空き家を放っておくと固定資産税はどうなる?4.2倍になる!

空き家を放っておくと固定資産税はどうなる?

余程ボロボロではない限り心配する必要はありませんが、空き家放置すると特定空家等と見なされ、必要な措置を取らなければ、固定資産税が4.2倍程度まで高くなる可能性があります。

都市計画税も課せられている場合は、都市計画税は2.1倍程度まで、固定資産税と都市計画税を合わせると3.6倍程度まで高くなるかもしれません。

空き家を所有しつつ固定資産税が心配な方へ向けて、法律と国土交通省の資料をもとに詳細をご紹介しましょう。

目次

1. 余程ボロボロではない限り固定資産税は上がらない

冒頭でご紹介したとおり、空き家を放置すると固定資産税が4.2倍程度まで、都市計画税は2.1倍程度まで、固定資産税と都市計画税を合わせると3.6倍程度まで高くなる可能性があります。

ここで注意していただきたいのは、全ての空き家の固定資産税が高くなるわけではないという点です。

倒壊する虞がある空き家などを放置し、市町村から周辺の生活環境に影響を及ぼすと判断されれば、その空き家は「空家等対策の推進に関する特別措置法」に則り、特定空家等と見なされることがあります。

空家等対策の推進に関する特別措置法とは、放置された空き家が火災になるなどして、周辺住民の生活環境に影響を及ぼすことを防ぐために成立された法律です。

所有する空き家が特定空家等と見なされれば、市町村長から適切な措置をとるように指導や助言を受けます。

この指導や助言に従い、適正な措置をとれば、固定資産税が高くなることはありません。

固定資産税が高くなるのは、指導や助言を無視することにより発せられる勧告を受けた後です。

指導や助言を無視すれば、市町村長から必要な措置をとるように勧告を受けます。

そして、勧告を受ければ、翌年は1.3倍、翌々年は1.6倍、3年後は1.9倍などと徐々に固定資産税と都市計画税が高くなり、最後は固定資産税と都市計画税を合わせて3.6倍程度まで税額が高くなります。

空き家を放置すると固定資産税が高くなる可能性がある

とはいうものの、市町村長から指導や助言を受けた時点で必要な措置をとれば勧告を受けることはなく、固定資産税も都市計画税も高くなりません。

また、特定空家等と見なされるのは、ニュースで見かけるような町中に所在する腐朽したボロボロの空き家であり、通常の空き家や、マンションの一室などの空き家が特定空家等と見なされることはないため留意してください。

特定空家等と見なされる空き家の例は、以下のとおりです。

特定空き家と見なされる可能性がある空き家

著しく傾く空き家
基礎が沈下したり柱が傾くなどして建物全体が傾斜しつつ倒壊する虞がある空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
基礎や土台が破損、または腐朽する空き家
基礎が破損しつつ土台が腐朽するなどして著しく耐震性が劣る空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
屋根材が飛散し、外壁が剥がれ落ちる空き家
屋根材が脱落しつつ飛散したり外壁が剥がれ落ちる空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
建物や設備が著しく老朽化した空き家
建物が老朽化して吹き付けたアスベストが飛散しつつ周囲住民の健康を脅かす虞がある空き家や、破損した汲み取り式トイレの便槽や浄化槽が露出して悪臭を放つ空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
ごみの不法投棄や放置が目に余る空き家
ごみの不法投棄や放置があり、不衛生な状態で害虫や害獣が発生しつつ周辺住民の日常生活に支障をきたす空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
外壁に大きな落書きがある空き家
外壁に大きな落書きがあるなどして一帯の景観を損なう空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
建物全面を草木が被う空き家
草木が被いつつ建物が見えない空き家は、一帯の景観を損なうなどの理由で特定空家等と見なされる可能性があります。
立木が道路や隣地にはみ出す空き家
敷地内の立木が道路や隣地にはみ出し、歩行者の通行を妨げたり隣家に迷惑を及ぼす空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。
施錠されず防犯性が劣る空き家
門や玄関などが施錠されず窓ガラスが割れるなどして防犯性が著しく劣り、不法侵入されるなどして犯罪が起きる可能性がある空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。

以上に該当する空き家は、特定空家等と見なされる可能性があります。

特定空家等と見なされる空き家の例は、国土交通省が公開する資料「特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針」の2ページと3ページにてご確認いただけます。

以下が同資料の2ページ目と3ページ目であり、クリックすれば大きな画像が表示されます。

特定空き家の基準 特定空き家の基準

出展:国土交通省

つづいて、指導や助言を無視することにより発せられる勧告により、固定資産税が高くなる具体的な理由をパパっと簡単にご紹介します。

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2. 空き家の固定資産税が高くなる理由

町中に所在し、倒壊しつつ周辺環境に影響を及ぼす虞があるなどの空き家を放置すれば、特定空家等と見なされる可能性があります。

所有する空き家が特定空家等と見なされれば、必要な措置をとるように市町村長から指導や助言を受け、それらを無視すれば勧告が発せられ、固定資産税が4.2倍程度まで徐々に高くなります。

都市計画税も課せられている場合は、都市計画税の上昇率は最高で2.1倍程度であり、固定資産税と都市計画税を合わせると上昇率は最高で3.6倍程度です。

ここで気になるのが、固定資産税や都市計画税が高くなる具体的な理由ですが、勧告を受けることにより住宅用地の特例の適用が外れることにより高くなります。

住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地に掛かる固定資産税と都市計画税が減額される特例であり、空き家が建つ土地を含め、住宅が建つ土地には同特例が適用されています。

土地に掛かる固定資産税と都市計画税は、本来であれば以下のように毎年計算しつつ税額が決定されます。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率(主に1.4%)=固定資産税
土地の都市計画税の計算式
課税標準額×都市計画税の税率(主に0.3%)=都市計画税

式には課税標準額という言葉が含まれますが、課税標準額とは、何かしらの税金が課せられる状況において、税額を計算する基となる額であり、課せられる税金の種類や適用される特例の有無によって意味が異なります。

土地の固定資産税と都市計画税を計算する式に含まれる課税標準額は、原則として、その土地の固定資産税評価額です。

その土地の固定資産税評価額とは、市町村によって評価されたその土地の適正な時価であり、毎年4月ごろにご自宅に届く固定資産税の課税明細書を見れば確認できます。

課税明細書に「価格」や「当年度価格」「評価額」「固定資産評価額」などの名目で記されている額が固定資産税評価額です。

つまり、土地の固定資産税や都市計画税は、原則として、毎年以下のように税額が計算されるというわけです。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×1.4%=固定資産税
土地の都市計画税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×0.3%=都市計画税

しかし、住宅用地の特例が適用されれば、以下のように固定資産税と都市計画税を計算することとなります。

住宅用地の特例適用後の土地の固定資産税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額×6分の1など)×1.4%=固定資産税
住宅用地の特例適用後の土地の都市計画税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額×3分の1など)×0.3%=都市計画税

上記のように住宅用地の特例が適用されれば、課税標準額が「その土地の固定資産税評価額」から「その土地の固定資産税評価額の6分の1など」や「3分の1など」に変わり、課税標準額が低くなります。

課税標準額が低くなれば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算される固定資産税と都市計画税の額も低くなります。

ようするに、空き家が建つ土地を含め、住宅が建つ土地の固定資産税と都市計画税は、住宅用地の特例が適用されることにより本来より安くなっているというわけです。

しかし、所有する空き家が特定空家等と見なされ、市町村長から勧告を受ければ、住宅用地の特例の適用が外れます。

住宅用地の特例の適用が外れれば、課税標準額が元に戻ることとなり、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算される固定資産税と都市計画税が本来の税額に戻ります。

これが、空き家の固定資産税が高くなる理由です。

空き家の固定資産税が高くなる理由

なお、勧告を受けることにより高くなるのは、土地部分に掛かる固定資産税と都市計画税のみであり、空き家である家屋に掛かる税額は以前と変わらないため留意してください。

住宅用地の特例の適用が外れて税額が高くなるのは、空き家が建つ土地部分に掛かる固定資産税と都市計画税のみです。

また、ネットのニュースなどを見ると空き家の固定資産税が6倍になると書かれていることがありますが、負担調整措置があることにより6倍にはなりません。

つづいて、負担調整措置の詳細をパパっと簡単にご紹介します。

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3. 空き家の固定資産税は、6倍にはならない

ネットのニュースなどを見ると空き家の固定資産税が6倍になると書かれていることがありますが、負担調整措置により6倍にはなりません。

固定資産税は最高で4.2倍程度、都市計画税は最高で2.1倍程度、固定資産税と都市計画税を合わせると、最高で3.6倍程度の上昇に留まります。

また、負担調整措置があることにより短期間に税額が高くなることはなく、翌年は1.3倍、翌々年は1.6倍など徐々に高くなります。

空き家の固定資産税が6倍にはならない

ここから、負担調整措置の詳細をパパっと簡単にご紹介しましょう。

負担調整措置とは、土地に掛かる固定資産税や都市計画税が短期間に上昇し、納税者の負担が急激に大きくなることを防ぐ措置です。

土地に掛かる固定資産税と都市計画税は、負担調整措置が適用されることにより、税額を計算する基となる課税標準額が前年度より急激に上昇しないように調整されます。

負担調整措置による課税標準額の調整具合は、負担水準を用いて決定されます。

負担水準とは、その土地の前年度の課税標準額を、その土地の今年度の固定資産税評価額で割り算した数値であり、パーセントで表し、以下の式で計算します。

負担水準の計算式
その土地の前年度の課税標準額÷その土地の今年度の固定資産税評価額×100=負担水準(%)

たとえば、前年度の課税標準額が500万円、今年度の固定資産税評価額が3,000万円である空き家が建つ土地の負担水準は以下のように計算し、約17%です。

負担水準の計算例
500万円(その土地の前年度の課税標準額)÷3,000万円(その土地の今年度の固定資産税評価額)×100=約17%(負担水準)

そして、負担調整措置は、負担水準、住宅用地、商業地等によって課税標準額の調整具合が異なり、住宅用地の特例の適用が外れた空き家が建つ土地は、以下のように今年度の課税標準額が調整されます。

負担水準が70%を超える場合
負担水準が70%を超える場合は、その空き家が建つ土地の今年度の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、今年度の固定資産税評価額の70%となります。
負担水準が60%以上70%以下の場合
負担水準が60%以上70%以下の場合は、その空き家が建つ土地の今年度の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、前年度の課税標準額と同額になります。
負担水準が60%未満の場合
負担水準が60%未満であれば、その空き家が建つ土地の今年度の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を加えた額となります。

この調整具合は商業地等に適用される調整具合であり、住宅用地の特例の適用が外れた空き家が建つ土地は商業地等と見なされ、商業地等の負担調整措置が適用されます

以上が、住宅用地の特例の適用が外れた空き家が建つ土地の課税標準額の調整具合です。

つづいて、負担調整措置を適用しつつ、住宅用地の特例の適用が外れた空き家が建つ土地の固定資産税と都市計画税が何倍まで高くなるか試算します。

なお、負担調整措置や負担水準の詳細は、「東京都主税局:商業地等の負担調整措置」や「大阪市:税負担の調整措置」などにて確認することが可能です。

また、特定空家等と見なされつつ勧告を受けた空き家が建つ土地が商業地等と見なされることは、地方税法の第三百四十九条の三の二と、地方税法の附則の第十七条の第四号にて確認することが可能です。

地方税法の第三百四十九条の三の二をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のようになります。

地方税法 第三百四十九条の三の二(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
住宅が建つ土地は住宅用地と呼ぶ。ただし、特定空家等と見なされ勧告を受けた空き家が建つ土地は除く。

地方税法の附則の第十七条の第四号をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

地方税法附則 第十七条 第四号(土地に対して課する令和三年度から令和五年度までの各年度分の固定資産税及び都市計画税の特例に関する用語の意義)
商業地等とは、住宅用地以外の宅地をいう

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4. 空き家が建つ土地の固定資産税と都市計画税を試算

ここから、負担調整措置を適用しつつ、住宅用地の特例の適用が外れた空き家が建つ土地の固定資産税と都市計画税が何倍まで高くなるかを試算します。

試算する土地を「土地P」と名付け、土地Pは前年度までは住宅用地の特例が適用されていたものの、そこに建つ空き家が特定空家等と見なされつつ勧告を受け、今年度より住宅用地の特例の適用が外れました。

空き家の固定資産税はどれくらい上がる?

土地Pの詳細は以下のように仮定し、前年度の固定資産税は11,600円、都市計画税は5,000円、固定資産税と都市計画税を合計すると16,600円です。

土地Pの詳細

  • 前年度の固定資産税評価額:500万円
  • 前年度の固定資産税の課税標準額:住宅用地の特例が適用されることにより固定資産税評価額である500万円の約6分の1の83万円
  • 前年度の固定資産税額:前年度の固定資産税の課税標準額である83万円の1.4%の11,600円
  • 前年度の都市計画税の課税標準額:住宅用地の特例が適用されることにより固定資産税評価額である500万円の約3分の1の167万円
  • 前年度の都市計画税額:前年度の都市計画税の課税標準額である167万円の0.3%の5,000円
  • 前年度の固定資産税と都市計画税の合計:16,600円

なお、土地の固定資産税評価額は、一部例外を除き、短期間に大きく上下動することはありません。

よって、空き家が建つ土地Pは、固定資産税評価額が500万円であると仮定し続けながら固定資産税と都市計画税を試算します。

それでは、空き家が建つ土地Pの固定資産税と都市計画税の試算を開始しましょう。

4-1. 今年度の固定資産税は1.3倍、都市計画税は1.1倍、合わせると1.3倍

前年度までは住宅用地の特例が適用され、今年度から適用が外れた空き家が建つ土地「土地P」の今年度の固定資産税と都市計画税を試算します。

まずは、今年度の固定資産税と都市計画税の負担水準の計算です。

今年度の負担水準は以下のように計算し、固定資産税の負担水準は約17%、都市計画税の負担水準は約33%であり、どちらも60%未満です。

  • 今年度の固定資産税の負担水準:前年度の固定資産税の課税標準額である83万円÷今年度の固定資産税評価額の500万円×100=約17%
  • 今年度の都市計画税の負担水準:前年度の都市計画税の課税標準額である167万円÷今年度の固定資産税評価額の500万円×100=約33%

負担水準が60%未満であれば、今年度の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を加えた額となります。

よって、以下のように計算し、空き家が建つ土地「土地P」の今年度の固定資産税は15,100円、都市計画税は5,700円、固定資産税と都市計画税を合計すると20,800円です。

空き家が建つ土地Pの今年度の固定資産税と都市計画税

  • 今年度の固定資産税の課税標準額:前年度の固定資産税の課税標準額である83万円+今年度の固定資産税評価額である500万円の5%の25万円=108万円
  • 今年度の固定資産税額:今年度の固定資産税の課税標準額である108万円の1.4%の15,100円
  • 今年度の都市計画税の課税標準額:前年度の都市計画税の課税標準額である167万円+今年度の固定資産税評価額である500万円の5%の25万円=192万円
  • 今年度の都市計画税:今年度の都市計画税の課税標準額である192万円の0.3%である5,700円
  • 今年度の固定資産税と都市計画税の合計:20,800円

前年度の固定資産税は11,600円のため、15,100円÷11,600円=1.3と計算し、空き家が建つ土地Pの今年度の固定資産税は前年度の1.3倍です。

前年度の都市計画税は5,000円のため、5,700円÷5,000円=1.1と計算し、空き家が建つ土地Pの今年度の都市計画税は前年度の1.1倍になりました。

前年度の固定資産税と都市計画税の合計は16,600円のため、20,800円÷16,600円=1.3と計算し、固定資産税と都市計画税を合わせると前年度の1.3倍です。

翌年度の空き家の固定資産税

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4-2. 翌年度の固定資産税は1.6倍、都市計画税は1.3倍、合わせると1.5倍

つぎに、空き家が建つ土地Pの翌年度の固定資産税と都市計画税を試算します。

まずは、翌年度の負担水準の計算です。

翌年度の負担水準は以下のように計算し、固定資産税の負担水準は約22%、都市計画税の負担水準は約38%であり、再びどちらも60%未満です。

負担水準は、毎年少しずつ上昇します。

翌年度の負担水準の計算式

  • 翌年度の固定資産税の負担水準:今年度の固定資産税の課税標準額である108万円÷翌年度の固定資産税評価額である500万円×100=約22%
  • 翌年度の都市計画税の負担水準:今年度の都市計画税の課税標準額である192万円÷翌年度の固定資産税評価額である500万円×100=約38%

負担水準が60%未満であれば、翌年度の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、今年度の課税標準額に翌年度の固定資産税評価額の5%を加えた額となります。

よって、以下のように計算し、空き家が建つ土地「土地P」の翌年度の固定資産税は18,600円、都市計画税は6,500円、固定資産税と都市計画税を合計すると25,100円です。

空き家が建つ土地Pの翌年度の固定資産税と都市計画税

  • 翌年度の固定資産税の課税標準額:今年度の固定資産税の課税標準額である108万円+翌年度の固定資産税評価額である500万円の5%の25万円=133万円
  • 翌年度の固定資産税額:翌年度の固定資産税の課税標準額である133万円の1.4%である18,600円
  • 翌年度の都市計画税の課税標準額:今年度の都市計画税の課税標準額である192万円+翌年度の固定資産税評価額である500万円の5%の25万円=217万円
  • 翌年度の都市計画税:翌年度の都市計画税の課税標準額である217万円の0.3%である6,500円
  • 翌年度の固定資産税と都市計画税の合計:25,100円

前年度の固定資産税は11,600円のため、18,600円÷11,600円=1.6と計算し、空き家が建つ土地Pの翌年度の固定資産税は前年度の1.6倍です。

前年度の都市計画税は5,000円のため、6,500円÷5,000円=1.3と計算し、空き家が建つ土地Pの翌年度の都市計画税は前年度の1.3倍になりました。

前年度の固定資産税と都市計画税の合計は16,600円のため、25,100円÷16,600円=1.5と計算し、固定資産税と都市計画税を合わせると前年度の1.5倍です。

翌年度の空き家の固定資産税

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4-3. 翌々年度の固定資産税は1.9倍、都市計画税は1.4倍、合わせると1.8倍

さらに、空き家が建つ土地Pの翌々年度の固定資産税と都市計画税を試算します。

まずは、翌々年度の負担水準の計算です。

翌々年度の負担水準は以下のように計算し、固定資産税の負担水準は約27%、都市計画税の負担水準は約43%であり、引き続きどちらも60%未満です。

負担水準は毎年少しずつ上昇し、最後は70%超となります。

翌々年度の負担水準の計算式

  • 翌々年度の固定資産税の負担水準:翌年度の固定資産税の課税標準額である133万円÷翌々年度の固定資産税評価額である500万円×100=約27%
  • 翌々年度の都市計画税の負担水準:翌年度の都市計画税の課税標準額である217万円÷翌々年度の固定資産税評価額である500万円×100=約43%

負担水準が60%未満であれば、翌々年度の固定資産税と都市計画税の課税標準額は、翌年度の課税標準額に翌々年度の固定資産税評価額の5%を加えた額となります。

よって、以下のように計算し、空き家が建つ土地「土地P」の翌々年度の固定資産税は22,100円、都市計画税は7,300円、固定資産税と都市計画税を合計すると29,400円です。

空き家が建つ土地Pの翌々年度の固定資産税と都市計画税

  • 翌々年度の固定資産税の課税標準額:翌年度の固定資産税の課税標準額である133万円+翌々年度の固定資産税評価額である500万円の5%の25万円=158万円
  • 翌々年度の固定資産税額:翌々年度の固定資産税の課税標準額である158万円の1.4%の22,100円
  • 翌々年度の都市計画税の課税標準額:翌年度の都市計画税の課税標準額である217万円+翌々年度の固定資産税評価額である500万円の5%の25万円=242万円
  • 翌々年度の都市計画税:翌々年度の都市計画税の課税標準額である242万円の0.3%の7,300円
  • 翌々年度の固定資産税と都市計画税の合計:29,400円

前年度の固定資産税は11,600円のため、22,100円÷11,600円=1.9と計算し、空き家が建つ土地Pの翌々年度の固定資産税は前年度の1.9倍です。

前年度の都市計画税は5,000円のため、7,300円÷5,000円=1.5と計算し、空き家が建つ土地Pの翌々年度の都市計画税は前年度の1.5倍となりました。

前年度の固定資産税と都市計画税の合計は16,600円のため、29,400円÷16,600円=1.7と計算し、固定資産税と都市計画税を合わせると前年度の1.8倍です。

翌々年度の空き家の固定資産税

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4-4. 将来の固定資産税は4.2倍、都市計画税は2.1倍、合わせると3.6倍

最後に、固定資産税と都市計画税の負担水準が70%を超えた、空き家が建つ土地「土地P」の将来の固定資産税と都市計画税を試算します。

負担水準は毎年徐々に上昇し、70%を超えれば負担調整措置による課税標準額の調整具合が変わりません。

負担水準が70%を超えれば、土地Pの固定資産税と都市計画税の課税標準額は、その年の固定資産税評価額の70%となります。

よって、以下のように計算し、空き家が建つ土地「土地P」の将来の固定資産税は49,000円、都市計画税は10,500円、固定資産税と都市計画税を合計すると59,500円です。

空き家が建つ土地Pの将来の固定資産税と都市計画税

  • 将来の固定資産税の課税標準額:将来の固定資産税評価額である500万円の70%の350万円
  • 将来の固定資産税額:将来の固定資産税の課税標準額である350万円の1.4%の49,000円
  • 将来の都市計画税の課税標準額:将来の固定資産税評価額である500万円の70%の350万円
  • 将来の都市計画税:将来の固定資産税評価額である500万円の70%である350万円の0.3%の10,500円
  • 将来の固定資産税と都市計画税の合計:59,500円

前年度の固定資産税は11,600円のため、49,000円÷11,600円=4.2と計算し、空き家が建つ土地Pの将来の固定資産税は前年度の4.2倍であり、これ以上は上がりません。

前年度の都市計画税は5,000円のため、10,500円÷5,000円=2.1と計算し、空き家が建つ土地Pの将来の都市計画税は前年度の2.1倍であり、これが上限です。

前年度の固定資産税と都市計画税の合計は16,600円のため、59,500円÷16,600円=3.6と計算し、固定資産税と都市計画税を合わせると前年度の3.6倍であり、固定資産税評価額が変わらない限り、これより税額が上がることはありません。

空き家の固定資産税と都市計画税は3.6倍になる

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まとめ - 空き家は定期的に見回り、適切に管理する

空き家を放っておくと固定資産税がどうなるかご紹介しました。

空き家を長年放置すると特定空家等と見なされることがあり、所有する空き家が特定空家等と見なされれば、市町村長から適切な措置をとるように指導や助言を受けます。

指導や助言を受けつつも管理を怠れば勧告が発せられることがあり、勧告を受ければ、空き家が建つ土地から住宅用地の特例の適用が外れ、土地部分に掛かる固定資産税と都市計画税のみが高くなります。

高くなるのは、固定資産税は4.2倍程度、都市計画税は2.1倍程度、固定資産税と都市計画税を合わせると3.6倍程度です。

ネットのニュースなどでは、住宅用地の特例の適用が外れれば、固定資産税が6倍になると書かれていることがありますが、負担調整措置により6倍にはなりません。

加えて、負担調整措置があることにより、住宅用地の特例の適用が外れても急激に固定資産税と都市計画税が高くなることはなく、徐々に税額が上がることとなります。

空き家を放置すると固定資産税がどうなるかご心配の方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、この記事でもご紹介しましたが、全ての空き家が特定空家等と見なされるわけではありません。

住宅地に存在し、雑草が伸び放題になっている、腐朽しつつ景観を損なっている、敷地内にゴミが散乱しているなどして周辺住民の生活環境に影響を与える、または将来影響を与えると予見される空き家のみが特定空家等と見なされます。

よって、空き家を所有しつつ固定資産税が上がるのではと心配される場合は、定期的に見回りつつ除草するなどして適切に管理をするのが理想です。

見回りの際に天気が良ければ、窓を開けつつ換気し、空き家内の湿気を飛ばしてください。

家屋にとって湿気は大敵であり、傷みやすい家屋は湿気が抜けにくいのが特徴です。

ご紹介した内容が、所有する空き家の固定資産税に関することを心配される皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

最終更新日:2022年3月
記事公開日:2021年8月

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