新築の建物の固定資産税評価額の目安をパパっと解説
新築の建物の固定資産税評価額は、正確な根拠が記された公的な文書はないものの、建築費の6割程度や購入価額の6割程度が目安といわれます。
新築の建物の固定資産税評価額の目安や、新築が建つ土地の固定資産税評価額の目安をご紹介しましょう。
目次
1. 新築の建物の固定資産税評価額の目安
冒頭でご紹介したとおり新築の建物の固定資産税評価額は、正確な根拠が記された公的な文書はないものの、建築費の6割程度や購入価額の6割程度などと言われます。
たとえば、建築費が2,000万円の新築の建物であれば、その6割である1,200万円程度が固定資産税評価額の目安になるといった具合です。
ここで注意していただきたいのは、建築費が必ず購入価格と同額になるとは限らないという点です。
たとえば、工務店に依頼し、2,000万円を支払いつつ住宅を新築したとしましょう。
その支払った代金の内訳は、設計費、資材費、労務費、工務店や下請け業者が得る利益などであり、支払った代金は建築費であると考えることが可能です。
一方、不動産業者が販売する建売や分譲マンションを購入した場合は、支払った代金を建築費と考えることはできません。
不動産業者が販売する建売や分譲マンションの販売価格には、設計費、資材費、労務費、建築会社とその下請け業者が得る利益に加え、不動産業者が得る利益なども含まれ、販売価格と建築費が乖離しています。
つまり、新築の建物の固定資産税評価額は建築費の6割程度といわれるものの、新築の具体的な建築費を想定するのは難しいというわけです。
参考までに、新築の固定資産税評価額が算定される流れを簡単にご紹介すると以下のようになります。
新築の建物の固定資産税評価額が算定される流れ
- 1. 新築後間もなく市町村役場から固定資産評価員と呼ばれる調査員が訪れ、家屋調査を行いつつ使用されている建材や設備の種類、量、用いられている工法、延べ床面積などを調査する。
- 2. 家屋調査が完了すれば、使用されてる建材や設備の種類、量、延べ床面積などに応じて再建築費評点数と呼ばれる点数を付ける。付けられる再建築費評点数は、グレードが高い建材や設備が多く使用され、工期が長くなる複雑な工法が用いられているほど高くなる。
- 3. 再建築費評点数を円に換算し、換算した額が固定資産税評価額となる。換算額は木造であれば1点あたり1.05円、非木造であれば1点あたり1.10円だが、物価水準が低い市町村ではそれ以下に換算されることもある。
新築の家屋の固定資産税評価額は上記の流れで算定され、正確な根拠はないものの、建築費の6割程度や購入価額の6割程度といわれます。
2. 新築が建つ土地の固定資産税評価額の目安
新築の建物の固定資産税評価額は、正確な根拠はないものの、建築費の6割程度や購入価額の6割程度が目安といわれます。
一方、新築が建つ土地の固定資産税評価額は、都市部、およびその周辺に位置する宅地であれば、土地部分の販売価格の70%程度が目安と考えることが可能です。
土地の固定資産税評価額は、地価公示法により公示される公示地価などを参考に、その70%程度に設定されます。
地価公示法とは、国土交通大臣が任命した土地鑑定委員会が日本全国各地に点在する標準地と呼ばれる地点の1平方メートルあたりの正常な価格を判定し、その情報を公示することを定めた法律です。
土地鑑定委員会は国土交通省内に設置され、国土交通省は地価公示法に則り、毎年3月ごろに土地鑑定委員会が判定したその年の1月1日の時点における標準地の1平方メートルあたりの正常な価格を公示します。
正常な価格とは売り急ぎや買い進みなどの事情を含まない通常成立すると考えられる価格であり、日本全国には約2万6千の標準地が存在し、地価公示法に則り国土交通省が公示する価格を公示地価と呼びます。
そして、地価公示法の第一条の二では、都市部、およびその周辺で土地を売買する者は、公示地価を参考に価格を設定するように努めなければならないと規定しています。
地価公示法の第一条の二を簡単にご紹介すると以下のとおりです。
地価公示法 第一条の二(土地の取引を行なう者の責務)
都市とその周辺の地域などにおいて土地の売買を行なう者は、その土地と立地条件などが類似する標準地の公示地価を指標として価格を設定するように努めなければならない
つまり、都市部とその周辺の地域の土地の売買価格は、最寄りの標準地の公示地価と同程度であると考えられるというわけです。
たとえば、最寄りの標準地の公示地価が10万円である100平方メートルの土地であれば「10万円×100平方メートル=1,000万円」と計算し、その土地の売買価格は1,000万円程度に設定されると考えることができます。
かつ、土地の固定資産税評価額は、最寄りの標準地の公示地価などを参考にその70%程度に設定されます。
計算例を挙げると、最寄りの標準地の公示地価が10万円である100平方メートルの土地であれば「10万円×100平方メートル×70%=700万円」と計算し、その土地の固定資産税評価額は700万円程度に設定されるといった具合です。
よって、新築が建つ土地は、都市部、およびその周辺に位置するのであれば、販売価格の70%程度が固定資産税評価額と考えることができます。
なお、土地の固定資産税評価額が公示地価を参考に、その70%程度に設定されることの根拠は、総務省が平成31年に公開した資料「固定資産税等について」の13ページの記述「平成6年度以降、宅地については地価公示価格等の7割を目途として評価」にて確認することが可能です。
総務省「固定資産税等について」の13ページ
出典:総務省
まとめ - 不動産取得税をかからないようにするためには、建築費を2,000万円以下に抑える
新築の建物の固定資産税評価額の目安をご紹介しました。
新築の建物の固定資産税評価額は、建築費の6割程度や購入価額の6割程度が目安といわれます。
ただし、正確な根拠が記された公的な文書は存在せず、建築費が販売価格と一致するとも限らないため注意してください。
正確な新築の建物の固定資産税評価額は、新築後に行われる家屋調査によって算定されます。
一方、新築の建物が建つ土地の固定資産税評価額は、地価公示法と総務省が公開する資料により、土地部分の販売価格の7割程度が目安と考えることが可能です。
新築の固定資産税評価額の目安をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。
なお、新築の建物を取得すると不動産取得税が課せられますが、以下の式で税額が計算されます。
新築の建物の不動産取得税の計算式
課税標準額×不動産取得税の税率(令和6年3月31日まで3%)=不動産取得税
式に含まれる課税標準額とは、何かしらの税金が課せられる状況において税額を計算する基となる額であり、課せられる税金によって意味が異なります。
新築の建物の取得に課せられる不動産取得税を計算する場合における課税標準額は、取得した新築の建物部分の固定資産税評価額です。
そして、不動産取得税には、一定の条件を満たす新築を取得すれば、固定資産税評価額から1,200万円を控除した額(長期優良住宅を取得した場合は1,300万円を控除した額)が課税標準額となる「不動産取得税の課税標準の特例」が設けられています。
つまり、固定資産税評価額が1,200万円(長期優良住宅を取得した場合は1,300万円)以下の新築の建物を取得すれば、建物部分の不動産取得税がかからないというわけです。
これを理由に、新築の建物の固定資産税評価額の目安をお調べの方がいらっしゃいましたら、可能な限り建築費が2,000万円以下の建物を取得してください。
工務店に依頼しつつ注文住宅を建てるのであれば、工務店に支払う建築費を2,000万円以下に抑えるのが理想です。
そうすれば、あわよくば不動産取得税がかからない、もしくは不動産取得税が大幅に安くなります。
不動産業者などが販売する建売やマンションの購入を希望する場合は、その旨を不動産業者に伝えつつ相談し、取得後の固定資産税評価額の目安を質問するのが良いでしょう。
ただし、「不動産取得税の課税標準の特例」を適用するためには、新築を取得後一定期間内に税事務所に申告をする必要があるため注意してください。
申告できる期間は都道府県によって異なりますが、短ければ30日以内、長ければ60日以内などです。
ご紹介した内容が、新築の建物の固定資産税評価額の目安をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
最終更新日:2022年1月
記事公開日:2021年5月
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