固定資産税における価格とは?
固定資産税の納税通知書や課税明細書を見ると、価格や評価額、固定資産評価額などの名目で各不動産の金額が記されています。
また、市町村のホームページで固定資産税に関することを調べると「固定資産税は対象となる土地や家屋の価格を基に計算されます」などと記されています。
それらの価格は売買価格ではなく、市町村が評価した、その不動産の適正な時価です。
固定資産税における価格の意味をわかりやすく解説しましょう。
なお、ご紹介するのは固定資産税が課せられる不動産の価格に関することであり、償却資産には該当しないためご注意ください。
目次
- 1. 固定資産税の価格とは適正な時価
- 2. 市町村が家屋の価格を評価する方法
- まとめ - 価格と課税標準は異なる場合がある
1. 固定資産税の価格とは適正な時価
冒頭でご紹介したとおり、固定資産税における価格とは売買価格ではなく、市町村が評価した、その不動産の適正な時価を意味します。
土地や家屋を所有すると市町村から固定資産税が課せられますが、その税額は、市町村が評価したその不動産の適正な時価を基に計算されます。
たとえば、市町村が適正な時価が2,000万円であると評価する土地を所有する場合は、2,000万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した額である28万円などが税額です。
市町村が適正な時価が1,000万円であると評価する家屋を所有する場合は、1,000万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えである14万円などが税額となります。
このように不動産の固定資産税の額は売買価格ではなく、市町村が評価した適正な時価を基に計算され、固定資産税の納税通知書や課税明細書に記されている価格とは、市町村が評価したその土地や家屋の適正な時価です。
また、市町村のホームページなどに記されている「固定資産税は対象となる土地や家屋の価格を基に計算されます」などの記述に含まれる価格も同じであり、市町村が評価したその土地や家屋の適正な時価を意味します。
売買価格は売り主と買い主の事情によって変わるため、売買価格を基に固定資産税を計算しては公平に課税されません。
よって、不動産の固定資産税は、市町村が評価した、その土地や家屋の適正な時価を基に計算されます。
なお、固定資産税における価格の定義は、地方税法の第三百四十一条の第五号に記されています。
地方税法とは、固定資産税などに関することを定めた法律であり、同法律の第三百四十一条の第五号をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。
地方税法 第三百四十一条(固定資産税に関する用語の意義)第五号
価格とは、適正な時価をいう
加えて、固定資産税額が市町村が評価した適正な時価を基に計算されることは、地方税法の第三百四十九条により規定されています。
同法律の第三百四十九条をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のようになります。
地方税法 第三百四十九条(土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準)
固定資産税の額は、固定資産課税台帳に記された各不動産の価格を基に計算する
固定資産課税台帳とは、市町村によって評価された各不動産の価格、すなわち適正な時価が記された市町村役場に設置されている台帳です。
つづいて、市町村が家屋の適正な時価を評価する方法をわかりやすく簡単にご紹介しましょう。
2. 市町村が家屋の価格を評価する方法
固定資産税における価格とは、市町村が評価した、その不動産の適正な時価です。
土地や家屋の固定資産税は、売買価格ではなく市町村が評価した適正な時価を基に計算されます。
ここで気になるのが、市町村による土地や家屋の適正な時価の評価方法です。
ここから、市町村が一戸建ての新築の木造家屋と、既存する一戸建ての木造家屋の価格、すなわち適正な時価を評価する方法を簡単にご紹介します。
2-1. 新築の一戸建て木造家屋の価格の評価方法
まずは、市町村が新築の一戸建て木造家屋の適正な時価を評価する方法をご紹介します。
新築を取得すると間もなく市町村から固定資産評価員が訪れ、家屋調査を行います。
家屋調査では固定資産評価員によって、家屋の各箇所に使用されている建材のグレードと量、設備の種類とグレード、用いられている工法などが調査されます。
調査が完了すれば、使用されている建材の量やグレード、設備、工法に応じて点数が付けられます。
付けられる点数は、グレードが高い建材や設備が多く使用され、複雑な工法が用いられているほど高くなり、付けられた点数を再建築費評点数と呼びます。
そして、再建築費評点数を1点あたり1円に換算した額などが、新築の一戸建て木造家屋の価格、すなわち適正な時価となります。
たとえば、固定資産評価員がその家屋を調査しつつ採点し、再建築費評点数を1,000万点と付ければ、その家屋の適正な時価は1,000万円などになるといった具合です。
なお、新築の家屋の価格は、販売価格より安くなるのが通例です。
一般的には、新築の家屋の価格は建築費の6割程度といわれます。
たとえば、建築費が2,000万円の家屋であれば、その価格は1,200万円程度になるといった具合です。
ただし、建築費は売買価格と一致するとは限りません。
建築費とは、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築する際に必要となる材料費と労務費、建築業者が得る利益の合計などを指します。
そのため、建築業者が新築しつつ販売する新築は、建築費と販売価格の差が小さくなります。
これに対して、不動産業者が販売する建売などの販売価格には、建築費に加えて不動産業者が得る利益が上乗せされています。
よって、不動産業者が販売する建売などは、建築費と販売価格の差が大きくなります。
建築費と販売価格は、必ず一致するわけではないため注意してください。
また、先に「一般的には新築時の家屋の価格は建築費の6割程度といわれる」とご紹介しましたが、私はその明確な根拠が記されたデータを見たことがないため留意してください。
新築時の家屋の価格が建築費の6割程度というのは、あくまで一般的な見解です。
ちなみに、固定資産税をパパッと解説では、固定資産評価員が新築の一戸建て木造家屋の家屋調査で見る具体的な箇所をご紹介するコンテンツを公開中です。
新築の一戸建ての家屋の価格が評価される方法が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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2-2. 既存の一戸建て木造家屋の価格の評価方法
つぎに、市町村が、既存する一戸建て木造家屋の価格、すなわち適正な時価を評価する方法をご紹介します。
第一に、この記事の「2-1. 新築の一戸建て木造家屋の価格の評価方法」にてご紹介したように、新築時に家屋調査を行いつつ再建築費評点数を付けます。
第二に、その家屋の築年数に応じて、再建築費評点数に経年減点補正率を掛け算します。
経年減点補正率とは、築年数が経過した家屋の価格を算定する際に用いる補正率です。
木造家屋の経年減点補正率は、総務省の告示「固定資産評価基準 第2章 家屋」の「別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表」に記されています。
固定資産評価基準とは、市町村が土地や家屋の価格を評価する方法が記された手引書であり、総務大臣が内容を定めています。
以下が固定資産評価基準の「別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表」です。
別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表
出典:総務省
表の見方が難解ですが、再建築費評点数に掛け算すべき経年減点補正率は、その家屋の延べ床面積1平方メートルあたりの再建築費評点数によって異なります。
たとえば、延べ床面積1平方メートルあたりの再建築費評点数が55,120点未満の家屋であれば、表の一番左の列の経年減点補正率を築年数に応じて掛け算します。
具体的には、1平方メートルあたりの再建築費評点数が55,120点未満、築10年の家屋であれば、経年減点補正率は0.41になるといった具合です。
そして、再建築費評点数に経年減点補正率を掛け算した点数を1点あたり1円などに換算した額が、既存する一戸建て木造家屋の価格、すなわち適正な時価となります。
ちなみに、家屋の固定資産税は築年数が経過することにより安くなりますが、「別表第9 木造家屋経年減点補正率基準表」を見れば安くなる年数を確認することが可能です。
延べ床面積1平方メートルあたりの再建築費評点数が55,120点未満の木造家屋であれば、15年をかけて新築時の20%まで固定資産税が下がります。
延べ床面積1平方メートルあたりの再建築費評点数が133,120点以上の木造家屋であれば、35年をかけて新築時の20%まで固定資産税が下がります。
つまり、家屋の固定資産税は、1平方メートルあたりの再建築費評点数、すなわち建築費が高いほど下がりにくいというわけです。
まとめ - 価格と課税標準は異なる場合がある
固定資産税における価格をわかりやすく解説しました。
固定資産税の納税通知書や課税明細書を見ると価格などの名目で金額が記されていますが、固定資産税における価格とは、市町村が評価したその不動産の適正な時価です。
課税明細書に評価額、または固定資産評価額などの名目で記されている金額も価格と意味は同じです。
加えて、市町村のホームページに「固定資産税は対象となる土地や家屋の価格を基に計算されます」などと記されている文章に含まれる価格も意味は同じであり、市町村が評価したその不動産の適正な時価となります。
そして、不動産の固定資産税の額は、市町村が評価した価格、すなわち適正な時価を基に計算されます。
固定資産税における価格の意味をお調べになる方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、固定資産税の納税通知書や課税明細書には、価格と同額、または異なる額で「課税標準」もしくは「課税標準額」という金額が記されています。
課税標準とは、最終的に固定資産税を計算する基となる額です。
不動産の固定資産税は、本来であれば市町村が評価した価格を基に計算されます。
たとえば、市町村が価格が1,500万円であると評価する土地であれば、1,500万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えである21万円が税額です。
しかし、固定資産税には、市町村が評価した価格が減額されるいくつかの特例が設けられています。
最も適用されることが多いのが、住宅用地の特例です。
住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地の価格が6分の1などに減額される特例です。
住宅用地の特例が適用されれば、その土地の価格は6分の1などに減額されます。
例を挙げると、価格が1,500万円の土地に住宅用地の特例が適用されれば、その価格は250万円などに減額されるといった具合です。
この状況において、課税明細書に記されている課税標準は、価格の6分の1である250万円などになります。
そして、250万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算した答えである3万5千円などが、その土地の固定資産税の額となります。
納税通知書に記されている価格と課税標準の意味の違いをわかりやすく簡単にまとめると以下のとおりです。
価格、または評価額、もしくは固定資産評価額、固定資産税評価額 | 市町村が評価した、その不動産の適正な時価 |
課税標準、または課税標準額 | 特例適用後の価格(適用される特例がない場合は、価格と課税標準は同額となる) |
ご紹介した内容が、固定資産税における価格の意味をお調べの皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2021年12月
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