土地のみの固定資産税を計算する方法
土地のみの固定資産税は、前年度の課税標準額、今年度の固定資産税評価額、負担水準を基に計算します。
住宅がない土地、すなわち更地の固定資産税を計算する方法をご紹介しましょう。
なお、ご紹介するのは、令和4年度と5年度における土地のみの固定資産税を計算する方法のため留意してください。
目次
- 1. 土地のみの固定資産税を計算する方法
- 1-1. 今年度の固定資産税評価額を把握する
- 1-2. 前年度の課税標準額を把握する
- 1-3. 負担水準を計算する
- 1-4. 負担調整措置を適用しつつ固定資産税を計算する
- まとめ - 土地のみは「商業地等」として扱う
1. 土地のみの固定資産税を計算する方法
はじめに、住宅がない土地、すなわち土地のみの固定資産税を計算する流れをご紹介します。
土地のみの固定資産税を計算する流れ
- 1. 今年度の固定資産税評価額を把握する
- 2. 前年度の課税標準額を把握する
- 3. 負担水準を計算する
- 4. 負担調整措置を適用しつつ固定資産税を計算する
土地のみの固定資産税は、上記の流れで計算します。
それぞれの手順の詳細は、以下のとおりです。
1-1. 今年度の固定資産税評価額を把握する
はじめに、その土地の今年度の固定資産税評価額を把握します。
その土地の固定資産税評価額とは、市町村が評価した、その土地の適正な時価です。
土地を所有すると固定資産税が課せられますが、その税額はその土地の売買価格ではなく、市町村が評価したその土地の適正な時価を基に計算されます。
売買価格は売り主と買い主の事情によって変わるため、売買価格を基に固定資産税を計算しては公平に課税されません。
よって、土地の固定資産税は、市町村が評価したその土地の固定資産税評価額、すなわち適正な時価を基に計算されます。
その土地の今年度の固定資産税評価額は、4月ごろにご自宅に届く固定資産税の納税通知書に同封されている課税明細書に記されています。
課税明細書を見ると、所有する不動産の一覧と「価格」「当年度価格」「評価額」「固定資産評価額」などの名目で金額が記されています。
それらの金額が、固定資産税評価額です。
なお、紛失した、誤って廃棄したなどを理由に課税明細書の内容が確認できない場合は、市町村役場にて固定資産課税台帳を閲覧することにより所有する土地の固定資産税評価額を把握することが可能です。
市町村役場にて閲覧できる固定資産課税台帳とは、市町村が固定資産税を課す対象とする土地や家屋の所有者に関する情報、各土地や家屋の固定資産税評価額に関する情報などが記された台帳であり、市町村長が作成します。
なお、固定資産課税台帳は、原則としてその土地や家屋の固定資産税の納税義務者のみが、自らが所有する土地や家屋の情報のみを閲覧できるため留意してください。
他人が所有する土地や家屋の情報は、一部例外を除き閲覧できません。
1-2. 前年度の課税標準額を把握する
その土地の今年度の固定資産税評価額が把握できれば、つぎは前年度の課税標準額を把握します。
課税標準額とは、固定資産税を計算する基となる額であり、土地のみの固定資産税の課税標準額は、一部例外を除きその土地の固定資産税評価額です。
固定資産税は、課税標準額に固定資産税の税率を掛け算しつつ計算し、具体的な計算式は以下のとおりとなっています。
固定資産税を計算する式
課税標準額×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税
上記の計算式に含まれるのが課税標準額であり、土地のみにかかる固定資産税を計算する場合における課税標準額とは、この記事の「1-1. 今年度の固定資産税評価額を把握する」にてご紹介した固定資産税評価額です。
つまり「前年度の課税標準額を把握する」とは、その土地の前年度の固定資産税評価額を把握することを意味します。
ただし「前年度の課税標準額」が「その土地の前年度の固定資産税評価額」になるのは、土地のみの固定資産税を計算する場合に限られるため留意してください。
住宅が建つ土地の固定資産税を計算する場合における前年度の課税標準額は、その土地の前年度の固定資産税評価額とはなりません。
固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額の意味は、固定資産税を計算する対象となる固定資産の種類や状況によって異なります。
なお、その土地の前年度の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額と同じく、4月ごろに届く課税明細書を見れば把握することが可能です。
課税明細書を見ると「固定前年度課標等」「固定前年度課税標準等」「前年度分の固定資産税課税標準額」「前年度固定課税標準額」などの名目で金額が記されています。
それらの金額が、その土地の前年度の課税標準額です。
1-3. 負担水準を計算する
その土地の今年度の固定資産税評価額と、前年度の課税標準額が把握できれば、負担水準を求めます。
負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額を今年度の固定資産税評価額で割り算した数値であり、パーセントで表し、負担調整措置を適用する際に活用します。
負担調整措置とは、公示地価と固定資産税評価額の乖離を解消するためや、固定資産税評価額が短期間に上昇することにより土地の所有者の税負担が急激に大きくなることを防ぐための措置です。
負担調整措置の詳細をご説明するためには3,000文字程度が必要となるため、ここは割愛させていただき、ひとまずは負担水準を求める方法をご紹介しましょう。
負担水準は、以下の式で計算します。
負担水準を計算する式
その土地の前年度の課税標準額÷その土地の今年度の固定資産税評価額×100=負担水準(パーセント)
たとえば、前年度の課税標準額が1,000万円であり、今年度の固定資産税評価額が1,100万円の土地があったとしましょう。
その場合は「1,000万円÷1,100万円×100=91%」と計算し、負担水準は91%です。
また、前年度の課税標準額が1,000万円であり、今年度の固定資産税評価額が900万円の土地は「1,000万円÷900万円×100=111%」と計算し、負担水準は111%となります。
負担水準が計算できましたら、メモ帳などに書き留めておいてください。
なお、負担調整措置の詳細は、固定資産税をパパッと解説にて公開するコンテンツにてわかりやすく簡単にご紹介しています。
負担調整措置の詳細が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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固定資産税の負担調整措置とは?
1-4. 負担調整措置を適用しつつ固定資産税を計算する
その土地の前年度の課税標準額、今年度の固定資産税評価額、負担水準が把握できれば、固定資産税を計算します。
固定資産税を計算する式は負担水準によって異なり、以下のとおりです。
負担水準が70%超の計算式
負担水準が70%を超える場合は、今年度の固定資産税評価額の70%に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した額が、その土地のみの固定資産税となります。
具体的な計算式は、以下のとおりです。
負担水準が70%超の固定資産税の計算式
今年度の固定資産税評価額×70%×固定資産税の税率(主に1.4%)=今年度の固定資産税
以上が、負担水準が70%を超える場合における、土地のみの固定資産税を計算する式となります。
たとえば、今年度の固定資産税評価額が1,000万円の場合は「1,000万円×70%×1.4%=98,000円」と計算し、今年度の固定資産税は98,000円です。
負担水準が60%以上70%以下の計算式
負担水準が60%以上70%以下の場合は、前年度の課税標準額に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えが、その土地のみの固定資産税です。
具体的な計算式は、以下のとおりです。
負担水準が60%以上70%以下の固定資産税の計算式
前年度の課税標準額×固定資産税の税率(主に1.4%)=今年度の固定資産税
以上が、負担水準が60%以上70%以下の場合における、土地のみの固定資産税を計算する式となります。
計算例を挙げると、前年度の課税標準額が1,000万円の場合は「1,000万円×1.4%=14万円」と計算し、その土地のみの固定資産税は14万円です。
負担水準が60%未満の計算式
負担水準が60%未満の場合は、前年度の課税標準額と今年度の固定資産税評価額の5%を合計した額に、固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えが、その土地のみの固定資産税となります。
具体的な計算式は、以下のとおりです。
負担水準が60%未満の固定資産税の計算式
(前年度の課税標準額+今年度の固定資産税評価額の5%)×固定資産税の税率(主に1.4%)=今年度の固定資産税
以上が、負担水準が60未満の場合における、土地のみの固定資産税を計算する式となります。
たとえば、前年度の課税標準額が1,000万円、今年度の固定資産税評価額が1,700万円の場合は「(1,000万円+85万円)×1.4%=151,900円」と計算し、固定資産税は151,900円です。
まとめ - 土地のみは「商業地等」として扱う
建物がない更地、すなわち土地のみの固定資産税を計算する方法をご紹介しました。
土地のみの固定資産税は、前年度の課税標準額と今年度の固定資産税評価額を把握しつつ負担水準を求め、負担水準に応じた方法で計算します。
多少複雑ですが、土地のみの固定資産税を計算する方法をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
土地のみの固定資産税を計算する方法の詳細は、「東京都主税局 商業地等の固定資産税の負担調整措置が継続されます」などにてご確認いただけます。
なお、土地の固定資産税は、住宅が建つ土地と商業地等によって計算する方法が異なり、今回ご紹介した土地のみの固定資産税を計算する方法は、商業地等の固定資産税を計算する方法となっています。
商業地等と聞くとスーパーやデパート、店舗が並ぶ商業地をイメージしますが、固定資産税における商業地等とは、住宅用地以外の土地です。
固定資産税における住宅用地とは、主に人の住居として使用される家屋が建つ土地を意味し、その定義は、地方税法の第三百四十九条の三の二に記されています。
地方税法とは、固定資産税などに関することを定めた法律であり、同法律の第三百四十九条の三の二を簡単にご紹介すると以下のとおりです。
地方税法 第三百四十九条の三の二
人が居住するための家屋が建つ土地を住宅用地という
そして、地方税法における商業地等の定義は、地方税法の附則第十七条の第一項の第四号に記されています。
地方税法の附則第十七条の第一項の第四号をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。
地方税法附則第十七条 第一項 第四号
商業地等とは、住宅を建てるための土地、または既存する住宅が存在するために必要となる土地のうち、住宅用地以外の土地をいう
このように住宅がない更地、すなわち土地のみは地方税法においては商業地等とみなされ、商業地等の固定資産税を計算する方法を用いて税額を計算することとなります。
ご紹介した内容が、土地のみの固定資産税を計算する方法をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2021年12月
記事公開日:2021年5月
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