートルあたりの価額です。

しかし、その年の相続税路線価が発表されるのは、その年の7月ごろです。

よって、7月より前に被相続人が亡くなり、相続した土地の価額はいつの相続税路線価を用いて評価するか気になりますが、7月にその年の相続税路線価が公開された後に、その年の相続税路線価を用いて評価します。

土地の相続税は、被相続人が亡くなった年の相続税路線価を用いて評価する

その根拠は「国税庁タックスアンサーNo.4604 路線価方式による宅地の評価」の「財産評価に使用する路線価図等の年分」に記された記述にてご確認いただけ、その箇所を抜粋すると以下のとおりです。

相続税を申告する状況において土地の評価に当たっては、被相続人がお亡くなりになられた日が属する年の相続税路線価を用いて評価します。

その年の相続税路線価がまだ公開されていない場合は、その年の相続税路線価が公開されてから評価を行ってください。

であれば、7月といわず、もう少し早く相続税路線価を公開しても良さそうですが、年の上旬は確定申告などで税務職員の方がお忙しいのでしょう。

ご紹介した内容が、相続した土地の価額はいつの固定資産税評価額を用いて評価するか、お調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2022年6月

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