セットバックすると固定資産税はかかる?非課税の条件

セットバックすると固定資産税はかかる?

セットバックしつつ道路となった部分の固定資産税は、かかる場合とかからない場合があります。

セットバック後の土地の部分に固定資産税がかかるか、非課税になる状況、全国の市町村が実施する狭あい道路を解消する事業に関するデータをご紹介しましょう。

目次

1. セットバック後の固定資産税は状況によって異なる

はじめに、固定資産税は、固定資産税が課せられる対象となる土地や家屋が所在する地域を管轄する市町村が徴収する地方税であり、市町村によって課税対象が多少異なることを理解してください。

そして、セットバックしつつ道路となった部分に固定資産税がかかるか否かは、市町村が実施する制度や、セットバックしつつ道路となった部分の所有者、セットバックしつつ道路となった部分の使用状況によって異なります。

たとえば、その市町村にセットバックしつつ道路となった土地の寄付を受ける制度があり、セットバックした部分の所有権を市町村に移転できる場合は固定資産税はかかりません。

固定資産税は土地や家屋の所有者に課せられる税金であり、セットバックした部分の所有権を市町村に移転することができれば、固定資産税が課せられることはあり得ません。

また、その市町村にセットバックしつつ道路となった土地の寄付を受ける制度がないものの、セットバックした部分が公共の道路として使用されていれば、原則として固定資産税は非課税となります。

セットバックすると固定資産税はかかる?

そもそも市町村は、地方税法という法律に則って土地や家屋の所有者に固定資産税を課しています。

そして、同法律の第三百四十八条の第2項の第五号では、市町村は公共性のある道路には固定資産税を課すことができないと規定しています。

地方税法の第三百四十八条の第2項の第五号をわかりやすく簡単にご紹介すると以下のとおりです。

地方税法の第三百四十八条(固定資産税の非課税の範囲)第2項の五号
市町村は公共の用に供する道路には、固定資産税を課すことができない

よって、セットバックしつつ道路となった部分の所有権を市町村に移転しない場合であっても、建造された道路に公共性があれば固定資産税はかかりません。

公共性がある道路とは、不特定多数の人が通行できる状態であり、なおかつ通り抜けできる道路などです。

反対に、セットバックしつつ道路となった部分の所有権を市町村に移転せず、なおかつマイカーを駐車したり植木を置くなど自己の都合で利用している場合は固定資産税が課せられます。

その場合の税額は、市町村によって異なるものの、多くの市町村では宅地並みの税額です。

例を挙げると、セットバックしつつ道路となった部分に接する宅地の固定資産税が1平方メートルあたり1,000円であれば、セットバックしつつ道路となった部分の固定資産税も1平方メートルあたり1,000円になるといった具合です。

セットバックした部分に固定資産税がかかるか否かを表でまとめると以下のとおりです。

セットバック後の固定資産税の課税状況
固定資産税が非課税になる状況 セットバックしつつ道路となった部分の所有権を市町村に移転した、または、所有権を移転せずともセットバックした部分が公共性のある道路として使用されている
固定資産税が課税される状況 セットバックしつつ道路となった部分の所有権を市町村に移転せず、なおかつ、道路となった部分にマイカーを駐車したり植木を置くなど私的に使用している

セットバックした部分に固定資産税がかかるか否かの詳細は、セットバックした土地が所在する地域を管轄する市町村役場のホームページ内に設置されている検索窓に「私道 セットバック 固定資産税」などと入力しつつ検索することによりご確認いただけます。

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2. 狭あい道路の解消事業による固定資産税の非課税

つづいて、全国の市町村が実施する狭あい道路を解消する事業をご紹介しましょう。

狭あい道路とは、建築基準法の第四十二条の第2項に該当する、新築や建て替えの際にセットバックが必要となる幅が4メートルに満たない「2項道路」や「みなし道路」と呼ばれる道路です。

狭あい道路は災害時に緊急車両が通行できないことを理由に、狭あい道路に接する土地に新築するときや、既存の住宅を建て替える際はセットバックが必要となります。

狭あい道路は日本全国各地の市町村に存在し、早急な解消が必要とされています。

そのような状況において、国土交通省が令和2年に公開した資料「狭あい道路解消のための取組に係る調査及び事例集について」には、全国の市町村が実施する狭あい道路を解消するための事業に関するデータが記されています。

狭あい道路解消のための取組に係る調査及び事例集について セットバックを必要とする狭あい道路に関する資料

出典:国土交通省

同資料によれば、令和元年度において狭あい道路を解消する事業の活用を行う予定の市町村の数は283であったとのこです。

そして、その8割の市町村では、セットバックしつつ道路となった土地の寄付を受ける制度を設けているとのことです。

セットバック後の後退用地を市町村に寄付しつつ所有権を移転することができれば、固定資産税はかかりません。

また、セットバックを行いつつ道路となった部分の土地の寄付を受けない市町村のうち、約3割の市町村では固定資産税を非課税にしているとのことです。

加えて、同資料の4ページには、セットバックを行いつつ新たな道路を建設するために必要となる測量費や設計費、建造費などに対して補助金を支給する市町村が数多く存在するとのデータが記されています。

セットバックに補助金を支給する市町村がある

セットバックに補助金を支給する市町村がある

出典:国土交通省

セットバックを予定しつつ固定資産税がいくらになるか気になる方や、セットバックをするための費用の負担を迫られている方がいらっしゃいましたら、ぜひ同資料をご覧ください。

ちなみに、狭あい道路の読み方は「きょうあいどうろ」となっています。

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まとめ - セットバックしつつ非課税にするためには申告が必要

セットバックをしつつ道路として供出した部分に固定資産税がかかるかご紹介しました。

セットバックしつつ道路として供出した部分に固定資産税がかかるか否かは、市町村によって異なります。

市町村にセットバックしつつ道路となった部分の寄付を受ける制度があり、寄付することができれば固定資産税はかかりません。

また、セットバックしつつ道路となった部分を所有し続ける場合であっても、その道路が公共の用に供されているのであれば、固定資産税はかからないこととなります。

これは、地方税法により、市町村は公共性のある道路には固定資産税を課すことができないと規定されていることが理由です。

セットバックしつつ道路となった部分に固定資産税がかかるか否かお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、セットバックしつつ道路となった部分を所有し続け、なおかつその道路に公共性があったとしても、その状態のままでは固定資産税が非課税になることはないため注意してください。

セットバックしつつ道路となった部分に公共性があり、そのことを市町村に申告し、担当者が幾度か現場を確認しつつ公共性があると判断されることにより固定資産税が非課税となります。

セットバックしつつ道路となった部分の固定資産税を非課税にするための申告に関する詳細は、その道路が所在する市町村のホームページ内に設置されている検索窓に、「セットバック 固定資産税」などと入力しつつ検索することによりご確認いただけます。

ご紹介した内容が、セットバックしつつ建造した道路に固定資産税がかかるか否かお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2021年12月

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