マンションで固定資産税がかからない物件は、無きにしも非ず!?

マンションで固定資産税がかからない物件は、無きにしも非ず

固定資産税がかからないマンションは稀であり、残念ながら多くの場合はかかります。

ただし、借地権付や地上権付で売りに出されているマンションであれば、土地部分の固定資産税がかかりません。

土地部分の固定資産税がかからない借地権付のマンションの詳細や、マンションの固定資産税が何年でどれくらいまで下がるかなど、マンションの固定資産税に関することをご紹介しましょう。

目次

1. 借地権のマンションであれば、土地の固定資産税がかからない

固定資産税がかからないマンションは稀ですが、土地の持分がないマンションであれば、土地部分の固定資産税がかかりません。

マンションを購入すると、多くの場合は一戸部分と、そのマンションが建つ敷地を戸数などで割った面積の土地を所有することとなり、その両方に固定資産税が課されます。

しかし、一戸部分だけを購入しつつ所有し、土地部分は借りることとなるマンションが存在します。

アットホームなどの不動産検索サイトでマンションを探すと、備考欄に「借地権付」「定期借地権付」「地上権付」などと記された相場より安い物件を見かけますが、それらのマンションが土地部分は借りることとなるマンションです。

借地権付や定期借地権付、地上権付のマンションは、購入しても土地の持分を所有することとならず、土地部分を借りつつ利用できる権利を有するに留まり、土地部分の固定資産税はかからないこととなります。

借地権のマンションであれば、土地部分の固定資産税がかからない

ただし、借地権付や定期借地権付のマンションは、定期的に地代を払う必要があるため注意してください。

借地権付のマンションは相場より安く土地部分の固定資産税がかからないものの、残念ながら定期的に地代を支払わなければなりません。

また、定期借地権付のマンションは、50年などの一定の期間が経過すると退居する必要があります。

定期借地権とは、50年などの期間を決めつつ土地を借り、期間中に限り借りた土地を利用できる権利であり、借りる期間を延長できず、期間完了後は退居せざるを得ません。

一方、借地権付のマンションも定期借地権付のマンションと同じく期間を定めつつ土地部分を借りることとなりますが、期間完了後は延長することが可能です。

つづいて、マンションの固定資産税が何年で下がるか、毎年どれくらい下がるかご紹介しましょう。

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2. マンションの固定資産税は、60年をかけて下がる

建物の固定資産税は、築年数が経過することにより下がります。

よって、マンションの固定資産税は、築年数が経過すればかからないと思われがちですが、残念ながら新築時の20%までしか下がりません。

さらに、新築時の20%まで固定資産税が下がるのは、新築されてから60年も後です。

マンションの固定資産税が下がる年数は、総務省の告示「固定資産評価基準 第2章 家屋」の「別表13 非木造家屋経年減点補正率基準表 2 住宅、アパート用建物」という表にてご確認いただけます。

固定資産評価基準とは、市町村が建物や土地などの固定資産税額を計算するために必要となる固定資産の時価を評価する方法が記された手引書です。

以下が同表であり、一番左の赤い線で囲んだ箇所が、マンションの固定資産税が下がる年数です。

マンションの固定資産税が下がる年数が記された経年減点補正率基準表

出典:総務省

表の見方が難解ですが、赤い線で囲まれた箇所の左の列の「経過年数」が築年数であり、右の列の「経年減点補正率」が築年数が経過することにより固定資産税が下がる率とお考えください。

たとえば、経過年数が30の箇所は経年減点補正率が0.4632ですが、その場合は「0.4632×100=約46%」と計算し、築30年で新築時の約46%まで固定資産税が下がることを意味します。

また、経過年数が50の箇所は経年減点補正率が0.2877ですが、その場合は「0.2877×100=約29%」と計算し、築50年で新築時の約29%まで固定資産税が下がるという意味です。

経過年数の最後は「60以上」で締めくくられ、経過年数が60以上の経年減点補正率は0.2000のため「0.2000×100=20%」と計算し、築60年で新築時の20%まで固定資産税が下がり、それよりは下がらないことを意味します。

加えて、築年数が経過することにより下がるのは、一戸部分の固定資産税のみであり、土地の持分の固定資産税は築年数に関係なく、その周辺の地価に応じて上下することとなります。

つまり、マンションは、築年数が古くなることにより固定資産税がかからないということはなく、いつまでもかかり続けるというわけです。

マンションの固定資産税は、築年数が経過しても0円にはならない

ただし、マンションを含む建物の固定資産税は、築年数が経過するなどして建物として機能しなくなればかからないこととなります。

つづいて、マンションなどの建物が建物として機能しなくなった状況において、固定資産税がかからない理由をご説明しましょう。

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3. マンションが用途を成さなくなれば、固定資産税はかからない

一般に固定資産税がかからないマンションは存在しませんが、借地権付や地上権付で販売されているマンションであれば、土地部分の固定資産税はかかりません。

また、マンションの固定資産税は築年数が経過しても0円になることはなく、一戸部分の固定資産税が、60年をかけて新築時の20%まで下がるに留まります。

ただし、築年数が経過することにより、マンションが建物としての機能を果たさなくなれば、一戸部分の固定資産税はかからないこととなります。

ここから、その理由と根拠を簡単にご紹介しましょう。

皆さんがご存じのとおり、マンションなどの不動産を所有すると市町村から固定資産税が課されますが、市町村は地方税法という法律に則り固定資産税を徴収しています。

地方税法とは、固定資産税や不動産所得税などに関することを定めた法律であり、地方税法の第三百四十三条には、以下のように固定資産税の納税義務者に関する規定が記されています。

固定資産税は固定資産の所有者に課す。固定資産とは、家屋と土地と償却資産(事業者が事業のために使用する財産)である。

上記に含まれる「家屋」の定義が曖昧ですが、家屋の定義は、地方税法の内容を補足する総務省の通知「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)」の「第3章 固定資産税 第1節 通則 第1 課税客体」に記され、その箇所を抜粋すると以下のとおりです。

固定資産税の対象となる家屋とは、不動産登記法における建物と同じ意味である

上記に含まれる不動産登記法とは、登記に関することを定めた法律であり、不動産登記法における建物の定義は、不動産登記法の詳細を定めた「不動産登記規則」の第百十一条に記されています。

その箇所を抜粋すると以下のとおりです。

建物は、屋根と壁、または屋根と壁に相応する物があり、地面に固定された建造物であって、その用途を成し得る状態であるものでなければならない

あれこれと長くなりましたが、パパっとまとめると以下のようになります。

固定資産税は家屋や土地の所有者に課される。家屋とは屋根と壁があり地面に固定された建物であり、その用途を成し得る状態であるものである。

上記のように、築年数が経過しつつ家屋としての機能を果たせなくなったマンションは、地方税法による固定資産税が課される対象となる建物の定義から外れます。

よって、マンションの固定資産税は築年数が経過しても0円にはならないものの、老朽化してマンションとしての機能を果たせなくなれば、一戸部分の固定資産税はかからないこととなります。

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まとめ - 地上権のマンションは、固定資産税がかかることがある

固定資産税がかからないマンションをご紹介しました。

残念ながら、固定資産税がかからないマンションは存在しませんが、借地権付や地上権付などで売りに出されているマンションであれば、土地部分の固定資産税はかかりません。

また、マンションなどの建物は、築年数が経過すれば最終的に固定資産税がかからないといわれますが、下がるのは新築時の20%まであり、0円にはなりません。

ただし、築年数が経過することにより建物としての機能を果たさなくなったマンションは、地方税法による固定資産税が課される対象となる家屋の定義から外れ、一戸部分の固定資産税がかからないこととなります。

固定資産税がかからないマンションをお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、記事の本文中で地上権付のマンションは土地部分を購入せず借りることとなり、土地部分の固定資産税がかからないとご紹介しました。

そして、地上権も借地権と同じく期間を定めつつ土地を借りることとなりますが、100年を超える期間を定めつつ地上権によって土地を借りる場合は、その土地の固定資産税を払わなくてはならないため注意してください。

その根拠は、地方税法の第三百四十三条に記され、その箇所を抜粋すると以下のとおりです。

固定資産税は、土地や家屋などの所有者に課すが、100年より長い期間を定めた地上権により土地を借りる者にも課す

ご紹介した内容が、固定資産税がかからないマンションの情報をお探しの方に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2022年3月

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