固定資産税が下がらない理由

固定資産税が下がらない理由

固定資産税が下がらないのは、税額は三年に一度のみ変更されるためです。

また、建物の固定資産税は物価高であれば下がらず、土地の固定資産税は地価が安定していれば下がりません。

固定資産税が下がらない理由を解説しましょう。

目次

固定資産税が下がらないのは、基準年度ではないことなどが理由

固定資産税が下がらない理由は様々ですが、最も多いのが、令和三年度や六年度、九年度など、固定資産税は三年に一度しか税額が変わらないためです。

固定資産税において、令和三年度や六年度、九年度など三で割り切れる年を基準年度と呼び、固定資産税が下がるなどして税額が変わるのは、原則として基準年度のみとなっています。

また、基準年度であっても建物の固定資産税が下がらないのであれば、それは物価高により建築費が高騰していることが理由です。

建物の固定資産税は、建築費が高騰する期間は下がりません。

加えて、基準年度であっても土地の固定資産税が下がらないのであれば、それは地価が安定していることが理由です。

土地の固定資産税は地価に応じた額が課され、地価が安定していれば、一部例外を除き税額は下がりません。

つづいて、固定資産税が下がらない理由の詳細を解説しましょう。

▲ 目次に戻る

固定資産税は、令和六年度や九年度以外は下がらない

固定資産税が下がらない理由は様々ですが、下がらない年が令和三年度や六年度、九年度以外であれば、基準年度ではないためです。

基準年度とは、令和三年度や六年度、九年度など昭和三十三年度から起算して三年度毎の年を指し、固定資産税が下がるなどして税額が変わる可能性があるのは、基準年度のみとなっています。

基準年度以外の年の固定資産税は、一部例外を除き前の基準年度の額に据え置かれ、下がるなどして税額が変わることはありません。

固定資産税の税額変更サイクル

年度 固定資産税
基準年度(令和三年度、六年度、九年度など) 下がるなどして税額が変わる可能性がある
基準年度の翌年度(令和四年度、七年度、十年度など) 前の基準年度の税額に据え置かれ、一部例外を除き、固定資産税が下がることはない
基準年度の翌々年度(令和五年度、八年度、十一年度など)

固定資産税が三年に一度の基準年度のみに税額が変わる可能性があるのは、建物や土地の固定資産税を計算する仕組みにあります。

建物や土地の固定資産税は、以下のように「課税標準額」に税率を掛け算して計算します。

建物の固定資産税の計算方法
課税標準額(その建物の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=建物の固定資産税

土地の固定資産税の計算方法
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=土地の固定資産税

課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば、同じこともあります。

固定資産税を計算する際の課税標準額は、式に記したように、その建物、または土地の固定資産税評価額です。

建物や土地の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその建物や土地の「適正な時価」を意味します。

固定資産税評価額は建物や土地の「適正な時価(その時点における価格)」を意味するだけに、本来であれば毎年見直されるべきです。

しかし、日本には約6,000万棟もの建物と、約1億8,000万筆もの土地があり、それらの固定資産税評価額を毎年見直しては大変です。

よって、市町村は三年に一度の基準年度のみに固定資産税評価額を見直し、それ以外の年の固定資産税評価額は前の基準年度の額に据え置きます。

固定資産税評価額が基準年度しか見直されなければ、課税標準額も基準年度しか変更されず、課税標準額に税率を掛け算して計算する固定資産税も基準年度しか変わりません。

固定資産税は、基準年度以外は下がらない

なお、所有する建物や土地の固定資産税評価額は、固定資産税の課税明細書に「価格」や「評価額」などの名目で記されています。

また、課税明細書には、「課税標準」などの名目で所有する建物や土地の課税標準額も記されています。

固定資産税が下がらない理由を調べる方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに「総務省:固定資産税の概要」では、固定資産税のあらましを確認することが可能です。

▲ 目次に戻る

建物の固定資産税は、建築費が高騰する期間は下がらない

固定資産税は三年に一度の基準年度のみに税額が変わる可能性がありますが、基準年度であっても建物の固定資産税が下がらないのであれば、それは物価高による建築費の高騰が理由です。

建物の固定資産税は、以下のように「その建物の固定資産税評価額」を課税標準額として税額を計算します。

建物の固定資産税の計算方法
課税標準額(その建物の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=建物の固定資産税

建物の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその建物の「適正な時価」であり、三年に一度の基準年度に見直されます。

見直し方は極めて複雑ですが、簡単にご紹介すると、以下のように計算しつつ見直されます。

建物の固定資産税評価額を見直しする式(超簡略版)
再建築費-築年数が経過することにより目減りした価値=見直し後の建物の固定資産税評価額

式に含まれる「再建築費」とは、その建物と同一の建物を同一の場所に、現時点で新築する際に必要となる資材費と労務費、設計費、建築会社が得る利益の合計です。

「現時点」という部分がポイントです。

また、式に含まれる「築年数が経過することにより目減りした価値」は、築年数が経過した建物の固定資産税評価額を見直す際ほど大きくなります。

たとえば、築10年の建物の固定資産税評価額を見直す際は再建築費の50%に、築20年であれば60%に、築30年であれば70%などになるといった具合です。

したがって、再建築費が前の基準年度と変わらなければ、その建物の固定資産税評価額は築年数が経過すると共に徐々に下がります。

固定資産税評価額が徐々に下がれば課税標準額も徐々に下がることとなり、課税標準額に税率を掛け算して計算する建物の固定資産税も徐々に下がります。

しかし、最近は物価高により建築費が高騰し、同じ建物であっても以前より再建築費が大幅に高くなっています。

高くなる程度は、「築年数が経過することにより目減りした価値」が大きくなる程度を上回ります。

よって、建物の固定資産税評価額、および課税標準額は基準年度に見直し後も下がらず、固定資産税が下がらないという状況が発生しています。

建物の固定資産税が下がらない理由は、物価高により建築費が高騰しているため

たとえば、令和三年度の基準年度の時点において、再建築費が1,500万円、築年数が10年、「築年数が経過することにより目減りした価値」が再建築費の50%である750万円の「建物A」があったとしましょう。

建物Aの令和三年度の基準年度の時点における固定資産税評価額は、以下のように計算して750万円です。

建物Aの令和三年度の固定資産税評価額の計算例
1,500万円(再建築費)-750万円(築10年目の「築年数が経過することにより目減りした価値」)=750万円

その後、令和六年度の基準年度に、建物Aの固定資産税評価額は見直されます。

令和六年度の時点において、建物Aの「築年数が経過することにより目減りした価値」は再建築費の53%である954万円まで大きくなりましたが、物価高により再建築費は1,800万円まで高くなりました。

であれば以下のように計算し、令和六年度の基準年度の見直し後の建物Aの固定資産税評価額は、750万円から846万円まで上がります。

建物Aの令和六年度の見直し後の固定資産税評価額の計算例
1,800万円(再建築費)-954万円(築13年目の「築年数が経過することにより目減りした価値」)=846万円

ただし、建物の固定資産税評価額が見直し後に上がることはなく、上がる場合は、前の基準年度の額に据え置かれます。

すなわち、建物Aの固定資産税評価額は、築年数が経過したにもかかわらず下がらないというわけです。

固定資産税評価額が下がらなければ課税標準額も下がらないこととなり、課税標準額に税率を掛け算して計算する固定資産税も下がりません。

基準年度であっても建物の固定資産税が下がらないのであれば、それは建築費の高騰により固定資産税評価額が下がっていないことが理由です。

最近は建築費が高騰し、建物の固定資産税が下がらない

▲ 目次に戻る

土地の固定資産税は、地価が安定していれば下がらない

固定資産税は三年に一度の基準年度のみに税額が変わる可能性がありますが、基準年度であっても土地の固定資産税が下がらないのであれば、周辺の地価が安定していることが理由です。

土地の固定資産税は、以下のように「その土地の固定資産税評価額」を課税標準額として税額を計算します。

土地の固定資産税の計算方法
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=土地の固定資産税

土地の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその土地の「適正な時価」であり、三年に一度の基準年度に周辺の地価を参考に見直されます。

具体的には、地価が上がっていれば固定資産税評価額は上がり、地価が下がっていれば固定資産税評価額は下がります。

地価が変わらなければ、固定資産税評価額は変わりません。

固定資産税評価額が変わらなければ課税標準額も変わらず、課税標準額に税率を掛け算して計算する土地の固定資産税は下がらないこととなります。

いつまでも土地の固定資産税が下がらないと戸惑う方がいらっしゃいましたら、周辺の地価をご確認ください。

土地の固定資産税が下がらない理由は、地価が安定しているため

なお、戸建てが建つ土地や、マンションの土地の持ち分にも固定資産税が課されますが、その税額は、建物の築年数が経過することでは下がらないため留意してください。

土地の固定資産税評価額は三年に一度の基準年度に見直されますが、見直しの際にその土地に建つ建物の築年数が考慮されることはありません。

したがって、戸建てなどの建物が建つ土地や、マンションの土地の持ち分の固定資産税は、その土地に建つ建物の築年数が経過することでは下がらないこととなります。

もし「建物の築年数が経過しているのに土地の固定資産税が下がらない」と戸惑う方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

▲ 目次に戻る

まとめ - 鉄筋コンクリート造は、固定資産税が下がりにくい

固定資産税が下がらない理由を解説しました。

固定資産税が下がらない理由は様々ですが、下がらない年が令和三年度や六年度、九年度以外であれば、それは基準年度ではないためです。

固定資産税は、令和三年度や六年度、九年度などの基準年度のみに税額が変更される可能性があり、原則として、基準年度以外に税額が下がることはありません。

基準年度であっても建物の固定資産税が下がらないのであれば、それは建築費が高騰していることが理由です。

建物の固定資産税は、建築費が高騰する期間は下がりません。

基準年度であっても土地の固定資産税が下がらないであれば、その周辺の地価が安定していることが理由です。

土地の固定資産税は地価に応じた額が課され、地価が変わらなければ、一部例外を除き税額は変わりません。

固定資産税が下がらない理由を調べる方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

固定資産税が下がらない理由

  • 令和三年度や六年度、九年度以外に固定資産税が下がらないのであれば、基準年度ではないことが理由
  • 基準年度であっても建物の固定資産税が下がらないのであれば、建築費の高騰が理由
  • 基準年度であっても土地の固定資産税が下がらないのであれば、地価が安定していることが理由

なお、本記事でご紹介したとおり、建物の固定資産税評価額は建築費が高騰する期間は下がりませんが、その期間が終了すれば徐々に下がります。

しかし、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の固定資産税評価額は、建築費の高騰が収まったとしても木造より下がりにくいため留意してください。

鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の固定資産税評価額は、いかなる状況においても下がるのに最短で60年を要します。

これに対して、木造の固定資産税評価額は、建築費の高騰がなければ35年程度で下がります。

建物の固定資産税は、その固定資産税評価額を課税標準額として税額を計算します。

つまり、固定資産税評価額が下がりにくい鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は、木造より固定資産税が下がりにくいというわけです。

鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の固定資産税評価額が木造より下がりにくいのは、耐久性に優れていることが理由です。

建物の固定資産税評価額とは、市町村が評価したその建物の「適正な時価」ですが、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は耐久性に優れているため、木造より時価が下がりにくいとみなされます。

よって、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の固定資産税評価額は、木造より下がるのに時間がかかります。

鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造を所有し、建築費の高騰が収まったにもかかわらず固定資産税が下がらないのであれば、それは耐久性に優れ固定資産税評価額が下がりにくいことが理由です。

本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2025年5月

▲ 目次に戻る

こちらの記事もオススメです