固定資産税評価額がおかしい

建物の固定資産税評価額が下がらなくておかしいのは、建築費の高騰などが原因です。
土地の固定資産税評価額が高くておかしいのは立地条件や使い勝手が良いこと、固定資産税評価額が低くておかしいのは市場価格より高く購入したことなどが原因と考えられます。
課税明細書に記されているマンションの土地の持ち分の固定資産税評価額が億単位でおかしいのは、それは敷地全体の固定資産税評価額が記されています。
建物や土地の固定資産税評価額がおかしい原因を解説しましょう。
目次
- 1. 固定資産税評価額がおかしい原因は、建物や土地によって異なる
- 1-1. 建物の固定資産税評価額がおかしいのは建築費の高騰などが原因
- 1-2. 土地の固定資産税評価額がおかしいのは立地条件などが原因
- 1-3. マンションの土地の固定資産税評価額がおかしいのは課税明細書が原因
- まとめ - 固定資産税評価額がおかしいときは審査を請求できる
固定資産税評価額がおかしい原因は、建物や土地によって異なる
建物や土地を所有すると固定資産税が課されますが、その税額は対象となる資産の固定資産税評価額を基に計算します。
よって、固定資産税評価額がおかしければ税額もおかしくなりますが、固定資産税評価額がおかしい原因は、建物や土地など資産の種類によって異なります。

建物の固定資産税評価額が下がらなくておかしいのは、物価高による建築費の高騰が原因です。
土地の固定資産税評価額が高くておかしいのは、立地条件が良く使い勝手が良いことが原因と考えられます。
土地の固定資産税評価額が低くておかしいのは、おそらくは、市場価格より高く購入したことが原因です。
固定資産税の課税明細書に記されているマンションの土地の持ち分の固定資産税評価額が億単位でおかしいのは、その額は、マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額です。
つづいて、建物と土地、マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額がおかしい原因の詳細を解説しましょう。
ちなみに、所有する建物や土地の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に記されていますが、その名目は「価格」や「評価額」などとなっています。
「評価額」は「固定資産税評価額」の略と考えられますが、「価格」という名目で固定資産税評価額が記される理由は、地方税法にあります。
地方税法とは、固定資産税など地方税に関することを定めた法律であり、同法律に固定資産税評価額という言葉は登場せず、価格という言葉が使われています。
地方税法における価格とは、市町村が評価した建物や土地の「適正な時価」であり、固定資産税は価格(適正な時価)を基に税額を計算し、世間一般に価格のことを固定資産税評価額と呼びます。
建物の固定資産税評価額がおかしいのは建築費の高騰などが原因
築年数が経過しているにもかかわらず建物の固定資産税評価額が下がらなくておかしいのであれば、それは、建築費の高騰が原因です。
建物の固定資産税評価額は築年数が経過すると共に徐々に下がるといわれますが、建築費が高騰している期間は下がりません。
建物の固定資産税評価額は極めて複雑な方法を用いて計算されますが、計算方法を簡単にご紹介すると以下のとおりです。
建物の固定資産税評価額の計算方法(超簡略版)
再建築費-築年数が経過することにより目減りした価値=建物の固定資産税評価額
式に含まれる再建築費とは、その建物と同一の建物を同一の場所に、直近三年以内などに新築するために必要となる資材費と労務費、設計費、建築会社が得る利益の合計です。
「直近三年以内など」という箇所がポイントであり、物価高で建築費が高騰する昨今は、再建築費が以前より大幅に高くなっています。
たとえば、令和元年に再建築費が1,000万円であった建物であれば、令和5年の時点では1,500万円まで上がっているといった具合です。
一方、式に含まれる「築年数が経過することにより目減りした価値」は、築年数が経過した建物の固定資産税評価額を計算する際ほど大きくなります。
例を挙げると、築10年の建物の固定資産税評価額を計算する際は「再建築費の40%」などに、築15年であれば45%などに、築20年であれば50%などになるといった具合です。
これにより、物価水準が安定し再建築費が以前と変わらなければ、建物の固定資産税評価額は築年数が経過すると共に徐々に下がります。
しかし、先述のとおり、物価高で建築費が高騰する昨今は、再建築費が以前より大幅に高くなっています。
よって、建物の固定資産税評価額は、築年数が経過しても下がらないという状況が発生しています。

建物の固定資産税評価額の計算例を挙げましょう。
固定資産税評価額を計算する建物を「建物A」と名付け、建物Aは令和元年の時点で築10年、再建築費が1,000万円、「築年数が経過することにより目減りした価値」は建築費の40%である400万円とします。
であれば以下のように計算し、建物Aの令和元年時点の固定資産税評価額は600万円です。
建物Aの令和元年の固定資産税評価額の計算例
1,000万円(再建築費)-400万円(築年数が経過することにより目減りした価値)=600万円
その後、令和5年時点の建物Aの再建築費は物価高により1,500万円まで上昇し、築年数の経過と共に「築年数が経過することにより目減りした価値」は再建築費の45%である675万円になったとします。
であれば以下のように計算し、建物Aの令和5年時点の固定資産税評価額は825万円まで上昇します。
建物Aの令和5年の固定資産税評価額の計算例
1,500万円(再建築費)-675万円(築年数が経過することにより目減りした価値)=825万円
ただし、建物の固定資産税評価額が上がることはなく、以前より上がった場合は据え置きとなります。
すなわち、建物Aの固定資産税評価額は築年数が経過しても下がらず、令和元年も令和5年も600万円というわけです。
このように物価高で建築費が高騰する昨今は、建物の固定資産税評価額が下がらずおかしいという状況が発生しています。
ちなみに、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、固定資産税評価額をわかりやすく簡単に解説する記事を公開中です。
固定資産税評価額をより深く理解したい方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
固定資産税評価額とは?わかりやすく解説(パパっとすぐわかる)
土地の固定資産税評価額がおかしいのは立地条件などが原因
土地の固定資産税評価額がおかしい原因は様々ですが、高すぎるのであれば、立地条件と使い勝手が良く、面積が広いためと考えられます。
土地の固定資産税評価額は、立地条件と使い勝手が良く、面積が広いほど高くなります。
立地条件が良く使い勝手が良い土地とは、駅やバス停、学校、病院、市町村役場から近く、間口が広くて奥行きが程よい平らな土地などが挙げられます。
立地条件と使い勝手が良い土地の例
- 駅やバス停に近い
- 学校や病院、市町村役場などの公共施設に近い
- メインストリートなど、主要な道路に接している
- 主要な道路には接していないものの、主要な道路に近い場所に位置する
- 間口が広く奥行きが程よい
- 角地や準角地などであり、接道本数が多く出入りしやすい
- 平坦
- 公営水道や公共下水道に接続できる
また、土地を取得し、その固定資産税評価額が低すぎておかしいのであれば、市場価格より高く購入した可能性があります。
土地の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその土地の「適正な時価」ですが、市場価格の70%程度に設定されるのが通例です。
たとえば、市場価格が1,000万円の土地であれば、その固定資産税評価額は700万円程度になるといった具合です。
これにより、市場価格より高く購入した土地は、固定資産税評価額が低すぎておかしいと感じることがあります。
市場価格が1,000万円の土地を1,300万円で購入したのであれば、固定資産税評価額が購入価格より大幅に低い700万円となり、おかしいと感じるといった具合です。

マンションの土地の固定資産税評価額がおかしいのは課税明細書が原因
マンションの一戸を所有し、固定資産税の課税明細書に記されている土地の持ち分の固定資産税評価額が億単位でおかしい場合は、土地全体の固定資産税評価額が記されていることが原因です。
その課税明細書には、土地の持ち分ではなく、マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額が記されています。
固定資産税は、その年の1月1日の時点で建物や土地を所有することにより課されます。
そして、マンションの一戸を所有する方は、地上権などである場合は除き、建物である「一戸部分」と、土地である「土地の持ち分」を所有し、それぞれに固定資産税が課されます。
それらの税額は、建物である「一戸部分」と、土地である「土地の持ち分」の固定資産税評価額を基に計算します。

マンションの土地の持ち分の固定資産税評価額ですが、多くの市町村が発行する固定資産税の課税明細書には記されていません。
多くの市町村が発行する課税明細書には、マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額のみが記されています。
土地の持ち分の固定資産税評価額が記されていない場合は、以下の式で計算してください。
土地の持ち分の固定資産税評価額の計算方法
マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額×敷地権の割合=土地の持ち分の固定資産税評価額
式に含まれる「敷地権の割合」とは、自らが所有する土地の持ち分の比率です。
先述のとおり、マンションの一戸を所有する方は、地上権などである場合は除き土地の持ち分を所有しますが、土地の持ち分は各戸の所有者が少しずつ分け合って所有しています。
自らが所有する土地の持ち分の比率が「敷地権の割合」です。
「敷地権の割合」は、登記事項証明書に記されています。
登記事項証明書とは、登記簿を写した書面であり、おそらくはマンションを購入後に登記が完了した後に、司法書士から郵送などで受け取っています。
以下は、法務省が公開する集合住宅の登記事項証明書の見本であり、赤い線で囲まれた箇所に「敷地権の割合」が記されています。

※ 出典:法務省
上記の見本に記されている敷地権の割合は4分の1ですが、実際は「5678901分の87654」などと複雑な分数が記されています。
土地の持ち分の固定資産税評価額の計算例を挙げましょう。
マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額が1億5,000万円、敷地権の割合が「5678901分の87654(1.54350287142%)」であれば以下のように計算し、土地の持ち分の固定資産税評価額は231万5,254円です。
土地の持ち分の固定資産税評価額の計算例
1億5,000万円(マンションが建つ土地全体の固定資産税評価額)×1.54350287142%(敷地権の割合)=231万5,254円
まとめ - 固定資産税評価額がおかしいときは審査を請求できる
建物や土地の固定資産税評価額がおかしい原因を解説しました。
築年数が経過しても建物の固定資産税評価額が下がらなくておかしいのは、建築費の高騰が原因です。
土地の固定資産税評価額が高くておかしいのは、立地条件や使い勝手が良いことが原因と考えられます。
土地の固定資産税評価額が低くておかしいのは、市場価格より高く購入した可能性があります。
固定資産税の課税明細書に記されているマンションの土地の持ち分の固定資産税評価額が億単位でおかしいのは、土地全体の固定資産税評価額が記されています。
建物や土地を所有し、その固定資産税評価額がおかしいと感じる方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、固定資産税評価額がおかしいと感じる場合は、固定資産評価審査委員会に審査を請求できます。
固定資産評価審査委員会とは、市町村に設置された、建物や土地の固定資産税評価額が適正であるか審査する委員会です。
審査を請求すれば、固定資産評価審査委員会によって固定資産税評価額が妥当か審議され、おかしいと認められれば是正されます。
審査の請求先は、固定資産税の納税通知書の裏側に記されています。
ただし、審査の請求には、以下の注意点があります。
- 既存の建物や土地の審査の請求は、三年に一度のみできる
- 以前から固定資産税が課されている建物や土地の固定資産税評価額がおかしいと感じ、固定資産評価審査委員会に審査を請求できるのは、令和六年度、令和九年度など、三で割り切れる「基準年度」と呼ばれる年のみです。
新築した建物や、分筆することにより新たに登記が行われた土地などは、年度を問わず審査を請求できます。 - 審査を請求できるのは、納税通知書が届いた日から三ヶ月を経過する日まで
- 固定資産税評価額がおかしいと感じ、固定資産評価審査委員会に審査を請求できるのは、固定資産税の納税通知書が届いた日から三ヶ月が経過する日までとなっています。
本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年4月
こちらの記事もオススメです