注文住宅の固定資産税を安くする方法

注文住宅の固定資産税を安くする方法

注文住宅は、屋根の勾配を緩くする、上空から見下ろした形状を四角形に近くする、外壁材をサイディングにする、サイズが大きすぎないシステムキッチンやユニットバスを導入するなどすれば、固定資産税を安くできます。

固定資産税を安くする注文住宅の建て方をご紹介しましょう。

なお、ご紹介する固定資産税を安くする建て方は噂などではなく、総務省の告示「固定資産評価基準 第二章 家屋」に則っています。

固定資産評価基準とは、総務大臣が内容を定めた、市町村が家屋や土地の適正な時価を評価する方法が記された手引き書です。

市町村は、固定資産評価基準に記された方法を用いて家屋や土地の適正な時価を評価し、評価額に基づいて固定資産税額を決定します。

目次

1. まずは、固定資産税の計算方法を知る

はじめに、注文住宅に固定資産税が課される仕組みと、固定資産税の計算方法を簡単にご紹介しましょう。

固定資産税の計算方法を知れば、自ずと固定資産税を安くする注文住宅の建て方がわかります。

時間に余裕があれば、ぜひお読みください。

注文住宅といえば一戸建てですが、一戸建てを取得すると、一部例外を除き家屋と土地を所有することとなり、それぞれに固定資産税が課されます。

注文住宅に固定資産税が課される仕組み

家屋と土地の固定資産税の計算方法は、以下のとおりです。

1-1. 家屋の固定資産税の計算方法

注文住宅を含め、家屋の固定資産税は以下のように課税標準額に税率を掛け算しつつ計算します。

家屋の固定資産税の計算方法
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

式に含まれる課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が異なります。

家屋の固定資産税の計算式に含まれる課税標準額は、「家屋の固定資産税評価額」です。

家屋の固定資産税評価額とは、市町村によって評価された家屋の適正な時価を意味します。

時価とは、現時点における物の価格であり、家屋の固定資産税は、その家屋の現時点における価格をもとに計算します。

注文住宅の家屋の固定資産税を計算する方法

そして、正確な根拠はないものの、注文住宅を含め、新築の家屋の固定資産税評価額は建築費の60%程度になるといわれます。

建築費が3,000万円の注文住宅であれば「3,000万円×60%=1,800万円」と計算し、固定資産税評価額は1,800万円程度になるといった具合です。

また、建築費が5,000万円の注文住宅であれば「5,000万円×60%=3,000万円」と計算し、固定資産税評価額は3,000万円程度になります。

つまり、建築費が高額な家屋は、固定資産税評価額も高くなるというわけです。

固定資産税評価額が高くなれば、先にご紹介した固定資産税の計算式に含まれる課税標準額も高くなります。

課税標準額が高くなれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する固定資産税も高額になります。

すなわち、注文住宅を含め、建築費が高額な家屋は固定資産税が高くなるというわけです。

注文住宅を建てることを希望しつつ固定資産税を安く抑えたいのであれば、建築費を抑えた家屋を新築することがポイントとなります。

注文住宅の家屋の固定資産税を安くするポイント
  • 建築費を抑えた家屋を新築する

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1-2. 注文住宅が建つ土地の固定資産税を計算する方法

注文住宅が建つ土地を含め、住宅が建つ土地の固定資産税は以下のように計算します。

住宅が建つ土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

式に含まれる課税標準額は、「土地の固定資産税評価額の6分の1」または「3分の1」などです。

土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価されたその土地の適正な時価であり、周辺の地価などを参考に評価されます。

周辺の地価が高ければ固定資産税評価額も高く、地価が低ければ固定資産税評価額も低く評価されるといった具合です。

また、敷地面積も土地の固定資産税評価額に影響を与え、面積が広いほど固定資産税評価額は高くなります。

固定資産税評価額が高くなれば課税標準額も高くなり、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する土地の固定資産税も高額になります。

注文住宅が建つ土地の固定資産税の計算方法

よって、注文住宅を建てることを希望しつつ固定資産税を安くする方法をお調べになる場合は、地価が高すぎない場所に位置する、程よい広さの土地に新築してください。

そうすれば、注文住宅が建つ土地の固定資産税を安くすることが可能です。

注文住宅が建つ土地の固定資産税を安くするポイント
  • 地価が高すぎない場所に位置する、程よい広さの土地に新築する

以上が注文住宅に固定資産税が課される仕組みと、家屋と土地の固定資産税の計算方法の解説の完了です。

前置きが長くなりましたが、固定資産税を安くする注文住宅の建て方をご紹介しましょう。

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2. 固定資産税を安くする注文住宅の間取り

注文住宅の固定資産税を安くするためには、小さな部屋がたくさんある複雑な間取りより、大きな部屋が少数あるシンプルな間取りを目指してください。

また、家屋を上空から見下ろした形状が、凹凸が少なく四角形に近くなるように間取りを組むことも大切です。

間取りがシンプルで、上空から見下ろした形状が四角形に近い家屋は固定資産税が安くなります。

固定資産税を安くする注文住宅の間取り

小さな部屋がたくさんある家屋や、上空から見下ろした建物の形状が複雑な家屋は基礎の形状が複雑になり、建築費が高くなりがちです。

建築費が高くなれば固定資産税評価額と課税標準額も高くなり、固定資産税が高くなります。

ちなみに、注文住宅は階段の個数が多いほど建築費が高くなりますが、固定資産税も同じであり、階段の個数が多いほど高くなります。

従って、階段の個数が多くなる3階建てより、個数が少なくなる2階建ての方が固定資産税が安くなる傾向があります。

さらに、内装も固定資産税に影響を与えます。

内装は、クロス貼りは材料費と労務費が安く、漆喰などの塗り壁、石材、タイル貼りは材料費と労務費が高くなりますが、固定資産税も同じです。

クロス貼りは固定資産税が安く、漆喰などの塗り壁、石材、タイル貼りは固定資産税が高くなります。

材料費や労務費が高くなる工法は、固定資産税も高くなるとお考えください。

注文住宅の固定資産税を安くする間取りのポイント
  • 複雑な間取りは避け、上空から見下ろした形状がシンプルな家屋を目指す
  • 階段の個数を減らす
  • 漆喰などの材料費と労務費が嵩む内装は避け、クロス貼りにする

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3. 固定資産税を安くする注文住宅の屋根

注文住宅の固定資産税を安くするためには、シンプルな形状で、勾配が小さい屋根を採用する必要があります。

途中で角度が変る腰折れ屋根より切妻や寄棟、方形(ほうぎょう)、片流れの方が、7寸(7.0/10)より3寸(3/10)の方が固定資産税が安くなります。

固定資産税を安くする注文住宅の屋根

また、屋根材の種類も注文住宅の固定資産税に影響を与え、瓦よりもガルバリウム鋼板の方が、ガルバリウム鋼板よりもアスファルトシングルの方が固定資産税が安くなります。

ただし、アスファルトシングルは、10年に1度など再塗装が必要となるため注意してください。

屋根の再塗装は100万円を超える費用を要することがあり、固定資産税が安くなったとしても、メンテンナンス費用が嵩むのであれば意味がありません。

同じく、軒は小さい方が固定資産税が安くなりますが、軒の出が小さければ外壁が傷みやすく、メンテナンス費用が嵩む可能性があります。

なお、太陽光発電のソーラーパネルには、屋根材と一体化された「屋根一体型」と、屋根の上に乗せるだけの「屋根置き型」がありますが、固定資産税が安くなるのは屋根置き型です。

屋根一体型のソーラーパネルは高価な屋根材と見なされ、固定資産税が高くなります。

一方、屋根置き型は家屋の一部とはみなされず、固定資産税がかかりません。

ちなみに、天窓は付けない方が固定資産税は安くなります。

注文住宅を建てる際は奮発して天窓を付けたくなりますが、天窓は固定資産税が高くなる要因のひとつであり、雨漏りの原因になる可能性もあるため、付けない方が無難かもしれません。

注文住宅の固定資産税を安くする屋根のポイント
  • シンプルな形状にして勾配を小さくする
  • 屋根材はガルバリウム鋼板やアスファルトシングルを選ぶ
  • 天窓は付けない
  • ソーラーパネルは屋根置き型を選ぶ

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4. 固定資産税を安くする注文住宅の外壁材

注文住宅の固定資産税を安くするためには、サイディングやガルバリウム鋼板の外壁材をお選びください。

タイル貼りや漆喰仕上げの外壁は建築費が高くなりますが、建築費が高くなる外壁は固定資産税も高くなります。

また、外壁に占める窓やドアの面積も固定資産税に影響を与え、面積が小さい方が固定資産税は安くなります。

注文住宅は、窓やドアが多いほど工数が増えつつ建築費が高くなりますが、固定資産税も同じであり、窓やドアが多いほど税額が高くなります。

注文住宅の固定資産税を安くする外壁のポイント
  • サイディングやガルバリウム鋼板の外壁材を選ぶ
  • 外壁に占める窓やドアの面積を小さくする

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5. 固定資産税を安くする注文住宅の設備

注文住宅における設備は、固定資産税を高くする最も大きな要因であり、固定資産税を安くするためには、華美な設備を付けないことが大切です。

たとえば、ユニットバスは160cm×240cm(1624サイズ)より160cm×160cm(1616サイズ)の方が、1616サイズより120×160cm(1216サイズ)の方が固定資産税は安くなります。

浴室乾燥機を付ければ梅雨時に洗濯物が乾きやすくなりますが、浴室乾燥機は固定資産税が高くなる要因のひとつです。

また、システムキッチンは、間口が300cmより255cmの方が、255cmより180cmの方が固定資産税は安くなります。

床暖房設備も固定資産税が高くなりますが、設置されている面積が広いほど固定資産税が高くなるため、固定資産税を安くするのであれば、設置面積を狭くするのが良いでしょう。

固定資産税を安くする注文住宅の設備

さらに、トイレの数も固定資産税に影響を与え、2ヵ所より1ヵ所の方が固定資産税が安くなります。

よって、2階建ての注文住宅を建てることを検討し、固定資産税を安く抑えたい場合は、1階のみにトイレを設置するのが良いでしょう。

なお、ホームエレベーターや床の間も固定資産税が高くなるため注意してください。

特にホームエレベーターにかかる新築時の固定資産税は約25,000円程度と高額であり、3人乗りや着床数が3箇所であれば、税額はそれ以上となります。

ちなみに、固定資産税をパパッと解説では、固定資産税の家屋調査でコンセントを隠せば節税効果があるか解説するコンテンツを公開中です。

注文住宅の固定資産税を安くする方法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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6. 住宅用地の特例で注文住宅の土地の固定資産税を割安にする

注文住宅は、200㎡(約60坪)以下の土地に新築すれば、住宅用地の特例により土地の固定資産税が割安になります。

一方、200㎡を超える土地に注文住宅を新築すれば、200㎡を超えた部分の固定資産税が割高になります。

注文住宅を建てることを希望しつつ固定資産税を安くする方法をお調べになるのであれば、200㎡までの土地に新築をするのがお勧めです。

注文住宅は、200㎡以下の土地に新築すれば固定資産税が割安になる

固定資産税において、住宅が建つ土地のうち、その住宅の床面積の10倍までの部分を「住宅用地」と呼びます。

さらに、住宅用地は、200㎡までの部分が小規模住宅用地に、200㎡を超える部分が一般住宅用地に区分されます。

住宅用地は小規模住宅用地と一般住宅用地に区分される

そして、住宅用地には「住宅用地の特例」と呼ばれる軽減措置が適用され、更地より固定資産税が安くなります。

ただし、固定資産税が安くなったとしても、一般住宅用地の1㎡あたりの固定資産税は、小規模住宅用地の1㎡あたりの固定資産税の2倍です。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円、敷地面積が300㎡、うち200㎡が小規模住宅用地、残り100㎡が一般住宅用地である「土地A」があったとしましょう。

「土地A」の小規模住宅用地の1㎡あたりの固定資産税は77.777円ですが、一般住宅用地の1㎡あたりの固定資産税は155.554円になります。

土地Aの1㎡あたりの固定資産税
1㎡あたりの固定資産税
小規模住宅用地 77.777円
一般住宅用地 155.554円

土地A全体の固定資産税は3万1,100円程度

そもそも土地の固定資産税は、以下のように「土地の固定資産税評価額」を課税標準額として計算します。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額(土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

一方、住宅用地の特例が適用される小規模住宅用地は、以下のように「固定資産税評価額の6分の1」を課税標準額として固定資産税を計算します。

小規模住宅用地の固定資産税の計算式
課税標準額(土地の固定資産税評価額の6分の1)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

課税標準額が「土地の固定資産税評価額」から「土地の固定資産税評価額の6分の1」に減額されれば、固定資産税が安くなります。

しかし、一般住宅用地は、以下のように「固定資産税評価額の3分の1」を課税標準額として固定資産税を計算します。

一般住宅用地の固定資産税の計算式
課税標準額(土地の固定資産税評価額の3分の1)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

小規模住宅用地の課税標準額は「固定資産税評価額の6分の1」であるのに対し、一般住宅用地の課税標準額は「固定資産税評価額の3分の1」です。

従って、一般住宅用地の1㎡あたりの固定資産税は、小規模住宅用地の1㎡あたりの固定資産税の倍となり割高になります。

注文住宅を建てることを希望しつつ固定資産税を安くする方法を模索するのであれば、200㎡以下の土地、すなわち敷地全体が小規模住宅用地の土地に新築をするのが賢明です。

なお、住宅用地の特例は、原則として申告をせずとも適用されますが、更地を購入しつつ注文住宅を建てる場合は、申告をすることによってスムーズに適用されます。

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7. 床面積を50㎡以上にして注文住宅の固定資産税を安くする

注文住宅は、床面積が50㎡以上280㎡以下の家屋を新築するなどすれば「新築された住宅に対する固定資産税の減額」が適用され、一定の期間にわたり家屋の固定資産税が安くなります。

注文住宅は床面積が50㎡以上280㎡以下であれば固定資産税が安くなる

「新築された住宅に対する固定資産税の減額」とは、一定の条件を満たす新築の住宅である家屋を取得することにより適用される、固定資産税の軽減措置です。

同軽減措置が適用されれば、3階建以上の耐火・準耐火建築物に該当する家屋を取得した場合は5年、一般的な木造家屋を取得した場合は3年にわたり、家屋の固定資産税が2分の1に減額されます。

認定長期優良住宅に該当する新築を取得した場合は減額される期間が延長され、3階建以上の耐火・準耐火建築物であれば7年、それ以外は5年です。

注文住宅といえば一戸建てですが、一戸建ての新築に同軽減措置が適用される主な条件は、以下のとおりとなっています。

軽減措置の主な適用条件
  • 令和6年3月31日までに新築住宅を取得した
  • 床面積が50㎡以上280㎡以下の新築住宅を取得した

注文住宅の固定資産税を安くする方法をお調べの場合は、上記の条件を満たす家屋を新築してください。

そうすれば、3年や5年などにわたり、固定資産税を安くすることが可能です。

なお、同軽減措置が適用されることにより固定資産税が安くなるのは、家屋の固定資産税に限られるため留意してください。

注文住宅を含め、一戸建てを取得すると家屋と土地を所有することとなり、それぞれに固定資産税が課されますが、同軽減措置が適用されることにより安くなるのは家屋の固定資産税のみです。

また、同軽減措置は申告をせずとも適用されますが、一部の市町村では、取得した家屋が「3階建以上の耐火・準耐火建築物」に該当する場合は申告を求められることがあるため注意してください。

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まとめ - ローコスト住宅を手本にすれば、固定資産税は安くなる

固定資産税を安くする注文住宅の建て方をご紹介しました。

注文住宅といえば一戸建てですが、一戸建てを取得すると、一部例外を除き家屋と土地を所有することとなり、それぞれに固定資産税が課されます。

よって、注文住宅の固定資産税を安くするためには、家屋と土地の固定資産税をそれぞれ安くしなければなりません。

家屋の固定資産税は、豪華すぎない建材や設備を導入する、シンプルな間取りを心掛けるなどすれば安くすることが可能です。

また、床面積が50㎡以上280㎡以下であれば軽減措置が適用され、一定の期間にわたり家屋の固定資産税が2分の1に減額されます。

注文住宅が建つ土地には「住宅用地の特例」が適用され、敷地面積が200㎡以下であれば1㎡あたりの固定資産税が割安になります。

注文住宅の固定資産税を安くする方法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、この記事でご紹介したとおり、注文住宅の固定資産税を安くするためには建築費を抑える必要がありますが、建築費が抑えられた住宅といえば「ローコスト住宅」です。

よって、固定資産税を安くしたいのであれば、ローコスト住宅を手本にするのが良いでしょう。

とはいうものの、注文住宅は一生に一度の買い物ですから、固定資産税が高くなることを覚悟しつつ、こだわりのある住宅を新築するのも悪くはありません。

家屋の固定資産税は、築年数が経過することにより徐々に安くなり、最後は新築時の20%程度まで下がります。

ご紹介した内容が、注文住宅の固定資産税を安くする方法をお調べの皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2023年6月
記事公開日:2022年6月

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