軒の長さで固定資産税が高くなる?

軒の長さは固定資産税に影響を与え、軒出が大きければ税額は高くなります。
しかし、屋根の形状や勾配なども固定資産税に影響を与え、軒出が大きければ必ず税額が高くなるというわけではありません。
軒の長さが固定資産税に与える影響を解説し、税額が高くなる屋根の特徴などご紹介しましょう。
目次
- 1. 軒の長さは固定資産税に影響を与えるが、軒出だけで税額は決まらない
- 1-1. 軒が長くとも、屋根の形状がシンプルであれば固定資産税を抑えられる
- 1-2. 軒が長くとも、勾配を緩やかにすれば固定資産税を抑えられる
- 1-3. 軒が短くとも、ソーラーパネル一体型の屋根材は固定資産税が跳ね上がる
- まとめ - 機能性重視であれば軒は長く、デザイン性重視であれば軒は短くする
軒の長さは固定資産税に影響を与えるが、軒出だけで税額は決まらない
軒の長さは固定資産税に影響を与え、同じ条件の屋根であれば、軒出が60cmや90cmなどと大きければ、屋根にかかる固定資産税が高くなります。
高くなる程度は、標準的な長さの軒(45cm)の約1.2倍です。
一方、軒の長さが15cmや30cmなどと小さければ、屋根にかかる固定資産税は安くなります。
安くなる程度は、標準的な長さの軒(45cm)の約0.9倍です。

ただし、屋根にかかる固定資産税は、軒の長さだけで税額が決まるわけではなく、形状や勾配、屋根材の種類などの影響も受けます。
つづいて、その詳細を解説しましょう。
なお、建物の固定資産税は、屋根のみの税額が計算されることはないため留意してください。
本記事は、軒の長さが固定資産税に与える影響を解説する趣旨のため、「屋根にかかる固定資産税」という表現を用いていますが、建物の固定資産税は家屋全体の税額となります。
したがって、軒の長さを小さくするなどして屋根にかかる固定資産税を安く抑えても、一般の建物では見かけることがない高価な設備を導入するなどすれば、結局は税額が高くなります。
一般の建物では見かけることがない高価な設備とは、ホームエレベーターや免震装置などが挙げられます。
軒が長くとも、屋根の形状がシンプルであれば固定資産税を抑えられる
軒の長さは固定資産税に影響を与え、長いほど屋根にかかる固定資産税が高くなりますが、屋根の形状をシンプルにすれば税額を抑えられます。
たとえば、軒が長さが大きくとも切妻や反切妻、寄棟、方形、片流れなど形状をシンプルにすれば、屋根にかかる固定資産税を抑えられるといった具合です。

建物の固定資産税は再建築費を基に計算し、再建築費が高いほど税額が高くなります。
再建築費とは、その建物と同一の建物を同一の場所に新築する際に必要となる資材費と労務費、設計費などの合計であり、市町村が家屋調査にて算出します。
形状がシンプルな屋根は使用する資材の量が少なく、施工も簡単で再建築費が抑えられます。
よって、軒の長さが大きくとも、切妻や片流れなど形状がシンプルであれば再建築費が抑えられ、屋根にかかる固定資産税が安くなります。
反対に、軒の長さが小さくとも、腰折れやマンサードなど形状が複雑であれば再建築費が跳ね上がり、屋根にかかる固定資産税が高くなります。
これは、天窓やドーマー付きの屋根にも該当します。
天窓やドーマー付きの屋根は資材費と労務費が嵩み、再建築費と共に屋根にかかる固定資産税が高くなるため注意してください。
屋根にかかる固定資産税を抑えたいのであれば、軒の長さは45cmなどと標準的にして、切妻や片流れなど形状をシンプルにし、天窓やドーマーの設置は設置しない方が良いでしょう。
なお、本記事の内容は、ネットの噂などではなく、総務省告示「固定資産評価基準 第2章 家屋」を基に作成しています。
「固定資産評価基準 第2章 家屋」とは、各市町村が建物の再建築費を算出する方法が記された手引き書であり、総務大臣が内容を定めています。
「固定資産評価基準 第二章 家屋」は、「総務省:固定資産税の概要」の下部より閲覧することが可能です。
軒が長くとも、勾配を緩やかにすれば固定資産税を抑えられる
軒の長さが大きければ屋根にかかる固定資産税が高くなりますが、勾配を緩やかにすれば税額が抑えられます。
勾配は、緩やかなほど屋根にかかる固定資産税が安くなります。
たとえば、軒の長さが45cm、勾配が10分の5である屋根にかかる固定資産税が標準的な税額であるとしましょう。
であれば、勾配を10分の2や3などと緩やかにすれば、屋根にかかる固定資産税を標準的な税額の約0.9倍まで安くすることが可能です。
反対に、勾配を10分の6や7、8などとやや急にすれば、屋根にかかる固定資産税が標準的な税額の約1.1倍まで高くなります。
さらに、勾配を10分の9や10、11などと急にすれば、屋根にかかる固定資産税が標準的な税額の約1.2倍まで高くなります。
勾配の緩急が屋根にかかる固定資産税に与える影響をまとめると、以下のとおりです。
勾配の緩急が屋根にかかる固定資産税に与える影響
勾配 | 屋根にかかる固定資産税 |
---|---|
標準的(10分の5程度) | 標準的な税額 |
緩やか(10分の2、10分の3程度) | 標準的な税額の約0.9倍 |
やや急(10分の6、10分の7、10分の8程度) | 標準的な税額の約1.1倍 |
急(10分の9、10分の10、10分の11程度) | 標準的な税額の約1.2倍 |
よって、軒を長さを大きくしつつも屋根にかかる固定資産税を抑えたい場合は、勾配を緩やかにするのが良いでしょう。
ただし、あまりに勾配を緩やかにすると雨水が流れにくくなり、雨漏りしやすくなるため注意してください。
建物を新築する際は固定資産税を安く抑えたいものですが、雨漏りや耐久性などを考慮しつつ設計する必要があります。
軒が短くとも、ソーラーパネル一体型の屋根材は固定資産税が跳ね上がる
軒の長さが小さければ屋根にかかる固定資産税が安くなりますが、高価な屋根材が使用されている場合は例外です。
高価な屋根材が使用されていれば、軒の長さが小さくとも屋根にかかる固定資産税は高くなります。
屋根にかかる固定資産税が高くなる代表的な屋根材は、ソーラーパネル一体型です。
たとえば、アスファルトシングルの屋根材の新築時の固定資産税を単純計算すると、建床面積1㎡あたりにつき約38.4円です。
一方、ソーラーパネル一体型の屋根材の新築時の固定資産税を単純計算すると、建床面積1㎡あたりにつき約206.9円となり、アスファルトシングルの5.38倍まで高くなります。

よって、屋根にかかる固定資産税を抑えたいのであれば、ソーラーパネル一体型の屋根材の導入は避けた方が無難です。
なお、ソーラーパネルには、屋根の上に乗せるだけのタイプがありますが、そのタイプは建物の一部と見なされず、固定資産税がかかりません。
したがって、ソーラーパネルの導入を希望しつつも屋根にかかる固定資産税を抑えたい場合は、乗せるだけのタイプを設置するのが良いでしょう。
ただし、乗せるだけのタイプは、屋根が傷みやすいため充分に検討してから設置してください。
まとめ - 機能性重視であれば軒は長く、デザイン性重視であれば軒は短くする
軒の長さが固定資産税に与える影響を解説しました。
軒の長さは固定資産税に影響を与え、45cm程度であれば、屋根にかかる固定資産税は標準的な税額となります。
60cmを超えるなどと軒の長さが大きければ、屋根にかかる固定資産税は標準的な税額の約1.2倍まで高くなります。
30cmや15cmなどと軒の長さが小さければ、屋根にかかる固定資産税は標準的な税額の約0.9倍まで安くなります。
よって、固定資産税を安く抑えたいのであれば、軒の長さを小さくするのが良いでしょう。
ただし、屋根の形状や勾配、屋根材の種類なども屋根にかかる固定資産税に影響を与え、ただ単に軒の長さを小さくすれば税額が安くなるというわけではないため留意してください。
ちなみに、軒が長さが大きければ外壁に雨風が当たりにくくなり、建物の寿命が伸びるというメリットがあります。
また、軒が長さが大きければ夏の日差しが室内に届きにくく、エアコンの効きが良くなるなどのメリットもあります。
したがって、機能性に長けた建物の新築を希望する場合は、固定資産税が多少高くなるとしても軒の長さを大きくするのが良いでしょう。
反対に、機能性よりデザイン性を重視するのであれば、軒の長さを小さくして片流れなどスタリッシュな屋根にするのがお勧めです。
本記事の内容が、皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。
記事公開日:2025年4月
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