固定資産税の負担水準とは?(図解でわかりやすい!)

固定資産税の負担水準とは?

固定資産税の負担水準とは、その土地の前年度の固定資産税の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値です。

そして、固定資産税の負担水準は、土地に掛かる固定資産税が急激に上昇することを抑えるための措置である「負担調整措置」に活用されます。

固定資産税に関することを定めた法律「地方税法」を基に、固定資産税の負担水準をわかりやすく簡単に解説しましょう。

目次

1. 固定資産税の負担水準とは、前年度の課税標準額を今年度の固定資産税評価額で割り算した数値

それでは、固定資産税の負担水準をわかりやすく簡単に解説します。

その前に、土地の固定資産税が計算される仕組みを理解してください。

土地を所有すると毎年固定資産税が課せられますが、その税額は、以下の式を用いて毎年計算されます。

土地の固定資産税は毎年以下の式で計算される
課税標準額×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

式に含まれる課税標準額とは、何かしらの税金が課せられる状況において税率を掛け算する基となる額であり、課せられる税金によって意味が異なります。

土地の固定資産税を計算する場合における課税標準額は、原則として、その土地の今年度の固定資産税評価額です。

その土地の今年度の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その土地の今年度の適正な時価です。

土地には売買価格や実勢価格がありますが、それらは売り主や買い主の希望によって決定されるため、売買価格に税率を掛け算しては、固定資産税が公平に課税されません。

よって、土地の固定資産税は、市町村によって評価されたその土地の今年度の適正な時価、すなわち、今年度の固定資産税評価額に税率を掛け算しつつ税額が決定されるというわけです。

つまり、土地の固定資産税は、毎年以下の式で計算しつつ税額が決定されます。

厳密には土地の固定資産税は毎年以下の式で計算する
課税標準額(その土地の今年度の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

そして、固定資産税の負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値であり、パーセントで表します。

負担水準の具体的な計算式は、以下のとおりです。

負担水準の計算式
その土地の前年度の課税標準額÷その土地の今年度の固定資産税評価額×100=負担水準(パーセント)

たとえば、前年度の課税標準額が1,100万円、今年度の固定資産税評価額が1,000万円の土地があったとしましょう。

その場合は「1,100万円÷1,000万円×100=110」と計算し、負担水準は110%です。

負担水準の計算例
1,100万円(その土地の前年度の課税標準額)÷1,000万円(その土地の今年度の固定資産税評価額)×100=110%(負担水準)

また、前年度の課税標準額が1,000万円、今年度の固定資産税評価額が1,100万円の土地があったとしましょう。

その場合は「1,000万円÷1,100万円×100=91」と計算し、負担水準は91%となります。

負担水準の計算例
1,000万円(その土地の前年度の課税標準額)÷1,100万円(その土地の今年度の固定資産税評価額)×100=91%(負担水準)

負担水準は、前年度の課税標準額より今年度の固定資産税評価額が低ければ、100%を超えます。

反対に、前年度の課税標準額より今年度の固定資産税評価額が高ければ、100%未満となります。

前年度の課税標準額と今年度の固定資産税評価額が同じであれば、負担水準は100%です。

負担水準を図解でわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

固定資産税の負担水準を図解で解説

なお、所有する土地の前年度の課税標準額は、前年の4月ごろにご自宅に届いた、前年度の固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書を見れば確認できます。

所有する土地の今年度の固定資産税評価額は、今年の4月ごろにご自宅に届く、または届いた、今年度の固定資産税の納税通知書に同封されている課税標準額に記されています。

課税明細書に価格、当該年度価格、固定資産評価額、評価額などの名目で記されている金額が、所有する土地の今年度の固定資産税評価額です。

加えて、先に「土地の固定資産税を計算する場合における課税標準額は、原則として、その土地の今年度の固定資産税評価額」とご説明しましたが、住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」などと呼ばれる特例が適用され、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の6分の1、または3分の1などになります。

さらに、土地の固定資産税評価額は、令和元年、令和3年、令和6年など、3年に一度見直されます。

具体的には、周辺の地価が上がるなどすれば固定資産税評価額は高くなり、地価が下がるなどすれば固定資産税評価額は下がります。

ようするに、地価が上がれば固定資産税評価額が高くなり、それに伴い課税標準額が上昇し、課税標準額に税率を掛け算しつつ税額が計算される固定資産税も高くなるというわけです。

固定資産税評価額が上昇すれば課税標準額も上昇し、固定資産税は高くなる

固定資産税の負担水準の正確な意味は、固定資産税に関することを定めた法律「地方税法」の附則の第十七条の第八号のイに記され、イをわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

地方税法附則 第十七条(土地に対して課する令和三年度から令和五年度までの各年度分の固定資産税及び都市計画税の特例に関する用語の意義)第八号のイ
固定資産税の負担水準とは、その土地の前年度の固定資産税の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で除算した数値である

つづいて、固定資産税の負担水準が活用される場面をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。

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2. 固定資産税の負担水準は、負担調整措置で活用される

固定資産税の負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値であり、パーセントで表します。

ここで気になるのが負担水準を計算する理由ですが、負担水準は、固定資産税の負担調整措置を適用するために計算します。

固定資産税の負担調整措置とは、土地の固定資産税評価額が急激に高くなるなどして課税標準額が短期間に上昇し、それに伴い固定資産税が高くなり、土地の所有者の税負担が重くなることを防ぐ措置です。

この記事の「1. 固定資産税の負担水準とは、前年度の課税標準額を今年度の固定資産税評価額で割り算した数値」にてご紹介したとおり、土地の固定資産税を計算する場合における課税標準額は、原則としてその土地の固定資産税評価額です。

土地の固定資産税評価額は周辺の経済状況と連動し、駅ができるなどして地価が高騰すれば、固定資産税評価額も短期間に上昇することとなります。

固定資産税評価額が短期間に上昇すれば、課税標準額も短期間に上昇します。

課税標準額が短期間に上昇すれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算される土地の固定資産税も急激に上昇し、土地の所有者の税負担が重くなります。

これを防ぐのが、固定資産税の負担調整措置です。

負担調整措置が適用されることにより、土地の固定資産税評価額が急激に高くなる状況であっても、課税標準額は穏やかに上昇するように調整されます。

課税標準額が穏やかに上昇すれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する固定資産税が急激に上昇せず、土地の所有者の税負担が軽減されます。

土地の固定資産税は負担調整措置があることにより急激に上昇しない

そして、負担調整措置は、負担水準によって課税標準額の調整具合が決定されます。

また、負担調整措置は、住宅用地と商業地等によって課税標準額の調整具合が異なります。

住宅用地とは住宅が建つ土地であり、商業地等とは住宅以外の家屋が建つ土地や更地です。

固定資産税において土地は、住宅用地と商業地等に大きく区分され、負担調整措置による課税標準額の調整具合は、負担水準、住宅用地、商業地等という3つの要素によって決定されます。

固定資産税において土地は住宅用地と商業地等に区分され、適用される負担調整措置が異なる

ここから、住宅用地に適用される負担調整措置の詳細と、商業地等に適用される負担調整措置の詳細をわかりやすく簡単に解説しましょう。

なお、負担調整措置による課税標準額の調整具合は、市町村によって異なる場合があり、調整具合は定期的に見直されるため注意してください。

現在適用される正確な調整具合は、所有する土地が所在する地域を管轄する市町村のホームページ内に設置されている検索窓に、「固定資産税 令和4年 負担調整措置」などと入力しつつ検索することによりご確認いただけます。

2-1. 住宅用地の負担水準による負担調整措置

住宅が建つ土地には、住宅用地の負担調整措置が適用されます。

課税標準額の調整具合は負担水準によって異なり、以下のとおりです。

なお、これからご紹介する調整具合には「住宅用地の特例率」という言葉が含まれます。

「住宅用地の特例率」は、所有する土地の面積が200平方メートル(約60坪)以下であれば16.6%とお考えください。

所有する土地の面積が200平方メートルを超える場合は、200平方メートルまでの部分は16.6%、200平方メートルを超える部分は33.3%です。

そして、所有する土地の面積が200平方メートルを超える場合は、200平方メートルまでの部分と、200平方メートルを超える部分の課税標準額を個別に計算し、それぞれの課税標準額に固定資産税の税率を掛け算した答えの合計が、その土地全体の固定資産税となります。

住宅用地の負担調整措置

負担水準が100%以上の場合
負担水準が100%以上であれば、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した額となります。

たとえば、今年度の固定資産税評価額が1,200万円の土地であり、住宅用地の特例率が16.6%であれば「1,200万円×16.6%=199万2,000円」と計算し、今年度の課税標準額は199万2,000円です。
負担水準が100%未満の場合
負担水準が100%未満であれば、今年度の課税標準額は、「前年度の課税標準額に、今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した答えの5%を足し算した額」となります。

たとえば、前年度の課税標準額が200万円、今年度の固定資産税評価額が1,200万円、住宅用地の特例率が16.6%であれば「200万円+1,200万円×16.6%×5%=209万9,600円」と計算し、その土地の今年度の課税標準額は209万9,600円です。

ただし、「前年度の課税標準額に、今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した答えの5%を足し算した額」が、「今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した額」を上回る場合は、今年度の課税標準額は「今年度の固定資産税評価額×住宅用地の特例率」となります。

また、「前年度の課税標準額に、今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した答えの5%を足し算した額」が、「今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した額」の20%に満たない場合は、今年度の課税標準額は「今年度の固定資産税評価額に住宅用地の特例率を掛け算した答えの20%」です。

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2-2. 商業地等の負担水準による負担調整措置

住宅以外の家屋が建つ土地や更地には、商業地等の負担調整措置が適用されます。

課税標準額の調整具合は負担水準によって異なり、以下のとおりです。

商業地等の負担調整措置

負担水準が70%を超える場合
負担水準が70%を超える場合は、今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の70%となります。

たとえば、その土地の今年度の固定資産税評価額が1,000万円であれば、70%である700万円がその土地の今年度の課税標準額になるといった具合です。
負担水準が60%以上70%以下の場合
負担水準が60%以上70%未満であれば、今年度の課税標準額は、前年度の課税標準額と同額となります。

たとえば、その土地の前年度の課税標準額が1,000万円であれば、その土地の今年度の課税標準額は1,000万円に据え置かれるといった具合です。
負担水準が60%未満の場合
負担水準が60%未満であれば、その土地の今年度の課税標準額は、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を足した額となります。

たとえば、その土地の前年度の固定資産税評価額が1,000万円であり、今年度の固定資産税評価額が1,100万円であれば「1,000万円+1,100万円×5%=1,055万円」と計算し、その土地の今年度の課税標準額は1,055万円です。

ただし、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を足した額が、今年度の固定資産税評価額の60%を上回る場合は、その土地の今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の60%となります。

また、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を足した額が、今年度の固定資産税評価額の20%を下回る場合は、その土地の今年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の20%です。

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まとめ - 負担水準は、都市計画税の負担調整措置にも適用される

固定資産税の負担水準をわかりやすく簡単にご紹介しました。

固定資産税の負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値であり、パーセントで表します。

前年度の課税標準額より今年度の固定資産税評価額が低ければ、負担水準は100%を超えます。

前年度の課税標準額より今年度の固定資産税評価額が高ければ、負担水準は100%未満となります。

前年度の課税標準額と今年度の固定資産税評価額が同額であれば、負担水準は100%です。

そして、負担水準は、固定資産税の負担調整措置で活用されます。

固定資産税の負担調整措置とは、土地の固定資産税評価額が急激に上昇するなどして課税標準額が短期間に高くなり、土地の所有者の税負担が重くなることを防ぐ措置です。

土地の固定資産税は、負担調整措置が適用されることにより、固定資産税評価額が急激に上昇するなどしても、課税標準額は穏やかに上昇するように調整されます。

固定資産税評価額が急激に上昇しても、負担調整措置により課税標準額が穏やかに上昇すれば、土地の所有者の税負担が軽減されます。

なお、各市町村のホームページは、負担水準を以下のように説明していることがあります。

負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額が、その土地の今年度の固定資産税評価額と比べて、どの程度の割合であるかを表した数値

負担水準は、その土地の前年度の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値のため、上記の説明で間違いありません。

しかし、当コンテンツは、負担水準をわかりやすく簡単に解説する趣旨のため、地方税法に則り、負担水準を「その土地の前年度の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値」と単純明快にご説明させていただきました。

固定資産税の負担水準をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、今回ご紹介した負担調整措置は、固定資産税だけではなく都市計画税にも適用されます。

都市計画税とは、主に市街地に位置する不動産の所有者に課せられる税金であり、都市部に土地を所有する方は、固定資産税と共に課税されます。

土地に掛かる都市計画税の負担調整措置も負担水準を基に計算され、土地の固定資産税評価額が急激に上昇した場合であっても、都市計画税の課税標準が穏やかに上昇するように調整されます。

都市計画税の負担水準は、その土地の前年度の都市計画税の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算しつつ計算し、具体的な計算式は以下のとおりです。

土地の都市計画税の負担水準の計算式
その土地の前年度の都市計画税の課税標準額÷その土地の今年度の固定資産税評価額×100=都市計画税の負担水準

ご紹介した内容が、負担水準をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年3月
記事公開日:2021年7月

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