家屋調査はどこまで見る?全11ヵ所の見られる箇所を解説

家屋調査はどこまで見る?

新築を取得すると間もなく市町村役場から調査員が訪れ、固定資産税の家屋調査を実施します。

ここで気になるのが、家屋調査はどこまで見るか、調査員は何を見るかという点ですが、一戸建ての木造住宅であれば全11ヵ所を見ます。

調査員が家屋調査でどこまで見るか、チェックリストを交えてご紹介しましょう。

なお、ご紹介するのは一戸建ての木造住宅の家屋調査に関することであり、鉄筋コンクリート造や鉄骨造には該当しないため留意してください。

目次

1. 固定資産税の家屋調査のチェックリスト

固定資産税の家屋調査では、まずは前提として建床面積と延床面積、階数が見られます。

固定資産税における建床面積とは上空から見下ろした基礎の面積であり、延床面積とは床面積の合計を指します。

固定資産税の家屋調査で見られる建床面積と延床面積とは、上空から見下ろした基礎の面積と家屋の床面積

そして、固定資産税の家屋調査では、屋根、基礎、外壁仕上げ、柱と壁体、内壁仕上げ、天井仕上げ、床、建具、建築設備、新築時に行われた仮設工事の難度、その他の工事の全11箇所が見られます。

固定資産税の家屋調査のチェックリストは、以下のとおりです。

固定資産税の家屋調査のチェックリスト

どこを見る? なにを見る?
建床面積と延床面積と階数
屋根 形状や勾配の程度、屋根材の種類、軒の大きさ、天窓やドーマーの有無など
基礎 高さや形状など
外壁仕上げ 外壁材の種類や階高、外壁の凹凸の多さなど
柱と壁体 柱の本数や長さなど
内壁仕上げ 内壁の仕上げ方や間仕切りの多さ、天井高など
天井仕上げ 天井の仕上げ方など
床材の種類やグレードなど
建具 建具の数やグレードなど
建築設備 ユニットバスやシステムキッチンのサイズなど
仮設工事 新築時に行われた仮設工事の難度など
その他工事 バルコニーやロフト、小屋裏収納の有無など

このチェックリストは木造家屋のみに該当する

固定資産税の家屋調査で調査員がチェックする箇所は、総務省の告示「固定資産評価基準 第二章 家屋」に記され以下のとおりです。

固定資産税の家屋調査のチェックリスト

出典:総務省

固定資産評価基準とは、固定資産税が課される対象となる家屋や土地の「適正な時価」を評価する方法が記された手引き書であり、総務大臣が内容を定めつつ告示しています。

家屋の固定資産税は、その家屋の「適正な時価」をもとに税額が計算されます。

したがって、家屋の所有者に固定資産税を課す市町村は、その家屋の「適正な時価」を評価しなければなりませんが、評価方法が記されたのが固定資産評価基準です。

市町村は家屋調査を実施し、固定資産評価基準に記された方法を用いてその家屋の「適正な時価」を評価します。

そして、評価された「適正な時価」をもとに固定資産税を計算します。

つづいて、固定資産税の家屋調査で調査員が11の箇所をどこまで見るか、何を見るか詳しく解説しましょう。

ちなみに、固定資産税の家屋調査では、押し入れやクローゼットの中に壁紙が貼られているか確認されることがあります。

よって、家屋調査の前には、押し入れやクローゼットを整理しておいた方が良いかもしれません。

▲ 目次に戻る

2. 固定資産税の家屋調査はどこまで見る?

木造住宅の固定資産税の家屋調査で調査員は、屋根、基礎、外壁仕上げ、柱と壁体、内壁仕上げ、天井仕上げ、床、建具、建築設備、仮設工事の難度、その他の工事の有無の全11箇所を見ます。

固定資産税の家屋調査で調査員が11の箇所をどこまで見るか、何を見るかの詳細は以下のとおりです。

屋根

固定資産税の家屋調査で調査員は、屋根の形状と勾配の程度、軒の大きさ、天窓やドーマーの有無、屋根材の種類などを見ます。

屋根の形状は、腰折れやマンサード、越屋根、入母屋など複雑であれば固定資産税が高くなり、切妻や片流れ、寄棟、半切妻、方形など単純であれば固定資産税は安くなります。

家屋調査で屋根の形状を見る

勾配は急であるほど、軒は大きいほど固定資産税が高くなり、天窓やドーマーがあればさらに税額は高くなります。

屋根材は瓦やソーラーパネル一体型であれば固定資産税が高くなり、ガルバリウム鋼板であればさほど税額は高くならず、アスファルトシングルであれば固定資産税は安くなります。

また、建床面積と屋根の面積も固定資産税に影響を与え、それらの面積が大きいほど屋根にかかる固定資産税が高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は屋根の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
形状 複雑なほど固定資産税が高くなる
勾配 急なほど固定資産税が高くなる
軒の大きさ 45cmを大きく超えるなどすれば固定資産税が高くなる
天窓やドーマーの有無 あれば固定資産税が高くなる
屋根材の種類 瓦やソーラーパネル一体型は固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

基礎

固定資産税の家屋調査で調査員は、基礎の高さと、上空から見下ろした基礎の形状を見ます。

基礎の高さは、地面から60cmなどと高ければ固定資産税が高くなり、45cm程度であれば標準的な税額に、30cmなどと低ければ固定資産税は安くなります。

上空から見下ろした基礎の形状は、複雑なほど固定資産税が高くなります。

間取りが複雑な家屋は基礎の形状も複雑になるため、間取りが複雑であれば固定資産税も高くなるといえるでしょう。

家屋調査で基礎の高さや形状を見る

さらに、階数も基礎にかかる固定資産税に影響を与え、平屋や二階建てより三階建てのほうが固定資産税が高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は基礎の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
地上からの高さ 60cmなどと高ければ固定資産税が高くなる
上空から見下ろした形状 複雑なほど固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

外壁仕上げ

固定資産税の家屋調査で調査員は、外壁材の種類、外壁の凹凸の多さ、外壁に占める窓やドアの面積、階高などを見ます。

外壁材がタイルや漆喰であれば固定資産税は高くなり、サイディングやガルバリウム鋼板、板張りであれば税額は安くなります。

外壁に凹凸が多い、外壁に占める窓やドアの面積が小さい、階高が3mなどと高ければ、外壁にかかる固定資産税が高くなります。

なお、階高とは、下階の床から上階の床までの高さであり、一般的な家屋であれば2.7m程度となっています。

家屋調査で階高を見る

固定資産税の家屋調査で調査員は外壁の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
外壁材の種類 タイルや漆喰であれば固定資産税が高くなる
凹凸の多さ 凹凸が多ければ固定資産税が高くなる
外壁に占める窓やドアの面積 小さければ外壁にかかる固定資産税が高くなる
階高 3mなどと高ければ固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

柱と壁体

固定資産税の家屋調査で調査員は、家屋に使用されている柱の本数と長さなどを見ます。

といっても壁を解体しつつ壁内の柱を直接見るのではなく、3階建てなどと階数が多く、部屋が細かく区切られ、上空から見下ろした家屋の形状に凹凸が多ければ柱の本数が多いと見なします。

また、階高が高ければ、長い柱が使用されていると見なします。

そして、柱の本数が多く、長い柱が使用されているほど固定資産税が高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は柱と壁体の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
柱の本数 多ければ固定資産税が高くなる
柱の長さ 長ければ固定資産税が高くなる

なお、本記事では家屋調査を行う市町村の担当者を「調査員」と記していますが、正確には固定資産評価員、または固定資産評価補助員と呼びます。

▲ 目次に戻る

内壁仕上げ

固定資産税の家屋調査で調査員は、内壁の仕上げ方や天井高、間仕切りの多さなどを見ます。

杉や檜の内壁材が使用されている場合や、漆喰などの塗り壁で仕上げられている場合は固定資産税が高くなり、石膏ボードにクロス貼りであれば固定資産税は安くなります。

天井高は2.7mなどと高ければ固定資産税が高くなり、2.4m程度であれば標準的な税額に、2.1mなどと低ければ固定資産税は安くなります。

間仕切りは多いほど固定資産税が高くなり、間仕切りが多く延床面積が広ければさらに税額は高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は内壁の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
仕上げ方 杉や檜の木材、漆喰などの塗り壁であれば固定資産税が高くなる
天井高 2.7mなどと高ければ固定資産税が高くなる
間仕切りの多さ 間仕切りが多ければ固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

天井仕上げ

固定資産税の家屋調査で調査員は、天井の仕上げ方を見ます。

格天井や竿縁天井などの和室の天井や、漆喰などで仕上げられた塗り天井は固定資産税が高くなり、石膏ボードにクロス貼りであれば固定資産税は安くなります。

また、延床面積も固定資産税に影響を与え、延床面積が広ければ天井にかかる固定資産税が高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は天井の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
仕上げ方 格天井や竿縁天井などの和室の天井は固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

固定資産税の家屋調査で調査員は、床材の種類やグレードを見ます。

無垢のフローリングや一級品の畳、ウィルトン織りのカーペット、石材など高価な床材は固定資産税が高くなり、複合フローリングやパイル織りのカーペットなど安価な床材は固定資産税が安くなります。

また、延床面積と階数も固定資産税に影響を与え、延床面積が広い家屋や3階建てなど階数が多い家屋は床にかかる固定資産税が高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は床の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
使用されている床材 無垢のフローリングや一級品の畳であれば固定資産税が高くなる
延床面積と階数 延床面積が広く階数が多ければ床にかかる固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

建具

固定資産税の家屋調査で調査員は、建具のグレードと数を見ます。

親子開きの玄関戸や樹脂製のサッシ、框戸、電動シャッターなどグレードの高い建具が使用されてれば固定資産税が高くなります。

一方、片開きの玄関戸やアルミサッシ、プリント合板の木製扉、引違雨戸などが使用されていれば固定資産税は安くなります。

また、建具の数と延床面積も固定資産税に影響を与え、建具が多く延床面積が広ければ建具にかかる固定資産税が高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は建具の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
グレード 親子開きの玄関戸や樹脂製のサッシ、電動シャッターなど高価な建具が使用されていれば固定資産税が高くなる
数と延床面積 建具が多く延床面積が広ければ建具にかかる固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

建築設備

固定資産税の家屋調査で調査員は、使用されている設備の種類とグレード、サイズなどを見ます。

間口が120cmなどと広い洗面化粧台、1624サイズ(1.5坪)のユニットバス、浴室換気乾燥機、間口が300cmなどと広いシステムキッチン、床暖房設備、ホームエレベーターなど導入するために高額な費用を要する設備があれば固定資産税が高くなります。

一方、間口が60cm程度の洗面化粧台、1216サイズ(0.75坪)のユニットバス、間口が180cm程度のシステムキッチンなど、必要最低限の設備のみが設置されている場合は固定資産税が安くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員は設備の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
種類とグレード 導入するために高額な費用を要する設備があれば固定資産税が高くなる
洗面化粧台やユニットバス、システムキッチンのサイズ 大きければ固定資産税が高くなる

ちなみに、当サイト「固定資産税をパパッと解説」では、固定資産税が高くなる設備を解説するコンテンツを公開中です。

気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

関連コンテンツ
固定資産税が高くなる設備とは?

▲ 目次に戻る

仮設工事

固定資産税の家屋調査で調査員は、家屋が建つ土地の状況を確認し、その家屋を新築するために必要となった足場を組むなどの仮設工事の難度を見ます。

難度が高いと見なされれば固定資産税が高くなり、低いと見なされれば固定資産税は安くなります。

これは、足場を組むなどの仮設工事の難度が高い家屋は、再建築費が高くなることが理由です。

再建築費とは、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要となる資材費と労務費、建築会社が得る利益などの合計を指します。

家屋の固定資産税はその家屋の「適正な時価」をもとに計算されますが、具体的には「再建築費」をもとに計算されます。

家屋調査で調査員は各箇所をチェックしつつ再建築費を計算し、再建築費が高ければ固定資産税も高く、再建築費が安ければ固定資産税も安くなります。

家屋の固定資産税は再建築費を基に算定される

たとえば、工事車両が接近できない奥まった場所に位置する「土地A」があったとしましょう。

土地Aに家屋を新築するために足場を組むためには、離れた場所に工事車両を停車させ、そこから手作業で鉄骨を運び込まなければなりません。

手作業で鉄骨を運び込むこととなれば、労務費が嵩みます。

労務費が嵩む家屋は再建築費が高くなり、固定資産税は高くなります。

一方、大通りに面し工事車両が接近しやすく、なおかつ敷地内に駐車スペースがある「土地B」があったとしましょう。

土地Bは敷地内に工事車両を駐車できるため、足場を組むのが容易です。

足場を組むのが容易であれば、労務費が安く済みます。

労務費が安く済む家屋は再建築費が低くなり、固定資産税は安くなります。

家屋調査で仮設工事の難度を見る

よって、固定資産税の家屋調査で調査員は、家屋が建つ土地の状況を確認し、足場を組むなどの仮設工事の難度を見ます。

固定資産税の家屋調査で調査員は仮設工事の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
土地への車両の近づきやすさ 困難であれば固定資産税が高くなる
敷地内の駐車スペースの有無 なければ固定資産税が高くなる
土地の傾斜具合 急であれば足場を組むための難度が高いと見なされ固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

その他工事

固定資産税の家屋調査で調査員は、これまでにご紹介した11の箇所のいずれにも該当しない「その他の工事の有無」を見ます。

具体的には、バルコニーやロフト、小屋裏収納、床の間、階段、樋、点検口、床下収納庫などの有無であり、それらがあれば固定資産税は高くなります。

固定資産税の家屋調査で調査員はその他の工事の何を見る?

どこまで見る? 固定資産税はどうなる?
バルコニーやロフト、小屋収納、床の間、点検口、床下収納庫などの有無 あれば固定資産税が高くなる

▲ 目次に戻る

3. 家屋調査は、結局は建築費が見られている

固定資産税の家屋調査では、まずは前提として建床面積と延床面積、階数が見られます。

そして、屋根、基礎、外壁仕上げ、柱と壁体、内壁仕上げ、天井仕上げ、床、建具、建築設備、仮設工事、その他工事の全11箇所が見られますが、調査員はそれらをチェックしつつ「再建築費」を計算します。

再建築費とは、その家屋と同一の家屋を同一の場所に新築するために必要となる資材費と労務費、建築会社が得る利益などの合計です。

難解ですが、いわゆる「建築費」が再建築費であるとお考えください。

つまり、固定資産税の家屋調査では、結局は建築費が見られているのです。

固定資産税の家屋調査は建築費が見られる

市町村は家屋の所有者に固定資産税を課しますが、その税額は、家屋調査によって判明した再建築費(建築費)をベースとして算定した「適正な時価」をもとに計算されます。

以下が家屋の固定資産税の計算式です。

家屋の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(市町村によって異なるものの主に1.4%)=固定資産税

式に含まれる課税標準額とは、なにかしらの税金が課される状況において税率を掛け算するもととなる額であり、課される税金によって意味が違うことがあれば同じこともあります。

家屋の固定資産税の計算式に含まれる課税標準額は、その家屋の「適正な時価」です。

先述のように、その家屋の「適正な時価」は家屋調査によって判明した再建築費をベースとして計算します。

家屋の固定資産税を計算する式を図解でわかりやすく解説すると、以下のとおりです。

家屋の固定資産税の計算式

固定資産税の家屋調査で調査員が何を見るか気になる方がいらっしゃいましたら、固定資産税を計算する際の課税標準額を決定するために、再建築費(建築費)を見ているとお考えください。

▲ 目次に戻る

まとめ - 新築のマンションには家屋調査がない

木造住宅の家屋調査で調査員がどこまで見るか、何を見るかご紹介しました。

木造住宅の家屋調査で調査員は、まずは建床面積と延床面積、階数を見ます。

そして、屋根、基礎、外壁、柱と壁体、内壁、天井、床、建具、設備、仮設工事のしやすさ、その他の工事の有無の全11箇所を見ます。

調査員はそれらをチェックしつつ「再建築費」を計算し、再建築費をベースとして算定した「適正な時価」が課税標準額となり、課税標準額に税率を掛け算しつつ固定資産税が計算されます。

家屋調査はどこまで見るか、調査員が何を見るかお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

ちなみに、一部例外を除き、新築のマンションには家屋調査がありません。

新築のマンションが完成すると市町村は建築業者から設計図書を取り寄せ、設計図書から一棟全体の再建築費を計算します。

一棟全体の再建築費が計算されれば、その額が各戸の所有者に割り振られることとなります。

各戸の所有者に割り振られた再建築費は、各戸の固定資産税を計算する際の課税標準額(適正な時価)を計算する際のベースとなります。

ご紹介した内容が皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2023年11月
記事公開日:2021年10月

▲ 目次に戻る

こちらの記事もオススメです