固定資産税評価額と実勢価格の違いはどれくらい?

固定資産税評価額と実勢価格の違いはどれくらい?

不動産の固定資産税は、固定資産税評価額を基に計算されます。

そして、土地の固定資産税評価額は実勢価格の7割程度、新築の固定資産税評価額は建築費の6割程度などといわれますが、乖離することも珍しくありません。

土地と建物の固定資産税評価額と実勢価格の違いをご紹介しましょう。

目次

1. 土地の固定資産税評価額は実勢価格の7割程度

土地の固定資産税評価額は、実勢価格の7割程度と考えることができます。

固定資産税評価額が700万円の土地であれば、実勢価格は1,000万円程度といった具合です。

その根拠は、市町村が土地の固定資産税評価額を算定する方法にあります。

市町村が土地の固定資産税評価額を算定する際は、その土地の最寄りの標準地の公示地価、または基準地の基準地価を参考に、その7割程度と評価します。

公示地価とは、毎年3月ごろに国土交通省が公示する、日本全国各地に点在する約2万6千ヵ所の土地の1平方メートルあたりの正常な価格であり、約2万6千ヵ所の地点を標準地と呼びます。

基準地価とは、毎年9月ごろに各都道府県が公表する、日本全国各地に点在する約2万1千ヵ所の土地の1平方メートルあたりの通常価格であり、約2万1千ヵ所の地点を基準地と呼びます。

標準地の公示地価と基準地の基準地価は、その周辺の土地が売買される際の価格を参考に設定されるため、実勢価格と考えることが可能です。

公示地価と基準地価は実勢価格と考えることができる

そして、土地の固定資産税評価額は、その土地の最寄りの標準地の公示地価、または基準地の基準地価を参考に、その7割程度と計算しつつ算定されます。

たとえば、最寄りの標準地の公示地価が10万円である、100平方メートルの土地があったとしましょう。

その場合は「7万円×100平方メートル=700万円」などと計算し、その土地の固定資産税評価額は700万円程度となります。

このように土地の固定資産税評価額は、周辺の土地が売買される際の価格、すなわち実勢価格である公示地価や基準地価を参考に、その7割程度と算定されます。

よって、土地の固定資産税評価額は、実勢価格の7割程度と考えることが可能です。

ただし、公示地価と基準地価には、売り急ぎや買い進みなどの事情が加味されていないため留意してください。

土地の価格は、売り主が売り急ぐ場合は相場より安く、買い主が買い急ぐ場合は相場より高く売買される傾向がありますが、公示地価と基準地価にはそれらの事情が加味されていません。

公示地価とは標準地の1平方メートルあたりの正常な価格であり、正常な価格とは、売り主と買い主の特別な事情が反映されていない価格です。

また、基準地価とは基準地の1平方メートルあたりの通常価格ですが、通常価格も正常な価格と同じく、売り主と買い主の事情が反映されていない価格となっています。

よって、土地の固定資産税評価額は実勢価格の7割程度であると考えることができるものの、売り急ぎや買い進みなどの特別な事情がある状況において売買される際は、固定資産税評価額と実勢価格が大きく乖離することがあります。

なお、土地の固定資産税評価額が公示地価の7割であることの根拠は、総務省が公開する資料「固定資産税制度について」の11ページに記されている「宅地については、地価公示価格等の7割を目途に評価」という箇所にて確認することが可能です。

総務省「固定資産税制度について」 土地の固定資産税評価額と実勢価格の7割であることの根拠

出典:総務省

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2. 建物の固定資産税評価額と実勢価格の違い

建物の固定資産税評価額と実勢価格の違いは、その建物が新築である場合と、中古住宅である場合によって大きく異なります。

新築と中古住宅の固定資産税評価額と実勢価格の違いは、以下のとおりです。

2-1. 新築の固定資産税評価額は建築費の6割程度など

残念ながら、新築の固定資産税評価額と実勢価格の違いを示した根拠のあるデータは存在しません。

とはいうものの、新築の固定資産税評価額は、建築費の6割程度などといわれます。

この「建築費」という言葉が曖昧であり、何を指すのか具体的な定義がありませんが、一般的に建築費とは、その新築を建てるために必要となった材料費と労務費、建築会社が得る利益の合計などを指します。

よって、建築費が2,000万円の新築であれば、その6割である1,200万円程度が固定資産税評価額になると考えることができます。

新築の固定資産税評価額は建築費の6割

なお、建築費は販売価格、すなわち実勢価格と必ず一致するとは限らないため注意してください。

たとえば、不動産業者が販売する建売の多くは、不動産業者が建築会社に新築を依頼し、完成した建物を買い取りつつ販売しています。

これに該当する建売の販売価格には、建築会社が得る利益に加え、不動産業者が得る利益も上乗せされています。

そのため、建築費と販売価格が乖離しています。

一方、工務店などに直接施工を依頼した注文住宅などの販売価格は、その新築を建てるために必要となった材料費と労務費、建築会社が得る利益などの合計であることが多く、建築費と販売価格が概ね一致します。

これに該当する新築は、販売価格、すなわち実勢価格の6割が固定資産税評価額であると考えることが可能です。

このように新築は建築費と販売価格が一致すると限らないため、固定資産税評価額と実勢価格の明確な違いを断言できません。

しかし、新築の固定資産税評価額は、建築費の6割程度になるといわれるのが通例です。

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2-2. 中古住宅の固定資産税評価額は築年数によって異なる

中古住宅の建物部分の固定資産税評価額を実勢価格から鑑みるのは困難ですが、販売価格が高く、築年数が新しい物件ほど固定資産税評価額が高くなる傾向があります。

中古住宅の建物部分の固定資産税評価額は、その中古住宅を現時点で同一の場所に新築するために必要となる材料費と労務費、建築会社が得る利益などの合計から、築年数が経過することにより目減りした価値を差し引いた額です。

中古住宅の固定資産税評価額のイメージ

販売価格が高い中古住宅は、新築時の建築費が高額であり、築年数が新しいのが通例です。

よって、販売価格が高い中古住宅は、その中古住宅を現時点で同一の場所に新築するために必要となる材料費と労務費、建築会社が得る利益の合計が高くなり、築年数が経過することにより目減りした価値が小さくなる傾向があります。

このため、販売価格が高い中古住宅は、固定資産税評価額が高くなりがちです。

具体的な固定資産税評価額は物件によって異なりますが、建物部分の販売価格が1,500万円であり築10年の中古住宅であれば、その固定資産税評価額は700万円から1,000万円などといったところでしょうか。

これに対して、建物部分の販売価格が500万円であり築30年の中古住宅であれば、建物部分の固定資産税評価額は200万円から250万円程度などと考えられます。

なお、建物部分の固定資産税評価額は、築年数が経過しても0円になることはないため留意してください。

建物部分の固定資産税評価額は、木造であれば15年から35年をかけて、マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造であれば60年をかけて新築時の固定資産税評価額の20%まで下がり、それ以降は下がりません。

つまり、住宅などの建物を所有する限り、市町村から永遠に固定資産税が課せられるというわけです。

木造住宅の固定資産税評価額が下がる年数は、総務省の告示「固定資産評価基準」の「第2章 家屋」の78ページに記されている「別表第9 木造家屋経年減点補正率基準評」にて確認できます。

マンションなどの鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の固定資産税評価額が下がる年数は、同じく総務省の告示「固定資産評価基準」の「第2章 家屋」の251ページに記されている「別表第13 非木造家屋経年減点補正率基準評」の「2 住宅、アパート用建物」にて確認することが可能です。

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まとめ - 不動産の売却価格は不動産業者にご相談を

固定資産税評価額と実勢価格の違いをご紹介しました。

土地の固定資産税評価額は、総務省が公開する資料などから実勢価格の7割程度と考えることができます。

新築の建物の固定資産税評価額は建築費の6割程度といわれますが、確実な根拠が示されたデータは存在しません。

中古住宅の建物の固定資産税評価額は、販売価格が高額であり築年数が新しいほど高く、販売価格が安く築年数が古いほど低くなる傾向があります。

固定資産税評価額と実勢価格の違いをお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、土地や建物の売却を希望しつつ固定資産税評価額から売却価格を決めようとお考えであれば、不動産業者に相談するのがおすすめです。

固定資産税評価額は、土地や建物の所有者に固定資産税を課すために市町村が評価したその物件の適正な時価であり、実勢価格と乖離していることがあります。

よって、土地や建物の売却を希望するものの売り値を決めかねる場合は不動産業者と相談し、売り出し価格をお決めになるのが良いでしょう。

ただし、売り出し価格は、複数の不動産業者と相談しつつ決めるように心掛けてください。

不動産業者には方針があり、多数の物件を安く仲介する方針の業者が出す査定額は低く、少数の物件を丁寧に仲介する方針の業者が出す査定額は高くなる傾向があります。

そのため、不動産の売却を希望しつつも売り出し価格を決めかねる場合は、複数の不動産業者と相談しつつ売り値を決めるのが理想です。

不動産は安ければ安いほど早く売れますが、あまりに安く売ると損をすることがあります。

ご紹介した内容が、固定資産税評価額と実勢価格の違いをお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2021年11月

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