固定資産税路線価と相続税路線価は同じでしょ?違うんです
固定資産税路線価と相続税路線価という言葉を見聞きしますが、意味は同じです。
といいたいところですが、実は大きく違います。
固定資産税路線価と相続税路線価の意味と価格の違いをパパっと簡単に解説しましょう。
目次
1. 固定資産税路線価と相続税路線価の意味の違い
まずは、固定資産税路線価と相続税路線価の意味の違いをご説明します。
固定資産税路線価とは、市町村が市街地に位置する土地の固定資産税を計算する際に道路に付ける価格です。
これに対して、相続税路線価とは、国税庁が市街地などに位置する土地の相続税や贈与税を計算するために公表する、道路に接する宅地の1平方メートルあたりの時価となっています。
難解ですが、固定資産税路線価は土地の固定資産税を、相続税路線価は土地の相続税や贈与税を計算するための土地の価格と考えれば簡単です。
つづいて、固定資産税路線価と相続税路線価の違いをより深く理解していただくために、2つの路線価の詳細をパパっと簡単に解説しましょう。
なお、ここから宅地という言葉を幾度か用いますが、宅地とは、建物を建てるための土地、または既に建てられている建物を維持するために必要となる土地を意味するため留意してください。
1-1. 固定資産税路線価は土地の固定資産税を計算するための価格
それでは、固定資産税路線価の詳細をパパっと簡単に解説します。
ところで、皆さんは土地を所有すると固定資産税が課せられることをご存知でしょうか。
1月1日の時点で土地を所有する方には、その土地が所在する市町村から固定資産税が課せられ、その1月1日が属する年の4月ごろに納税通知書と納付書が届きます。
この土地を所有することによって課せられる固定資産税の額ですが、一律ではありません。
土地の固定資産税は、市町村が評価したその土地の適正な時価を基に計算され、土地によって税額が違います。
例を挙げると、市町村が時価が高いと評価した土地の所有者に課せられる固定資産税は高くなり、時価が低いと評価した土地の所有者に課せられる固定資産税は安くなるといった具合です。
そうすれば、土地の所有者の負担が減り、固定資産税を納めやすくなります。
しかし、各土地の適正な時価に応じて税額を決定するためには、市町村は各土地の適正な時価を評価しなければなりません。
とはいうものの、日本の国土は細かく区切られ、各土地の適正な時価をひとつひとつ評価していては課税するために莫大なコストが掛かります。
特に市街地には土地が集中し、各土地の適正な時価を評価するのは困難です。
そのため、市町村が市街地の土地の適正な時価を評価する際は、まずは主要となる道路を選び、主要となる道路に接する宅地から、歪ではない標準的な形状の宅地を選定します。
選定された宅地を標準宅地と呼び、標準宅地の選定が済めば、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価します。
標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価が評価されれば、その時価を標準宅地と接する主要な道路や、主要な道路と接続するその他の道路に付設します。
たとえば、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を10万円と評価すれば、その標準宅地と接する主要な道路には10万円を、主要な道路と接続するその他の道路には9万円が付設されるといった具合です。
この主要な道路やその他の道路に付設された価格が、固定資産税路線価です。
そして、固定資産税路線価は、主要な道路やその他の道路と接する標準宅地以外の宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価する際の基準となります。
このように標準宅地の1平方メートルあたりの時価を道路に固定資産税路線価として付設しつつ各土地の時価を評価する方法を市街地宅地評価法と呼び、市街地宅地評価法を用いれば、市街地に位置する多数の土地の適正な時価を効率よく評価できます。
市街地宅地評価法を用いて各土地の1平方メートルあたりの適正な時価が評価されれば、評価額に各土地の敷地面積を掛け算しつつそれぞれの土地全体の適正な時価を計算します。
土地全体の適正な時価が計算されれば、その時価に固定資産税の税率である1.4%を掛け算するなどして、各土地の固定資産税額が決定します。
固定資産税路線価とは、市町村が市街地宅地評価法を用いて市街地に位置する土地の適正な時価を評価する際に道路に付設した価格です。
以下は、固定資産税路線価が記された路線価図のイメージであり、日本全国各地の固定資産税の路線価図は「一般財団法人資産評価システム研究センター」が運営するサイト「全国地価マップ」の固定資産税路線価のページにて確認できます。
1-2. 相続税路線価とは土地の相続税などを計算するための時価
つぎに、相続税路線価の詳細をパパっと簡単に解説します。
土地を所有すると固定資産税が課せられますが、土地を相続すると相続税が、土地を無料で譲り受けるなどの贈与を受けると贈与税が課せられます。
この土地の相続税や贈与税は、その土地の売買価格ではなく、時価を基に税額が計算されます。
売買価格は売り主と買い主の意思によって決定されるため、売買価格を基に相続税や贈与税を計算しては公平に課税されません。
よって、土地の相続税や贈与税は、統一された土地の時価を基に計算する必要があります。
この統一された土地の時価が、相続税路線価です。
相続税路線価とは、土地の相続税や贈与税を計算するために、毎年7月ごろに国税庁が公表する日本全国各地の道路に接する宅地の1平方メートルあたりの時価です。
土地の相続税や贈与税は相続税路線価を基に計算され、以下が国税庁が公表する相続税路線価が記された路線価図です。
相続税路線価の路線価図
出典:国税庁「路線価図・評価倍率表」
上記の路線価図の道路には3ケタや2ケタの数字とアルファベットが記されていますが、数字が千円単位で表した相続税路線価であり、「200D」と記されている場合は「200×1,000円=20万円」と計算し、その道路に接する宅地の1平方メートルあたりの時価は20万円です。
また、道路に150Cと記されている場合は「150×1,000円=15万円」と計算し、その道路と接する宅地の1平方メートルあたりの時価は15万円となります。
そして、1平方メートルあたりの時価にその宅地の面積を掛け算した額が、その宅地全体の時価となります。
例を挙げると、1平方メートルあたりの時価が10万円、敷地面積が100平方メートルの宅地の場合は「10万円×100平方メートル=1,000万円」と計算し、その宅地全体の時価は1,000万円です。
その宅地全体の時価に相続税や贈与税の税率を掛け算した額が、その宅地を相続した場合や、その宅地の贈与を受けた場合に課せられる相続税や贈与税の額となります。
ただし、相続税には基礎控除など多くの控除が設けられているため、実際に課せられる税額は大幅に安くなります。
一方、贈与税は控除制度が少なく、土地の贈与税は高額になりがちです。
なお、固定資産税の税率は1.4%ですが、相続税や贈与税の税額は累進課税であり、相続や贈与を受けた土地の時価に応じて税率が異なります。
相続税の税率は「国税庁タックスアンサーNo.4155 相続税の税率」にて、贈与税の税率は「国税庁タックスアンサーNo.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」などにて確認することが可能です。
2. 固定資産税路線価と相続税路線価の価格の違い
ここからは、固定資産税路線価と相続税路線価の価格の違いをご説明します。
固定資産税路線価は、市町村よって評価された標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価が道路に付設された価格です。
一方、相続税路線価は、土地の相続税や贈与税を計算するために、国税庁が公表する日本全国各地の道路に接する宅地の1平方メートルあたりの時価となっています。
このように固定資産税路線価と相続税路線価は意味が全く異なるため、それぞれの価格に関連はないと考えがちですが、そうではありません。
固定資産税路線価と相続税路線価は、公示地価を基準として価格が設定されています。
公示地価とは、毎年3月ごろに国土交通省が公表する、日本全国各地に点在する約2万6千ヵ所の土地の1平方メートルあたりの正常な価格であり、公示地価が公表される地点を標準地と呼びます。
毎年3月ごろになると「今年の公示地価が公示され、日本全国1位は東京の山野楽器銀座本店であり5,000万円でした」などと報道されますが、あの価格が公示地価です。
そして、市町村が標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価する際は、最寄りの標準地の公示地価の7割程度と評価します。
たとえば、最寄りの標準地の公示地価が10万円であれば、その標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を7万円と評価するといった具合です。
よって、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価から付設される固定資産税路線価は、公示地価の7割程度となります。
また、国税庁が公表する相続税路線価は、最寄りの標準地の公示地価の8割程度と評価します。
例を挙げると、最寄りの標準地の公示地価が10万円であれば、その周辺の相続税路線価は8万円に設定するといった具合です。
固定資産税路線価と相続税路線価は公示地価を基準として価格が設定され、相続税路線価は固定資産税路線価より高くなります。
これが、固定資産税路線価と相続税路線価の価格の違いです。
なお、標準地の公示地価は、その周辺の土地が売買される際の価格を参考に付けられるため実勢価格と考えることが可能です。
そのため、固定資産税路線価は実勢価格の7割程度であり、相続税路線価は実勢価格の8割程度と考えることができます。
まとめ - どちらも結局は土地の税金を計算するための価格
固定資産税路線価と相続税路線価の意味と価格の違いを解説しました。
固定資産税路線価とは、市町村が市街地に位置する土地の固定資産税を計算するために道路に付けた価格です。
これに対して、相続税路線価とは、土地の相続税や贈与税を計算するために国税庁が公表する、道路に接する宅地の1平方メートルあたりの時価となっています。
このように固定資産税路線価と相続税路線価は、意味が大きく異なります。
とはいうものの、どちらも土地の税金を計算するために付けられる価格のため、土地の税金の価格などと覚えれば良いでしょう。
最後に、固定資産税路線価と相続税路線価の違いを表にまとめます。
意味 | 誰が付ける? | 価格の目安 | |
---|---|---|---|
固定資産税路線価 | 市街地に位置する土地の固定資産税を計算するために道路に付けられた価格 | 市町村 | 公示地価の7割程度であり、実勢価格の7割程度と考えることができる |
相続税路線価 | 道路に接する宅地の相続税や贈与税を計算するために付けられた、道路に接する宅地の1㎡あたりの時価 | 国税庁 | 公示地価の8割程度であり、実勢価格の8割程度と考えることができる |
ご紹介した内容が、固定資産税路線価と相続税路線価の意味や価格の違いをお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2021年11月
こちらの記事もオススメです