固定資産税評価額の計算方法|下がらない理由がわかる

固定資産税評価額の計算方法|下がらない理由がわかる

固定資産税の課税明細書に記載されている固定資産税評価額を見ると、「建物は築年数が経過しているのに評価額が下がっていない」「地価は下がっているのに土地の評価額が上がっている」など、疑問を感じることがあります。

実は、固定資産税評価額は単純に築年数や地価だけで決まるわけではありません。

建物には建設コストの変動を評価額に反映する仕組みがあり、土地には税負担の急激な変化を抑える負担調整措置があります。そのため、一般的なイメージとは異なる動きをすることがあります。

しかし、課税明細書には計算の過程までは記載されていないため、「なぜこの評価額になるのか分からない」「評価額が下がらない理由に納得できない」という方も少なくありません。

そこで、今回の「固定資産税をパパっと解説」では、固定資産税評価額の計算方法を建物・土地・マンションに分けてわかりやすく解説します。

この記事を読むとわかること
  • 固定資産税評価額の計算方法の基本的な仕組み
  • 建物の固定資産税評価額の計算方法
  • 土地の固定資産税評価額の計算方法
  • マンションの固定資産税評価額の計算方法
  • 固定資産税評価額が下がらない理由

この記事をお読みいただくことで、固定資産税評価額がどのような仕組みで計算されているのかを理解できます。

加えて、「なぜ評価額が下がらないのか」「なぜ評価額が上がることがあるのか」といった疑問も解消できるはずです。

目次

1. 固定資産税評価額とは?計算方法を理解する前に知っておきたい基礎知識

固定資産税評価額は、固定資産税を計算する際の基準となる金額です。

しかし、固定資産税に関する資料や課税明細書を見ると、「固定資産税評価額」「価格」「課税標準額」など似た用語が並んでいるため、それぞれの違いがわかりにくいと感じる方も少なくありません。

また、固定資産税評価額はどのように決まり、どのタイミングで見直されるのかを理解しておくことで、後ほど解説する建物や土地の計算方法も理解しやすくなります。

まずは、固定資産税評価額の基本から確認しましょう。

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1-1. 固定資産税評価額と価格・課税標準額の違い

固定資産税評価額(以下「評価額」)とは、市町村(東京都23区は東京都)が土地や建物の価値を評価して決定する金額です。

一般的には「固定資産税評価額」と呼ばれていますが、地方税法上の正式名称は「価格」です。

地方税法第341条第5号では、「価格とは、適正な時価をいう」と定められています。そのため、課税明細書に記載されている「価格」の欄に表示されている金額が、一般的に固定資産税評価額と呼ばれているものです。

一方で、課税標準額(かぜいひょうじゅんがく)は、評価額とは異なる金額です。

課税標準額とは、固定資産税の税額を計算するために使用する金額のことです。固定資産税は、課税標準額に税率を掛けて計算します。計算式は次のとおりです。

  • 固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(標準税率1.4%)

課税標準額は、原則として評価額と同じ金額になります。

ただし、土地に住宅が建っている場合に適用される住宅用地の特例や、税負担の急激な増減を抑える負担調整措置が適用される場合は、課税標準額が評価額より低くなることがあります。

そのため、固定資産税を理解する際は、「評価額」と「課税標準額」を別のものとして考えることが重要です。

固定資産税評価額が下がれば固定資産税も下がると思われがちですが、実際には課税標準額の動きによって税額が決まります。そのため、評価額が下がっても固定資産税があまり変わらないケースや、状況によっては税額が上がるケースもあります。

この仕組みを理解するうえで重要になるのが、後ほど解説する土地の負担調整措置です。詳しくは「4-6.評価額は下がっても税負担が下がりにくい理由(負担調整措置)」で解説します。

表1|固定資産税評価額と関連用語の違い一覧(価格・課税標準額との対比)
用語 正式名称・通称の別 意味 税額計算との関係
固定資産税評価額 通称 市町村(場合によっては都道府県)が評価した、建物や土地の時価 課税標準額の出発点
価格 地方税法上の正式名称(課税明細書上の列ラベル) 固定資産税評価額と同義。「適正な時価」(地方税法第341条第5号)をいう 課税標準額の出発点
課税標準額 法令用語 評価額(価格)に住宅用地特例・負担調整措置等を適用した後の金額 税率を掛ける対象
固定資産税額 課税標準額 × 税率(標準税率1.4%) 最終的な納付額

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1-2. 評価額の目安は土地が時価の70%、建物は新築時で再建築費の80%前後

固定資産税評価額の計算方法を詳しく見る前に、まずは評価額がおおよそどの程度の金額になるのかを確認しておきましょう。

土地と建物では評価方法が異なるため、固定資産税評価額の目安も異なります。

土地の固定資産税評価額は、地価公示価格などの時価の70%程度が目安です(出典・参考:総務省:固定資産評価のしくみについて(土地評価))。

たとえば、公示地価ベースの時価が3,000万円の土地であれば、固定資産税評価額は概ね2,100万円前後になります。

一方で、建物の固定資産税評価額は、新築時はおおむね再建築費の80%前後が目安です。ただし、築年数の経過とともに経年減点補正率が低下するため、既存建物では長期的に50〜60%程度になるケースも多くなります。

たとえば、建築費が3,000万円の新築一戸建てであれば、固定資産税評価額はおおむね2,400万円前後の水準になります。同じ建物が築年数を経ると評価額は下がり、長期的には1,500万円〜1,800万円前後の水準になることもあります。

もっとも、建物の固定資産税評価額は建築費をそのまま基準にして計算するわけではありません。建物の固定資産税評価額は「再建築費評点数」と呼ばれる点数を用いて算出されるため、使用されている建材や設備のグレード、建物の構造、施工規模などによって評価額は変わります。

筆者は不動産賃貸業を営んでおり、住宅や店舗、土地など数多くの固定資産税の課税明細書を確認してきました。その中で記載されている固定資産税評価額を見ると、「実際の購入価格や売買価格よりかなり低い」と感じるケースが少なくありません。

このように、固定資産税評価額は実勢価格(実際の売買価格)と同じ金額になるものではありません。そのため、固定資産税評価額の計算方法を理解する際は、「固定資産税評価額は時価や実勢価格より低い水準になることが多い」という点を押さえておくことが大切です。

注意
上記の70%および80%前後(新築時)・50〜60%(既存建物の長期的な目安)はあくまでも目安です。土地の立地条件や地価動向、建物の構造、設備、築年数などによって実際の固定資産税評価額は異なります。

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1-3. 評価額は総務大臣の固定資産評価基準で決まる

固定資産税評価額は、市町村が自由に決めているわけではありません。

地方税法第388条第1項では、総務大臣が「固定資産評価基準」と呼ばれる評価ルールを定めることとされています。そして、全国の市町村はその基準に基づいて固定資産税評価額を算定しなければなりません。

固定資産評価基準とは、土地や建物などの固定資産をどのような方法で評価するのかを定めた全国共通のルールです。評価の基準だけでなく、評価を実施する方法や手続きについても細かく定められています。

このような仕組みが設けられているのは、固定資産税評価額の公平性と客観性を確保するためです。

もし市町村ごとに独自の基準で評価できるとすれば、同じような土地や建物であっても、市町村によって固定資産税評価額が大きく異なる可能性があります。また、担当者の判断によって評価額に差が生じるおそれもあります。

そこで、全国共通の固定資産評価基準を用いることで、どの市町村でも同じ考え方で固定資産税評価額を算定できるようになっています。

実際の評価作業は市町村が行いますが、市町村長は固定資産評価基準に基づいて固定資産税評価額(価格)を決定し、その評価額を固定資産課税台帳に登録します。

つまり、固定資産税評価額は市町村が独自に決めた金額ではなく、総務大臣が定めた固定資産評価基準に従って算定された金額なのです。

なお、固定資産課税台帳とは、市区町村が固定資産税を課税するために作成・管理している台帳です。土地や建物の評価額、課税標準額などの情報が記録されています。

土地や建物ごとに、所在地、所有者、地目・構造、床面積、固定資産税評価額、課税標準額などが登録されています。市町村は、この固定資産課税台帳に登録された内容をもとに固定資産税や都市計画税を計算します。

土地や建物を所有している人は、自分が所有する固定資産について固定資産課税台帳の内容を確認でき、評価額に誤りがないかをチェックすることもできます。

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1-4. 評価額が決まるタイミング(賦課期日・基準年度・据置年度)

固定資産税は毎年課税されます。しかし、固定資産税評価額は毎年見直されるわけではありません。

そのため、「なぜ評価額が何年も変わらないのか」「なぜ今年は評価額が変わったのか」を理解するには、賦課期日・基準年度・据置年度という3つの用語を押さえておくことが大切です。

まず、賦課期日(ふかきじつ)とは、その年の固定資産税の納税義務者や課税内容を決定する基準日のことです。賦課期日は毎年1月1日と定められています。

固定資産税は、1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。たとえば、1月2日に土地や建物を売却したとしても、その年の固定資産税は原則として1月1日時点の所有者に課税されます。

次に、基準年度(きじゅんねんど)とは、固定資産税評価額を見直す年度のことです。

土地や建物の数は全国に非常に多く、すべての固定資産を毎年評価し直すことは現実的ではありません。そこで、固定資産税では3年に1回のサイクルで評価額を見直す仕組みが採用されています。

この評価額の見直しを評価替え(ひょうかがえ)といいます。直近の基準年度は令和6年度です。次回の基準年度は令和9年度となります。

一方で、基準年度の翌年度と翌々年度は、据置年度(すえおきねんど)と呼ばれます。据置年度では、原則として基準年度に決定された評価額がそのまま引き継がれます。

令和7年度と令和8年度は据置年度にあたり、令和8年度は3年間の評価期間の最終年度です。ただし、据置年度であっても評価額が変わる場合があります。

たとえば、土地の地価が大きく下落し、基準年度の評価額をそのまま使用することが適当でない場合は、土地の評価額を修正することがあります。

また、土地の地目が変わった場合や建物の増改築を行った場合など、固定資産の状況に変化が生じた場合も新たに評価額が決定されます。

なお、建物には評価額の急激な上昇を防ぐ仕組みがあります。評価替えによって算出された新しい評価額が前年度の評価額を上回る場合は、新しい評価額をそのまま採用せず、前年度の評価額に据え置かれます。

そのため、建築コストの上昇によって再評価後の価格が高くなったとしても、既存の建物の固定資産税評価額が急に上がるケースは基本的にありません。

表2|基準年度・据置年度の関係表(評価替えの3年サイクル)
年度 区分 評価の扱い
令和6年度 基準年度(第一年度) 3年ごとの評価替えを実施。1月1日現在の価格を固定資産課税台帳に登録
令和7年度 第二年度(据置年度) 基準年度の価格を原則据え置き(土地は地価下落時に修正を行う場合あり)
令和8年度 第三年度(据置年度) 基準年度の価格を原則据え置き(土地は地価下落時に修正を行う場合あり)
令和9年度 次の基準年度(第一年度) 次の評価替えを実施予定

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1-5. 固定資産税評価額が下がりにくい3つの理由(結論を先に)

「建物は古くなるのだから、固定資産税評価額も毎年下がり続けるはず」と考える方は少なくありません。

しかし、実際に課税明細書を確認すると、「築年数が経過しているのに評価額があまり下がっていない」「前回とほとんど変わらない」「むしろ評価額が上がっている」と感じることがあります。

これは評価額の計算に問題があるわけではなく、固定資産税評価額の算定に用いられている仕組みが関係しています。固定資産税評価額が下がりにくい主な理由は、次の3つです。

① 再建築費評点補正率(建物)

建物の固定資産税評価額は、評価替えのたびに「再建築費評点補正率」(さいけんちくひひょうてんほせいりつ)が適用されます。

再建築費評点補正率とは、建築資材や人件費などの建設コストの変動を評価額に反映するための補正率です。

近年のように建設コストが上昇している局面では、建物の老朽化による評価額の下落分を建設コストの上昇分が打ち消すことがあります。その結果、築年数が経過していても評価額があまり下がらなかったり、算出上の評価額が上昇する方向に動くことがありますが、前年度評価額を上回る場合は前年度評価額に据え置かれます。

詳しくは「再建築費評点補正率|建設コストが上がっても評価額が下がらない理由」で解説します。

② 最終残存率(建物)

建物の固定資産税評価額は、築年数の経過とともに下がります。

ただし、評価額が永久に下がり続けるわけではありません。

建物の評価では「経年減点補正率」という補正率が用いられていますが、この補正率には下限が設けられています。そのため、どれだけ築年数が経過しても、評価額が一定水準より低くなることはありません。

この下限を一般的に「最終残存率」と呼びます。

建物の種類によって差はありますが、評価額は新築時の20%程度を下回らない仕組みになっています。そのため、非常に古い建物であっても固定資産税評価額がゼロになることはありません。

詳しくは「最終残存率|評価額には下限がある」で解説します。

③ 負担調整措置(土地)

土地の場合は、評価額と税額が同じように動くとは限りません。

たとえば、地価の下落によって評価額(価格)が下がったとしても、固定資産税の計算に使用する課税標準額がすぐに下がるとは限りません。その理由は、「負担調整措置」(ふたんちょうせいそち)という制度が設けられているためです。

負担調整措置とは、課税標準額の増減を緩やかにするための仕組みです。前年度の課税標準額から段階的に本来の課税標準額へ近づけるため、評価額が下がっても税負担がすぐには下がらない場合があります。

つまり、「評価額(価格)が下がった=固定資産税も同じ割合で下がる」というわけではありません。詳しくは「4-6. 評価額は下がっても税負担が下がりにくい理由(負担調整措置)」で解説します。

表3|固定資産税評価額が下がりにくい3つの理由 早見表
理由 対象 仕組みの概要 詳細
①再建築費評点補正率 建物 建設コストの上昇を評価額に反映するため、経年による評価額の下落が押し戻される 再建築費評点補正率|建設コストが上がっても評価額が下がらない理由
②最終残存率(20%) 建物 経年減点補正率に下限が設けられており、評価額はゼロにならず新築時の20%程度で下げ止まる 最終残存率|評価額には下限がある
③負担調整措置 土地の課税標準額 評価額(価格)が下落しても、課税標準額は緩やかにしか下がらない・上昇することがある 4-6.評価額は下がっても税負担が下がりにくい理由(負担調整措置)
固定資産税評価額が下がらない3つの理由

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2. 固定資産税評価額の計算方法の基本構造

固定資産税評価額の計算方法は、一見すると複雑に見えます。しかし、基本的な考え方はそれほど難しくありません。

固定資産税評価額は、「評点数」と「評点一点あたりの価額」という2つの要素を使って算出されます。

建物と土地では評点数の求め方が異なるものの、最終的に固定資産税評価額を算出する仕組みは共通です。

3.建物の固定資産税評価額の計算方法」で解説する建物の計算方法も、「4.土地の固定資産税評価額の計算方法」で解説する土地の計算方法も、最終的にはこの考え方に基づいて評価額が決定されます。

まずは、固定資産税評価額を算出する基本的な仕組みを確認しておきましょう。

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2-1. 評点数×評点一点あたりの価額で算出する

固定資産税評価額は、次の計算式で求められます。

  • 固定資産税評価額 = 評点数 × 評点一点あたりの価額

この計算式を見ても、「評点数とは何か」「評点一点あたりの価額とは何か」がわからなければ理解しにくいかもしれません。

まず、評点数(ひょうてんすう)とは、土地や建物の価値を点数で表したものです。建物の場合は、建物の構造や使用されている建材、設備の内容、築年数などを考慮して評点数が決まります。

一方で、土地の場合は、所在地や形状、道路との接し方などの条件をもとに評点数が算出されます。

つまり、評点数は「その土地や建物にどれくらいの価値があるのか」を点数化した数値と考えるとわかりやすいでしょう。

次に、評点一点あたりの価額(ひょうてんいってんあたりのかがく)とは、評点数を円に換算するための単価です。固定資産評価基準では、評点一点あたりの価額は通常1円とされています。

そのため、実際の計算は比較的シンプルです。たとえば、ある土地の評点数が9,000,000点であれば、固定資産税評価額は次のようになります。

  • 9,000,000点 × 1.00円 = 900万円

固定資産税評価額を直接計算するのではなく、いったん評点数という形に置き換える理由は、全国の土地や建物を同じ基準で評価しやすくするためです。

土地や建物は種類や条件が非常に多いため、最初から金額で評価すると地域ごとのばらつきが大きくなるおそれがあります。そこで、まずは統一された基準で評点数を算出し、その後に金額へ換算する仕組みが採用されています。

このような評価方法を、評点式評価法(ひょうてんしきひょうかほう)といいます。

以降で解説する建物や土地の計算方法は、「どのように評点数を求めるのか」という違いがあるだけで、最終的にはすべてこの評点式評価法によって固定資産税評価額が算出されます(出典:一般財団法人資産評価システム研究センター 令和6年度固定資産税のあらまし)。

固定資産税評価額の計算方法の全体像(評点数×評点一点あたりの価額)

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2-2. 評点数の算出方法は建物と土地で異なる

固定資産税評価額は、「評点数 × 評点一点あたりの価額」という共通の計算式で求められます。しかし、評点数をどのように算出するのかは、建物と土地で大きく異なります。

固定資産税評価額の計算方法が難しく感じられる理由の一つは、建物と土地で評点数の求め方がまったく異なるためです。

まず、建物の評点数は、「再建築費評点数」に「経年減点補正率」を掛けて算出します。

再建築費評点数(さいけんちくひひょうてんすう)とは、その建物と同じものを評価時点で新築した場合に必要となる建築費を点数で表したものです。

建物の構造や使用されている建材、設備のグレード、延床面積などによって再建築費評点数は変わります。

一方で、経年減点補正率(けいねんげんてんほせいりつ)とは、築年数の経過による価値の減少を反映するための補正率です。

つまり、建物の評点数は、「今この建物を新築したらどれくらいの価値になるのか」を表す再建築費評点数に、「築年数によって価値がどれくらい減少したのか」を表す経年減点補正率を掛けることで求められます。

建物の計算方法については、「3.建物の固定資産税評価額の計算方法」で詳しく解説します。

一方で、土地の評点数は建物とはまったく異なる方法で算出されます。

土地の評点数は、「路線価(ろせんか)」を基礎として計算します。路線価とは、その土地が接している道路に設定された1㎡あたりの標準的な価格のことです。

土地の評点数を算出する際は、この路線価をもとに、土地の奥行きや形状、道路との接し方などを考慮した補正を行います。その後、地積(土地の面積)を掛けることで評点数を求めます。

建物とは異なり、土地には築年数という考え方がありません。そのため、土地の評点数は「どこにある土地なのか」「どのような形状の土地なのか」といった条件によって決まります。

土地の計算方法については、「4.土地の固定資産税評価額の計算方法」で詳しく解説します。

このように、建物と土地では評点数の算出方法が大きく異なります(出典:総務省 固定資産評価基準第1章 土地総務省 固定資産評価基準第2章 家屋)。

ただし、評点数を算出した後の流れは共通です。建物も土地も、最終的には「評点数 × 評点一点あたりの価額(通常1円)」によって固定資産税評価額が求められます。

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3. 建物の固定資産税評価額の計算方法

建物の固定資産税評価額は、「評点数 × 評点一点あたりの価額」という計算式で求めます。

このうち評点数とは、その建物を評価時点で新築した場合にどれくらいの価値があるかを点数で表したものです。市町村では、この点数をもとに建物の固定資産税評価額を算出します。

新築の場合は、市町村の職員が1棟ごとに建物を実地調査し、使用されている材料や設備などを確認したうえで評点数を決定します。

一方、既存の建物は3年ごとの評価替えの際に、新たに実地調査を行うのではなく、定められた補正率を用いて評点数を見直します。

なお、リフォームや増築を行った場合は、工事をした部分について評点数を再計算し、その結果を既存の評点数に反映する仕組みです。

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3-1. 建物の評点数の計算方法(新築時の家屋調査による評価)

新築した建物の評点数は、市町村の職員が1棟ごとに行う「家屋調査」をもとに算出されます。

家屋調査では、建物を構造部や外壁、屋根、設備などの複数の部分に分け、それぞれの評点を計算します。そして、すべての部分の評点を合計したものが「再建築費評点数」(さいけんちくひひょうてんすう)です。

その後、再建築費評点数に築年数による価値の減少を反映する「経年減点補正率」を掛けることで、建物の評点数が求められます。

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再建築費評点数の決まり方

再建築費評点数とは、評価対象の建物と同じ建物を評価時点で新築した場合に必要となる建築費を、点数で表したものです。固定資産税評価では1点を1円相当として扱います。

新築した建物の再建築費評点数は、家屋調査の結果をもとに算出されます。まず、市町村の担当職員が現地調査や建築確認申請書、平面図などの建築関係書類を確認し、建物を複数の部分に区分します。

木造家屋の場合は、次の10区分に分けて評価します。

  • 構造部(主体構造部・基礎)
  • 外壁仕上
  • 内壁仕上
  • 床仕上
  • 天井仕上
  • 屋根仕上
  • 建具
  • 建築設備
  • 仮設工事
  • その他工事

続いて、各部分で使用されている資材の種類や品質、施工量などを確認します。そして、固定資産評価基準に定められた「再建築費評点基準表」に当てはめて評点を算出します。

各部分の再建築費評点数は、次の式で求めます。

  • 各部分の再建築費評点数 = 標準評点数 × 補正係数 × 計算単位の数値

算出された各部分の再建築費評点数を合計したものが、その建物の再建築費評点数です。

ここで使われる「標準評点数」とは、各部分や各資材について標準的な工事費を1円=1点に換算した数値です。基準年度の賦課期日の属する年の2年前の7月時点における東京都(特別区)の物価水準をもとに設定されています。

一方、「補正係数」は、実際の施工内容が標準仕様と比べてどの程度異なるかを反映する倍率です。たとえば、高級な建材や設備を採用している場合は、1を超える補正係数が適用されることがあります。

また、「計算単位の数値」とは、対象となる建物の延べ床面積や建床面積などのことです。

なお、電気設備や空調設備、給排水設備などで建物と一体となって機能しているものは、建物の一部として評価されます。そのため、これらの設備についても再建築費評点数の計算対象に含まれます。

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経年減点補正率の決まり方

経年減点補正率(けいねんげんてんほせいりつ)とは、建物の築年数が経過することで生じる価値の減少を数値化したものです。再建築費評点数にこの補正率を掛けることで、実際の評点数を求めます。

経年減点補正率は、固定資産評価基準の「経年減点補正率基準表」に定められています。

木造家屋の場合は、「用途別区分」と「延べ床面積1㎡あたりの再建築費評点数の区分」によって補正率が決まります。

これに対し、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの非木造家屋は、「用途別区分」と「構造別区分」によって補正率が決まります。

たとえば、木造の専用住宅・共同住宅等のうち、延べ床面積1㎡あたりの再建築費評点数が61,190点未満の建物では、築1年目の経年減点補正率は0.80です。

これは、新築時の再建築費評点数の80%が評点数として残り、20%分が築1年による価値の減少として反映されることを意味します。

さらに、築5年目には0.62、築10年目には0.41まで低下します。

同じ木造住宅でも、建材や設備のグレードが高く再建築費評点数が大きい建物ほど、経年減点補正率の下がり方は緩やかです。

一方、非木造家屋(鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造などの住宅・アパート用建物)の場合も、築1年目の経年減点補正率は0.80から始まります。

ただし、築年数が経過した際の下落幅は木造より小さく、築10年目でも0.6386という比較的高い水準を維持します。

木造と非木造の違いについては、「3-6.木造より非木造の評価額が下がりにくい理由」で詳しく解説します。

なお、積雪地域や寒冷地域にある木造家屋については、気候条件による追加的な劣化を反映するため、「積雪寒冷地域補正率」が加算的に適用されます。

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最終残存率|評価額には下限がある

経年減点補正率には「最終残存率」と呼ばれる下限値があります。そのため、建物の評価額は築年数がどれだけ経過してもゼロにはなりません。

建物は古くなっても、現実に存在して使用できる限り一定の価値があると考えられています。

そのため、固定資産評価基準では、経年による価値の減少を考慮しても残価は20%程度が限度とされており、経年減点補正率の下限値を0.20に設定しています。

木造・非木造を問わず、すべての建物で経年減点補正率が0.20未満になることはありません。

たとえば、木造専用住宅(1㎡あたり再建築費評点数61,190点未満)の場合、築15年以上になると経年減点補正率は0.20で固定されます。

再建築費評点数が10,000,000点の木造住宅であれば、最終残存率に達した後の評点数は次のとおりです。

  • 10,000,000点 × 0.20 = 2,000,000点

このため、建物の評価額は最終残存率に達すると、それ以降は大きく下がりにくくなります。

注意
最終残存率に達した後も、3年ごとの評価替えでは「再建築費評点補正率」が見直されます。建設コストが上昇している局面では再建築費評点補正率が1を超えるため、計算上の評価額が前年度評価額を上回る場合があります。

しかし、在来分家屋には「算出された評価額が前年度評価額を上回る場合は前年度評価額に据え置く」というルールがあります。そのため、最終残存率に達した建物の評価額が前年度より高くなることはありません。

最終残存率到達後の評価額は、前年度と同額で据え置かれるか、再建築費評点補正率が1を下回った評価替えの際に下落するかのいずれかになります。
表4|経年減点補正率の早見表(木造専用住宅等・非木造住宅アパート用の比較)
区分 築1年目 築5年目 築10年目 最終残存率(0.20)到達年数
木造(61,190点未満) 0.80 0.62 0.41 15年以上
木造(61,190点以上95,820点未満) 0.80 0.64 0.49 20年以上
木造(95,820点以上147,770点未満) 0.80 0.65 0.54 25年以上
木造(147,770点以上) 0.80 0.67 0.59 35年以上
非木造RC・SRC造(住宅・アパート用) 0.8000 0.6825 0.6386 60年以上

需給事情による減点補正率

需給事情による減点補正率(じゅきゅうじじょうによるげんてんほせいりつ)とは、建物の市場価値が地域事情や建築様式の影響によって低下している場合に適用される補正率です。

ただし、この補正は一般的な住宅やマンションに適用されるものではなく、例外的な制度です。具体的には、次のような家屋が対象となります。

  • 建築様式が著しく旧式となっている家屋
  • 所在地域の状況によって価値が低下している家屋

たとえば、間取りや採光、設備などが現在の生活様式に適応していない建物は、建築様式が著しく旧式と判断されることがあります。

また、不良住宅地域や低湿地域、環境不良地域などに所在する家屋は、地域要因による価値の低下が認められる場合があります。

このように、需給事情による減点補正率は限定されたケースでのみ適用される制度であり、一般的な戸建て住宅や分譲マンションでは通常適用されません。

建物の固定資産税評価額を決める評点数の構成要素

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3-2. 評点一点あたりの価額の計算方法

評点一点あたりの価額は、次の計算式で求めます。

  • 評点一点あたりの価額 = 1円 × 物価水準による補正率 × 設計管理費等による補正率

2.固定資産税評価額の計算方法の基本構造」では評点一点あたりの価額を「通常1円」と説明しました。しかし、実際には「物価水準による補正率」と「設計管理費等による補正率」を掛けるため、評点一点あたりの価額は1円よりやや高くなるのが一般的です。

物価水準による補正率とは、地域ごとの建築資材費や労務費の違いを反映するための補正率です。一方、設計管理費等による補正率とは、建物を建築する際に必要となる設計費や工事監理費などを反映するための補正率です。

評点一点あたりの価額は、これらの補正率によって決まります。そのため、同じ評点数の建物であっても、所在地や建物の種類が異なれば固定資産税評価額に差が生じます。

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物価水準による補正率

物価水準による補正率とは、建物の建築に必要な資材費や労務費が地域によって異なることを、固定資産税評価額に反映するための補正率です。

再建築費評点基準表で使用される標準評点数は、東京都(特別区の区域)の物価水準を基準として設定されています。そのため、東京都以外の地域では、実際の建築コストとの違いを調整する必要があります。

木造家屋の場合は、都道府県ごとに定められた「指定市」(道府県庁所在地の市および東京都特別区)の補正率が適用されます。補正率は1.00、0.95、0.90のいずれかです。

また、指定市以外の市町村では、その市町村が属する都道府県の指定市の補正率を原則として使用します。

一方、非木造家屋は、木造家屋と比べて建設コストの地域差が小さいと考えられているため、全国一律で1.00とされています。つまり、非木造家屋には物価水準による補正はありません。

表5|物価水準による補正率の指定市別一覧(木造家屋・令和6年度評価替え)
補正率 該当する主な指定市
1.00 札幌市、東京都特別区、横浜市、新潟市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、福岡市など
0.95 青森市、仙台市、秋田市、山形市、水戸市、宇都宮市、前橋市、さいたま市、千葉市、富山市、金沢市、福井市、甲府市、長野市、岐阜市、静岡市、津市、大津市、奈良市、和歌山市、鳥取市、松江市、岡山市、広島市、山口市、徳島市、高松市、松山市、高知市、佐賀市、長崎市、熊本市、大分市、宮崎市、鹿児島市、那覇市など
0.90 盛岡市、福島市

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設計管理費等による補正率

設計管理費等による補正率とは、資材費や労務費などの工事原価には含まれない費用を固定資産税評価額に反映するための補正率です。

ここでいう工事原価には、建物そのものを施工するための費用は含まれています。しかし、建物を建てる際には工事費以外にも、設計費や工事監理費などの費用が必要です。

そこで、設計者や工事監理者への報酬、一般管理費などを評価額に反映するために、設計管理費等による補正率が設けられています。

補正率は全国一律で定められており、木造家屋は1.05、非木造家屋は1.10です。

ただし、木造家屋・非木造家屋ともに、床面積がおおむね10㎡以下の簡易な構造の家屋については1.00が適用されます。

実際の計算例を見てみましょう。たとえば、大阪市(物価水準による補正率1.00)にある木造住宅の場合、評点一点あたりの価額は次のように計算します。

  • 1円 × 1.00 × 1.05 = 1.05円

このように、評点一点あたりの価額は1円ではなく1.05円となります。

一方、非木造家屋は設計管理費等による補正率が1.10であるため、同じ評点数であっても木造家屋より評点一点あたりの価額が高くなります。

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3-3. 評価替え年度の既存家屋はどう再評価されるか

固定資産税の評価額は、新築時に決定されたまま永久に変わらないわけではありません。3年ごとに行われる評価替えでは、すでに固定資産課税台帳に登録されている建物についても評価額の見直しが行われます。

この既存の建物は、「在来分家屋(ざいらいぶんかおく)」と呼ばれます。

ただし、在来分家屋の評価替えでは、新築時のように市町村の職員が1棟ごとに家屋調査を実施するわけではありません。

新築時は、建物の構造や使用されている資材、設備などを確認しながら再建築費評点数を算出します。一方、評価替えでは既存の評価データをもとに、定められた補正率を用いて評点数を見直します。

このように、新築時の評価方法と評価替え時の再評価方法では計算の仕組みが異なります。

その違いを理解しておくと、「なぜ建物の固定資産税評価額が思ったほど下がらないのか」「なぜ評価替え後も評価額が据え置かれることがあるのか」といった疑問を理解しやすくなります。

表6|新築時の評価と評価替え時の再評価の違い比較表
項目 新築時(新増分家屋) 評価替え時(在来分家屋)
評価の対象 新築・増築された建物 既に固定資産課税台帳に登録されている建物
再建築費評点数の算出方法 部分別評価(現地調査・建築書類で各部分を詳細調査)または比準評価 前年度の再建築費評点数 × 再建築費評点補正率(原則)または比準評価・部分別評価(特別な事情がある場合)
建設コストの反映 評価時点の標準評点数を直接適用 再建築費評点補正率により3年間の物価変動を反映
評価額の上限 算出された評価額が前年度評価額を上回る場合は前年度評価額に据え置き

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在来分家屋は標準家屋との比較で評価する(比準評価)

在来分家屋(ざいらいぶんかおく)とは、すでに固定資産課税台帳に価格などが登録されている建物のことです。在来分家屋の再建築費評点数は、原則として次の計算式で求めます。

  • 再建築費評点数 = 基準年度の前年度における再建築費評点数 × 再建築費評点補正率

つまり、評価替えのたびに新築時と同じ家屋調査を行うのではなく、前回の再建築費評点数に建設コストの変動を反映する再建築費評点補正率を掛けて見直します。

ただし、改築や増築、損壊などによって建物の状況が大きく変化した場合は、この方法だけでは適切な評価ができません。

そのため、特別な事情がある場合には、「部分別評価の方法」または「比準評価の方法」によって再建築費評点数を改めて算出します。

このうち「比準評価(ひじゅんひょうか)」とは、市町村内にある建物を構造や規模、建築水準などによって分類し、それぞれの区分ごとに選定した「標準家屋」と比較して評点数を求める方法です。

標準家屋とは、その区分を代表する建物として市町村が選定した家屋をいいます。

比準評価では、評価対象の建物が標準家屋と比べてどの程度の規模や品質であるかを確認し、その差を反映して評点数を決定します。

新築時のように建物のすべての部分を1棟ずつ詳細に調査するわけではありません。

その代わりに、標準家屋との比較によって評価を行うため、全国に存在する膨大な数の建物を効率的かつ統一的な基準で再評価できる仕組みになっています。

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再建築費評点補正率|建設コストが上がっても評価額が下がらない理由

建物の固定資産税評価額は、築年数が経過するたびに大きく下がると思われがちです。しかし、実際には評価額があまり下がらないケースも少なくありません。

その大きな理由の一つが、「再建築費評点補正率」(さいけんちくひひょうてんほせいりつ)です。

再建築費評点補正率とは、評価替えの前後3年間における建設コストの変動を反映するための補正率です。建設コストには、資材費や労務費などが含まれます。

この補正率は、東京都(特別区の区域)における工事原価が前回の基準年度からどの程度変動したかをもとに算定され、全国共通で適用されます。

たとえば、令和6年度の評価替えでは、再建築費評点補正率は木造家屋が1.11、非木造家屋が1.07と定められました。

再建築費評点補正率が1を超えている場合は、前回の評価替え時より建設コストが上昇していることを意味します。そのため、在来分家屋の再建築費評点数も引き上げられます。

たとえば、前基準年度の再建築費評点数が10,000,000点だった木造住宅の場合、令和6年度の評価替えでは次のように計算します。

  • 10,000,000点 × 1.11 = 11,100,000点

このように、同じ建物であっても建設コストの上昇を反映して再建築費評点数が増加します。

一方、建物は築年数が経過すると経年減点補正率が下がるため、評価額は下落する方向に動きます。

これに対し、再建築費評点補正率が1を超えると再建築費評点数は上昇する方向に動きます。

つまり、経年減点補正率による「評価額を下げる力」と、再建築費評点補正率による「評価額を押し上げる力」が同時に働くことになります。

その結果、建設コストが上昇している局面では、築年数が増えているにもかかわらず評価額がほとんど下がらないことがあります。これが、「建物の固定資産税評価額が思ったほど下がらない」といわれる主な理由です。

ただし、在来分家屋には評価額の急激な上昇を防ぐためのルールがあります。

具体的には、再計算した評価額が前年度評価額を上回る場合でも、その高い評価額は採用されません。この場合は、前年度評価額に据え置かれます。

そのため、再建築費評点補正率が大きく上昇したとしても、評価替えによって建物の評価額が前年度より高くなることはありません。

一方で、再計算した評価額が前年度評価額を下回る場合は、その新しい評価額が採用されます。採用された評価額は、原則として次の評価替えまでの3年間使用されます。

再建築費評点補正率による固定資産税評価額の推移(建設コスト上昇時)

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3-4. 増改築をした場合の再評価ルール

建物を増改築すると、その工事内容に応じて評点数が見直されるため、固定資産税評価額が上昇することがあります。「増築」とは、建物の床面積や体積が増加する工事のことです。

一方、「改築」とは、床面積は変えずに内装や設備などを取り替える工事をいいます。

増築と改築はどちらも「基準年度の評価額によることが適当でない特別の事情」に該当するため、3年ごとの評価替えを待たずに新たな評価が行われます。

増築の場合は、増築した部分と既存部分(在来部分)を分けて評価します。増築部分については、新築した建物と同じ方法で再建築費評点数を算出します。

これに対し、既存部分は従来の評点数を引き継ぎ、それまでの築年数に対応する経年減点補正率を適用します。加えて、増築部分には増築工事が完了した時点からの経過年数に対応する経年減点補正率を適用します。

つまり、既存部分と増築部分は別々に評価され、それぞれの評点数を合算して建物全体の評価額を求めます。

改築の場合は、まず撤去または取り替えた部分に相当する評点数を差し引きます。その後、新たに施工した部分の評点数を加算し、再建築費評点数を更新します。

このように、改築では工事を行った部分だけが評価の見直し対象となります。

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3-5. 建物の固定資産税評価額の計算例

ここまで解説した計算方法をもとに、新築木造住宅の固定資産税評価額を実際に計算してみます。

設定条件

  • 建物の種別:木造専用住宅(新築・1年目)
  • 所在地:大阪市
  • 延べ床面積:120㎡
  • 1㎡あたりの再建築費評点数(仮):100,000点
注意
実際の再建築費評点数は家屋調査によって決定されます。100,000点は計算の流れを説明するための仮定値であり、実際の数値は建物の構造や設備、使用材料などによって異なります。

ステップ1:再建築費評点数を求める

まず、1㎡あたりの再建築費評点数に延べ床面積を掛けて、建物全体の再建築費評点数を求めます。

  • 100,000点/㎡ × 120㎡ = 12,000,000点

したがって、この建物の再建築費評点数は12,000,000点です。

ステップ2:評点数を求める

次に、再建築費評点数に経年減点補正率を掛けて評点数を算出します。

この建物の1㎡あたりの再建築費評点数は100,000点です。そのため、経年減点補正率は「95,820点以上147,770点未満」の区分を使用します。この区分の木造住宅における築1年目の経年減点補正率は0.80です。

  • 12,000,000点 × 0.80 = 9,600,000点

よって、この建物の評点数は9,600,000点となります。

ステップ3:評点一点あたりの価額を求める

続いて、評点一点あたりの価額を計算します。

  • 物価水準による補正率(大阪市):1.00
  • 設計管理費等による補正率(木造):1.05

計算式は次のとおりです。

  • 1円 × 1.00 × 1.05 = 1.05円

したがって、評点一点あたりの価額は1.05円となります。

ステップ4:固定資産税評価額を求める

最後に、評点数に評点一点あたりの価額を掛けて固定資産税評価額を算出します。

  • 9,600,000点 × 1.05円 = 1,008万円

この建物の固定資産税評価額は、1,008万円です。

築年数が経過した場合の評価額

同じ建物が築25年以上になった場合、この区分(95,820点以上147,770点未満)の経年減点補正率は最終残存率である0.20になります。

ここでは、再建築費評点補正率による変動がないものとして計算します。まず、評点数は次のようになります。

  • 12,000,000点 × 0.20 = 2,400,000点

さらに、評点一点あたりの価額1.05円を掛けると、固定資産税評価額は次のとおりです。

  • 2,400,000点 × 1.05円 = 252万円

つまり、評価額は252万円となります。

ただし、実際の評価額はこの計算どおりになるとは限りません。なぜなら、3年ごとの評価替えでは再建築費評点補正率が適用されるためです。建設コストが上昇すれば再建築費評点数が引き上げられ、評価額の下落幅が小さくなることがあります。

また、再計算した評価額が前年度評価額を上回る場合は、前年度評価額に据え置かれます。そのため、在来分家屋の評価額が評価替えによって前年度より高くなることはありません。

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3-6. 木造より非木造の評価額が下がりにくい理由

鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)などの非木造建物は、木造住宅と比べて固定資産税評価額が下がりにくい傾向があります。

その主な理由は、「経年減点補正率の下がり方」に大きな違いがあるためです。

木造(専用住宅等)と非木造RC・SRC造(住宅・アパート用)の経年減点補正率を比較すると、築1年目はいずれも0.80で差はありません。

しかし、築年数が経過した後の下落幅には大きな違いがあります。

木造専用住宅(1㎡あたり再建築費評点数61,190点未満)の場合、経年減点補正率は毎年比較的大きく低下します。

たとえば、築10年目の経年減点補正率は0.41です。また、最終残存率である0.20に達するのは築15年以上となっています。

一方、非木造RC・SRC造(住宅・アパート用)の場合、築10年目の経年減点補正率は0.6386です。同じ築10年目でも、木造の0.41と比べてかなり高い水準を維持しています。

さらに、非木造RC・SRC造が最終残存率の0.20に達するまでには60年以上かかります。

これは、非木造建物が木造住宅より耐久性に優れていると考えられており、その考え方が固定資産評価基準に反映されているためです。

実際に数字で比較してみましょう。同じ再建築費評点数10,000,000点の建物が2棟あると仮定します。木造住宅の場合、築10年目の評点数は次のとおりです。

  • 10,000,000点 × 0.41 = 4,100,000点

これに対し、非木造RC・SRC造(住宅・アパート用)の評点数は次のようになります。

  • 10,000,000点 × 0.6386 = 6,386,000点

両者の差は2,286,000点です。

評点一点あたりの価額はそれぞれ異なります。木造の場合は1.05円、非木造RC・SRC造の場合は設計管理費等による補正率が1.10であるため1.10円です(いずれも物価水準による補正率を1.00とした場合)。

それぞれの評価額は次のとおりです。

  • 木造:4,100,000点 × 1.05円 = 430万5,000円
  • 非木造RC・SRC造:6,386,000点 × 1.10円 = 702万4,600円

評価額には約272万円の差が生じることになります。

このように、非木造建物は経年減点補正率の低下が緩やかなため、築年数が経過しても評価額が下がりにくい仕組みになっています。

マンションの多くはRC造やSRC造で建築されています。そのため、「マンションの固定資産税評価額はなかなか下がらない」と感じるケースが少なくありません。

こうした評価額の下がりにくさは、非木造建物の耐久性を評価に反映した結果といえます。

なお、マンションなどの区分所有建物については、専有部分と敷地利用権を考慮した独自の計算方法があります。詳しくは「5.マンションの固定資産税評価額の計算方法」で解説します。

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4. 土地の固定資産税評価額の計算方法

土地の固定資産税評価額は、宅地や農地、山林などの地目(ちもく)ごとに定められた方法で算出されます。

このうち住宅用地や事業用地として利用される宅地は、「路線価方式」または「標準地比準方式」によって評価額を求めます。

評価額を計算する際に重要となるのが地目の判定です。地目は登記簿に記載された内容で決まるわけではなく、毎年1月1日時点の実際の利用状況(現況)によって判定されます。

また、土地の固定資産税を理解するうえでは、「評価額」と「税負担」を区別することが重要です。

なぜなら、土地には「負担調整措置」という制度があり、評価額が下がった場合でも固定資産税額がすぐに同じ割合で下がるとは限らないためです。

そのため、土地の固定資産税について調べる際は、「評価額がいくらなのか」と「実際の税額がいくらになるのか」を分けて考える必要があります。

表10|路線価方式(市街地宅地評価法)と標準地比準方式(その他の宅地評価法)の違い比較表
項目 路線価方式(市街地宅地評価法) 標準地比準方式(その他の宅地評価法)
主な適用地域 主として市街地的形態を形成する地域の宅地 主として市街地的形態を形成するに至らない地域の宅地
評点算出の基礎 街路ごとに付設された「路線価」 状況類似地区ごとに選定した「標準宅地」の評点数
個別補正の方法 画地計算法(奥行・間口・形状等に応じた補正)を適用 標準宅地との奥行・間口・形状等の相違を比準割合に換算して補正
特徴 街路ごとに細かく価格水準を反映できる 標準宅地との比較でシンプルに評価できる

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4-1. 市街地の宅地は路線価方式で計算する

市街地にある宅地の固定資産税評価額は、主に「路線価方式」によって算出されます。

路線価方式とは、土地が接している道路に付けられた価格(路線価)を基準として評価額を求める方法です。

建物の固定資産税評価額が建物そのものの構造や設備をもとに計算されるのに対し、土地の固定資産税評価額は道路との位置関係を出発点として計算されます。

路線価方式による評価は、次の3つの段階で行われます。

  1. 標準宅地を選定し、適正な時価を評定する
  2. 標準宅地の価格をもとに路線価を付設する
  3. 画地計算法によって各土地の評点数を計算する

まず、評価区域ごとに標準となる宅地(標準宅地)を選定し、その宅地の適正な時価を求めます。

次に、その価格をもとに道路ごとの路線価を設定します。

その後、各土地について面積や間口の広さ、奥行き、形状などを考慮しながら画地計算法によって評点数を算出します。

このように、路線価方式では道路に付けられた価格を基準としながら、個々の土地の条件を反映して最終的な固定資産税評価額を決定します。

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標準宅地の選定と適正な時価の評価

路線価方式による土地評価の第一段階は、「標準宅地」を選定し、その適正な時価を求めることです。

まず、市町村は宅地を利用状況に応じて用途地区に区分します。用途地区には、「普通住宅地区」「高度商業地区」「普通商業地区」「工業地区」などがあります。

次に、それぞれの用途地区を、街路の状況や公共施設への接近のしやすさ、建物の建て込み状況などをもとに、さらに細かな地域へ区分します。

そのうえで、各地域の主要な道路に接している宅地の中から、奥行きや間口、形状などがその地域の標準的な宅地を選定します。この宅地を「標準宅地」といいます。

標準宅地は、その地域の土地価格を決める基準となる宅地です。

続いて、選定した標準宅地の適正な時価を評定します。

適正な時価を求める際は、周辺地域における土地の売買実例価格を参考にしながら、通常の取引条件のもとで成立すると考えられる価格(正常売買価格)を算定します。

さらに、地価公示価格や都道府県地価調査価格、不動産鑑定士による鑑定評価価格なども活用し、標準宅地の価格を決定します。

固定資産税評価額の基準となる標準宅地の価格は、これらの価格のおおむね7割を目途として評定されます(出典:総務省 固定資産評価のしくみについて(土地評価))。

そのため、固定資産税評価額は実際の売買価格より低くなることが一般的です。

筆者も複数の土地を購入した経験がありますが、固定資産税評価額が購入価格を下回るケースを何度も確認しました。これは、固定資産税評価額が市場価格の約7割を目途として算出される仕組みによるものです。

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路線価の付設と評点数の計算

路線価(ろせんか)とは、道路に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価格を点数で表したものです。路線価方式では、この路線価を基準として各土地の評点数を計算します。

まず、主要な道路については、「標準宅地の選定と適正な時価の評価」で求めた標準宅地の適正な時価をもとに路線価を設定します。

一方、主要な道路以外の道路(その他の街路)の路線価は、近くにある主要な道路の路線価を基準として決定します。

その際は、道路の状況や公共施設への接近のしやすさ、周辺の建物の建て込み状況などを総合的に考慮します。

路線価が決まった後は、各土地の評点数を算出します。評点数の計算式は次のとおりです。

  • 評点数 = 路線価 × 画地計算法による補正率 × 地積(㎡)

ここでいう「画地計算法による補正率」とは、土地の形状や間口の広さ、奥行きなどを評価額に反映するための補正率です。詳しくは4-2で解説します。

たとえば、同じ道路に面している土地であっても、整形地と不整形地では利用しやすさが異なるため、補正率によって評点数に差が生じます。

こうして算出した評点数に、評点一点あたりの価額を掛けることで固定資産税評価額を求めます。

  • 固定資産税評価額 = 評点数 × 評点一点あたりの価額

評点一点あたりの価額は、市町村長が決定します。その際の基準となるのが「提示平均価額」です。

提示平均価額とは、総務大臣または都道府県知事が算定し、市町村へ通知する宅地の平均的な価格のことです。市町村長は、この提示平均価額をもとに評点一点あたりの価額を定めます。

なお、宅地の場合は評点一点あたりの価額が通常1円となるため、評点数と固定資産税評価額はほぼ同じ金額になります。

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4-2. 画地計算法で土地ごとの形状・状況を補正する

路線価は、道路に面する標準的な宅地を前提として設定された価格です。しかし、実際の土地はすべて同じ条件ではありません。

たとえば、同じ道路に面している土地でも、奥行きが極端に短い土地や間口が狭い土地は利用しにくいため、一般的には価値が低くなります。

一方、二方向の道路に面している角地は利用しやすく、価値が高く評価されることがあります。そこで用いられるのが「画地計算法(がいちけいさんほう)」です。

画地計算法とは、土地ごとの形状や接道状況などの違いを評価額に反映するための補正計算方法をいいます。

土地の価値は、面積だけで決まるわけではありません。間口の広さや奥行きの長さ、土地の形状、道路との接し方などによっても大きく変わります。

そのため、路線価だけを使って評価すると、実際の土地の価値との差が生じてしまいます。

そこで、路線価をもとに算出した評点数に各種補正率を掛けることで、土地ごとの条件を評価額に反映します。

このように、画地計算法は「同じ道路に面していても土地ごとに評価額が異なる理由」を説明するための重要な仕組みです。

画地計算法で使用される主な補正率には、奥行価格補正率や側方路線影響加算率、不整形地補正率などがあります。これらの補正率については次項以降で詳しく解説します。

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間口狭小補正率・奥行価格補正率

間口狭小補正率と奥行価格補正率は、土地の形状による価値の違いを評価額に反映するための代表的な補正率です。

同じ路線価が付いている土地であっても、間口の広さや奥行きの長さが異なれば利用しやすさも変わります。そのため、路線価だけでは土地の実際の価値を適切に評価できません。

そこで、画地計算法では土地の形状に応じた補正率を適用します。

奥行価格補正率(おくゆきかかくほせいりつ)とは、道路からの奥行距離に応じて路線価を補正するための補正率です。土地の奥行きが標準的な長さであれば補正率は1.00となり、補正は行われません。

一方、奥行きが長すぎる土地は、道路から遠い部分の利便性が低くなるため価値が下がる傾向があります。また、奥行きが極端に短い土地も利用しにくいため、価値が低く評価されることがあります。

このような土地には1.00未満の奥行価格補正率が適用され、評点数が引き下げられます。

間口狭小補正率(まぐちきょうしょうほせいりつ)とは、道路に接する幅である間口が狭い土地に適用される補正率です。

間口が狭い土地は建物の配置や駐車場の設計などに制約が生じやすく、一般的には利用価値が低くなると考えられています。

そのため、間口が一定の基準より狭い土地には間口狭小補正率が適用され、路線価をもとに算出した評点数が減額されます。

さらに、間口に対して奥行きが著しく長い土地については、「奥行長大補正率」が適用される場合があります。

この補正率は、いわゆる「うなぎの寝床」と呼ばれるような細長い土地の利用しにくさを評価額に反映するためのものです。

一方で、土地の価値を引き上げる補正率もあります。たとえば、正面と側方の2方向が道路に接している角地には「側方路線影響加算率」が適用されます。

また、正面と裏面の両方が道路に接している土地には「二方路線影響加算率」が適用されます。

これらの土地は出入りがしやすく、建物の配置の自由度も高いため、一般的な土地より価値が高いと考えられています。

たとえば、正面路線価が1,000点、側方路線価が900点、側方路線影響加算率が0.08の角地の場合、側方路線価に加算率を掛けた72点(900点 × 0.08)が1㎡あたりの評点数に加算されます。

このように、画地計算法では土地の形状や接道状況による価値の差を補正率で調整し、実際の利用価値に近い評価額を算出しています(出典:総務省 固定資産評価基準第1章 土地 別表第3 画地計算法)。

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不整形地補正率・がけ地補正率・無道路地補正率

不整形地補正率、がけ地補正率、無道路地補正率は、土地の形状や接道状況に大きな問題がある場合に適用される補正率です。

これらの補正率は、いずれも路線価をもとに算出した評点数を引き下げる方向に働きます。

不整形地補正率(ふせいけいちほせいりつ)とは、三角形や逆三角形、L字形など、形状が整っていない土地に適用される補正率です。

不整形地は、長方形や正方形の整形地と比べて建物の配置に制約が生じやすく、土地を有効活用しにくい傾向があります。そのため、不整形地には不整形地補正率を適用し、評点数を減額します。

不整形地補正率は、奥行価格補正率などによって算出した1㎡あたりの評点数に乗じて使用します。なお、不整形地補正率の下限は0.60です。

がけ地補正率(がけちほせいりつ)とは、急傾斜地を含む宅地に適用される補正率です。

がけ地部分は建物を建築できる面積が制限されたり、造成工事に費用がかかったりするため、一般的な宅地より利用価値が低くなります。そこで、宅地に占めるがけ地部分の割合に応じて評点数を減額します。

がけ地部分が大きいほど補正率は低くなり、減額幅も大きくなります。

無道路地補正率(むどうろちほせいりつ)とは、道路に接していない宅地に適用される補正率です。

無道路地は、建築基準法上の接道要件を満たしていない場合が多く、そのままでは建物を建築できないことがあります。また、建築を可能にするためには通路を確保したり、隣接地の所有者と協議したりする必要が生じることがあります。

そのため、無道路地は一般的な宅地より利用価値が低いと考えられています。

無道路地の評点数は、近隣の路線価を基準として計算したうえで、通路開設補正率と無道路地補正率を乗じて求めます。

なお、無道路地補正率の下限は0.60です。

このように、不整形地補正率、がけ地補正率、無道路地補正率は、土地の利用しにくさや建築上の制約を評価額に反映するための補正率として用いられています。

表7|画地計算法の主な補正率一覧
補正の種類 補正の方向 主な対象土地
奥行価格補正率 減価 奥行が標準より長すぎる・短すぎる土地
間口狭小補正率 減価 道路に接する幅(間口)が狭い土地
奥行長大補正率 減価 間口に対して奥行が著しく長い土地
側方路線影響加算率 加算 正面と側方の両方に路線が面する土地(角地)
二方路線影響加算率 加算 正面と裏面の両方に路線が面する土地
不整形地補正率 減価 形状が不整形な土地(三角地・逆三角地含む)
がけ地補正率 減価 がけ地を含む土地
無道路地補正率 減価 路線(道路)に接していない土地
土地の固定資産税評価額を補正する画地計算法の種類

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4-3. 市街地以外の宅地は標準地比準方式で計算する

農村部や郊外の住宅地など、市街地的形態を形成するに至っていない地域の宅地は、路線価方式では評価できない場合があります。

なぜなら、このような地域には路線価が設定されていないことが多いためです。

そこで用いられるのが、「標準地比準方式(その他の宅地評価法)」です。標準地比準方式とは、地域内の標準的な宅地を基準として、各土地の評価額を求める方法です。

まず、市町村は宅地を利用状況や周辺環境が似ている地域ごとに区分します。この地域区分を「状況類似地区」といいます。

次に、各状況類似地区の中から、道路に接しており、奥行きや間口、形状などが標準的な宅地を選定します。この宅地を「標準宅地」と呼びます。

その後、標準宅地の適正な時価を求めます。適正な時価は、土地の売買実例価格や地価公示価格、都道府県地価調査価格などを参考にしながら評定されます。

固定資産税評価額の基準となる標準宅地の価格は、路線価方式の場合と同様に、地価公示価格等のおおむね7割を目途として設定されます。

続いて、標準宅地に評点数を付設します。各土地の評点数は、次の計算式で求めます。

  • 評点数 = 標準宅地の1㎡あたり評点数 × 比準割合 × 地積

ここでいう「比準割合」とは、標準宅地と比較した際の条件の違いを反映する倍率です。たとえば、間口の広さや奥行き、土地の形状などが標準宅地と異なる場合は、その差を比準割合によって調整します。

このように、標準地比準方式は「標準宅地との比較」によって評価額を求める方法です。

一方、路線価方式は「道路に付けられた路線価」を基準として評価額を求めます。両者は計算の出発点こそ異なりますが、地価公示価格等のおおむね7割を目途として評価するという基本的な考え方は共通しています。

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4-4. 現況地目主義|課税上の地目は登記と異なる場合がある

固定資産税の評価では、土地の地目(ちもく)を登記簿の記載だけで判断しません。地目とは、宅地・田・畑・山林・雑種地など、土地の利用状況によって分類した種別のことです。

固定資産税では、賦課期日である毎年1月1日時点の土地の現況と利用目的をもとに地目を認定します。

この考え方を「現況地目主義(現況主義)」といいます。

現況地目主義が採用されている理由は、実際の利用状況に応じた公平な課税を行うためです。

土地の利用方法が変わっていても、登記簿の地目変更登記が行われていないケースは少なくありません。そのため、登記簿の記載だけを基準にすると、実際の利用状況とかけ離れた課税になってしまう可能性があります。

たとえば、登記上の地目が「田」であっても、実際には住宅が建っていて居住用として利用されている場合は、固定資産税では「宅地」として評価されます。

また、登記上の地目が「山林」であっても、駐車場として利用されている場合は「雑種地」として評価されます。

このように、固定資産税の地目は登記簿ではなく実際の利用状況によって決まるため、登記上の地目と課税上の地目が異なることがあります。

なお、固定資産税評価で使用される地目の区分は、次の9種類です。

  • 宅地
  • 鉱泉地
  • 池沼
  • 山林
  • 牧場
  • 原野
  • 雑種地

これらの区分は、不動産登記事務取扱手続準則における地目区分と同じです。

表8|現況地目主義|登記地目と課税地目が異なる典型例一覧
登記上の地目 賦課期日(1月1日)の実際の利用状況 課税上の認定地目
田・畑 建物が建ち、居住の用に供されている 宅地
田・畑・山林 駐車場・資材置場などとして利用されている 雑種地
山林・田・畑 宅地として開発・造成が完了し分譲されている 宅地
宅地 耕作されて田・畑として利用されている 田・畑
宅地 更地・未使用のまま(建物なし) 宅地(変わらない)

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4-5. 田・畑・山林・雑種地の評価方法

土地の固定資産税評価額は、地目によって評価方法が異なります。

これまで解説した宅地以外にも、田・畑・山林・雑種地などさまざまな地目があります。評価方法は地目ごとに異なりますが、いずれも土地の客観的な時価(正常売買価格)を基礎として評価する点は共通しています。

田・畑の評価方法

田や畑は、「状況類似地区」ごとに評価します。

まず、利用状況や立地条件などが似ている地域を状況類似地区として区分します。次に、その地区の標準的な農地を「標準田」または「標準畑」として選定します。その後、標準田や標準畑の適正な時価を求め、評点数を付設します。

各土地の評価額は、その標準田または標準畑との比較によって決定されます。ただし、すべての田や畑が農地として評価されるわけではありません。

たとえば、農地法に基づく転用許可を受けている農地や、宅地への転用が確実と認められる農地(宅地等介在農地)は、宅地として利用した場合の価値を基準に評価します。

この場合は、宅地としての価額から造成費を差し引いた金額によって評価額を求めます。

また、市街化区域内にある農地(市街化区域農地)についても、宅地としての価額を基準にし、造成費を控除した価額で評価します。

山林の評価方法

山林は、田や畑と同様に状況類似地区ごとに評価します。

まず、地域内の標準的な山林を「標準山林」として選定します。続いて、標準山林の適正な時価を求め、その価格を基準として各山林を評価します。

雑種地の評価方法

雑種地(ざっしゅち)とは、宅地・農地・山林などのどの地目にも該当しない土地のことです。たとえば、駐車場、資材置場、ゴルフ場などが雑種地に該当します。

雑種地は、売買実例価格から求めた適正な時価をもとに評価します。また、市街地にある雑種地については、周辺の宅地価格を参考にして評価するのが一般的です。

池沼・牧場・原野の評価方法

池沼、牧場、原野については、売買実例価格を基準とする「売買実例地比準方式」または周辺の類似した土地の価格を基準とする「近傍地比準方式」によって評価します。

このように、土地の評価方法は地目によって異なります。ただし、どの地目であっても最終的には適正な時価を基礎として固定資産税評価額を算出するという考え方は共通しています。

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4-6. 評価額は下がっても税負担が下がりにくい理由(負担調整措置)

土地の固定資産税評価額(価格)が下がったのに、固定資産税額がほとんど変わらない、あるいは下がらないことがあります。

この現象が起こる理由は、「負担調整措置(ふたんちょうせいそち)」という制度があるためです。

まず理解しておきたいのは、固定資産税評価額と課税標準額は別の金額であるという点です。

固定資産税の税額は、次の計算式で求めます。

  • 固定資産税額 = 課税標準額 × 税率

つまり、実際の税額を決めるのは固定資産税評価額ではなく課税標準額です。

住宅用地には「住宅用地の課税標準の特例」が適用されます。具体的には、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)の課税標準額は評価額の6分の1になります。また、一般住宅用地(200㎡を超える部分)の課税標準額は評価額の3分の1になります。

一方、商業地や駐車場用地などの商業地等(住宅用地以外の宅地)には、この特例は適用されません。

しかし、評価額が急激に変動すると税負担も大きく変動してしまいます。そこで、税負担の急激な増減を抑えるために設けられているのが負担調整措置です。

負担調整措置では、「負担水準」という指標を用いて課税標準額を調整します。負担水準(ふたんすいじゅん)とは、前年度の課税標準額が、今年度の評価額に対してどの程度の水準にあるかを示す割合です。

住宅用地の場合は、評価額そのものではなく、住宅用地の課税標準の特例を適用した後の金額を基準に計算します。

負担水準は次の式で求めます。

  • 負担水準(%)= 前年度課税標準額 ÷ 当年度価格(住宅用地は価格 × 特例率)× 100

負担水準の高低に応じて、今年度の課税標準額は次のルールで決まります。

表9|負担調整措置による課税標準額の調整ルール一覧(令和6〜8年度)
土地の区分 負担水準 今年度の課税標準額
商業地等(住宅用地以外) 70%超 今年度の価格の70%(引き下げ)
商業地等(住宅用地以外) 60%以上70%以下 前年度課税標準額と同額(据え置き
商業地等(住宅用地以外) 60%未満 前年度課税標準額 + 今年度の価格×5%(上限:価格の60%、下限:価格の20%)
住宅用地 100%以上 本則課税標準額(価格×特例率=上限まで到達
住宅用地 100%未満 前年度課税標準額 + 本則課税標準額×5%(上限:本則課税標準額、下限:本則課税標準額×20%)

この制度があるため、評価額が下がったからといって税負担も同じ割合で下がるとは限りません。

たとえば、商業地等の負担水準が60%以上70%以下の土地は、評価額が前年より下がっても課税標準額が据え置かれます。

その結果、固定資産税額も前年とほぼ同じになります。

また、商業地等の負担水準が60%未満の土地では、評価額が下がっていても課税標準額が毎年少しずつ引き上げられます。

具体的には、「今年度の価格の5%相当額」を加算しながら段階的に本来の水準へ近づけていきます。

このような仕組みがあるため、土地の固定資産税評価額が下がっても税負担は下がりにくくなっています。

1-5.固定資産税評価額が下がりにくい3つの理由(結論を先に)」で触れた「土地の評価額は下がっても税負担が下がりにくい理由」とは、この負担調整措置のことです。

注意
負担調整措置が作用するのは、固定資産税評価額ではなく課税標準額です。固定資産税評価額は評価替えのたびに見直されます。

これに対し、課税標準額は負担調整措置によって調整されるため、固定資産税評価額と一致しないことがあります。固定資産税評価額と課税標準額を混同すると、固定資産税額の仕組みを正しく理解できなくなるため注意しましょう。

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5. マンションの固定資産税評価額の計算方法

マンション(区分所有建物)の固定資産税評価額は、基本的な考え方は一戸建て住宅と同じですが、評価額を各住戸へ配分する方法が異なります。

一戸建て住宅は土地と建物を所有者ごとに評価します。

これに対し、マンションは建物全体と敷地全体を評価したうえで、その評価額を各区分所有者へ割り振る仕組みになっています。

建物部分については、各住戸を個別に評価するわけではありません。

まずマンション一棟全体の固定資産税評価額を算出し、その後、専有部分の床面積や共有持分などに基づいて各住戸へ配分します。

土地部分も同様です。マンションの敷地は区分所有者全員の共有財産であるため、敷地全体の評価額を求めたうえで、各所有者の敷地持分割合に応じて評価額を配分します。

そのため、マンションの固定資産税評価額を理解するには、「一棟全体の評価額」と「各住戸への配分方法」の両方を理解することが重要です。

また、高さ60mを超えるいわゆるタワーマンションには特別な仕組みがあります。

タワーマンションは高層階ほど市場価格が高くなる傾向があるため、固定資産税についても階数による価格差を反映する制度が導入されています。

その結果、同じ面積の住戸であっても、所在する階によって固定資産税額が異なる場合があります。

この章では、マンションの建物評価額と土地評価額がどのように各住戸へ配分されるのか、またタワーマンションではどのような調整が行われるのかを順番に解説します。

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5-1. 一棟全体を評価して専有床面積で按分する

マンションの建物(家屋)の固定資産税評価額は、一戸建て住宅のように住戸ごとに評価するわけではありません。

まず、マンション一棟全体の固定資産税評価額を算出します。その後、一棟全体の評価額を各住戸の専有床面積の割合に応じて配分し、各区分所有者に割り当てられる評価額を求めます。

このような方法が採用されている理由は、マンションには共用部分があるためです。

共用部分(きょうようぶぶん)とは、エレベーター、エントランス、共用廊下、管理人室など、区分所有者全員が共同で利用する部分をいいます。

共用部分は特定の住戸だけのものではありません。そのため、共用部分を含めた建物全体を一体として評価し、その評価額を各住戸へ配分する仕組みになっています。

この結果、各区分所有者に割り当てられる建物の評価額には、専有部分だけでなく共用部分の持分も含まれます。

つまり、課税の対象となる面積は「専有部分の面積+共用部分の持分に相当する面積」です(出典:宮若市 マンションなどの区分所有者の家屋の評価について)。

登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている床面積は専有部分のみです。そのため、固定資産税の計算上考慮される面積は、登記面積より大きくなります。

たとえば、一棟全体の建物評価額が1億5,000万円、全専有床面積の合計が1,200㎡、A戸の専有床面積が60㎡であるとします。

この場合、A戸の専有床面積が全体に占める割合は次のとおりです。

  • 60㎡ ÷ 1,200㎡ = 5%

したがって、A戸に割り当てられる建物の評価額は次のようになります。

  • 1億5,000万円 × 60㎡ ÷ 1,200㎡ = 750万円

このケースでは、A戸の建物の固定資産税評価額は750万円です。

なお、すべての住戸が単純に専有床面積だけで按分されるとは限りません。たとえば、一部の住戸だけが利用できる共用部分がある場合や、住戸ごとに天井の高さや附帯設備の内容に大きな差がある場合は、その差を反映するための補正が行われることがあります。

そのため、実際の按分割合は専有床面積の割合と完全に一致しないケースもあります。

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5-2. 按分の基準となる敷地権割合と共用部の扱い

マンションの敷地(土地)に係る固定資産税も、建物と同様に各区分所有者へ按分して課税されます。

分譲マンションの敷地は、特定の所有者だけのものではありません。敷地全体を区分所有者全員で共有しており、それぞれが「敷地権(しきちけん)」と呼ばれる持分を保有しています。

敷地権とは、マンションの敷地に対する所有権の持分のことです。

各区分所有者は、自分が保有する敷地権割合に応じて、敷地に係る固定資産税を負担します。

敷地権割合は、一般的に専有床面積の割合を基準として決められています。

そのため、専有面積が大きい住戸ほど敷地権割合も大きくなり、土地に係る固定資産税の負担額も大きくなります。

マンションの固定資産税を理解するうえでは、建物と土地を別々に考えることが重要です。

建物の固定資産税評価額は、一棟全体の建物評価額を各住戸へ按分して求めます。具体的には、次の計算式で算出します。

  • 各住戸の建物評価額 = 一棟全体の建物評価額 × 専有床面積の割合

一方、土地の固定資産税評価額は、敷地全体の評価額を敷地権割合に応じて按分して求めます。

計算式は次のとおりです。

  • 各住戸の土地評価額 = 敷地全体の土地評価額 × 敷地権割合

また、マンションの敷地には住宅用地の課税標準の特例が適用されます。そのため、土地の課税標準額は評価額そのままではありません。

小規模住宅用地に該当する部分は評価額の6分の1、一般住宅用地に該当する部分は評価額の3分の1を基準として課税標準額が計算されます。

このように、マンションの固定資産税は建物と土地をそれぞれ別に計算したうえで課税されます。

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5-3. タワーマンションは高層階ほど税額が高くなる仕組み

高さ60mを超えるタワーマンションについても、建物全体を一括で評価し、その評価額を各住戸へ配分するという基本的な考え方は変わりません。

また、固定資産税評価額(価格)の計算方法も一般的なマンションと同じです。

建物全体の固定資産税評価額を求めた後、各住戸の専有床面積などに応じて評価額を按分します。

そのため、固定資産税評価額そのものは、高層階だから高くなる、低層階だから安くなるという仕組みにはなっていません。

しかし、実際の固定資産税額については事情が異なります。

平成29年度税制改正により、一定のタワーマンションでは階数による市場価格の差を税負担に反映する仕組みが導入されました。

その結果、高層階の住戸ほど固定資産税や都市計画税の負担額が大きくなり、低層階の住戸ほど負担額が小さくなる場合があります。

ここで注意したいのは、「固定資産税評価額」と「固定資産税額」は別のものだという点です。

タワーマンションに関する制度改正では、固定資産税評価額そのものの計算方法が変更されたわけではありません。

変更されたのは、固定資産税・都市計画税の税額を各住戸へ配分する方法と、不動産取得税の評価額を各住戸へ配分する方法です。

つまり、「固定資産税評価額の計算方法」と「税額の負担方法」は区別して考える必要があります。この違いは非常に重要です。

次項では、固定資産税・都市計画税と不動産取得税で、どのような補正が行われるのかを整理しながら詳しく解説します。

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居住用超高層建築物の対象範囲(高さ60m超)

階層別補正の対象となるのは、「居住用超高層建築物(きょじゅうようちょうこうそうけんちくぶつ)」に該当するマンションです。

居住用超高層建築物とは、建築基準法上の超高層建築物に該当する高さ60mを超える建築物のうち、住戸が複数の階に配置されている建物をいいます。

一般には「タワーマンション」と呼ばれており、目安として地上20階以上のマンションが該当するケースが多くなっています。

ただし、高さが60mを超えるマンションであれば、すべて階層別補正の対象になるわけではありません。

対象となるのは居住部分に限られます。

たとえば、タワーマンション内に店舗や事務所などの非居住用専有部分がある場合、その部分には階層別補正は適用されません。階層別補正が適用されるのは、実際に居住のために使用される住戸部分だけです。

また、この制度は平成30年度以降に新たに課税される居住用超高層建築物から適用されています。

一方、平成29年4月1日より前に売買契約が締結された住戸については、経過措置により対象外となる場合があります。

そのため、同じタワーマンションであっても、建築時期や契約時期によって制度の適用有無が異なることがあります。

次項では、階層別補正によって高層階と低層階の税負担がどのように変わるのかを具体的に解説します。

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階層別補正率が適用される税金と適用されない税金

平成29年度税制改正を理解するうえで最も重要なのは、タワーマンションの固定資産税評価額(価格)そのものは変わらないという点です。

この改正は、固定資産税評価額の計算方法を変更したものではありません。

変更されたのは、「固定資産税・都市計画税の税額を各住戸へ配分する方法」と、「不動産取得税の課税標準となる評価額を各住戸へ配分する方法」です。

まず、固定資産税・都市計画税について見てみましょう。

固定資産税・都市計画税では、一棟全体の税額を各住戸へ配分する際に「階層別補正率(階層別専有床面積補正率)」を使用します。計算式は次のとおりです。

  • 各住戸の税額 = 一棟全体の税額 × 各住戸の専有床面積 × 階層別補正率 ÷ 補正後専有床面積の合計

この仕組みでは、一棟全体の固定資産税額や都市計画税額が増えるわけではありません。

高層階の住戸へ配分される税額を増やし、その分だけ低層階の住戸へ配分される税額を減らすことで、一棟全体の税負担を再配分しています。

一方、不動産取得税では適用される場面が異なります。

不動産取得税の場合は、一棟全体の評価額を各住戸へ配分する段階で階層別補正率を使用します。計算式は次のとおりです。

  • 各住戸の評価額 = 一棟全体の評価額 × 各住戸の専有床面積 × 階層別補正率 ÷ 補正後専有床面積の合計

つまり、不動産取得税では課税標準の基礎となる評価額の配分に補正率が反映されます。

ここで誤解しやすいのが、固定資産税評価額との違いです。タワーマンションの固定資産税評価額は、階数に関係なく専有床面積などに基づいて按分されます。

そのため、高層階だから固定資産税評価額が高くなるわけではありません。

また、この改正は相続税や贈与税の計算に使用する固定資産税評価額にも影響しません。登録免許税の計算にも影響はありません。

つまり、階層別補正率が影響するのは、一定の税金について各住戸へ税額や評価額を配分する場面に限られます。

階層別補正率(階層別専有床面積補正率)は、建物の1階を100%として設定されます。その後、1階上がるごとに「10÷39(約0.25641)」を加算して計算します。計算式は次のとおりです。

  • N階の補正率(%)=(N-1)×0.25641+100

たとえば、主な階数の補正率は次のようになります。

  • 1階:100.0%
  • 10階:約102.3%
  • 20階:約104.9%
  • 30階:約107.4%
  • 50階:約112.6%

このように、高層階ほど補正率が高く設定されているため、固定資産税・都市計画税では高層階の税負担が大きくなる傾向があります。

ただし、固定資産税評価額そのものが高くなるわけではない点に注意が必要です。

表11|居住用超高層建築物の階層別補正率|税目別・適用段階一覧
税目 階層別補正の適用段階 固定資産税評価額への影響
固定資産税・都市計画税 一棟全体の税額を各住戸に按分する段階に適用 影響なし(評価額自体は変わらない)
不動産取得税 一棟全体の評価額を各住戸に按分する段階に適用 取得時の課税標準となる評価額の按分に影響
登録免許税 適用なし 影響なし
相続税・贈与税 適用なし(固定資産税評価額は変わらないため) 影響なし
タワーマンションの階層別補正率|評価額と税額の違い

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5-4. マンションの固定資産税評価額の計算例

ここまで解説した内容をもとに、マンションの各住戸における固定資産税評価額と固定資産税額を実際に計算します。

設定条件

  • 建物の種別:鉄筋コンクリート造の分譲マンション(既存マンション)
  • 一棟全体の建物評価額:1億5,000万円
  • 全区分所有者の専有床面積合計:1,200㎡
  • A戸の専有床面積:60㎡
  • 敷地全体の評価額(仮):6,000万円
  • A戸の敷地権割合(仮):1/20
  • 固定資産税率:1.4%

建物分の計算

まず、一棟全体の建物評価額を専有床面積の割合で按分します。A戸の専有床面積は60㎡、全体の専有床面積は1,200㎡です。そのため、A戸の持分割合は次のようになります。

  • 60㎡ ÷ 1,200㎡ = 1/20

この割合を一棟全体の建物評価額に掛けると、A戸の建物評価額を求められます。

  • 1億5,000万円 × 1/20 = 750万円

したがって、A戸の建物評価額は750万円です。続いて、建物に係る固定資産税額を計算します。

  • 750万円 × 1.4% = 10万5,000円

そのため、建物分の固定資産税額は10万5,000円となります。

土地分の計算

次に、土地の評価額を計算します。マンションの土地は共有財産であるため、敷地権割合に応じて各区分所有者へ按分します。今回はA戸の敷地権割合を1/20と仮定します。

  • 6,000万円 × 1/20 = 300万円

したがって、A戸に割り当てられる土地評価額は300万円です。さらに、住宅用地の課税標準の特例を適用します。今回は小規模住宅用地に該当すると仮定しているため、課税標準額は評価額の6分の1になります。

  • 300万円 × 1/6 = 50万円

そのため、土地の課税標準額は50万円です。この課税標準額に税率1.4%を掛けると、土地分の固定資産税額が求まります。

  • 50万円 × 1.4% = 7,000円

したがって、土地分の固定資産税額は7,000円です。

表12|マンションの固定資産税評価額 按分計算例(A戸・専有60㎡)
建物(家屋) 土地(敷地)
一棟・全体の評価額 1億5,000万円 6,000万円(仮)
按分の基準 60㎡ ÷ 1,200㎡(全専有合計)= 1/20 持分割合 1/20(仮)
A戸の評価額 750万円 300万円
課税標準額 750万円(特例なし) 300万円 × 1/6 = 50万円(小規模住宅用地特例)
固定資産税(1.4%) 750万円 × 1.4% = 10万5,000円 50万円 × 1.4% = 7,000円
A戸の合計固定資産税 11万2,000円

タワーマンションの場合

仮に同じマンションが高さ60mを超えるタワーマンションであり、A戸が30階にあるとします。この場合でも、A戸の固定資産税評価額は750万円のままです。タワーマンションの階層別補正は、固定資産税評価額そのものには適用されません。

一方、固定資産税や都市計画税の税額を各住戸へ配分する際には、30階の階層別補正率(約107.4%)が反映されます。

そのため、同じ専有床面積の住戸で比較すると、高層階の住戸は低層階の住戸より税負担が大きくなります。

たとえば、50階建てで各階10戸、すべて同じ床面積のタワーマンションがあり、一棟全体の固定資産税額が1億円だったとします。補正がなければ1戸あたりの税額は20万円です。

しかし、階層別補正率を適用すると、税額の目安は次のようになります。

  • 1階:約18万8,000円
  • 30階:約20万2,000円
  • 50階:約21万2,000円

このように、タワーマンションでは固定資産税評価額は同じでも、階数によって実際の税負担額に差が生じます。

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6. 【シミュレーション】固定資産税評価額の計算例

前章までに、建物・土地・マンションの固定資産税評価額の計算方法について解説しました。

しかし、計算式や補正率だけを見ても、実際にどのように評価額が決まるのかイメージしにくいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、この章では実際の数値を使いながら、固定資産税評価額の計算過程を順番に確認します。

固定資産税評価額の計算方法は複雑に見えますが、実際の計算例に当てはめると仕組みを理解しやすくなります。前章までの内容を整理しながら、固定資産税評価額が決まる流れを確認しましょう。

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6-1. 新築一戸建て(土地+建物)の計算例

新築一戸建ての固定資産税は、土地と建物を別々に計算したうえで合算します。

土地には「住宅用地の課税標準の特例」、建物には「新築住宅の減額措置」が適用されるため、新築後しばらくの間は固定資産税の負担が軽くなります。

ここでは、新築一戸建てを例に、土地と建物の固定資産税評価額および固定資産税額を順番に計算します。

設定条件

  • 所在地:大阪市(普通住宅地区)
  • 土地面積:180㎡(幅12m×奥行15m)
  • 路線価:5万円/㎡
  • 建物:木造専用住宅(新築・築1年目)
  • 延べ床面積:120㎡
  • 1㎡あたりの再建築費評点数:100,000点( この点数は計算例のための仮の数値です)
  • 税率:1.4%(標準税率)

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土地の計算


ステップ1:土地の評価額を計算する

まず、路線価をもとに土地の評価額を求めます。今回は奥行価格補正率を1.00と仮定します。

  • 50,000点 × 1.00 × 180㎡ = 9,000,000点

土地の評点一点あたりの価額は通常1円であるため、

  • 9,000,000点 × 1円 = 900万円

したがって、土地の固定資産税評価額は900万円です。

ステップ2:住宅用地の課税標準額を計算する

土地面積180㎡は200㎡以下であるため、小規模住宅用地に該当します。小規模住宅用地は、課税標準額が評価額の6分の1になります。

  • 900万円 × 1/6 = 150万円

そのため、課税標準額は150万円です。

ステップ3:土地の固定資産税額を計算する

  • 150万円 × 1.4% = 2万1,000円

したがって、土地分の固定資産税額は2万1,000円となります。

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建物の計算


ステップ1:建物の評価額を計算する

まず、再建築費評点数を求めます。

  • 100,000点 × 120㎡ = 12,000,000点

次に、築1年目の木造住宅に適用される経年減点補正率0.80を掛けて評点数を算出します。

  • 12,000,000点 × 0.80 = 9,600,000点

続いて、評点一点あたりの価額を求めます。大阪市の木造住宅の場合、物価水準による補正率は1.00、設計管理費等による補正率は1.05です。

  • 1円 × 1.00 × 1.05 = 1.05円

最後に、評点数に評点一点あたりの価額を掛けます。

  • 9,600,000点 × 1.05円 = 1,008万円

したがって、建物の固定資産税評価額は約1,008万円です。

ステップ2:新築住宅の減額措置を適用する

新築住宅には、一定の要件を満たした場合に固定資産税が2分の1に減額される制度があります。

今回の建物は延べ床面積120㎡であり、適用要件である40㎡以上240㎡以下を満たしています。また、減額対象となる床面積の上限は120㎡です。

そのため、このケースでは居住部分120㎡のすべてが減額対象になります。まず、減額前の固定資産税額を計算します。

  • 1,008万円 × 1.4% = 14万1,120円

次に、減額される金額を求めます。

  • 14万1,120円 × 1/2 = 7万560円

したがって、新築住宅の減額措置適用後の建物固定資産税額は7万560円です。

なお、この減額措置の適用期間は一般の新築住宅で新築後3年度分、長期優良住宅(戸建て)で新築後5年度分です(マンションなど3階建以上の中高層耐火住宅等は新築後5年度分、長期優良住宅マンション等は新築後7年度分になります。詳しくは「11.令和8年度税制改正で計算方法はどう変わる?」参照)。減額期間が終了すると、建物の固定資産税額は14万1,120円に戻ります。

合計
土地(敷地) 建物
評価額 900万円 約1,008万円
課税標準額 150万円(評価額×1/6) 1,008万円
固定資産税 2万1,000円 7万560円(減額適用後)
合計固定資産税(新築1〜3年目) 9万1,560円(約9万2,000円)
参考:4年目以降(減額終了後) 2万1,000円 14万1,120円 → 計16万2,120円(約16万2,000円)

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6-2. 中古マンションの計算例

中古マンション(区分所有建物)の固定資産税評価額は、まず一棟全体の建物評価額を算出し、その評価額を各住戸の専有床面積割合に応じて按分して求めます。

土地についても同様に、敷地全体の評価額を各区分所有者の持分割合に応じて按分します。ここでは、築12年の中古マンションを例に、建物評価額・土地評価額・固定資産税額を順番に計算します。

設定条件

  • 建物:鉄筋コンクリート造(RC造)分譲マンション
  • 築年数:12年
  • 一棟全体の建物評価額(仮):1億円( この評価額は、RC造の経年減点補正率や再建築費評点補正率を反映した築12年時点の評価額として仮定しています)
  • 全専有床面積の合計(仮):1,000㎡
  • B戸の専有床面積:70㎡
  • 敷地全体の評価額(仮):5,000万円
  • B戸の持分割合(仮):70/1,000(=7/100)
  • 税率:1.4%(標準税率)

建物の計算

まず、一棟全体の建物評価額を専有床面積の割合で按分します。B戸の専有床面積は70㎡、全体の専有床面積は1,000㎡です。そのため、B戸の按分割合は次のようになります。

  • 70㎡ ÷ 1,000㎡ = 70/1,000

この割合を一棟全体の建物評価額に掛けると、B戸の建物評価額を求められます。

  • 1億円 × 70/1,000 = 700万円

したがって、B戸の建物評価額は700万円です。続いて、建物に係る固定資産税額を計算します。

  • 700万円 × 1.4% = 9万8,000円

そのため、建物分の固定資産税額は9万8,000円となります。

土地の計算

次に、土地の評価額を計算します。マンションの敷地は区分所有者全員の共有財産であるため、敷地全体の評価額を持分割合に応じて按分します。

  • 5,000万円 × 70/1,000 = 350万円

したがって、B戸に割り当てられる土地評価額は350万円です。

続いて、住宅用地の課税標準の特例を適用します。今回は小規模住宅用地に該当すると仮定するため、課税標準額は評価額の6分の1になります。

  • 350万円 × 1/6 ≒ 約58万3,000円

そのため、土地の課税標準額は約58万3,000円です。最後に、土地に係る固定資産税額を計算します。

  • 約58万3,000円 × 1.4% ≒ 約8,100円

したがって、土地分の固定資産税額は約8,100円となります。

合計
建物 土地(敷地)
一棟全体の評価額 1億円(仮) 5,000万円(仮)
B戸の按分(70/1,000) 700万円 350万円
課税標準額 700万円 58万3,000円(×1/6)
固定資産税(1.4%) 9万8,000円 8,100円
B戸の合計固定資産税 10万6,100円(約10万6,000円)

この計算例で注目したいのは、築12年のRC造マンションであっても建物評価額が比較的高い水準にある点です。

3-6.木造より非木造の評価額が下がりにくい理由」で説明したとおり、RC造などの非木造建物は木造住宅より経年減点補正率の下がり方が緩やかです。

たとえば、木造専用住宅(1㎡あたり再建築費評点数61,190点未満)の場合、築10年目の経年減点補正率は0.41です。

一方、RC造・SRC造の住宅やアパートでは、築10年目でも経年減点補正率は0.6386です。

そのため、同じ築年数で比較すると、RC造マンションの方が建物評価額が高く残りやすくなります。

中古マンションの固定資産税評価額が「築年数の割にあまり下がっていない」と感じられることがあるのは、このような評価の仕組みが関係しています。

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6-3. 更地と住宅用地で税負担はどう違うか

「住宅を解体して更地にすると固定資産税が6倍になる」とよく言われます。しかし、この表現は正確ではありません。

なぜなら、住宅を解体しても土地の固定資産税評価額(価格)そのものは変わらないからです。

税負担が増える主な理由は、住宅用地に適用されていた「住宅用地の課税標準の特例」が使えなくなるためです。

住宅が建っている土地は、小規模住宅用地であれば課税標準額が評価額の6分の1になります。

一方、住宅を解体して更地になると、この特例は適用されません。その結果、課税標準額が上昇し、固定資産税も高くなります。

ただし、更地になったからといって課税標準額が直ちに評価額の100%になるわけではありません。

商業地等(住宅用地以外の宅地)には負担調整措置が適用されるため、課税標準額は段階的に引き上げられます。ここでは、住宅用地と更地の税負担の違いを具体的な数字で確認します。

設定条件(共通)

  • 土地面積:180㎡
  • 土地の固定資産税評価額:900万円
  • 住宅用地の区分:小規模住宅用地
  • 前年度の課税標準額:150万円(900万円×1/6)
  • 税率:1.4%

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Case A:住宅用地(住宅が建っている場合)

住宅用地の課税標準の特例を適用します。

課税標準額

  • 900万円 × 1/6 = 150万円

固定資産税額

  • 150万円 × 1.4% = 2万1,000円

したがって、住宅が建っている状態の固定資産税額は2万1,000円です。

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Case B:更地(住宅を解体した後)

住宅を解体すると住宅用地の特例は適用されなくなります。

その結果、土地は「商業地等(住宅用地以外の宅地)」として扱われます。ただし、負担調整措置があるため、課税標準額は一度に900万円になるわけではありません。

まず、解体1年目の課税標準額を計算します。

  • 150万円 + 900万円 × 5% = 195万円

なお、商業地等には課税標準額の下限があります。今回のケースでは、

  • 900万円 × 20% = 180万円

となりますが、計算結果の195万円は下限を上回るため、そのまま適用されます。

解体1年目の固定資産税額

  • 195万円 × 1.4% = 2万7,300円

住宅用地のときの2万1,000円と比べると、約1.3倍です。その後も課税標準額は毎年「評価額の5%相当額」ずつ上昇します。最終的に負担調整措置の上限に達すると、課税標準額は評価額の70%になります。

最終的な課税標準額

  • 900万円 × 70% = 630万円

最終的な固定資産税額

  • 630万円 × 1.4% = 8万8,200円

住宅用地のときの2万1,000円と比べると、約4.2倍になります。

表13|住宅用地と更地の固定資産税比較(土地評価額900万円・180㎡の例)
状況 課税標準額 固定資産税 住宅用地時との倍率
住宅用地(小規模・1/6特例) 150万円 2万1,000円 1.0倍
更地1年目(住宅解体直後) 195万円 2万7,300円 約1.3倍
更地(負担調整措置上限70%到達後) 630万円 8万8,200円 最大4.2倍

「更地にすると固定資産税が6倍になる」と言われることがありますが、この数字は住宅用地の課税標準の特例だけに注目した計算です。

たしかに、小規模住宅用地の課税標準額は評価額の6分の1です。

そのため、特例がなくなって評価額の100%が課税標準額になると仮定すれば、税負担は理論上6倍になります。しかし、実際には商業地等に負担調整措置が適用されます。

課税標準額の上限は評価額の70%であるため、税負担の最大倍率は次のようになります。

  • 70% ÷ 1/6 = 4.2倍

つまり、固定資産税がいきなり6倍になるわけではなく、実際の最大倍率は約4.2倍です(出典・参考:朝来市 住宅・空き家解体後の固定資産税について)。

また、4.2倍に達するまでには複数年かかります。そのため、住宅を解体した翌年から突然4.2倍の税額になるわけでもありません。

住宅の解体や建替えを検討する際は、「6倍になる」という情報だけで判断するのではなく、住宅用地の特例や負担調整措置を踏まえた実際の税負担を確認することが大切です。

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7. 固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額を確認する方法はいくつかあります。最も手軽なのは、毎年市区町村から送付される納税通知書に同封された「課税明細書」を確認する方法です。

そのほか、市区町村の窓口で「固定資産評価証明書」を取得する方法や、「固定資産課税台帳」を閲覧する方法もあります。それぞれ確認できる内容や利用目的、手数料、手続き方法が異なります。

たとえば、固定資産税評価額を知りたいだけであれば課税明細書で十分な場合が多い一方、不動産の売買や相続登記などで公的な証明書が必要な場合は固定資産評価証明書を取得しなければなりません。

また、固定資産課税台帳を閲覧すると、評価額だけでなく課税の根拠となる情報も確認できます。このように、目的によって適した確認方法は異なります。

表14|固定資産税評価額の調べ方3つの比較(費用・取得場所・スピード)
課税明細書 固定資産評価証明書 固定資産課税台帳の閲覧
費用 無料 1通200〜400円程度(多くは300円。市区町村により異なる) 縦覧は無料。台帳閲覧は市区町村により無料〜300円程度
取得・確認方法 納税通知書に同封され郵送で届く 市区町村の窓口・郵送申請・オンライン申請(マイナポータル経由。対応自治体拡大中)・一部自治体ではコンビニ交付も可 市区町村の窓口で閲覧
取得のタイミング 毎年4〜6月頃に届く(申請不要) 通年(窓口開庁時間内) 通年(縦覧は4月1日〜最初の納期限まで)
申請者の条件 納税義務者(自動送付のため申請不要) 納税義務者・借地人・借家人等(代理人は委任状が必要) 納税義務者・借地人・借家人等
主な用途 日常的な確認・自分の評価額の把握 不動産売買・相続・ローン申請など、公的証明が必要なとき 自分の評価額の確認、近隣物件の価格との比較(縦覧)
公的証明力 なし あり(証明書として利用可) なし
固定資産税評価額の3つの調べ方

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7-1. 課税明細書で確認する方法

固定資産税評価額を確認する最も手軽な方法は、毎年送付される「課税明細書」を確認することです。

課税明細書とは、固定資産税や都市計画税の課税内容を記載した書類です。申請する必要はなく、毎年4〜6月頃に送付される固定資産税の納税通知書に同封されています。

課税明細書は、地方税法第364条第3項に基づき、市区町村が納税者へ交付することが義務付けられている書類です。

課税明細書には、土地や家屋ごとに次のような情報が記載されています。

  • 所在地・地番(家屋の場合は家屋番号)
  • 地目または家屋の種類・構造
  • 地積または床面積
  • 価格
  • 課税標準額
  • 軽減税額

このうち、「価格」と記載されている金額が固定資産税評価額です。1章で説明したとおり、固定資産税評価額の正式名称は地方税法上の「価格」です。

一方、「課税標準額」は固定資産税を計算するための基準となる金額です。固定資産税評価額と課税標準額は別の金額であるため、混同しないよう注意が必要です。

課税明細書には固定資産税評価額と課税標準額の両方が記載されているため、見比べることで違いを確認できます。

たとえば、土地の固定資産税評価額が900万円で、小規模住宅用地の特例が適用されている場合を考えてみましょう。

この場合、課税明細書には次のように記載されます。

  • 価格:900万円
  • 課税標準額:150万円

固定資産税評価額は900万円ですが、小規模住宅用地の特例によって課税標準額は150万円まで引き下げられています。

固定資産税評価額と課税標準額を同じものと考えてしまう人は少なくありません。そのため、課税明細書を確認する際は「価格」と「課税標準額」の欄をそれぞれ確認することが大切です。

注意
課税明細書は固定資産税評価額を確認するための書類ですが、公的な証明書ではありません。

不動産売買や相続手続き、登録免許税の計算、金融機関への提出などで固定資産税評価額の証明が必要な場合は、課税明細書ではなく「固定資産評価証明書」を取得する必要があります。固定資産評価証明書については、次の項で詳しく説明します。

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7-2. 固定資産評価証明書を取得する方法

固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳に登録されている評価額などの情報を、市区町村が公的に証明する書類であり、「固定資産課税台帳記載事項証明書」などとも呼ばれます(参照:地方税法第382条の3)。

課税明細書でも固定資産税評価額を確認できますが、課税明細書には公的な証明力がありません。そのため、第三者へ固定資産税評価額を証明する必要がある場合は、固定資産評価証明書を取得する必要があります。

固定資産評価証明書が必要になる主な場面は次のとおりです。

  • 不動産の売買
  • 相続手続き
  • 抵当権の設定
  • 登録免許税の計算
  • 金融機関へのローン申請

このような手続きでは、固定資産税評価額を公的に証明できる書類として固定資産評価証明書が使用されます。

固定資産評価証明書を取得できる人は、原則としてその固定資産の納税義務者(所有者)です。

また、借地人や借家人など、その固定資産を使用または収益する権利を持つ人も取得できる場合があります。代理人が申請する場合は、委任状の提出が必要です。

取得方法は市区町村によって異なりますが、一般的には市区町村役場の窓口で申請します。加えて、郵送による申請に対応している市区町村も多くあります。

近年は、マイナポータルの「ぴったりサービス」を利用したオンライン申請に対応する自治体も増えています。

さらに、一部の市区町村ではコンビニエンスストアのマルチコピー機から取得できる場合もあります。

手数料は市区町村ごとに異なりますが、1通あたり200円〜400円程度が一般的です。多くの市区町村では300円前後に設定されています。

申請時には、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類の提示を求められます。

なお、証明書を取得する不動産を特定するために、土地であれば「所在・地番」、建物であれば「所在・家屋番号」などの情報が必要です。

これらの情報は、課税明細書や登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。

固定資産税評価額を確認するだけであれば課税明細書で十分な場合が多いでしょう。一方、不動産取引や相続手続きなどで公的な証明書が必要な場合は、固定資産評価証明書を取得する必要があります。

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7-3. 固定資産課税台帳を閲覧する方法

固定資産税評価額を確認する方法として、固定資産課税台帳を閲覧する方法もあります。

固定資産課税台帳とは、市区町村が固定資産税を課税するために作成・管理している台帳です。土地や建物の評価額、課税標準額などの情報が記録されています。

固定資産課税台帳の閲覧は、市区町村の窓口で申請します。

固定資産評価証明書のような公的証明書が必要ではなく、「評価額や課税内容を確認したい」という場合に適した方法です。固定資産課税台帳を閲覧できる人は、原則として次の人に限られます。

  • 納税義務者(所有者)
  • 借地人
  • 借家人
  • その他、その固定資産を使用または収益する権利を持つ人

閲覧によって確認できる内容は、課税明細書に記載されている内容とほぼ同じです。たとえば、次のような情報を確認できます。

  • 固定資産税評価額(価格)
  • 課税標準額
  • 土地の地目や地積
  • 建物の種類や床面積

閲覧手数料は市区町村によって異なります。無料としている自治体もありますが、300円程度の手数料が必要な場合もあります。

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縦覧制度との違い

固定資産課税台帳の閲覧と似た制度に、「縦覧制度」があります。

縦覧制度とは、固定資産税の納税者が近隣の土地や建物の評価額を確認できる制度です。

毎年4月1日から最初の納期限の日までの期間に利用でき、土地については「土地価格等縦覧帳簿」、家屋については「家屋価格等縦覧帳簿」を閲覧できます。

固定資産課税台帳の閲覧が「自分の固定資産の内容を確認する制度」であるのに対し、縦覧制度は「自分の固定資産と他の固定資産の評価額を比較する制度」という違いがあります。

また、縦覧制度は無料で利用できます。ただし、土地の納税者は土地価格等縦覧帳簿のみ、家屋の納税者は家屋価格等縦覧帳簿のみを閲覧できます。

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評価額が高いと思ったときは

固定資産課税台帳の閲覧や縦覧制度を利用した結果、自分の固定資産の評価額が周辺の類似物件と比べて高いと感じることがあるかもしれません。

その場合は、まず評価内容に誤りがないかを確認することが大切です。

さらに、評価額に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に対して「審査の申出」を行うことができます。

審査の申出の手続きや流れについては、「10.評価額が高い・間違っていると感じたときの対処法」で詳しく説明します。

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8. 固定資産税評価額と混同しやすい用語

固定資産税評価額について調べていると、「相続税評価額」「課税標準額」「実勢価格(時価)」といった似た用語を目にすることがあります。

これらはいずれも不動産の価値を表す金額ですが、算定方法が異なるため、同じ不動産であっても金額は一致しません。

そのため、それぞれの違いを理解していないと、「相続税評価額と固定資産税評価額は同じものだと思っていた」「課税標準額が固定資産税評価額だと思っていた」といった誤解が生じやすくなります。

たとえば、不動産の相続では相続税評価額が使われます。一方、固定資産税の計算には固定資産税評価額や課税標準額が使われます。

また、不動産の売買価格を考える際に参考になるのは実勢価格(時価)です。このように、それぞれの金額には異なる役割があります。

表15|固定資産税評価額・相続税評価額・課税標準額・実勢価格の早見比較表
用語 算定機関 主な使用場面 土地の水準目安 家屋との関係
固定資産税評価額(価格) 市町村(東京23区は都) 固定資産税・都市計画税・不動産取得税等の課税 地価公示価格等の7割を目途 再建築費をもとに算出
相続税評価額 国税庁 相続税・贈与税の課税 地価公示価格の8割を目途(路線価方式) 固定資産税評価額と同額(倍率1.0)
課税標準額 市町村(東京23区は都) 固定資産税額の計算の基礎 固定資産税評価額に住宅用地特例・負担調整措置を適用した後の金額(小規模住宅用地は評価額の1/6) 固定資産税評価額に同様の特例を適用した後の金額
実勢価格(時価) ―(市場が決定) 不動産の売買取引 需給・立地・経済情勢等により変動し、上記のいずれとも一致しないことがある 同様に市場で変動

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8-1. 相続税評価額との違い

固定資産税評価額と相続税評価額は、どちらも不動産の価値を金額で表したものです。

しかし、評価の目的や算定する機関、評価方法は大きく異なります。さらに、土地と家屋では両者の関係が異なる点にも注意が必要です。

土地は固定資産税評価額と相続税評価額が別の金額になります。一方、家屋は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。

この違いを理解していないと、相続税の計算や不動産の評価額の確認を行う際に混乱しやすくなります。

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土地は固定資産税評価額と相続税評価額が異なる

土地については、固定資産税評価額と相続税評価額は別々の基準で算定されます。

まず、固定資産税評価額は市区町村が算定します。東京23区内の場合は東京都が算定します。

固定資産税評価額は、地方税法に基づく固定資産評価基準によって評価されており、地価公示価格などの約7割を目安とする水準で設定されています。

これに対して、相続税評価額は国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて算定されます。

土地の相続税評価額は、主に「路線価方式」または「倍率方式」によって求めます。

路線価方式では、国税庁が毎年公表する路線価を使用します。この路線価は、地価公示価格のおおむね8割程度を目安として設定されています。

つまり、同じ土地であっても、

  • 固定資産税評価額:地価公示価格の約7割
  • 相続税評価額:地価公示価格の約8割

という関係になるのが一般的です。たとえば、地価公示価格が1,000万円の土地であれば、

  • 固定資産税評価額の目安:約700万円
  • 相続税評価額の目安:約800万円

となります。もちろん、実際の評価額はそれぞれの評価基準に基づいて算定されるため、この金額になるとは限りません。

それでも、一般的には相続税評価額の方が固定資産税評価額より高くなる傾向があります。そのため、相続税の申告を行う際に固定資産税評価額をそのまま使用すると、評価額を過小に計上してしまう可能性があります。

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家屋は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になる

土地とは異なり、家屋(建物)の場合は固定資産税評価額と相続税評価額が同じ金額になります。

相続税や贈与税における家屋の評価額は、財産評価基本通達により「固定資産税評価額に倍率を掛けて算定する」と定められています(出典:国税庁 法令解釈通達 第3章家屋及び家屋の上に存する権利 89)。

そして、家屋に適用される倍率は1.0です。そのため、

  • 固定資産税評価額 × 1.0 = 相続税評価額

となり、両者の金額は一致します。このルールは木造住宅、鉄筋コンクリート造のマンション、区分所有マンションなど、建物の種類を問わず共通です。

相続税の申告で家屋の評価額を確認したい場合は、固定資産評価証明書や課税明細書の「価格」欄に記載された固定資産税評価額を確認すれば足ります。

土地のように別途相続税評価額を計算する必要はありません。

注意
マンション(区分所有建物)については、令和6年1月1日以後に発生した相続や贈与から、相続税評価額の計算方法が見直されています。この見直しは、市場価格(実勢価格)と相続税評価額の差が大きいマンションについて、相続税評価額を補正するためのものです。

ただし、この改正は相続税評価額に関するルールであり、固定資産税評価額の算定方法が変更されたわけではありません。固定資産税評価額は従来どおりの方法で算定されます。相続税の申告を行う場合は、最新の評価ルールを確認するか、税理士へ相談することをおすすめします。
表16|固定資産税評価額と相続税評価額の関係|土地と家屋の違い比較表
土地 家屋
固定資産税評価額の水準目安 地価公示価格等の7割を目途 再建築費をもとに算出(最終残存率20%の下限あり)
相続税評価額の水準目安 地価公示価格の8割を目途(路線価方式) 固定資産税評価額と同額(倍率1.0)
両者の関係 別の金額(相続税評価額 > 固定資産税評価額の傾向) 同じ金額
算定機関 固定資産税:市町村 相続税:国税庁 固定資産税:市町村 相続税:財産評価基本通達に基づき固定資産税評価額を使用

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8-2. 課税標準額との違い

課税標準額(かぜいひょうじゅんがく)とは、固定資産税を計算する際の基礎となる金額です。

1.固定資産税評価額とは?計算前に知るべき基礎」で説明したとおり、固定資産税評価額(価格)と課税標準額は別の金額です。名前が似ているため混同されがちですが、それぞれ役割が異なります。

固定資産税評価額は、市区町村がその不動産の価値を評価した金額です。一方、課税標準額は、固定資産税評価額に各種の特例や調整措置を反映した後の金額であり、実際の税額計算に使用されます。

固定資産税の税額は、次の計算式で求めます。

  • 固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(標準税率1.4%)

そのため、固定資産税評価額と課税標準額が大きく異なる場合、固定資産税評価額から想像する税額と実際の税額に大きな差が生じることがあります。

代表的な例が、住宅が建っている土地に適用される「住宅用地の課税標準の特例」です。小規模住宅用地(1戸あたり200㎡以下の部分)の場合、課税標準額は固定資産税評価額の6分の1になります。

たとえば、固定資産税評価額が900万円の土地であれば、

  • 固定資産税評価額:900万円
  • 課税標準額:900万円 × 1/6 = 150万円
  • 固定資産税額:150万円 × 1.4% = 2万1,000円

となります。この場合、固定資産税評価額に直接税率を掛けて、

  • 900万円 × 1.4% = 12万6,000円

と計算するわけではありません。固定資産税を正しく理解するためには、「固定資産税評価額」と「課税標準額」を区別することが重要です。

なお、課税明細書には固定資産税評価額(価格)と課税標準額が別々に記載されています。両方の金額を見比べると、それぞれの違いを理解しやすくなります。

課税標準額が固定資産税評価額と同じになるケースもあります。ただし、そのようなケースは限定的です。

たとえば、住宅用地の特例が適用されない商業地等(更地や事業用地など)で、負担調整措置による調整が行われていない場合は、課税標準額と固定資産税評価額が一致します。

反対に、住宅用地の特例や負担調整措置が適用されている一般的な宅地では、課税標準額は固定資産税評価額より低くなるのが通常です。

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8-3. 実勢価格(時価)との違い

実勢価格(じっせいかかく)とは、実際の不動産市場で売買が成立する価格のことです。「時価」と呼ばれることもあります。

固定資産税評価額が行政によって算定される評価額であるのに対し、実勢価格は市場で決まる価格です。そのため、同じ不動産であっても固定資産税評価額と実勢価格が一致することはほとんどありません。

土地の場合、固定資産税評価額は地価公示価格などの7割程度を目安として算定されます。そのため、一般的には実勢価格の方が固定資産税評価額より高くなる傾向があります。

たとえば、土地の固定資産税評価額が100万円であれば、単純計算では実勢価格の目安は約143万円(100万円 ÷ 0.7)となります。

ただし、この計算はあくまで大まかな目安です。実際の実勢価格は、立地条件や周辺環境、需給バランス、景気動向などによって大きく変動します。

たとえば、都市部の人気エリアでは固定資産税評価額の2~3倍以上で取引されることもあります。その一方で、人口減少が進む地域では固定資産税評価額を下回る価格でしか売却できないケースもあります。

建物については、固定資産税評価額と実勢価格の差がさらに大きくなることがあります。

固定資産税評価額には「最終残存率」という下限が設けられているため、建物がどれだけ古くなっても評価額がゼロになることはありません。

しかし、不動産市場では事情が異なります。築年数が古く劣化が進んだ木造住宅の場合、建物そのものに市場価値がほとんど認められず、実勢価格がゼロに近くなることがあります。

また、解体費用の負担を考慮して、建物部分が実質的にマイナス評価となるケースもあります。このような物件では、固定資産税評価額が実勢価格を大きく上回ることも珍しくありません。

筆者自身も不動産賃貸業を営む中で住宅や土地を取得してきましたが、固定資産税評価額と実際の売買価格の差を実感する場面は少なくありません。

収益物件が多い都市部では、実勢価格が固定資産税評価額の2倍以上になるケースもあります。

このことからもわかるように、固定資産税評価額は税金を計算するための行政上の評価額であり、売買価格を示すものではありません。

不動産売買では、実際の取引価格である実勢価格が価格交渉の基準となります。そのため、「固定資産税評価額がわかれば売却価格もわかる」と考えるのは適切ではありません。

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9. 固定資産税評価額を基準に決まる税金

固定資産税評価額は、固定資産税や都市計画税を計算する際の基準となる金額です。

しかし、固定資産税評価額が使われるのは毎年課税される固定資産税だけではありません。

不動産を購入したときや相続したとき、または所有権移転登記や抵当権設定登記などを行うときにも、固定資産税評価額を基準として税額が計算される場合があります。

つまり、固定資産税評価額は複数の税金の計算に利用される重要な金額なのです。

そのため、固定資産税評価額が高くなると、固定資産税や都市計画税だけでなく、不動産取得税や登録免許税などの税負担も大きくなる傾向があります。反対に、固定資産税評価額が低ければ、これらの税金も低く抑えられる可能性があります。

ここからは、固定資産税評価額を基準として計算される主な税金について、それぞれの仕組みを解説します。

表17|固定資産税評価額を基準に計算される税金一覧(税目・税率・算定式)
税目 課税・徴収主体 課税のタイミング 課税標準 税率(概略)
固定資産税 市町村(東京23区は都) 毎年(賦課期日:1月1日) 固定資産税評価額をもとに算出した課税標準額 標準税率1.4%
都市計画税 市町村(東京23区は都) 毎年(賦課期日:1月1日) 固定資産税の課税標準となるべき価格(評価額) 0.3%以下(制限税率)
不動産取得税 都道府県 不動産取得時(1回限り) 固定資産税評価額(価格) 原則4%、土地・住宅は3%(令和9年3月31日まで軽減税率)
登録免許税 登記申請時(1回限り) 固定資産税評価額(価格) 登記の種類により異なる(土地売買の所有権移転:本則2%、令和11年3月31日まで1.5%に軽減)

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9-1. 固定資産税

固定資産税とは、土地・建物・償却資産を所有している人に毎年課される市町村税です。固定資産税評価額を基準として計算される税金の中では、最も身近な税金といえます。

固定資産税は、賦課期日である毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。

税額の計算では、まず固定資産課税台帳に登録された「価格(固定資産税評価額)」を基礎として課税標準額を求めます。その後、課税標準額に税率を掛けて固定資産税額を算出します。計算式は次のとおりです。

  • 固定資産税額 = 課税標準額 × 税率

税率は各市町村が条例で定めます。標準税率は1.4%です。ただし、実際には固定資産税評価額にそのまま税率を掛けるケースは多くありません。

住宅が建っている土地には住宅用地の課税標準の特例が適用されます。また、土地には負担調整措置も設けられています。そのため、課税標準額は固定資産税評価額より低くなるのが一般的です。

たとえば、固定資産税評価額が900万円の小規模住宅用地(200㎡以下)であれば、課税標準額は次のように計算します。

  • 固定資産税評価額:900万円
  • 課税標準額:900万円 × 1/6 = 150万円
  • 固定資産税額:150万円 × 1.4% = 2万1,000円

この例では、固定資産税評価額が900万円であっても、実際に税額計算へ使用する課税標準額は150万円になります。

固定資産税評価額と課税標準額を混同すると税額を大きく誤って計算してしまうため、両者の違いを理解しておくことが重要です。

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9-2. 都市計画税

都市計画税とは、道路や公園、上下水道の整備、土地区画整理事業などの費用に充てるために課される税金です。

固定資産税と同様に土地や建物を対象としますが、課税される地域が限定されている点に特徴があります。

固定資産税は原則として全国の土地や建物に課されます。一方、都市計画税は都市計画法に基づく都市計画区域のうち、主に市街化区域内に所在する土地と建物に対して課税されます。

そのため、市街化調整区域や都市計画区域外の不動産には、原則として都市計画税は課されません。

税率は市町村が条例で定めます。ただし、税率には上限があり、0.3%(制限税率)を超えることはできません。

課税標準額の考え方は固定資産税とほぼ同じです。まず固定資産税評価額を基礎として課税標準額を算出し、その課税標準額に税率を掛けて都市計画税額を求めます。

また、住宅用地には課税標準の特例が適用されます。

小規模住宅用地(200㎡以下の部分)の場合、都市計画税の課税標準額は固定資産税評価額の3分の1になります。

さらに、土地については負担調整措置も適用されます。たとえば、固定資産税評価額が900万円の小規模住宅用地で、都市計画税率が0.3%の場合は次のように計算します。

  • 固定資産税評価額:900万円
  • 課税標準額:900万円 × 1/3 = 300万円
  • 都市計画税額:300万円 × 0.3% = 9,000円

同じ条件で固定資産税を計算すると、

  • 固定資産税額:150万円 × 1.4% = 2万1,000円

となるため、年間の税負担は次のとおりです。

  • 固定資産税:2万1,000円
  • 都市計画税:9,000円
  • 合計:3万円

なお、都市計画税は固定資産税と一緒に納税通知書へ記載され、まとめて徴収されます。そのため、多くの人は「固定資産税を払っている」と認識していますが、実際には固定資産税と都市計画税という2種類の税金を納めています。

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9-3. 不動産取得税

不動産取得税とは、土地や建物を取得したときに一度だけ課される都道府県税です。

固定資産税が不動産を所有している間は毎年課される税金であるのに対し、不動産取得税は取得時にのみ課される税金という点が大きく異なります。

ここでいう「取得」とは、売買だけではありません。贈与や交換によって所有権を取得した場合も対象となります。また、新築・増築・改築によって建物を取得した場合にも課税されます。一方、相続によって不動産を取得した場合は、原則として不動産取得税は課税されません。

不動産取得税の税額は、固定資産税評価額を基準として計算します。計算式は次のとおりです。

  • 不動産取得税額 = 固定資産税評価額 × 税率

税率の本則は4%です。ただし、住宅や住宅用土地については軽減措置が設けられており、令和9年3月31日までは3%の軽減税率が適用されています。

さらに、一定の要件を満たす新築住宅や住宅用土地には課税標準の特例や税額軽減制度があります。そのため、実際に納める不動産取得税は、単純計算した金額より低くなるケースが少なくありません。

たとえば、固定資産税評価額が500万円の住宅を取得し、軽減措置を考慮しない場合の不動産取得税は次のようになります。

  • 500万円 × 3% = 15万円

実際には各種の軽減措置が適用されることが多いため、この金額より少なくなるケースが一般的です。

なお、タワーマンション(高さ60mを超える居住用超高層建築物)については、通常のマンションとは計算方法が一部異なります。

階層別補正率が適用される税金と適用されない税金」で説明したとおり、不動産取得税では各住戸へ評価額を按分する際に階層別補正率が適用されます。

そのため、同じ専有床面積の住戸であっても、高層階ほど不動産取得税の課税標準となる評価額が高くなります。

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9-4. 登録免許税

登録免許税とは、不動産の登記を行う際に一度だけ国へ納付する税金です。

所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記、抵当権抹消登記などの手続きを行うときに課税されます。

不動産取得税と同じく取得時に発生する税金ですが、不動産取得税が都道府県に納める地方税であるのに対し、登録免許税は国に納める国税です。実際の納付は法務局(登記所)を通じて行います。

不動産を購入した場合や新築した場合、相続や贈与によって取得した場合には、その権利関係を公示するために法務局で登記手続きを行います。登録免許税は、その登記手続きの際に納付する税金です。

登録免許税の課税標準は固定資産税評価額です。売買価格や建築費ではなく、固定資産税評価額に登記の種類ごとに定められた税率を掛けて税額を計算します。

税率は登記の種類によって異なります。

たとえば、土地の売買による所有権移転登記の本則税率は1000分の20(2%)です。ただし、令和8年度税制改正により軽減措置が延長され、令和11年3月31日までは1000分の15(1.5%)が適用されています。

一方、住宅ローンを利用する際に行う抵当権設定登記の本則税率は1000分の4(0.4%)です。さらに、一定の要件を満たす住宅取得については、令和9年3月31日まで1000分の1(0.1%)に軽減されています。

たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の土地を売買によって取得し、所有権移転登記を行う場合を考えてみましょう。

軽減税率1.5%が適用されるときの登録免許税は、次のように計算します。

  • 1,000万円 × 1.5% = 15万円

このように、登録免許税は売買価格ではなく固定資産税評価額を基準に計算します。

そのため、不動産を購入する前に固定資産税評価額を確認しておけば、登録免許税のおおよその金額を事前に把握できます。不動産取得税とあわせて確認しておくことで、購入時に必要となる諸費用を見積もりやすくなります。

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10. 評価額が高い・間違っていると感じたときの対処法

土地や建物の固定資産税評価額について、「評価額が高すぎる」「計算方法に誤りがあるのではないか」と感じることがあるかもしれません。そのような場合は、法律で定められた手続きにより不服を申し出ることができます。

固定資産税評価額(価格)に対する不服は、通常の行政不服申立てとは別に設けられている「審査の申出」という制度によって争います。申出先は、各市町村に設置されている「固定資産評価審査委員会」です。

ただし、審査の申出には期限があります。期限を過ぎると、正当な理由がない限り申出を受け付けてもらえません。そのため、評価額に疑問を感じた場合は早めに内容を確認し、必要に応じて手続きを進めることが重要です。

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10-1. 不服申立て(審査の申出)の方法と期限

固定資産課税台帳に登録された固定資産税評価額(価格)に不服がある場合は、市町村に設置されている固定資産評価審査委員会に対して「審査の申出」を行うことができます。

固定資産評価審査委員会とは、市町村長から独立した第三者機関です。固定資産税評価額が固定資産評価基準に基づいて適正に算定されているかどうかを審査します。

審査の申出ができるのは、固定資産課税台帳に登録された「価格(固定資産税評価額)」に対する不服です。

一方で、「住宅用地の課税標準の特例が適用されていない」「課税対象の判定が誤っている」といった評価額以外の事項については、固定資産評価審査委員会では扱いません。このような場合は、行政不服審査法に基づく審査請求を市町村長に対して行うことになります。

つまり、不服の内容によって申立先が異なるため、まずは何に対する不服なのかを整理することが大切です。

審査の申出ができる期間は、納税通知書を受け取った日の翌日から起算して3か月以内です。

実際には、毎年4〜6月頃に届く納税通知書を受け取った後、3か月以内が手続きの期限となるケースが一般的です。

この期限を過ぎると、正当な理由がある場合を除き審査の申出はできません。納税通知書が届いたら、評価額の内容と申出期限を早めに確認しておくことをおすすめします。

審査の申出の流れは次のとおりです。

  1. 固定資産評価審査委員会へ審査申出書を提出する
  2. 固定資産評価審査委員会が内容を審査する
  3. 審査結果が通知される

審査の結果、評価額が固定資産評価基準に照らして不適当と判断された場合は、固定資産課税台帳に登録された価格が修正されます。価格の修正に伴い、固定資産税額も修正されます。

ただし、土地については負担調整措置が適用されていることがあるため、評価額が下がっても税額が変わらない場合があります。

なお、固定資産評価審査委員会の決定に不服がある場合は、その決定があったことを知った日から6か月以内に、裁判所へ取消訴訟を提起できます(地方税法第434条)。

注意
固定資産税評価額(価格)そのものに対する不服は、固定資産評価審査委員会への審査の申出を経なければなりません。

市町村長が決定した評価額について、審査の申出を行わずに直接裁判で争うことは認められていません(地方税法第434条第2項)。この仕組みは「裁決主義」と呼ばれています。

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10-2. 申立てが認められやすいケース

審査の申出が認められるためには、「固定資産税評価額が固定資産評価基準に照らして不適当であること」を客観的な資料や事実によって示す必要があります。

単に「評価額が高すぎる気がする」という主観的な理由だけでは、評価額の修正は認められません。

固定資産評価審査委員会は、評価額が固定資産評価基準に基づいて適正に算定されているかどうかを審査する機関です。そのため、審査の申出が認められやすいのは、固定資産評価基準の適用に誤りがある場合や、固定資産課税台帳の登録内容が実際の状況と異なる場合です。

代表的なケースとして、まず固定資産課税台帳の登録内容に誤りがある場合が挙げられます。

たとえば、実際は木造住宅であるにもかかわらず鉄筋コンクリート造として登録されているケースや、実際の床面積より大きな面積が登録されているケース、建築年が誤って登録されているケースなどです。

このような誤りがあると、経年減点補正率や評点数の計算結果に影響し、本来より高い評価額が算出される可能性があります。

また、固定資産評価基準の適用を誤っている場合も、評価額の修正が認められる可能性があります。

たとえば、土地評価において画地計算法の補正率が誤って適用されていた場合や、建物評価において再建築費評点基準表の適用区分を誤っていた場合などです。

これらは評価額の計算そのものに関わるため、誤りが確認できれば評価額の見直しにつながる可能性があります。

さらに、「7.固定資産税評価額の調べ方」で紹介した縦覧制度を利用し、近隣の類似した土地や建物と比較することも有効です。

同じ路線に面し、面積や形状がほぼ同じ土地であるにもかかわらず、自分の土地だけ評価額が著しく高い場合は、評価内容を確認するきっかけになります。

一方で、「実勢価格(市場価格)より高い」という理由だけでは認められにくい傾向があります。

固定資産税評価額は、実際の売買価格をそのまま反映するものではありません。地価公示価格などを基準に算定される課税上の価格であるため、実勢価格との差があること自体は必ずしも誤りとはいえません。

また、「隣の土地より固定資産税額が高い」という主張も、そのままでは認められにくいといえます。固定資産評価審査委員会が審査するのは税額ではなく評価額です。そのため、税額の比較ではなく、評価額の算定内容に具体的な誤りがあることを示す必要があります。

審査の申出を検討する場合は、まず縦覧制度で近隣の土地や建物の評価額を確認してみましょう。そのうえで、課税明細書や固定資産評価証明書を見ながら、構造・床面積・地積・築年数などの登録内容が実際の状況と一致しているかを確認することが重要です。

筆者も不動産賃貸業を営む中で複数の物件を所有していますが、毎年届く課税明細書を確認し、登録内容に誤りがないかをチェックするようにしています。こうした日頃の確認が、評価額の誤りを早期に発見することにつながります。

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11. 令和8年度税制改正で計算方法はどう変わる?

令和8年度税制改正では、固定資産税に関係する重要な見直しが行われました。今回の改正で特に注目したいのは、「新築住宅の固定資産税の減額措置」と「家屋の免税点」の2点です。

まず、新築住宅に係る固定資産税の減額措置については、適用要件の一部が見直されました。これまで床面積要件の下限は50㎡でしたが、令和8年度税制改正により40㎡へ引き下げられています。

そのため、従来は要件を満たさなかった比較的小規模な住宅でも、減額措置の対象になる可能性があります。

加えて、この減額措置の適用期限も延長されました。改正前は期限付きの措置でしたが、令和13年3月31日まで適用できることになっています。

もう一つの重要な改正が、家屋に係る免税点の引き上げです。

免税点とは、固定資産税が課税されるかどうかを判定する基準額のことです。課税標準額が免税点未満であれば、固定資産税は課税されません。

家屋の免税点は長年20万円とされてきました。しかし、令和9年度からは30万円へ引き上げられます。

表18|令和8年度税制改正 前後比較表(固定資産税に関する主な変更点)
項目 改正前 改正後 適用開始
新築住宅の税額減額措置 床面積要件(下限) 50㎡以上 40㎡以上 令和8年4月1日以後に新築された住宅
新築住宅の税額減額措置 床面積要件(上限) 280㎡以下 240㎡以下 令和8年4月1日以後に新築された住宅
新築住宅の税額減額措置 適用期限 令和8年3月31日まで 令和13年3月31日まで延長 令和8年4月1日
家屋の免税点 20万円 30万円 令和9年度以後の年度分から
償却資産の免税点 150万円 180万円 令和9年度以後の年度分から

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11-1. 新築住宅特例の床面積要件が40㎡に緩和

令和8年度税制改正により、新築住宅に係る固定資産税の税額減額措置(以下「新築住宅特例」)の床面積要件が見直されました。

これまで新築住宅特例の対象となる床面積の下限は50㎡でしたが、令和8年4月1日以後に新築された住宅については40㎡に引き下げられています。そのため、床面積40㎡以上50㎡未満の小規模な新築住宅も、新たに新築住宅特例の対象となりました。

新築住宅特例とは、新築した住宅の建物(家屋)に係る固定資産税額を一定期間2分の1に軽減する制度です。軽減期間は住宅の種類によって異なります。

  • 一般の戸建て住宅:新築後3年度分
  • マンションなど3階建以上の中高層耐火住宅等:新築後5年度分
  • 認定長期優良住宅:戸建て住宅は新築後5年度分、マンション等は新築後7年度分

これらの軽減期間については、今回の税制改正による変更はありません。今回の改正で最も影響を受けるのは、床面積40㎡以上50㎡未満の住宅です。

たとえば、床面積45㎡の新築マンションを考えてみましょう。建物の固定資産税評価額が1,000万円で、固定資産税額が14万円の場合、改正前は床面積が50㎡未満であったため新築住宅特例を利用できず、14万円をそのまま負担する必要がありました。

一方、令和8年4月1日以後に新築された場合は新築住宅特例の対象となるため、固定資産税額は7万円に軽減されます。マンションであれば、この軽減措置を5年度分受けられる見込みです。

なお、今回の改正では床面積要件の上限が280㎡から240㎡へ引き下げられています。ただし、240㎡を超える住宅は一般的な住宅としては比較的大規模であるため、多くの方への影響は限定的です。

注意
令和11年4月1日以後に新築された住宅については、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域などの「災害危険区域等」において新築された住宅(従前住宅の建替えを除く)は、新築住宅特例の対象外となります。

今後、これらの区域内で住宅の新築を予定している場合は、事前に市区町村や国土交通省が公表している最新情報を確認しておくと安心です。

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11-2. 家屋の免税点が20万円から30万円に

令和9年度以後の固定資産税から、家屋(建物)の免税点が20万円から30万円に引き上げられます(出典:総務省 令和8年度地方税制改正・地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について)。

免税点の引き上げは、評価額や課税標準額が低い小規模な建物を所有している方にとって、固定資産税の負担軽減につながる改正です。

「免税点」(めんぜいてん)とは、固定資産税を課税するかどうかを判定する基準額のことです。

家屋の場合は、市町村の区域内(東京都23区や政令指定都市では行政区ごと)において、同一人が所有するすべての家屋の課税標準額を合計し、その合計額が免税点未満であれば固定資産税は課税されません。

ここで注意したいのは、免税点の判定が1棟ごとではなく、同じ市区町村内に所有するすべての家屋を合算して行われる点です。

たとえば、家屋を2棟所有しており、課税標準額がそれぞれ12万円と13万円だった場合、合計額は25万円になります。

改正前の免税点は20万円であるため課税対象でした。一方、令和9年度以後は免税点が30万円になるため、このケースでは固定資産税は課税されません。

今回の改正により、課税標準額の合計が20万円以上30万円未満の家屋については、新たに固定資産税が課税されなくなります。

また、本体の住宅とは別に小規模な車庫や物置などの附属建物を所有している場合も、免税点の引き上げによる影響を受ける可能性があります。

なお、土地の免税点は30万円のままであり、今回の税制改正による変更はありません。

さらに、家屋の免税点引き上げとあわせて、償却資産(事業用の機械や設備など)の免税点も150万円から180万円へ引き上げられます。

これらの改正はいずれも令和9年度以後の固定資産税から適用されます。

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12. 固定資産税評価額が下がらない理由と計算の要点|総まとめ

この記事では、固定資産税評価額の計算方法と、固定資産税評価額が下がりにくい理由について、建物・土地・マンションの3つの視点から解説しました。

固定資産税評価額は、不動産の種類や構造によって計算方法が異なります。また、固定資産税評価額が下がっても税負担がすぐには下がらない仕組みもあるため、計算の流れと制度の内容をあわせて理解することが大切です。

最後に、この記事で解説した重要なポイントを7つのテーマに分けて整理します。

【なぜ下がらないのか】

固定資産税評価額や固定資産税の負担が「なかなか下がらない」と感じる主な理由は、次の4つの仕組みにあります。

建物:再建築費評点補正率が建設コストの上昇を反映する

3年ごとの評価替えでは、建設コストの変動を反映する「再建築費評点補正率」が更新されます。建設コストが上昇している局面では再建築費評点数が引き上げられるため、経年減点補正率による評価額の下落が打ち消される場合があります。

ただし、算出した評価額が前年度評価額を上回る場合は前年度評価額に据え置かれるため、在来分家屋の評価額が前年より高くなることはありません。

建物:最終残存率(下限0.20)が設定されている

建物は築年数が経過するほど評価額が下がります。しかし、経年減点補正率には0.20という下限(最終残存率)が設けられているため、木造・非木造を問わず評価額がゼロになることはありません。建物の評価額は、再建築費評点数の20%相当額が最低水準となります。

土地:負担調整措置により税負担が急には下がらない

土地の評価額(価格)は評価替えごとに見直されます。一方、固定資産税の計算に使う課税標準額には「負担調整措置」が適用されるため、税負担は緩やかに変動する仕組みです。このため、評価額が下がっていても固定資産税がすぐに下がらない場合があります。

非木造(RC造・SRC造):評価額の下落スピードが緩やか

鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、木造よりも経年減点補正率の下がり方が緩やかです。最終残存率0.20に達するまで60年以上かかるため、マンションなどの非木造建物は評価額が下がりにくい傾向があります。

【計算の基本】

固定資産税評価額は、建物と土地で計算方法が異なります。ただし、最終的な評価額を求める基本的な考え方は共通しています。

共通の計算式

固定資産税評価額 = 評点数 × 評点一点あたりの価額(原則1円)

建物の評点数の決まり方

新築時は、市町村が行う家屋調査によって再建築費評点数を算出します。再建築費評点数は、構造部・外壁仕上・床仕上など10の部分区分ごとに計算されます。その後、経年減点補正率を乗じて評点数を求めます。評価替えでは、標準家屋との比較による比準評価によって再建築費評点数が見直されます。

評点一点あたりの価額(建物)

評点一点あたりの価額は、「1円 × 物価水準補正率 × 設計管理費等補正率」で計算します。物価水準補正率は地域ごとに異なり、木造住宅は0.90~1.00の範囲です。設計管理費等補正率は木造1.05、非木造1.10となっています。たとえば、大阪市の木造住宅では1.05円になります。

増改築の影響

増築や改築を行うと、その部分の評点数が再計算されるため、評価額が上がる場合があります。なお、省エネ改修や耐震改修などによる固定資産税の減税措置は税額を軽減する制度であり、評価額の再計算とは別の仕組みです。

【土地特有のポイント】

土地の固定資産税評価額は、路線価や標準地価格を基準にしたうえで、土地ごとの形状や利用状況を反映して算出されます。

市街地の宅地は路線価方式で評価する

市街地の宅地は、地価公示価格等の7割程度を目安として設定された路線価を基礎に評価します。その後、土地の面積や形状などを反映する画地計算法によって評点数を算出します。

土地の形状によって評価額は増減する

奥行きが長すぎる土地、間口が狭い土地、不整形地、がけ地、無道路地などには減価補正が適用されます。一方、角地や二方路線地には加算補正が適用されるため、同じ面積でも評価額が異なる場合があります。

課税上の地目は現況で判断される

固定資産税では、宅地・田・畑・雑種地などの地目を登記簿の記載ではなく、賦課期日である1月1日時点の実際の利用状況によって認定します。そのため、登記上の地目と課税上の地目が異なる場合があります。

【マンション特有のポイント】

マンション(区分所有建物)の固定資産税評価額は、一戸建て住宅とは異なり、一棟全体を評価してから各住戸に配分する仕組みで計算されます。

建物と土地は持分割合に応じて按分される

建物は、一棟全体の評価額を各住戸の専有床面積の割合で按分して求めます。土地は、敷地全体の評価額を敷地権割合(持分割合)に応じて按分します。共用部分も各住戸に配分されるため、課税対象となる面積は登記面積(専有部分のみ)より大きくなります。

タワーマンションでも固定資産税評価額自体は変わらない

高さ60mを超えるタワーマンションであっても、固定資産税評価額は専有床面積の割合で按分されます。高層階だから固定資産税評価額が高くなるわけではありません。階層別補正率が適用されるのは、固定資産税・都市計画税の税額を各住戸に配分する段階と、不動産取得税の評価額を各住戸に按分する段階です。

相続税評価額や登録免許税には影響しない

タワーマンションの階層別補正は固定資産税評価額そのものを変更する制度ではありません。そのため、家屋の相続税評価額や登録免許税の課税標準額には影響しません。

【混同しやすい用語】

固定資産税評価額と似た用語はいくつかあります。それぞれ意味や用途が異なるため、違いを理解しておくことが大切です。

固定資産税評価額と課税標準額は別の金額

固定資産税評価額は不動産の価値を評価した金額です。一方、課税標準額は固定資産税を計算するための基礎となる金額で、住宅用地特例や負担調整措置などを反映した後の金額になります。課税明細書には「価格(固定資産税評価額)」と「課税標準額」が別々に記載されています。

土地の固定資産税評価額と相続税評価額は異なる

土地の固定資産税評価額は地価公示価格等の7割程度、相続税評価額は地価公示価格の8割程度が目安です。そのため、一般的には相続税評価額の方が高くなる傾向があります。

家屋は固定資産税評価額と相続税評価額が同額になる

家屋の相続税評価額は「固定資産税評価額 × 1.0」で計算されます。倍率が1.0であるため、固定資産税評価額と相続税評価額は同じ金額になります。

固定資産税評価額と実勢価格は一致しない

実勢価格とは、実際の不動産市場で売買される価格のことです。固定資産税評価額は課税のために行政が算定する金額であり、売買価格を示すものではありません。同じ不動産でも、固定資産税評価額と実勢価格には大きな差が生じる場合があります。

【調べ方と対処法】

固定資産税評価額は複数の方法で確認できます。また、評価額に誤りがあると思われる場合は、不服申立ての制度を利用することも可能です。

課税明細書で確認する(最も手軽で無料)

 固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書で確認できます。毎年4〜6月頃に送付され、「価格」欄に記載されている金額が固定資産税評価額です。申請は不要で費用もかかりません。ただし、公的な証明書として使用することはできません。

固定資産評価証明書を取得する(公的証明力あり)

 市区町村の窓口、郵送、オンライン申請などで取得できます。手数料は200〜400円程度で、多くの市区町村では300円です。不動産売買、相続、住宅ローンの申込みなど、公的な証明書が必要な場面で利用されます。

固定資産課税台帳の閲覧・縦覧を利用する

 市区町村の窓口で申請すると、固定資産課税台帳の内容を確認できます。また、縦覧期間(毎年4月1日から最初の納期限の日まで)には、近隣の土地や建物の評価額との比較も可能です。縦覧は無料で利用できます。

評価額に不服がある場合は審査の申出ができる

 固定資産税評価額(価格)に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に「審査の申出」を行うことができます。申出期限は、納税通知書を受け取った日の翌日から起算して3か月以内です。認められやすいのは、固定資産課税台帳の登録内容に誤りがある場合や、固定資産評価基準の適用に誤りがある場合です。

【最新動向(令和8年度税制改正)】

令和8年度税制改正では、固定資産税に関する制度の見直しが行われています。主な変更点は次のとおりです。

新築住宅特例の床面積要件が緩和された

令和8年4月1日以後に新築された住宅から、新築住宅特例の対象となる床面積要件の下限が50㎡から40㎡に引き下げられました。上限は280㎡から240㎡に変更されています。また、制度の適用期限は令和13年3月31日まで延長されました。

家屋の免税点が20万円から30万円に引き上げられる

令和9年度以後の固定資産税から適用されます。同一市区町村内で所有するすべての家屋の課税標準額の合計が30万円未満であれば、固定資産税は課税されません。

償却資産の免税点も引き上げられる

令和9年度以後の固定資産税から、償却資産(機械・設備など)の免税点が150万円から180万円に引き上げられます。なお、土地の免税点である30万円に変更はありません。

著者・監修情報
固定資産税をパパっと解説(koteishisanzei-papatto.com)編集部。固定資産税に関する情報を図解を交えてわかりやすく解説することを心がけて記事を作成しています。作成にあたっては、総務省 固定資産評価基準、一般財団法人資産評価システム研究センター、国土交通省などの公的機関の情報、および信頼性が極めて高い専門サイトの情報を参照しています。
参考資料・参考サイト
e-Gov 地方税法一般財団法人資産評価システム研究センター 令和6年度固定資産税のあらまし一般財団法人資産評価システム研究センター 令和8年度固定資産税のしおり総務省 固定資産評価基準第1章 土地総務省 固定資産評価基準第2章 家屋国土交通省 令和8年度税制改正概要
注意点
本記事の内容は令和8年6月時点のものです。最新の情報は市町村役場のホームページや窓口、総務省、国土交通省の公式サイトなどにてご確認ください。

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