固定資産税路線価の見方

固定資産税路線価の見方をパパっと解説

固定資産税路線価の見方は、思いのほか簡単です。

固定資産税路線価図の見方をわかりやすく簡単に解説し、固定資産税路線価から土地の固定資産税を計算する方法をご紹介しましょう。

なお、ご紹介するのは固定資産税路線価の見方であり、相続税路線価の見方ではないため注意してください。

目次

1. 固定資産税路線価の見方

それでは、固定資産税路線価の見方を解説しましょう。

固定資産税路線価は固定資産税路線価図、または路線価図と呼ばれる地図に記されています。

路線価図は市町村によってデザインが異なりますが、おおむね以下のように各道路に3ケタや2ケタの数字が記された地図であり、各道路に記された数字が固定資産税路線価です。

固定資産税路線価の見方

上記のような地図が、固定資産税路線価が記された路線価図です。

固定資産税路線価の見方で注意していただきたいのは、路線価図に記されている固定資産税路線価の単位です。

路線価図に記されている3ケタや2ケタの数字が固定資産税路線価ですが、それらは千円単位となっています。

たとえば、道路に100と記されている場合は100×1,000=100,000と計算し、その固定資産税路線価は10万円です。

また、道路に150と記されている場合は150×1,000=150,000と計算し、その固定資産税路線価は15万円となります。

敷地が複数の道路に接し、それぞれに異なる固定資産税路線価が記されている場合は、最も高い数字がその土地の固定資産税路線価であるとお考えください。

加えて、路線価図には「用途地区」や「標」「公」「基」「主要な街路」「その他の街路」などのマークが記されている場合がありますが、それらの見方と意味は以下のとおりとなっています。

用途地区は地区の区分け

市町村を問わず、大抵の固定資産税の路線価図に記されているのが用途地区です。

固定資産税路線価における用途地区とは、現時点におけるその周辺の地区の土地の利用状況を表した区分であり、市町村が各土地の固定資産税を計算する際に用いる区分けです。

用途地区の区分は市町村によって異なるものの、おおむね高度商業地区、繁華街地区、普通商業地区、併用住宅地区、普通住宅地区、家内工業地区、中小工場地区、大工場地区などとなっています。

固定資産税路線価の用途地区とは

ただし、東京都など人口が密集する地域では、ご紹介した地区に加え、中高層普通住宅地区や低層普通住宅地区、ビル街などさらに細かく区分けされていることがあるため留意してください。

なお、この記事の「2. 固定資産税路線価から1本の道路に接する宅地の固定資産税を試算」では、固定資産税路線価から土地の固定資産税を計算する方法を解説中であり、用途地区が用いられる場面もご紹介しています。

固定資産税の路線価図に記されている用途地区の見方にご興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ同項目をご覧ください。

標は標準宅地

多くの市町村の固定資産税の路線価図には、標というマークが入っています。

固定資産税の路線価図に記されている標のマークは、標準宅地です。

固定資産税路線価の標準宅地とは

市町村が市街地に位置する土地の固定資産税を計算する際は、各土地の適正な時価を評価し、評価した価格を基に固定資産税を計算します。

しかし、全ての土地の適正な時価をひとつずつ評価していては、莫大な時間とコストが掛かります。

よって、市町村はその地区の代表となる土地を選び、その土地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価し、その価格を基準としつつ全ての土地を適正な時価を評価します。

こうすることによって、市町村は全ての土地の適正な時価を効率よく評価することが可能であり、市町村が選んだその地区の代表となる土地が標準宅地です。

市街地に位置する土地は、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を基に価格を評価しつつ固定資産税が計算されます。

標準宅地とは市町村が選んだその地区の代表となる宅地

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公は標準地

固定資産税の路線価図に公という印がある場合は、その場所は標準地です。

標準地とは、公示地価が公表される地点を意味します。

固定資産税路線価の標準地とは

公示地価とは、毎年3月ごろに国土交通省が公表する日本全国各地に点在する約2万6千ヵ所の土地の1平方メートルあたりの正常な価格であり、公示地価が公表される地点を標準地と呼びます。

市町村が市街地に位置する土地の固定資産税を計算するために各土地の価格を評価する際は、まずは標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価しますが、最寄りの標準地の公示地価を参考に、その7割程度と評価します。

たとえば、最寄りの標準地の公示地価が10万円であれば、その標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価は7万円と評価するといった具合です。

固定資産税の路線価図に公のマークがある場合は、その見方は公示地価が公表された標準地となっています。

公示地価の詳細は、私が運営するもうひとつのサイト「誰でもわかる不動産売買」にてわかりやすく解説中です。

公示地価に興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。

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基は基準地

固定資産税の路線価図に基という印がある場合は、その場所は基準地です。

固定資産税路線価の基準地とは

各都道府県は、毎年10月ごろに日本全国各地に点在する約3万ヵ所の土地の1平方メートルあたりの標準となる価格を発表します。

この都道府県が発表する価格を基準地価と呼び、基準地価が発表される約3万ヵ所の地点を基準地と呼びます。

固定資産税路線価の路線価図に記されている基のマークの見方は、基準地価が公表された基準地です。

なお、基準地の基準地価の評価方法は、標準地の公示地価の評価方法と大差ありません。

そのため、公示地価が10万円の標準地の最寄りの基準地の基準地価は、同じく10万円程度となります。

よって、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価は、最寄りの標準地の公示地価の7割程度であり、最寄りの基準地の基準地価の7割程度であるともいえます。

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主要な街路とその他の街路

固定資産税の路線価の路線価図に「主要な街路」や「その他の街路」と記された赤や青、緑などの矢印が入っている場合は、それらは固定資産税路線価が付設された道路です。

固定資産税路線価の主要な街路とは

市町村が市街地に位置する土地の固定資産税を計算する際は、第一に、その市町村をこの記事の「用途地区は地区の区分け」でご紹介した用途地区に区分けします。

第二に、各地区から主要となる街路を選び、主要となる街路と接する土地の中から歪ではない標準的な形状の土地を選びます。

選ばれた土地が、この記事の「標は標準宅地」でご紹介した標準宅地です。

第三に、最寄りの標準地の公示地価や基準地の基準地価などを参考に、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価します。

第四に、評価した標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を固定資産税路線価として、標準宅地と接する主要な街路や、主要な街路と接するその他の街路に付設します。

第五に、各街路に付設した固定資産税路線価を基に各土地の適正な時価を評価し、各土地の固定資産税が計算されます。

このように市町村が市街地に位置する土地の固定資産税を計算する過程において、固定資産税路線価が付設された道路が主要な街路、またはその他の街路です。

主要な街路に固定資産税路線価が付設される流れ

固定資産税の路線価図に主要な街路、その他の街路などと記されている場合は、その見方は固定資産税路線価が付設された道路とお考えください。

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2. 固定資産税路線価から1本の道路に接する宅地の固定資産税を試算

固定資産税路線価の路線価図の見方がわかれば、固定資産税路線価を基に土地の固定資産税を簡単に試算してみましょう。

試算するのは、固定資産税路線価が10万円である1本の道路に接する間口が10メートルであり奥行きが15メートル、敷地面積が150平方メートル、用途地区は普通住宅地区の土地です。

また、土地は住宅が建てられていない更地の状態であり、特に造成をせずとも住宅を建てることができます。

加えて、その土地が所在する市町村の固定資産税の税率は1.4%と仮定し、土地を宅地Aと名付けます。

固定資産税を試算する宅地Aの概要

なお、ご紹介するのは固定資産税路線価から固定資産税を試算する簡単な方法であり、正式な計算方法ではないため留意してください。

市町村が実際に土地の固定資産税を計算する際は、ご紹介する方法よりもう少し複雑な手順で計算します。

それでは、宅地Aの固定資産税の試算を開始します。

2-1. 固定資産税路線価に奥行価格補正率を掛け算する

まずは、宅地Aが接する道路に付設された固定資産税路線価に奥行価格補正率を掛け算します。

奥行価格補正率とは、その土地の1平方メートルあたりの時価を奥行の広さに応じて補正する率であり、土地の奥行と用途地区によって数値が異なります。

奥行価格補正率は総務省の告示「固定資産評価基準」の「第1章 土地」の31ページに記されている「奥行価格補正率表」にて確認することが可能です。

以下が奥行価格補正率表です。

奥行価格補正率表

奥行価格補正率表

出典:総務省告示 : 固定資産評価基準

以上が奥行価格補正率表であり、宅地Aの奥行は15メートル、用途地区は普通住宅地区のため奥行価格補正率は1.00です。

よって、10万円×1.00=10万円と計算します。

この答えである10万円が、宅地Aの1平方メートルあたりの適正な時価です。

土地は奥行によって使い勝手が決まり、奥行が極端に狭い土地や広い土地は使い勝手が悪くなります。

使い勝手が悪い土地は価値が低いと見なされつつ売買価格が安くなるため、固定資産税も安くならなければなりません。

よって、まずは土地の奥行に応じて、その土地の1平方メートルあたりの適正な時価を補正します。

なお、奥行価格補正率は、市町村によって多少異なる場合があるため留意してください。

また、宅地Aの用途地区は普通住宅地区ですが、用途地区も市町村によって異なる場合があります。

たとえば、東京都には普通住宅地区という用途地区は設けられておらず、中高層普通住宅地区、低層普通住宅地区などに用途地区が細分化され、それぞれに奥行価格補正率が設定されています。

市町村に独自の用途地区と奥行価格補正率が設定されている場合は、そちらが優先されます。

各市町村の用途地区と奥行価格補正率は、各市町村のホームページなどにて確認することが可能です。

2-2. 1平方メートルあたりの時価に敷地面積を掛け算する

固定資産税路線価に奥行価格補正率を掛け算しつつ1平方メートルあたりの適正な時価が計算できれば、1平方メートルあたりの適正な時価に敷地面積を掛け算します。

宅地Aの1平方メートルあたりの適正な時価は10万円であり、敷地面積は150平方メートルのため「10万円×150平方メートル=1.500万円」と計算し、その答えは1,500万円です。

この1,500万円という答えが、宅地A全体の適正な時価となります。

なお、固定資産税に関する用語として「固定資産税評価額」という言葉を見聞きしますが、1平方メートルあたりの適正な時価に敷地面積を掛け算した額が土地の固定資産税評価額です。

よって、宅地Aの固定資産税評価額は1,500万円となります。

2-3. 宅地A全体の時価に固定資産税の税率を掛け算する

宅地A全体の適正な時価が計算できれば、その時価に固定資産税の税率を掛け算します。

宅地Aの全体の適正な時価は1,500万円であり、宅地Aが所在する市町村の固定資産税の税率は1.4%です。

よって、1,500万円×1.4%=21万円と計算し、この答えである21万円が宅地Aの固定資産税の試算結果となります。

なお、宅地Aに住宅が建つ場合は住宅用地の特例が適用され、固定資産税が21万円の6分の1である3万5千円に減額されます。

住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地に掛かる固定資産税が6分の1などに減額される特例です。

また、宅地Aが所在する市町村の固定資産税の税率は1.4%と仮定しましたが、財政難や人口が少ない市町村では1.5%や1.6%、1.7%になることがあるため留意してください。

固定資産税は標準税率が1.4%であり、多くの市町村では1.4%の税率ですが、市町村によってはそれ以上のこともあります。

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まとめ - 全国地価マップでは全国の固定資産税路線価を公開中

固定資産税路線価の見方をわかりやすく簡単に解説し、固定資産税路線価から土地の固定資産税を試算する方法をご紹介しました。

固定資産税路線価は固定資産税の路線価図に記され、路線価図の道路に記されている3ケタや2ケタの数字が固定資産税路線価であり、千円単位の表示となっています。

固定資産税路線価の見方がわかれば、ご自分が所有する土地や、購入を希望する土地の固定資産税評価額や固定資産税を試算することが可能です。

固定資産税路線価の見方をお調べの方がいらっしゃいましたら、ぜひご参考になさってください。

なお、東京都や大阪市では固定資産税の路線価図を公式サイトで公開していますが、多くの市町村は路線価図をホームページで公開していません。

路線価図をホームページで公開していない市町村の固定資産税路線価を調べたいと希望する場合は、全国地価マップをご活用ください。

全国地価マップとは、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営するサイトであり、固定資産税路線価や相続税路線価、公示地価、基準地価など、様々な土地の価格が記された地図が公開中です。

ただし、全国地価マップで公開されている路線価図に記されている固定資産税路線価は、千円単位ではなく1円単位のためご注意ください。

ご紹介した内容が、固定資産税路線価の見方をお調べになる皆様に役立てば幸いです。失礼いたします。

記事公開日:2021年10月

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