固定資産税は永遠に支払う!?

固定資産税は永遠に支払う!?

土地や家屋などの不動産を所有しつつ春になると、必ず固定資産税の納税通知書が届きます。

もはや季語として使えそうな固定資産税の納税通知書ですが、固定資産税は一生払い続ける必要があるのでしょうか。

ひょっとして固定資産税は永遠に支払う必要があるのでは?と感じる方へ向けて、その答えをご紹介しましょう。

なお、ご紹介する内容は不動産の固定資産税に関することであり、償却資産には該当しないためご注意ください。

目次

1. 家屋の固定資産税は、家屋として機能する限り一生払い続ける

はじめに、家屋の固定資産税は永遠に支払う必要があるかご紹介しましょう。

家屋の固定資産税は、建物として機能する限り、永遠に支払う必要があります。

家屋の固定資産税は築年数が経過することにより下がるため、いつかは0円になると考えがちですが、新築時の20%程度まで下がるに留まり、それよりは下がりません。

よって、家屋の固定資産税は、永遠に支払うこととなります。

マンションを購入することにより取得する一戸部分も同じであり、築年数が経過することにより固定資産税が下がるのは新築時の20%程度までであり、一生払い続ける必要があります。

家屋の固定資産税は一生払い続ける

ただし、屋根が朽ちて壁が倒れるなどして、その家屋が建物としての機能を果たさなくなれば、市町村役場に届け出をすることにより固定資産税の支払いを免れます。

その根拠は、固定資産税が課される対象となる家屋の定義にあります。

固定資産税は、地方税法という法律によって定められた規定により、市町村から固定資産の所有者に課される税金です。

地方税法とは、固定資産税や不動産取得税などの税金に関することを定めた法律であり、地方税法における固定資産とは、土地や家屋などを指します。

家屋の定義が曖昧ですが、正確な定義は、不動産登記規則の第百十一条に記されている建物の定義と同一とされます。

不動産登記規則とは、不動産登記法という法律の詳細を定めた省令であり、同規則の第百十一条をわかりやすくご紹介すると以下のとおりです。

不動産登記規則 第百十一条(建物)
建物は、屋根と壁があり、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途を成し得る状態にあるものでなければならない

上記を理由に、家屋は築年数が経過することにより固定資産税が0円になることはなく、永遠に支払う必要があるものの、建物として機能しなくなれば固定資産税がかかりません。

なお、先に家屋の固定資産税は、築年数が経過することにより新築時の20%程度まで下がるとご紹介しました。

ここで気になるのが、固定資産税が何年で新築時の20%程度まで下がるかですが、木造や鉄骨鉄筋コンクリート造など、構造によって異なります。

具体的には、木造であれば15年から35年をかけて、マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造であれば60年をかけて新築時の20%程度まで下がります。

下がる年数は、総務省の告示「固定資産評価基準 第2章 家屋」に掲載されている、「別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表」と、「別表第13 非木造家屋経年減点補正率基準表」にて確認することが可能です。

以下は、木造の家屋の固定資産税が下がる年数が記された別表第9です。

木造の家屋の固定資産税が下がる年数が記された表

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表の見方が難解ですが、その家屋の新築時における1平方メートルあたりの再建築費が55,120円未満などであれば、表の一番左の「55,120点未満」が該当するとお考えください。

1平方メートルあたりの再建築費とは、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要となる、1平方メートルあたりの材料費と労務費などの合計です。

その家屋の新築時の1平方メートルあたりの再建築費が55,120円未満などであれば、表の一番左の「55,120点未満」が該当し、15年をかけて新築時の20%程度まで下がります。

1平方メートルあたりの再建築費が55,120円以上86,320円未満などであれば、表の左から二番目の「55,120点以上86,320点未満」が該当し、20年をかけて新築時の20%程度まで固定資産税が下がります。

1平方メートルあたりの再建築費が86,320円以上133,120円未満などであれば、表の左から三番目の「86,320点以上133,120点未満」が該当し、25年をかけて20%程度まで固定資産税が下がります。

1平方メートルあたりの再建築費が133,120円以上などであれば、表の一番右の「133,120点以上」が該当し、35年をかけて20%程度まで固定資産税が下がります。

複雑ですが、ようするに木造の固定資産税は、1平方メートルあたりの建築費が高額な家屋ほど下がりにくいとお考えください。

反対に、1平方メートルあたりの建築費がリーズナブルな家屋は、固定資産税が早く下がります。

ただし、0円になることはなく、その木造の家屋が建物として機能する限り、永遠に固定資産税を支払うこととなります。

木造の家屋の固定資産税は、15年から35年をかけて新築時の20%まで下がる

一方、マンションなど、鉄骨鉄筋コンクリート造の家屋は、1平方メートルあたりの再建築費を問わず、60年をかけて新築時の20%程度まで固定資産税が下がり、それよりは下がりません。

築60年以降もその鉄骨鉄筋コンクリート造の家屋が建物として機能する限り、固定資産税を一生払い続けることとなります。

以下は、マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造の固定資産税が下がる年数が記された「別表第13 非木造家屋経年減点補正率基準表」であり、赤い線で囲んだ箇所がその部分です。

マンションの家屋の固定資産税は、60年をかけて新築時の20%まで下がる

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ここまでご紹介したように、家屋の固定資産税は、その家屋が建物として機能する限り永遠に支払うこととなりますが、土地はどうでしょうか。

つづいて、土地の固定資産税は一生払い続ける必要があるかご紹介しましょう。

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2. 土地の固定資産税は、永遠に支払う

家屋の固定資産税は、その家屋が建物として機能する限り、永遠に支払う必要があります。

築年数が経過すれば新築時の20%程度まで税額が下がりますが、それよりは下がらず、固定資産税を一生払わなくてはなりません。

一方、土地の固定資産税は、その土地に建つ家屋の築年数が経過しても下がらず、その周辺の地価に応じて見直されることとなります。

家屋が建てられていない更地も同じです。

たとえば、周辺に駅ができるなどして地価が上昇すれば土地の固定資産税は上がり、周辺に好ましくない施設ができるなどして地価が下がれば固定資産税も下がります。

そして、地価は、余程のことがない限り0円にはなりません。

これを理由に、土地の固定資産税は、その土地を所有し続ける限り一生払い続ける必要があります。

土地の固定資産税は永遠に支払う

ただし、その土地が荒れ地になるなどして、そのままでは使用できない状態になれば、固定資産税は下がることとなります。

土地の固定資産税は、現状に応じた額が課され、整地されていれば高く、そのままでは使用できない状態であれば安くなります。

固定資産税の課税明細書の地目の欄に「現状地目」など、登記簿と異なる地目が記されていることがありますが、それは現状に応じた額が課税されることが理由です。

土地の固定資産税は一生払い続けるものの、荒れ地になれば税額が下がる

なお、住宅が建つ土地の固定資産税には、住宅用地の特例と呼ばれる特例が適用され、本来より固定資産税が減額されています。

そして、その土地に存在する家屋を取り壊せば、それまで支払っていた家屋の固定資産税はかからないこととなりますが、住宅用地の特例の適用が外れ、土地部分にかかる固定資産税が高くなるため留意してください。

具体的には、数年などの年月を掛け、それまでの4.2倍程度まで徐々に税額が上がります。

土地部分に都市計画税も課されている場合は、都市計画税は2.1倍程度まで上がり、固定資産税と都市計画税を合わせると3.6倍程度まで税額が上昇することとなります。

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まとめ - 免税点未満になれば、固定資産税は免税に

固定資産税を一生払い続ける必要があるか、ご紹介しました。

家屋の固定資産税は、築年数が経過することにより新築時の20%程度まで下がるものの0円にはならず、永遠に支払う必要があります。

ただし、その家屋が建物として機能しなくなれば、固定資産税はかかりません。

一方、家屋が建つ土地、または更地の固定資産税は、その周辺の地価に応じて見直され、その土地に建つ家屋の築年数が経過しても下がることはなく、その土地を所有する限り一生払い続ける必要があります。

固定資産税は永遠に支払う必要があるかお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、固定資産税には、免税点があります。

固定資産税の免税点とは、同一の市町村内に同一の人物が土地、または家屋などを所有し、その土地の課税標準額が30万円、もしくはその家屋の課税標準額が20万円に満たない場合に、固定資産税が免税される制度です。

土地や家屋の課税標準額とは、それらの固定資産税を計算する基となる額であり、固定資産税の課税明細書に「課税標準」などの名目で記されている額です。

土地や家屋を所有すると固定資産税が課されますが、その税額は以下の式で計算されます。

土地、または家屋の固定資産税を計算する式
課税標準額×固定資産税の税率=固定資産税

上記の式に含まれるのが課税標準額であり、固定資産税の課税明細書に記されている課税標準です。

課税標準額とは、何かしらの税金が課される状況において、税率を掛け算する基となる額であり、課される税金によって意味が異なります。

固定資産税を計算する基となる課税標準額は、固定資産税が課される対象によって異なり、以下のとおりです。

住宅が建つ土地の固定資産税を計算する際の課税標準額
住宅が建つ土地の固定資産税を計算する基となる課税標準額は、その土地の固定資産税評価額の6分の1、または3分の1などです。
更地の固定資産税を計算する際の課税標準額
更地の固定資産税を計算する際の課税標準額は、その土地の固定資産税評価額の70%などです。
家屋の固定資産税を計算する際の課税標準額
家屋の固定資産税を計算する際の課税標準額は、その家屋の固定資産税評価額です。

固定資産税評価額とは、市町村によって評価された、その土地や家屋の適正な時価であり、毎年4月ごろにご自宅に届く固定資産税の課税明細書に「価格」「評価額」などの名目で記されている額です。

そして、同一の市町村内において、所有する土地の課税標準額が30万円未満、家屋であれば20万円未満であれば、免税点未満となり固定資産税が免除されます。

これを理由に、同一の市町村内に所有する土地や家屋の固定資産税評価額が著しく低くなることがあれば、固定資産税を一生払い続けることから免れるかもしれません。

ご紹介した内容が、固定資産税が永遠に支払う必要があるか、お調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2022年4月

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