固定資産税路線価と路線価の違い
固定資産税評価額とは、市町村によって評価された固定資産税が課せられる対象となる土地や建物の適正な時価です。
そして、路線価には、土地の相続税を計算するための相続税路線価と、土地の固定資産税を計算するための固定資産税路線価があります。
固定資産税評価額と2つの路線価の違いをわかりやすく簡単にご説明しましょう。
目次
1. 固定資産税評価額と相続税路線価の違い
冒頭でご紹介したとおり、路線価には相続税路線価と固定資産税路線価がありますが、路線価といえば相続税路線価を指すのが通例です。
まずは、固定資産税評価額と相続税路線価の違いをわかりやすく簡単に解説しましょう。
固定資産税評価額とは、土地や家屋の固定資産税の額を計算するために市町村が評価した、その土地や家屋の適正な時価です。
土地や建物を所有すると市町村から固定資産税が課せられますが、その税額は、その土地や建物の適正な時価に固定資産税の税率を掛け算しつつ計算されます。
たとえば、市町村が適正な時価が1,000万円であると評価した土地があったとしましょう。
その場合は1,000万円が固定資産税評価額となり、1,000万円に固定資産税の税率である1.4%を掛け算するなどして固定資産税の額が計算されるといった具合です。
これに対して、相続税路線価とは、土地を相続したり贈与を受けた際に課せられる相続税や贈与税の額を計算するために国税庁が毎年公表する、日本全国各地の市街地に位置する道路に接する土地の1平方メートルあたりの時価です。
土地を相続すると相続税が、無料で譲り受けるなどすると贈与税が課せられますが、その税額は相続税路線価を基に土地の時価を評価し、評価した額に相続税や贈与税の税率を掛け算しつつ計算されます。
土地には売買価格がありますが、売買価格は売り主と買い主の事情によって変わるため、売買価格に税率を掛け算しては公平に課税されません。
よって、土地の相続税や贈与税は、国税庁が毎年公表する統一された土地の時価である相続税路線価を基に計算されます。
たとえば、相続税路線価が10万円である100平方メートルの土地を相続した場合は「10万円×100平方メートル=1,000万円」と計算し、時価が1,000万円の土地を相続したと見なされます。
そして、その1,000万円から基礎控除額を差し引いた額に相続税の税率を掛け算するなどして相続税の額が計算されます。
先にご紹介した固定資産税評価額は、土地や建物の固定資産税の額を計算するために市町村が評価した、その土地や建物の適正な時価です。
一方、相続税路線価は、土地の相続税や贈与税の額を計算するために国税庁が公表する、市街地の道路に接する土地の1平方メートルあたりの時価です。
以上が、固定資産税評価額と相続税路線価の違いとなります。
2. 固定資産税評価額と固定資産税路線価の違い
路線価といえば相続税路線価を指すのが通例ですが、土地の所有者に固定資産税を課すための固定資産税路線価もあります。
ここから、固定資産税評価額と固定資産税路線価の違いを簡単にご説明しましょう。
固定資産税評価額とは、市町村が土地や建物の所有者に固定資産税を課すために評価した、その土地や建物の適正な時価です。
土地や建物の固定資産税の額は、市町村が評価したその土地や建物の適正な時価を基に計算されます。
これに対して、固定資産税路線価とは、市町村が市街地に位置する土地の適正な時価を評価するために街路(がいろと読み、市街地に位置する道路という意味です)に付けた、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価です。
土地を所有すると市町村から固定資産税が課せられますが、先にご紹介したとおり税額は、市町村が評価したその土地の適正な時価を基に計算されます。
よって、市町村が土地の所有者に固定資産税を課す際は、各土地の適正な時価を評価する必要がありますが、ひとつひとつの土地の時価を評価していては莫大な費用が掛かります。
特に市街地には多数の土地と土地の所有者が集中し、各土地の時価を評価するのは困難です。
そのため、市町村が市街地に位置する多数の土地の適正な時価を評価する際は、市街地宅地評価法という方法を用いて効率よく評価します。
市街地宅地評価法では、第一に市町村内を住宅地区や商業地区などに区分けし、各地区から主要な街路を選びます。
第二に、主要な街路と接する土地の中から形状や間口、奥行が標準的な土地を選びます。
選ばれた土地を標準宅地と呼び、標準宅地の選定が済めば、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価します。
第三に、評価した標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価を、標準宅地と接する主要な街路に付設します。
この主要な街路に付設された標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価が、固定資産税路線価です。
第四に、主要な街路に付設した固定資産税路線価を参考に、主要な街路と接続するその他の街路にも固定資産税路線価を付設します。
第五に、各街路に付設した固定資産税路線価を基に、各街路と接する標準宅地以外の各土地の1平方メートルあたりの適正な時価を評価します。
たとえば、固定資産税路線価が10万円の街路に接する標準宅地以外の土地の1平方メートルあたりの適正な時価は10万円と評価するといった具合です。
また、固定資産税路線価が9万円の街路に接する標準宅地以外の土地の1平方メートルあたりの適正な時価は9万円と評価します。
そして、固定資産税路線価を基に評価した各土地の1平方メートルあたりの適正な時価に、各土地の敷地面積を掛け算します。
計算例を挙げると、固定資産税路線価が10万円の土地に接する100平方メートルの土地は「10万円×100平方メートル=1,000万円」と計算し、その土地の全体の適正な時価は1,000万円となります。
このように街路に付設した固定資産税路線価を基に各土地の時価を評価すれば、市街地に位置する多数の土地の適正な時価を効率よく評価することが可能です。
そして、市街地宅地評価法を用いた各土地の敷地全体の適正な時価の評価が完了すれば、その価格を1円あたり1点に換算します。
その後、その点数を再び円に戻します。
点数から円に戻す際の換算額は市町村によって異なり、多くの市町村では1点あたり1円ですが、1円以上の市町村もあります。
この点数から円に換算された額が、土地の固定資産税評価額です。
固定資産税評価額とは、市町村が土地や家屋の所有者に固定資産税を課すために評価した土地や建物の適正な時価です。
これに対して固定資産税路線価とは、市町村が市街地に位置する多数の土地の適正な時価を効率よく評価するために街路に付けた、標準宅地の1平方メートルあたりの時価です。
固定資産税路線価から算定された各土地の適正な時価が、最後には各土地の固定資産税評価額となります。
以上が、固定資産税評価額と固定資産税路線価の違いです。
まとめ - 相続税路線価と固定資産税路線価には関連がある
固定資産税評価額と路線価の違いをご紹介しました。
固定資産税評価額とは、市町村が土地や家屋の所有者に固定資産税を課すために評価した、その土地や家屋の適正な時価です。
路線価には相続税路線価と固定資産税路線価があり、相続税路線価とは、土地の相続税や贈与税の額を計算するために国税庁が付けた、市街地に位置する土地の1平方メートルあたりの時価です。
固定資産税路線価とは、市町村が市街地に位置する多数の土地の適正な時価を評価するために街路に付けた、標準宅地の1平方メートルあたりの適正な時価であり、市街地に位置する土地の固定資産税評価額は固定資産税路線価から計算されます。
以上が固定資産税評価額と相続税路線価、固定資産税路線価の違いであり、表でまとめると以下のようになります。
名称 | 意味 |
---|---|
固定資産税評価額 | 土地や建物の固定資産税額を計算するために市町村が評価した、その土地や建物の適正な時価 |
相続税路線価 | 土地の相続税額や贈与税額を計算するために国税庁が毎年公表する、市街地に位置する道路に接する土地の1㎡あたりの時価 |
固定資産税路線価 | 市町村が市街地に位置する土地の適正な時価を効率よく評価するために街路に付けた、標準宅地の1㎡あたりの適正な時価 |
ちなみに、相続税路線価と固定資産税路線価は、どちらも公示地価を参考に設定されます。
公示地価とは、毎年3月ごろに国土交通省が公表する、日本全国各地に点在する約2万6千か所の土地の1平方メートルあたりの正常な価格であり、約2万6千か所の地点を標準地と呼びます。
毎年3月ごろになると新聞やテレビで「今年の公示地価が公示され、全国1位は東京の山野楽器銀座本店であり4,500万円でした」などと報道されますが、あの価格が公示地価です。
そして、相続税路線価は、最寄りの標準地の公示地価を参考に、その8割程度に設定されます。
たとえば、最寄りの標準地の公示地価が10万円であれば、その土地の相続税路線価は8割である8万円程度になるといった具合です。
また、固定資産税路線価は、最寄りの標準地の公示地価を参考に、その7割を目安に設定されます。
例を挙げると、最寄りの標準地の公示地価が10万円であれば、その周辺の固定資産税路線価は7万円程度になります。
相続税路線価と固定資産税路線価は全く意味が異なりますが、どちらも公示地価を参考に設定され、価格には関連があります。
ちなみに、私が運営するもうひとつのサイト「誰でもわかる不動産売買」では、公示地価をわかりやすく解説するコンテンツを公開中です。
公示地価にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
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記事公開日:2021年11月
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