空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?

空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?

空き家の固定資産税が6倍になるといわれ、空き家の所有者の方はいつから6倍になるか心配になりますが、全ての空き家の固定資産税が6倍になるわけではありません。

また、固定資産税には負担調整措置があるため直ちに6倍にはならず、徐々に6倍に近づきます。

国土交通省が公開する資料を参考に、いつから所有する空き家の固定資産税が6倍になるか解説しましょう。

目次

1. 空き家の固定資産税が6倍になる流れ

まずは、所有する空き家の固定資産税が6倍になる流れをご説明しましょう。

所有する空き家の固定資産税が6倍になるのは、その空き家が特定空き家とみなされ、適切な管理を行うように市町村長から指導や助言を受け、それらを無視することにより発せられる勧告を受けた後です。

住宅が建つ土地には、固定資産税が更地の6分の1などに減額される特例である「住宅用地の特例」が適用され、それに伴い住宅であった空き家が存在する土地にかかる固定資産税も更地の6分の1などに減額されています。

しかし、勧告を受ければ住宅用地の特例の適用の対象外となり、これが空き家の固定資産税が6倍になるといわれる所以です。

空き家の固定資産税が6倍になるといわれる理由

空き家の固定資産税が6倍になる具体的な流れは、以下のとおりです。

空き家の固定資産税が6倍になる流れ
  • 1. 所有する空き家が特定空き家とみなされる
  • 2. 市町村長から空き家を適切に管理するための助言を受ける
  • 3. 助言を無視すれば再度助言、または指導を受ける
  • 4. 助言、または指導を無視すれば、勧告を受けると共に住宅用地の特例の適用が外れる
  • 5. 住宅用地の特例の適用が外れれば、空き家が建つ土地にかかる固定資産税が6倍などになる

上記の流れで気になるのは、2で市町村長から助言を受け、4で勧告を受けつつ住宅用地の特例が外れるまでの期間ですが、国土交通省が公開する資料「地方公共団体の空き家対策の取組事例1」にて大まかな期間を確認することが可能です。

同資料の22ページには、東京都葛飾区に所在した空き家が平成27年7月10日に助言を受け、それを無視しつつ平成27年11月4日に勧告を受けたことが掲載され、その間は117日となっています。

国土交通省「地方公共団体の空き家対策の取組事例1」の22ページ

国土交通省「地方公共団体の空き家対策の取組事例1」

出典:国土交通省

つまり、所有する空き家の固定資産税が6倍になるのは、特定空き家とみなされつつ市町村長から助言を受けた117日後などであると考えられますが、全ての空き家が特定空き家とみなされるわけではありません。

特定空き家とみなされるのは、著しく老朽化することにより倒壊する虞がある空き家や、ゴミが放置されるなどして周辺住民の生活環境に影響を及ぼす空き家です。

また、市町村長から空き家を適切に管理するための助言や指導を受けた段階で改善すれば、住宅用地の特例が外れて固定資産税が6倍になることもありません。

さらに、土地にかかる固定資産税には負担調整措置が設けられているため、住宅用地の特例が外れても直ちに税額が6倍にはならず、何年もかけて徐々に6倍に近づくこととなります。

つづいて、住宅用地の特例の適用が外れても固定資産税が直ちに6倍になることがない理由である負担調整措置をご紹介しましょう。

なお、所有する空き家が特定空き家とみなされ、勧告を受けつつ住宅用地の特例が外れるまでの流れは、国土交通省が公開する資料「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(固定資産税等)」の下部にて確認することが可能です。

国土交通省「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置」

国土交通省「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置」

出典:国土交通省

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2. 空き家の固定資産税が直ちに6倍になることはない

つぎに、土地にかかる固定資産税には負担調整措置が設けられていることにより、所有する空き家から住宅用地の特例の適用が外れても直ちに税額が6倍にはならない理由をご説明しましょう。

その前に、土地の固定資産税を計算する方法をご紹介します。

2-1. 土地の固定資産税の計算式

土地にかかる固定資産税は、課税標準額に固定資産税の税率を掛け算しつつ税額が決定され、具体的な計算式は以下のとおりです。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額×固定資産税の税率=固定資産税

土地の固定資産税は上記の式で毎年計算しつつ税額が決定され、式に含まれる税率は市町村によって異なるものの概ね1.4%です。

くわえて、式には課税標準額という言葉が含まれますが、土地の固定資産税を計算する式に含まれる課税標準額とは、主にその土地の固定資産税評価額となっています。

固定資産税評価額とは、固定資産税額を計算するために市町村が評価したその土地の価格です。

つまり、土地の固定資産税は、毎年以下のように計算しつつ税額が決定されているというわけです。

土地の固定資産税は毎年以下のように計算しつつ税額が決定される
課税標準額(その土地の固定資産税評価額)×固定資産税の税率(1.4%)=固定資産税

しかし、住宅が建つ土地には住宅用地の特例が適用され、課税標準額が「その土地の固定資産税評価額」ではなくなります。

住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地にかかる固定資産税が、更地にかかる固定資産税の6分の1などに減額される特例であり、住宅の所有者の税負担を軽減するために設けられた特例です。

同特例が適用されれば課税標準額は「その土地の固定資産税評価額×6分の1など」に変わり、具体的には以下のように計算しつつ固定資産税額が決定されます。

住宅用地の特例が適用された場合における土地の固定資産税の計算式
課税標準額(その土地の固定資産税評価額×6分の1など)×固定資産税の税率(1.4%)=固定資産税

このように住宅用地の特例が適用されれば、課税標準額が「その土地の固定資産税評価額」から「その土地の固定資産税評価額×6分の1など」に変わります。

課税標準額が「その土地の固定資産税評価額」から「その土地の固定資産税評価額×6分の1など」に変われば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する固定資産税が6分の1などに減額されます。

これにより、空き家などの住宅が建つ土地にかかる固定資産税は、更地の6分の1などに減額されています。

しかし、所有する空き家が特定空き家とみなされつつ勧告を受ければ住宅用地の特例の適用が外れ、課税標準額が「その土地の固定資産税評価額×6分の1など」から「その土地の固定資産税評価額」に戻ることとなります。

課税標準額が「その土地の固定資産税評価額×6分の1など」から「その土地の固定資産税評価額」に戻れば、課税標準額に税率を掛け算しつつ計算する固定資産税が6倍などになります。

これが、空き家の固定資産税が6倍になるといわれる理由です。

空き家の固定資産税は住宅用地の特例が外れることにより6倍になる

しかし、土地にかかる固定資産税には、負担調整措置が設けられています。

負担調整措置があることにより、所有する空き家が特定空き家とみなされつつ住宅用地の特例の適用が外れても、固定資産税が直ちに6倍になることはありません。

つづいて、固定資産税の負担調整措置の詳細をご説明しましょう。

2-2. 負担調整措置

固定資産税の負担調整措置とは、土地の所有者の税負担が急激に大きくなることを防ぐために設けられた措置です。

負担調整措置があることにより、所有する空き家が特定空き家とみなされつつ住宅用地の特例の適用が外れたとしても、直ちに固定資産税が6倍になることはありません。

負担調整措置は、負担水準を基に適用されます。

負担水準とは、その土地の今年度の課税標準額からみた、その土地の前年度の課税標準額の割合であり、その土地の今年度の課税標準額が前年度と比べてどの程度変動したかをパーセントで表した指標です。

固定資産税の負担水準とは?

この記事の「2-1. 土地の固定資産税の計算式」にてご紹介したとおり、土地の固定資産税は課税標準額に税率を掛け算しつつ毎年計算され、具体的な計算式は以下のとおりです。

土地の固定資産税の計算式
課税標準額×税率=固定資産税

土地の固定資産税は上記の式で毎年計算しつつ税額が決定されますが、今年度の課税標準額からみた前年度の課税標準額の割合が負担水準であり、負担水準は以下の式で計算します。

負担水準の計算式
前年度の課税標準額÷今年度の課税標準額×100=負担水準

たとえば、前年度は住宅用地の特例が適用されることにより課税標準額が300万円であったものの、今年度は住宅用地の特例の適用の対象外となりつつ課税標準額が6倍の1,800万円となった土地があったとしましょう。

その場合は「300万円÷1,800万円×100=約17%」と計算し、負担水準は17%です。

そして、令和5年度まで負担調整措置が適用されることにより、空き家から住宅用地の特例の適用が外れつつ負担水準が60%未満となった場合は、前年度の課税標準額に今年度の固定資産税評価額の5%を加えた額が今年度の課税標準額となります。

その具体的な計算式は、以下のとおりです。

負担水準が17%における負担調整措置が適用された場合の今年度の課税標準額の計算式(令和5年度まで適用)
その土地の前年度の課税標準額+(その土地の今年度の固定資産税評価額+前年度の課税標準額の5%)=今年度の課税標準額

つまり、負担水準が17%であり前年度の課税標準額が300万円、その土地の固定資産税評価額が1,800万円であれば「300万円+90万円=390万円」と計算し、その土地の今年度の課税標準額は390万円になるというわけです。

前年度の課税標準額が300万円であれば、前年度の固定資産税はその1.4%である42,000円ですが、今年度の課税標準額が390万円であれば、今年度の固定資産税はその1.4%の54,600円となり、決して6倍にはなりません。

このように土地の固定資産税には負担調整措置が設けられていることにより、直ちに税額が6倍になることはありません。

何年もかけて徐々に6倍に近づくこととなります。

ただし、負担調整措置は定期的に見直されるため注意してください。

ご紹介した負担調整措置は、令和5年度までの負担調整措置の内容であり、それ以降は調整具合が変更される可能性があります。

とはいうものの、調整具合が急激に変わり空き家が建つ土地にかかる固定資産税が直ちに6倍になるとは考えられません。

直ちに6倍になれば納税者の税負担が短期間に上がることとなり、納税が困難になるためです。

令和5年度までの負担調整措置の詳細は「東京主税局|商業地等(住宅用地以外の宅地等)の固定資産税・都市計画税の負担調整措置が継続されます」や、「大阪市|税負担の調整措置」の「商業地等(店舗、事務所、工場など住宅以外の家屋の敷地および空地)」にて確認することが可能です。

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まとめ - 行政代執行に至る前に適切な対策を

空き家の固定資産税が、いつから6倍になるかご紹介しました。

空き家の固定資産税が6倍になるといわれますが、全ての空き家の固定資産税が6倍になるわけではありません。

倒壊する虞があるなどして周辺住民の生活環境に影響を及ぼす空き家が特定空き家とみなされ、適切な管理を行うように市町村長から助言や指導を受けつつも従わず、勧告を受けた場合に住宅用地の特例の適用が外れ固定資産税が6倍などになることとなります。

とはいうものの、固定資産税には負担調整措置が設けられているため直ちに6倍などになることはなく、幾年もかけて徐々に6倍に近づきます。

いつから空き家の固定資産税が6倍になるかご心配になられている方がいらっしゃいましたら、是非ご参考になさってください。

なお、所有する空き家が特定空き家とみなされ、市町村長から助言または指導、勧告を受けつつも適切に空き家を管理しなければ、適切に管理を行うように命令を受けることとなります。

命令を無視すれば、行政代執行により空き家が解体されます。

行政代執行とは、行政庁から命令を受けた者が実行しない場合に、行政庁自らが下した命令内容を実行しつつその費用を義務者から徴収する行為です。

ようするに、特定空き家を適切に管理せず、助言や指導、勧告、命令を受けつつも無視すれば、市町村によってその空き家が撤去され、その撤去費用を請求される場合があるというわけです。

国土交通省が公開する資料「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」の2ページによれば、令和元年度における助言や指導を受けた特定空き家は5,394件であり、勧告を受けた特定空き家は466件、命令を受けた空き家は42件、行政代執行に至った特定空き家は28件とのことです。

国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」の2ページ

国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」

出典:国土交通省

行政代執行に至る特定空き家はごく少数ですが、老朽化しつつ倒壊する虞がある空き家などを放置すると、行政代執行が行われる可能性があるため注意してください。

住宅地に位置しつつ倒壊することにより近隣に影響を及ぼすと予想される空き家は、定期的に見回り適切に管理するのが理想です。

ご紹介した内容が、いつから空き家の固定資産税が6倍になるかお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2021年8月

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