固定資産税の前年度課税標準額とは?

固定資産税の課税明細書を見ると、土地の欄に固定資産税の前年度課税標準額が記されています。
固定資産税の前年度課税標準額とは、その土地の去年の固定資産税を計算する際に用いられた課税標準額であり、意味を知っておけば、課税ミスがないか検算する際に役立ちます。
皆さんが「ふむふむ」と理解できるように、固定資産税の前年度課税標準額をわかりやすく簡単に解説しましょう。
目次
- 1. 固定資産税の前年度課税標準額とは、その土地の去年の課税標準額
- 1-1. 課税標準額の算出方法1. 本則課税標準額を計算する
- 1-2. 課税標準額の算出方法2. 前年度課税標準額から負担水準を計算する
- 1-3. 課税標準額の算出方法3. 課税標準額を算出する
- まとめ - 都市計画税の前年度課税標準額もある
固定資産税の前年度課税標準額とは、その土地の去年の課税標準額
固定資産税の前年度課税標準額とは、その土地の去年の固定資産税を計算する際に用いられた課税標準額です。
難解ですが、順を追ってわかりやすく簡単に解説しましょう。
まずは、土地の固定資産税は、毎年新たに課されていることを知ってください。
土地を所有すると固定資産税が課され続けますが、正確には、年度を問わず1月1日の時点で土地を所有することにより、その年の固定資産税が課されることが決定します。
例を挙げると、令和7年1月1日の時点で土地を所有するのであれば、令和7年度分の固定資産税が課されることが決定するといった具合です。
土地を所有するとこの流れを繰り返し、毎年新たに固定資産税が課されます。
要点1
土地の固定資産税は課され続けるのではなく、毎年新たに課されている
つぎに、土地の固定資産税がどのように計算されるか知ってください。
土地の固定資産税は、以下のように「課税標準額」という額に税率を掛け算しつつ計算されます。
土地の固定資産税の計算方法
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税
課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。
土地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、複数の要素から算出された額です。
また、課税標準額は、毎年算出され直します。
たとえば、土地を所有し、令和5年度、6年度、7年度と固定資産税が課されたとしましょう。
であれば、その土地の令和5年度、6年度、7年度の課税標準額は毎年度算出され直すといった具合です。
要点2
課税標準額は、毎年算出され直す
最後に、固定資産税の前年度課税標準額の意味を理解してください。
固定資産税の前年度課税標準額とは、その土地の去年の固定資産税を計算する際に用いられた課税標準額です。
例を挙げると、現在が令和7年度であれば、その土地の令和6年度の固定資産税を計算する際に用いられた課税標準額が前年度課税標準額となります。
同様に、現在が令和6年度であれば、その土地の令和5年度の固定資産税を計算する際に用いられた課税標準額が前年度課税標準額です。

では、なぜ固定資産税の課税明細書に前年度課税標準額が記されているのでしょうか。
固定資産税は毎年新たに課され、課税標準額も毎年算出され直すため、課税明細書に前年度課税標準額が記される必要はないはずです。
課税明細書に前年度課税標準額が記される理由は、土地の固定資産税の課税標準額を算出する方法にあります。
先述のとおり、土地の固定資産税の課税標準額は複数の要素から算出されますが、要素の1つが前年度課税標準額なのです。
よって、固定資産税の課税明細書には、前年度課税標準額が記されています。

つづいて、前年度課税標準額などから土地の固定資産税の課税標準額が算出される流れを解説しましょう。
流れを知れば、土地の固定資産税に課税ミスがないか検算する際に役立ちます。ぜひご覧ください。
課税標準額の算出方法1. 本則課税標準額を計算する
はじめに、その土地の本則課税標準額を計算します。
本則課税標準額とは、本来の課税標準額という意味です。
土地の固定資産税は課税標準額に税率を掛け算して計算しますが、実はその課税標準額は本則課税標準額(本来の課税標準額)ではありません。
本則課税標準額に「負担調整措置」を適用させた最終的な課税標準額となります。
負担調整措置とは、土地所有者の税負担を調整する措置であり、全ての土地に申告不要で適用されます。

本則課税標準額と負担調整措置の意味はさておき、本則課税標準額の計算方法をご紹介しましょう。
本則課税標準額の計算方法は、住宅の有無と土地の面積によって異なります。
戸建てが建つ200㎡(約60坪)以下の土地や、マンションの土地の持ち分であれば、本則課税標準額はその土地の固定資産税評価額の6分の1です。
土地の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその土地の「適正な時価」であり、所有する土地の固定資産税評価額は、課税明細書の土地の欄に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。
たとえば、戸建てが建つ200㎡以下の土地を所有し、その固定資産税評価額が2,000万円であれば以下のように計算し、本則課税標準額は333万3,333円です。
本則課税標準額の計算例
2,000万円(固定資産税評価額)÷6=333万3,333円
また、戸建てが建つ200㎡を超える土地の本則課税標準額は、200㎡までの部分の本則課税標準額と、200㎡を超える部分の本則課税標準額の合計となります。
200㎡までの部分の本則課税標準額は固定資産税評価額の6分の1、200㎡を超える部分の本則課税標準額は固定資産税評価額の3分の1です。
計算例を挙げると、固定資産税評価額が1,600万円、敷地面積が400㎡の土地であれば以下のように計算し、本則課税標準額は399万9,999円となります。
土地1㎡あたりの固定資産税評価額の計算例
1,600万円÷400㎡=4万円
200㎡までの部分の本則課税標準額の計算例
4万円×200㎡÷6=133万3,333円
200㎡超の部分の本則課税標準額の計算例
4万円×200㎡÷3=266万6,666円
土地全体の本則課税標準額の計算例
133万3,333円+266万6,666円=399万9,999円
更地の本則課税標準額は、計算する必要はありません。
更地の本則課税標準額は固定資産税評価額であり、本則課税標準額の計算方法をまとめると以下のとおりです。
本則課税標準額の計算方法
土地の状況 | 本則課税標準額 |
---|---|
戸建てが建つ200㎡以下の土地、マンションの土地の持ち分 | 固定資産税評価額の6分の1 |
戸建てが建つ200㎡超の土地 | 200㎡までの部分は固定資産税評価額の6分の1、200㎡超の部分は3分の1 |
更地 | 固定資産税評価額 |
ちなみに、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、負担調整措置をわかりやすく解説する記事を公開中です。
負担調整措置に興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
お役立ち記事
固定資産税の負担調整措置とは?(図解でわかりやすい!)
課税標準額の算出方法2. 前年度課税標準額から負担水準を計算する
本則課税標準額の計算が完了すれば、前年度課税標準額と本則課税標準額を用いて負担水準を計算します。
負担水準とは、先にご紹介した負担調整措置(土地所有者の税負担を調整する措置)を適用するための水準です。
負担調整措置は負担水準に応じて土地所有者に課される固定資産税が調整され、負担水準は以下の式で計算してパーセントで表します。
負担水準の計算方法
前年度課税標準額÷本則課税標準額×100=負担水準(%)
たとえば、前年度課税標準額が350万円、本則課税標準額が333万3,333円であれば以下のように計算し、負担水準は105%です。
計算例
350万円(前年度課税標準額)÷333万3,333円(本則課税標準額)×100=105%
このように固定資産税の前年度課税標準額は、負担水準を計算する際に用いられます。
ちなみに、東京23区が発行する固定資産税の課税明細書には、本則課税標準額や負担水準も記されています。
課税標準額の算出方法3. 課税標準額を算出する
負担水準の計算が完了すれば、負担水準に応じて課税標準額を算出します。
算出した課税標準額が「最終的な課税標準額」であり、土地の固定資産税はここで算出した課税標準額に税率を掛け算しつつ計算されます。
課税標準額の算出方法は住宅の有無によって異なり、以下のとおりです。
住宅が建つ土地(マンションの土地の持ち分を含む)の課税標準額
負担水準 | 課税標準額 |
---|---|
100%以上 | 本則課税標準額が課税標準額になる |
100%未満 | 「前年度課税標準額+本則課税標準額の5%(A)」が課税標準額になる |
負担水準が100%未満の状況における注意点1 | 課税標準額の上限は本則課税標準額 |
負担水準が100%未満の状況における注意点2 | Aが本則課税標準額の20%を下回る場合は、20%が課税標準額になる |
更地の課税標準額
負担水準 | 負担水準 |
---|---|
70%以上 | 固定資産税評価額の70%が課税標準額になる |
70%以下60%以上 | 前年度課税標準額が課税標準額になる |
60%未満 | 「前年度課税標準額+固定資産税評価額の5%(A)」が課税標準額になる |
負担水準が60%未満の状況における注意点1 | Aが固定資産税評価額の60%を上回る場合は、60%が課税標準額になる |
負担水準が60%未満の状況における注意点2 | Aが固定資産税評価額の20%を下回る場合は、20%が課税標準額になる |
以上で土地の固定資産税の課税標準額を算出する流れの解説の完了です。
これまでにご紹介したとおり、土地の固定資産税の課税標準額は、前年度課税標準額などから算出されます。
よって、固定資産税の課税明細書には前年度課税標準額が記されています。
最後に、土地の固定資産税の計算例を挙げましょう。
前年度課税標準額などから算出した課税標準額が333万3,333円であれば以下のように計算し、その土地の固定資産税は4万6,666円です。
土地の固定資産税の計算例
課税標準額(333万3,333円)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=4万6,666円
前年度課税標準額の意味を知れば、課税標準額に誤りがないか、土地の固定資産税に課税ミスがないか検算する際に役立ちます。ぜひご参考になさってください。
まとめ - 都市計画税の前年度課税標準額もある
固定資産税の課税明細書に記されている前年度課税標準額を解説しました。
固定資産税の前年度課税標準額とは、その土地の前年の固定資産税を計算する際に用いられた課税標準額です。
土地の固定資産税は課税標準額に税率を掛け算しつつ計算し、課税標準額は前年度課税標準額などから毎年算出され直します。
よって、課税明細書に前年度課税標準額が記されています。
ちなみに、市街地に位置する土地や建物を所有すると多くの場合は都市計画税も課されますが、都市計画税にも前年度課税標準額があります。
都市計画税の課税標準額とは、その土地の去年の都市計画税を計算する際に用いられた課税標準額です。
土地の都市計画税は、土地の固定資産税と同じく以下のように課税標準額に税率を掛け算して計算します。
土地の都市計画税の計算方法
課税標準額×都市計画税の税率(市町村によって異なるものの最高で0.3%)=都市計画税
土地の都市計画税の課税標準額もやはり毎年算出され直し、算出方法は、本記事でご紹介した土地の固定資産税の課税標準額を算出する流れと同様です。
ただし、固定資産税の前年度課税標準額ではなく、都市計画税の前年度課税標準額が用いられます。
また、本則課税標準額の計算方法も異なり、以下のとおりです。
都市計画税の本則課税標準額の計算方法
土地の状況 | 本則課税標準額 |
---|---|
戸建てが建つ200㎡以下の土地、マンションの土地の持ち分 | 固定資産税評価額の3分の1 |
戸建てが建つ200㎡超の土地 | 200㎡までの部分は固定資産税評価額の3分の1、200㎡超の部分は3分の2 |
更地 | 固定資産税評価額 |
都市計画税が課される土地を所有すると、課税明細書に都市計画税の前年度課税標準額が記されていることがありますが、それは、その土地の今年度の都市計画税の課税標準額を算出する要素の一つであることが理由です。
本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年4月
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