空き家を放っておくと固定資産税はどうなる?

空き家を放っておくと固定資産税はどうなる?

ネットで検索すると空き家の固定資産税が6倍になるとの記事を見かけますが、本当でしょうか。

空き家を所有しつつ固定資産税が心配な方へ向けて、法律と国土交通省の資料をもとにその真相をご紹介しましょう。

目次

1. 余程ボロボロではない限り固定資産税は上がらない

空き家を放置すると固定資産税が6倍になるといわれるのは、地方税法の第三百四十九条の三の二により、空家等対策の推進に関する特別措置法によって特定空き家とみなされた空き家が建つ土地には、住宅用地の特例が適用されないと規定されていることが理由です。

住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地にかかる固定資産税が6分の1などに減額される特例であり、住宅が存在する土地には住宅用地の特例が適用されつつ固定資産税が更地の6分の1などに減額されています。

空き家は特定空き家とみなされることにより固定資産税が高くなる

そこで気になるのが特定空き家とみなされる空き家の基準ですが、以下などの条件に該当する空き家、または将来的に以下などの条件に該当すると予想される空き家は特定空き家とみなされる可能性があります。

特定空き家とみなされる可能性がある空き家

著しく傾く空き家
基礎が沈下したり柱が傾くなどして建物全体が傾斜しつつ倒壊する虞がある空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
基礎や土台が破損、または腐朽する空き家
基礎が破損しつつ土台が腐朽するなどして著しく耐震性が劣る空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
屋根材が飛散し、外壁が剥がれ落ちる空き家
屋根材が脱落しつつ飛散したり外壁が剥がれ落ちる空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
建物や設備が著しく老朽化した空き家
建物が老朽化して吹き付けたアスベストが飛散しつつ周囲住民の健康を脅かす虞がある空き家や、破損した汲み取り式トイレの便槽や浄化槽が露出して悪臭を放つ空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
ごみの不法投棄や放置が目に余る空き家
ごみの不法投棄や放置があり、不衛生な状態で害虫や害獣が発生しつつ周辺住民の日常生活に支障をきたす空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
外壁に大きな落書きがある空き家
外壁に大きな落書きがあるなどして一帯の景観を損なう空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
建物全面を草木が被う空き家
草木が被いつつ建物が見えない空き家は、一帯の景観を損なうなどの理由で特定空き家とみなされる可能性があります。
立木が道路や隣地にはみ出す空き家
敷地内の立木が道路や隣地にはみ出し、歩行者の通行を妨げたり隣家に迷惑を及ぼす空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。
施錠されず防犯性が劣る空き家
門や玄関などが施錠されず窓ガラスが割れるなどして防犯性が著しく劣り、不法侵入されるなどして犯罪が起きる可能性がある空き家は、特定空き家とみなされる可能性があります。

以上に該当する空き家、または将来的に上記のいずれかに該当すると予想される空き家は特定空き家とみなされる可能性があります。

とはいうものの、所有する空き家が特定空き家とみなされたとしても、直ちに住宅用地の特例の適用が外れ固定資産税が6倍になるわけではありません。

所有する空き家が特定空き家とみなされれば、市町村長から必要な措置を取るように助言や指導を受けます。

この助言、もしくは指導を受けた時点で必要な措置を取れば、住宅用地の特例の適用が外れつつ固定資産税が6倍になることはありません。

その根拠は、地方税法の第三百四十九条の三の二と、空家等対策の推進に関する特別措置法の第十四条にて確認することが可能です。

地方税法の第三百四十九条の三の二を簡単にご紹介すると以下のとおりです。

地方税法 第三百四十九条の三の二 (住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
住宅用地の固定資産税は更地の6分の1などとする。ただし、空家等対策の推進に関する特別措置法の第十四条の規定により所有者に勧告がされた特定空き家が存在する土地は除く。

空家等対策の推進に関する特別措置法の第十四条をわかりやすく解説すると以下のようになります。

空家等対策の推進に関する特別措置法の第十四条 (特定空家等に対する措置)
市町村長は特定空き家の所有者に対し、必要な措置を取るように助言や指導ができる。助言や指導をした場合において空き家の状態が改善されない場合は、所有者に対して期限を定めつつ必要な措置を取るように勧告できる。

このように特定空き家を所有するからといって、直ちに住宅用地の特例の適用が外れつつ固定資産税が6倍になることはありません。

特定空き家とみなされる空き家を所有し、市町村長から指導を受けつつも改善せず、勧告を受けた場合において住宅用地の特例の適用が外れ固定資産税が上がることとなります。

なお、地方税法とは固定資産税などの税金に関すること定めた法律であり、空家等対策の推進に関する特別措置法とは空き家に関することを規定した法律です。

また、特定空き家とみなされる空き家の基準は、国土交通省が公開する資料「特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」の2ページと3ページにて確認できます。

特定空き家の基準 特定空き家の基準

出典:国土交通省「特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針

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2. 特定空き家でも固定資産税は6倍にはならない

所有する空き家が特定空き家とみなされれば、土地にかかる固定資産税が6分の1などに減額される住宅用地の特例の適用が外れる可能性があります。

よって、空き家を所有すると固定資産税が6倍になると考えがちですが、負担調整措置があることにより直ちに6倍になることはありません。

負担調整措置とは、土地にかかる固定資産税が短期間に上昇し、納税者の負担が急激に大きくなることを防ぐための措置です。

ここから、負担調整措置があることにより、所有する空き家が特定空き家とみなされつつ住宅用地の特例の適用が外れても固定資産税が6倍になることはない理由を解説しましょう。

その前に、住宅用地の特例が適用される空き家が建つ土地にかかる固定資産税を計算する方法と、住宅用地の特例の適用が外れた特定空き家が建つ土地にかかる固定資産税を計算する方法の違いをご説明します。

住宅用地の特例が適用される空き家が建つ土地にかかる固定資産税は、毎年以下の式で計算しつつ税額が決定されます。

住宅用地の特例が適用される空き家が建つ土地にかかる固定資産税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額×6分の1など)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

上記の式に含まれる固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するために市町村が評価したその土地の価格です。

そして、住宅用地の特例が適用されることにより、「その土地の固定資産税評価額×6分の1など」が課税標準額となっています。

一方、住宅用地の特例の適用が外れた特定空き家が建つ土地にかかる固定資産税の計算式は以下のとおりです。

住宅用地の特例の適用が外れた特定空き家が建つ土地にかかる固定資産税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税

住宅用地の特例の適用が外れた特定空き家が建つ土地にかかる固定資産税は上記の式で計算し、住宅用地の特例が適用される空き家が建つ土地にかかる固定資産税の計算式に含まれていた「×6分の1など」が含まれません。

「×6分の1など」が含まれなければ課税標準額は6倍となり、課税標準額に税率を乗算しつつ税額が決定される固定資産税も6倍となります。

これが、空き家が建つ土地にかかる固定資産税が6倍になるといわれる理由です。

空き家の固定資産税が6倍になる理由

しかし、土地にかかる固定資産税には負担調整措置があるため、6倍になることはありません。

固定資産税の負担調整措置とは、土地にかかる固定資産税が前年度より急激に上昇することを防ぐ措置であり、負担水準を基に適用されます。

負担水準とは、その土地の今年度の課税標準額から見た前年度の課税標準額の割合であり、以下の式で計算します。

負担水準の計算式
その土地の前年度の課税標準額÷その土地の今年度の課税標準額×100=負担水準

たとえば、空き家が建つものの住宅用地の特例が適用され、前年度の課税標準額が100万円の土地があったとしましょう。

その土地は、その土地に存在する空き家が特定空き家とみなされ、住宅用地の特例の適用が外れつつ今年度の課税標準額が6倍の600万円に上がりました。

この場合は100万円÷600万円×100=約17%と計算し、負担水準は約17%です。

このように負担水準は計算しますが、負担水準が70%を超える場合は、負担調整措置が適用されることにより今年度の課税標準額は今年度の固定資産税評価額の70%となります。

また、負担水準が60%以上70%以下であれば、今年度の課税標準額は前年度の課税標準額に据え置かれます。

くわえて、負担水準が60%未満の場合は、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を加えた額が今年度の課税標準額となります。

つまり、所有する空き家が特定空き家とみなされつつ住宅用地の特例の適用が外れたとしても、負担調整措置があることにより固定資産税が直ちに6倍になることはないというわけです。

特定空き家には負担調整措置が適用されるため固定資産税が6倍にならない

たとえば、固定資産税評価額が1,200万円、住宅用地の特例の適用が外れる前の課税標準額が200万円、固定資産税が28,000円であった空き家が建つ土地があるとしましょう。

その土地から住宅用地の特例の適用が外れつつ課税標準額が6倍の1,200万円となった場合は「200万円÷1,200万円×100=約17%」と計算し、負担水準は17%となります。

負担水準が約17%であれば、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を加えた額が今年度の課税標準額です。

前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を加えた額は「200万円+(1,200万円×5%)=260万円」と計算し、その1.4%の36,400円が住宅用地の特例の適用が外れた後の固定資産税となり、決して6倍ではありません。

ただし、この負担調整は、私がこの記事を作成する2021年7月の時点において令和5年度までの措置に限られるため注意してください。

それ以降は、負担調整措置の内容が変わる可能性があります。

令和5年度までの負担調整に関する詳細は「東京都主税局|商業地等の固定資産税・都市計画税の負担調整措置が継続されます」や、「大阪市|税負担の調整措置」の「商業地等(店舗、事務所、工場など住宅以外の家屋の敷地および空地)」にて確認することが可能です。

なお、地方税法において、住宅用地の特例が適用される空き家が建つ土地は「住宅用地」であり、住宅用地の特例の適用が外れた特定空き家が建つ土地は「商業地等」と定義されます。

固定資産税の負担調整措置は住宅用地と商業地等によって調整具合が異なり、住宅用地の特例の適用が外れた特定空き家が建つ土地には商業地等の負担調整措置が適用されるため留意してください。

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まとめ - 空き家は定期的に見回る

空き家を放っておくと固定資産税がどうなるかご紹介しました。

空き家を長年放置すると特定空き家とみなされる場合があり、所有する空き家が特定空き家とみなされれば、市町村長から適切に管理するように助言や指導を受けます。

助言や指導を受けつつも管理を怠れば勧告を受ける場合があり、勧告を受ければ土地にかかる固定資産税が6分の1などに減額される住宅用地の特例の適用が外れる可能性があります。

とはいうものの、土地にかかる固定資産税には負担調整措置が設けられているため、住宅用地の特例の適用が外れても6倍になることはありません。

また、全ての空き家が特定空き家とみなされるわけではありません。

住宅地に存在し、倒壊する虞があるなどして周辺住民の生活環境を脅かす、または将来的に脅かす可能性があると予見される空き家のみが特定空き家とみなされます。

よって、空き家を所有しつつ固定資産税が上がるのではと心配される場合は、定期的に見回りつつ除草や清掃をする、見回りの際は窓を開けつつ通気して室内の湿気を飛して傷みが出ないように注意する、傷みがある箇所は早めに修繕するなどして適切に管理してください。

そうすれば、所有する空き家が特定空き家とみなされつつ固定資産税が上がるようなことはありません。

なお、住宅用地の特例は、住宅が建つ土地に適用されます。

そのため、店舗や事務所、工場などの住宅以外の空き家が特定空き家とみなされても住宅用地の特例が外れつつ固定資産税が上がることはないため留意してください。

特定空き家とみなされつつ固定資産税が上がるのは、住宅用地の特例が適用されている住宅が建つ土地のみです。

ご紹介した内容が、所有する空き家の固定資産税に関することを心配される皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2021年8月

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