固定資産税の調査でコンセントを隠すと節税になるって本当?
新築を取得すると家屋調査が行われ、調査結果によって新築時の固定資産税額が決定されます。
この家屋調査でコンセントを隠すと、固定資産税が安くなるなどのメリットはあるのでしょうか。
コンセント1個あたりの固定資産税の目安や、家屋調査でコンセントを隠すことにより節税効果があるかご紹介しましょう。
目次
- 1. コンセントを隠すと固定資産税が78円程度安くなるが…
- 2. 総合評点方式であれば、コンセントを隠す意味がない
- 3. 新築のマンションには、家屋調査自体がない
- まとめ - 固定資産税を安くしたいなら、シンプルな新築を選ぶ
1. コンセントを隠すと固定資産税が78円程度安くなるが…
はじめに、コンセントの固定資産税の目安をご紹介しましょう。
コンセントの固定資産税は、1箇所につき78円程度と考えられます。
つまり、家屋調査でコンセントを隠すことにより節税できる額は、1個あたりにつき78円というわけです。
さらに、78円というのは新築時の固定資産税であり、その額は15年から35年などを掛けて毎年徐々に下がります。
具体的には、築1年後には78円の80%である62円などに、築2年後には78円の75%である59円などに、築3年後には78円の70%である55円などに下がり、最後は78円の20%である16円まで下がります。
ようするに、家屋調査でコンセントを隠すことでは、大した節税効果はないと考えられます。
住宅が新築されると間もなく市町村役場から固定資産評価員と呼ばれる調査員が訪れ、住宅の各箇所を調査し、使用されている建材の種類やグレード、用いられている工法などをチェックします。
調査が終われば、固定資産評価員は各箇所に評点数と呼ばれる点数を付けます。
評点数は、グレードが高い建材や設備が使用され、複雑な工法が用いられているほど高く採点され、最後に各箇所に付設した評点数を合計します。
合計した評点数を再建築費評点数と呼び、再建築費評点数は、1点あたり1円に換算されます。
たとえば、再建築費評点数が1,500万点であれば、1,500万円に換算するといった具合です。
この換算した額は、その家屋が新築された時点における固定資産税評価額となります。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する基となる額であり、固定資産税評価額に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した額などが、その家屋の固定資産税額です。
新築の家屋の固定資産税が決定される流れを図解でご紹介すると、以下のとおりです。
さて、ここで重要となるのが、固定資産評価員による評点数の採点基準です。
評点数の採点基準は、統一されている必要があります。
採点基準が曖昧であれば、固定資産評価員によって再建築費評点数にばらつきが発生し、固定資産税が公平に課税されません。
よって、固定資産評価員が住宅の各箇所に評点数を付ける際は、総務省が告示する固定資産評価基準に記されている標準評点数と呼ばれる点数を基に採点します。
標準評点数とは、固定資産評価員が住宅の各箇所に評点数を付ける際の基準となる点数であり、コンセントを含め、固定資産評価基準には様々な建材の標準評点数が記されています。
固定資産評価基準に記されているコンセントの標準評点数は、以下のように1個あたりにつき5,570点です。
出典:総務省 固定資産評価基準
この標準評点数は、二個口であっても三個口であっても変わらず、コンセント1個あたりにつき5,570点です。
固定資産評価員は、固定資産評価基準に記された標準評点数を基に家屋の各箇所に評点数を付け、評点数を合計した再建築費評点数を1点あたり1円に換算した額の1.4%などが、固定資産税となります。
そのため、コンセントの固定資産税は、固定資産評価基準に記されているコンセントの標準評点数である5,570点を円に換算した5,570円の1.4%の78円などと考えることが可能です。
これを理由に、家屋調査でコンセントを隠すことにより得ると予想される節税効果は、1個あたりにつき78円となります。
ただし、家屋調査で調査員がコンセントなどの電気設備に評点数を付ける際に、総合評点方式と呼ばれる方法を用いれば、残念ながらコンセントを隠す意味が全くないこととなります。
つづいて、家屋調査で調査員が総合評点方式により電気設備を採点することにより、コンセントを隠す意味がなくなることの詳細をご説明しましょう。
なお、先に再建築費評点数は1点あたり1円に換算されるとご紹介しましたが、1.1円や0.9円などに換算されることもあるため留意してください。
換算額は、市町村やその時々の物価水準などによって変わります。
2. 総合評点方式であれば、コンセントを隠す意味がない
住宅を新築すると間もなく市町村役場から固定資産評価員と呼ばれる調査員が訪れ、家屋調査を行い、各箇所に評点数を付設します。
その家屋調査で調査員がコンセントなどの電気設備に評点数を付設する際ですが、「項目別評点方式」または「総合評点方式」のいずれかを用います。
それぞれの採点方式の詳細は、以下のとおりです。
- 項目別評点方式
- 項目別評点方式とは、コンセントを直接数え、家屋全体のコンセントの評点数を計算する採点方式です。
固定資産評価員が項目別評点方式を用いて家屋全体のコンセントの評点数を算定する際は、コンセントの数を数え、数えた数にコンセントの標準評点数である5,570点を掛け算します。
たとえば、その家屋にコンセントが10個ある場合は「5,570点×10個=55,700点」と計算し、その家屋全体のコンセントの評点数は55,700点になるといった具合です。
この状況においてコンセントを隠すことが成功すれば、1個あたりにつき78円の節税になるかもしれません。 - 総合評点方式
- 総合評点方式とは、固定資産評価基準によって定められた、延べ床面積1平方メートルあたりの電気設備の標準評点数に、その家屋の床面積を掛け算し、コンセントを含む家屋全体の電気設備の評点数を計算する採点方式です。
固定資産評価員が総合評点方式を用いる場合は、コンセントを数えることはありません。
よって、固定資産評価員が総合評点方式を用いる場合は、コンセントを隠すことによる固定資産税の節税効果は期待できません。
以上が、項目別評点方式と総合評点方式の詳細です。
ご紹介したとおり、総合評点方式が用いられれば、固定資産評価員がコンセントを数えることはありません。
固定資産評価基準によって定めらた延べ床面積1平方メートルあたりの電気設備の標準評点数に、その家屋の延べ床面積を掛け算し、家屋全体の電気設備の評点数を一括で付設します。
以下が、固定資産評価基準によって定めらた延べ床面積1平方メートルあたりの電気設備の標準評点数です。
出典:総務省 固定資産評価基準
たとえば、その家屋の延べ床面積が100平方メートルである場合は、「100平方メートル×3,790点=379,000点」と計算し、家屋全体の電気設備に対して379,000点の評点数が一括で付設されます。
このため、固定資産評価員が総合評点方式を採用すれば、残念ながら家屋調査でコンセントを隠す意味は全くないこととなります。
3. 新築のマンションには、家屋調査自体がない
固定資産評価基準によるコンセントの標準評点数は5,570点であり、コンセントの固定資産税は、5,570点を円に換算した5,570円の1.4%である78円程度と考えられます。
よって、家屋調査でコンセントを隠せば、1箇所あたりにつき78円程度を節税できると考えられますが、固定資産評価員が総合評点方式を採用すれば、残念ながらコンセントを隠す意味はありません。
総合評点方式が採用されれば、コンセントの数ではなく、延べ床面積を基に家屋全体の電気設備の評点数が一括で付設されます。
さらに、新築のマンションであれば、一部例外を除き家屋調査が行われることがなく、コンセントを隠す必要がないため留意してください。
マンションが新築されれば、市町村は建設業者から建物部分の設計図を取り寄せ、その設計図を基に、建物全体の固定資産税を計算します。
そして、計算された固定資産税が、マンションの各戸の所有者に配分されます。
そのため、新築のマンションを購入しても家屋調査自体がなく、コンセントを隠す必要がありません。
なお、市町村は、建物全体の固定資産税を各戸の所有者に配分しますが、配分される税額は、床面積が広い戸を所有する方ほど多くなります。
たとえば、マンション全体の床面積の100分の1の面積を占める戸を所有する方より、マンション全体の床面積の50分の1の面積である戸を所有する方の方が、固定資産税が多く配分されます。
さらに、タワーマンションなどの高層階建てのマンションであれば、高層階に位置する戸を所有する方ほど配分される税額が多くなります。
よって、新築のマンションの購入を希望しつつ固定資産税の額を心配される場合は、床面積が広い戸より狭い戸を、タワーマンションであれば高層階より低層階を購入するのが理想です。
まとめ - 固定資産税を安くしたいなら、シンプルな新築を選ぶ
固定資産税の家屋調査でコンセントを隠すことによって、どの程度の節税効果があるかご紹介しました。
新築を購入すると間もなく市町村役場から固定資産評価員と呼ばれる調査員が訪れ、家屋調査を行いつつ各箇所に評点数と呼ばれる点数を付けます。
付けられた評点数は合計されつつ1点あたり1円に換算され、換算額に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した額などが、その家屋の新築時の固定資産税となります。
そして、調査員が家屋調査でコンセント1個あたりに付ける評点数は、5,570点です。
つまり、5,570点を円に換算した5,570円の1.4%である78円が、コンセントの固定資産税になると考えられるというわけです。
これを理由に、家屋調査でコンセントを隠せば、78円程度を節税できると考えられます。
ただし、固定資産評価員が総合評点方式を用いて、延べ床面積を基に家屋全体の電気設備の評点数を一括して付設する場合は、残念ながらコンセントを隠す意味はありません。
家屋調査でコンセントを隠すことにより固定資産税がどれくらい安くなるかお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、新築の購入を希望しつつ固定資産税を安くしたいと希望する場合は、コンセントを隠すのも良いですが、無駄に豪華な建材や、長い作業時間を要する複雑な工法を避けるのが理想です。
この記事の本文でもご紹介しましたが、家屋調査で調査員が付設する評点数は、グレードの高い建材や設備、複雑な工法が用いられた家屋ほど高くなります。
評点数が高くなれば、評点数を基に計算する固定資産税も高くなります。
よって、固定資産税を抑えたいのであれば、必要以上に豪華な建材や設備、複雑な工法を避けた、シンプルで質実剛健な新築を選ぶのが理想です。
そうすれば、コンセントを隠さずとも固定資産税を安くできます。
ご紹介した内容が、家屋調査でコンセントを隠すことによる節税効果をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2022年3月
記事公開日:2021年9月
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